インフラ輸出支援機構法案 反対の態度表明

2014年04月2日

穀田委員

私はまず、今回の問題について、今の国交省三役のトップセールスの問題について聞きたいと思います。

海外交通・都市開発事業に関するインフラ輸出は、安倍政権の成長戦略、海外展開の柱の一つであります。実はこれは民主党政権の時代に、パッケージ型インフラ輸出、こういう政策を出していましたけれども、それを強化して、インフラシステム輸出戦略として取り組んでいると言われているものです。現在十兆円程度の受注を二〇二〇年に三十兆円までに拡大することを目標にしています。

昨年五月には、安倍首相が、トップセールスと称して世界各国を訪問し始めました。日本経団連を筆頭に、大企業百十二社、二百人を同行させる異例なものでありました。

国土交通省も大臣を筆頭にトップセールスを行っているようですが、大臣就任後から今日までの間の実施状況について、国交省の政務三役が実施した回数、主な訪問先など例示されたい。


稲葉政府参考人

事実にかかわる御質問でございますので、私から御説明させていただきます。

国交省政務三役のトップセールス実施状況についてのお尋ねがございました。

平成二十五年から平成二十六年三月の間に、国土交通省の政務三役におかれては、十七回のトップセールスを実施しております。訪問先といたしましては、インド、ミャンマー、ベトナム、インドネシア、バーレーン等の十一カ国に及んでおります。


穀田委員

その海外出張、トップセールスに同行し、セミナーなどに参加した民間企業は何社あるのか、どういった企業か、あわせて、例えば建設業関係の会社を数社挙げてもらいたい。それは、今お話あった十一カ国の中で、例えばセミナーなんかをやっているわけですけれども、参加した民間企業は、自社の製品や開発計画の提案内容などをプレゼンテーションしたりなんかしているんですか。その概要なんかもあわせて報告いただきたいと思います。


稲葉政府参考人

これも事実関係でありますので、御説明させていただきます。

トップセールスに同行した民間企業についてのお尋ねがございました。

一例御紹介させていただきたいと思いますが、昨年二月に、インドのアーメダバードでインド高速鉄道セミナーというものを開催しております。この際、日本側からは、企業関係者として、川崎重工業、JR東日本など十四社の民間企業が参加しております。また、そのセミナーにおきましては、インド側に対して、政府、関係企業から、新幹線の整備スキーム、経済効果、安全に関する技術等についてプレゼンテーションを行ったところでございます。


穀田委員

先ほどありました十一カ国を含めて、私、いろいろ調べさせていただきまして、一覧表をつくってみますと、同行した民間企業は、今ありましたところでいいますと川重やJR東日本とありましたけれども、大手の企業が中心になって行っているということばかりで、大体それで売り込みをしているというのが現実ですね。それは大体そういうことだと。

そこで、トップセールスとして、その後、インフラ事業を受注した案件はあるのかということについて、事実もこれもちょっとお聞きしたいと思うんです。

一つは、受注事業名と受注企業名、受注額がどうなっているかということ。もう一つは、この中に受注額は非公開となっている案件があると聞きますが、この法律案では、今後、受注企業の企業名、受注額など、情報公開制度の対象として整備されることになるのか。この二点を御報告ください。


稲葉政府参考人

トップセールス後に受注契約に至った案件についてお尋ねがございました。

一つの事例でございますけれども、ベトナムにラックフェン港という港がございますけれども、この港の整備がトップセールス後に受注契約に至った案件でございます。

ベトナム政府に対しましては、平成二十五年九月に太田国土交通大臣が訪問され、トップセールスを実施しておられます。その後、平成二十六年二月に三井住友建設と現地企業二社のJVがアクセス橋梁工事を受注しております。受注額は三百六十億円と伺っております。

次に、機構の情報開示についてお尋ねがございました。

機構の情報開示は、次のような制度に従って行われることになります。

まず第一に、機構は、会社法の規定に基づき、計算書類等を作成し公告いたします。また、この法案の第三十六条におきまして、国土交通省は、機構の業務の実績について毎年度評価を行い、その結果を一般に公表することとされております。また、政府が策定しております官民ファンドの運営に係るガイドラインに沿って適切な情報開示を行う、このような形で情報開示が行われます。


穀田委員

今ありましたけれども、いずれにしても、現段階では情報公開がされていない現実もある。それから、今ありましたように、ベトナム、それから、調べますとシンガポールだとかタイだとか、それなりにそれを受注している。そこで私は、情報公開というのは、国が関与することになるわけだから、当然それは対象になるのは当たり前だし、きちんとしてもらわなければならないと考えます。

そこで、先ほど来問題になっているリスクの問題です。

大臣は政治リスク、自然リスク等々言っていましたけれども、法案の概要説明によりますと、こう書いています。「交通や都市開発のプロジェクトは、大きな初期投資、長期にわたる整備、運営段階の需要リスクという特性があるため、民間だけでは参入困難。」と書いてあります。

先ほどは、もっと大ざっぱな、大くくりで大臣はおっしゃっていましたけれども、わかりやすく具体的な事例を示していただいて報告いただき、それらを全て現段階ではリスクと考えていいのかどうか、お答えいただければと思います。


野上副大臣

今お話のございましたリスクについてでありますが、一般的に、海外でのインフラ事業には、今御指摘がありましたとおり、政治リスク、商業リスク、そして自然災害リスクがあると言われております。

政治リスクとしましては、政治暴動、内乱やストライキなどが考えられます。それから、商業リスクとしては、資金調達などが考えられます。自然リスクとしては、地震や台風などが考えられます。

これらのうち、特に、相手国で長期にわたってインフラ事業を運営する場合には、想定した需要が確保できない需要リスク、あるいは事業会社の運営能力、技術が不十分な操業リスク、それから相手国政府の義務違反という政治リスクが大きな課題であると考えられております。


稲葉政府参考人

リスクにつきまして、今副大臣から御説明申し上げたとおりでございますけれども、私から若干補足をさせていただきたいと思います。

政治リスク、商業リスク、自然災害リスクがございますが、政治リスクには、さまざまな分類がありますけれども、代表的なものとして四つ挙げられようかと思います。

一つは、政治暴力リスク、例えば暴動、内乱、革命、テロ、ストライキ、このようなもので事業の継続が困難になるものであります。

次が、収用リスクと言われているものでありますけれども、資産が正当な補償なく相手国政府によって国有化されるような場合が該当いたします。

また、相手国政府の義務違反リスク、これは副大臣から御説明があったとおりでございます。

それから、制度リスクあるいは制度変更リスクと呼ばれるものがあります。これは、そもそも、途上国におきまして、法制度が未整備で十分機能しない、このような場合であるとか、あるいは制度が途中で変更される、このために事業の継続に支障を生じる、このような場合を含んでおります。

次に、商業リスクについてでございますが、商業リスクにつきましては、代表的なものとして資金調達リスクがあります。これは、事業を組成する際に一定の金額、条件で資金を調達することを計画しているわけでございますけれども、この計画どおりの資金調達ができない場合を指してございます。

また、極めて大きな課題として、完工リスクと言われるものがあります。これは、施設を整備することに関しまして、予定した期間、予定した予算、予定した性能で完成できなかった場合のリスクでございます。

それから、操業リスク、これは事業会社の経営能力、技術が不十分な場合でございます。

また、需要リスクについては、先ほど副大臣から御説明があったとおりでございます。

自然災害リスクについて簡単に申し上げますれば、地震、台風、火災などで事業が影響を受けることを指してございます。

以上でございます。


穀田委員

大臣、詳しく説明があったんだけれども、これは今も昔も別に変わっていないんだよね。このリスクというのは、今報告があった内容でいうと、今突然こういうリスクが生じたというわけじゃないんですよね。その政治リスク、商業リスク、自然リスク、分け方を一生懸命やって、事例を一生懸命述べてはいるんだけれども、それは前からあったわけですよね。十年前も二十年前も変わらぬということだと思うんです。それは、深化はありますよ。深刻さとか、色はありますよ。

問題は、そもそも、個々の民間企業が収益や利益を上げようと思えば、何らかのリスクはつきものなんですね。そのリスクを勘案して事業化したり受注したりするのが、もともとの資本主義じゃないのかと私は思うんですね。

だから、つまり、リスクが大きくてなかなか手が出せないというんだったら、手を出さなきゃいいし、仮にそれでやろうとするなら、いろいろ知恵を絞って、民間事業者間で協力し合うなどしてリスク回避、軽減するのが筋じゃないかと私は思うんですね。

だから、このリスクがあるから民間だけでは参入困難というのは、政府、国民にかぶってもらうということじゃないのかと思うんですが、いかがでしょうか。


太田国務大臣

昔から予想されたということは、それ自体、事実だと思います。

しかし、それがあったがゆえに、民間だけに任せていたがゆえに発注できないとか、ODAでやったものがせっかくできているのに、実際の運営という面では、さっき答弁させていただいたわけですが、ほかの国にそれが行ってしまう。そういうようなことがあって、ODAで、看板一つ掲げられて、これは日本によるものですと言っただけで終わってしまうというようなことがあって、世界の激しい競争の中で、本来は日本がとるべき、また仕事ができるということがだんだん少なくなってきているという状況があります。そこをよく分析してやってみるということが大事だろう。

本当に、支払いがなかなか遅延している、そして、具体的にそれを執行しているという政府の誰かに、要人に会いたいといっても、民間企業がなかなかそこに、交渉にも、会いに行くという立場にないというようなことを初めとして、さまざまなことがありますから、そうした点で、仕事が獲得できるというためには、相当、国の信頼を獲得するということもまた必要なことだというふうに思っているところでございます。


穀田委員

他の国に行ってしまうというわけだけれども、他の国の企業に行ってしまっているというだけなんですね。ODAと言っていますけれども、では、ODAをやったからその上にやるというのは、もともとそういうことが決まっているわけでもないし、ODAで援助しているんだからよこせや、そういう筋があるのかどうかというのはまた別の話で、もともと競争社会なんだから、それは競争の原理でやったらいいと私は思います。

簡単に言うと、採算性の見込めない基礎インフラ部分は今言ったように公的資金で整備し、採算性の見込まれる部分への投資や運用は民間で行うという日本経団連の身勝手な要望がある。

何でそんなことを言っているかというと、彼らは非常に言いたいことを言っていまして、二〇一〇年の十月十九日、「アジアにおけるインフラ・プロジェクト推進に向けて」ということで言っているわけですけれども、そこには、今お話ししたように、「インフラ整備は莫大な資金を要することから、基礎インフラ部分をわが国のODAをはじめとする公的資金で整備し、採算性の見込まれる部分への投資や運用を民間で行う手法を活用していく。」あけすけにこう言っているんですね。だから、そのことに使われているということが現実じゃないかと私は思います。

そこで、海外インフラプロジェクトは、高速道路だとか高速鉄道、港湾、空港など交通施設やその周辺の都市開発をパッケージ化したもので、いわば大規模開発、大型開発なんですね。日本でいえば関西国際空港や東京湾アクアラインなどにも匹敵する、あるいはそれ以上のものだと思うんです。イメージ的に言えば、過大な需要予測で建設したため、埋立事業など巨額の建設債務が足かせになって、運営、維持管理などで苦労している、こういうリスクが海外インフラ事業にはあるということだと。

ところが、関空やアクアラインの場合もそうですけれども、建設工事を受注したゼネコンや、建設資材を販売した鉄鋼、セメントなどの素材大企業、そして資金を供給した大銀行などは確実に利益を上げました。

同じように、交通・都市開発プロジェクトの場合にも、民間事業者は、工事を受注したり資材や鉄道車両などを販売したりすることで確実に大きな利益が得られる。片や、機構に出資した日本政府への収益はどうなるか、どう還元されるのか。

では、この問題について、同じような利益や同じような還元がされるのかどうか、答えていただきたいと思います。


中原大臣政務官

お答えをいたします。

仮に機構が出資した事業に関しまして損失が発生した場合には、その事業への出資額の一部が毀損する可能性がございます。

このような事態を避けるためには、機構は、民間との共同出資、客観的な調査、機構に設けられた委員会による支援決定、継続的な事業参画等を行うことにより、個々のプロジェクトの収益性を確保することに万全を期すこととしています。

これらに対し、国土交通大臣は、出資に関する認可を行う際には、機構がこれらの措置を講じていることを確認することとしております。

また、機構が出資した事業が収益を得た場合には、機構は出資先プロジェクトからの配当収入を得ることができるほか、将来的には出資持ち分の売却による収入も期待することができると考えております。


穀田委員

収益性に万全を期すと。アクアラインだとか関空も、そうやって収益性に万全を期すと言っておったんですよ。だから、万全を期すと言ったからといって、何かそれで担保があるというわけじゃないんですよ。ましてや、外国のところへ行ってやっているわけだから。

そういう意味で、利益ということでも、仮に配当とかなんとかといったとしても、長期間の整備期間中はあり得ない。それから、巨額の建設費を回収するには当然時間がかかる。さらに、運営を開始して利用料金収入が思ったように出ない需要リスクもある。したがって、結局、交通・都市開発プロジェクトのリスクは日本政府が客観的には負うことになって、国民負担を拡大しかねないと私は考えます。だから、国や国民には、メリットどころか、リスク負担だけが押しつけられることになりかねないということを言っておきたいと思います。

さらに、海外インフラプロジェクトというのは、先ほど述べたように、大規模開発事業にほかなりません。日本では、当然のこととして、大型開発事業には環境影響評価だとか地元住民との合意形成などが必要になります。

法案に関連して聞きますけれども、対象事業者に出資や人材派遣する支援機構が、環境影響評価手続や住民合意形成にどこまでかかわるのか、条文上はどこに当たるのかも明示いただきたいと思います。


中原大臣政務官

お答えをいたします。

海外のインフラプロジェクトを支援する際、環境面及び社会面への配慮を適切に行うことは重要と考えております。

例えば、世界銀行におきましては、環境面や社会面の配慮について定めた一連のセーフガード政策と呼ばれる文書を策定し、これに沿って支援対象事業の評価を行っていると承知しております。

我が国でも、例えば、国際協力機構、JICAや国際協力銀行、JBICでは、環境社会配慮に係るガイドラインを策定しており、これに基づき、適切な環境社会配慮がされた取り組みを支援しているところでございます。

なお、いずれも、プロジェクトの環境社会配慮についての責任につきましては、相手国等にあることが前提となっております。

機構においても、これらの機関の取り組みも参考としつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。


穀田委員

ただ、結論は、相手国の状況によるということも一つの大きなファクターであることだけは確かだと。うんと言っていますから、そうでしょう。

条文上はどないかという話は、言うたんやけど、答えてはれへんのやけど、よろしいか。


稲葉政府参考人

この法案でございますけれども、法案は、機構の設立、機構の業務、それから機構の国による監督についての規定を置いているものでございます。

そのような意味で、業務の実施方法に関する点、今議論になっておりますような環境、社会面への配慮に関する根拠条文は置いてございません。むしろこれは組織一般としての原則に従う、このようなことかと存じます。


穀田委員

二つ言っておきましょう。

一つは、対象国が、相手の国がどういう状況にあろうとも、六〇年代、高度成長期の日本のような、公害垂れ流しなどがあっては絶対ならないんですよ。二〇一二年の国連持続可能な開発会議でも提唱された、環境を優先するグリーン経済への移行が強調されています。

途上国の開発事業を行っていく上で、日本が先進国として到達した環境保全や住民合意形成にかかわる当たり前の民主主義的な水準を守っていく責任がある、このことが一つ。

もう一つは、条文ではどう考えてもそういうことはない。今、業務の話がありましたけれども、そこまで読むことは、業務の話について書いていますけれども、その内容について言うならば、残念ながら、二十三条関係で業務の範囲というのがありますけれども、そこの中には、助言だとか、必要な交渉及び調査と書いているだけで、そういうものが配慮をきちんとしなくちゃならぬということの文言はないということは指摘しておきたいと思います。

そこで、次に、私は、日本の海外進出、海外生産はどうなっているかということについて聞きたいと思います。

内閣府がまとめた二〇一三年度の企業行動に関するアンケート調査によりますと、日本のメーカーの生産額に占める海外比率は一二年度実績で二〇・六%と、前の年度から三・四ポイント上がって、一九八七年調査開始以来最高です。

国交省も、我が国企業の海外展開が一層進展し、国内外を一体的に捉え、調達、生産、販売を適地で行うグローバルサプライチェーンの動きが深化しているとまでしています。

海外インフラ整備は、当該対象国にとってだけでなく、対象国に進出した日本の企業の生産拠点を整備することになります。これは結局、日本企業に対して、どんどん日本から出てインフラ整備した対象国に呼び込むということになる、そうじゃないかと思うんですね。だから、海外インフラシステム輸出は、インフラ受注そのものに加えて、対象国に進出する日本企業の生産活動の基盤整備にもつながるということは当然ですね。簡単に。


稲葉政府参考人

インフラシステム輸出の推進は、相手国の発展にとって有益である上に、我が国企業の事業展開につながるものでございます。

インフラシステム輸出には三つの経済効果があると考えております。第一に、我が国企業が海外の優良な交通や都市開発のプロジェクトに参入することによって、これらの事業の収益が日本国内に還元されるということ。第二に、これらのプロジェクトに我が国企業が参画することに伴って、関連部品や機器といった日本製品の受注機会が拡大することが期待できます。また第三に、委員御指摘のとおり、相手国の交通や都市インフラの整備により、現地に進出している日本企業の事業環境が改善されます。

このように、インフラシステム輸出は、世界のインフラ需要を積極的に取り込むことによりまして、我が国経済の成長を通じて、国内産業の生産や雇用の誘発が期待できるものであります。このため、必ずしも国内産業の空洞化の問題が生じるようなものではない、このように考えてございます。


穀田委員

それでは、実態を見てみましょう。資料を出しておきました。日本企業が海外生産拠点化を進めれば、日本国内での生産が減少するのは自明です。電機産業を初め自動車産業でも、完成品製造だけでなく部品メーカーも、国内の工場閉鎖、リストラが相次いでいます。海外インフラ整備によって日本国内の産業が空洞化されているのは明白であります。

先ほど言いました資料を見てください。「自動車産業の海外生産シフトと製造業における国内雇用の空洞化」という資料を出しまして、これは塩川議員が作成したものを使ったものです。グラフをつくりました。棒グラフの方が自動車の生産台数、日本自動車工業会の資料をもとに載せました。海外生産が薄い色で、国内生産が黒。

棒グラフ、九〇年度から二〇一二年度まで、見ていただいたらわかりますが、国内の生産台数は、一九九〇年度千三百四十九万台が、二〇一二年度には九百九十四万台、一千万台を切っています。一方、海外の生産台数は、一九九〇年度三百二十六万台が二〇一二年度には千五百八十三万台と、約五倍に増加しています。

折れ線グラフの方が、自動車産業を含む製造業の就業数、従業員数です。国内の就業数は、一九九二年をピークとして大きく減少して、一九九〇年度千五百五万人が二〇一二年度には千三十二万人と、三分の二になっています。一方、海外の常時従業者数は、一九九〇年度の百二十四万人が二〇一一年には四百十一万人と、三倍以上に増加しているんですね。

だから、国内雇用が減少し、海外雇用が増加している。過去二十年において進んだのは、多国籍企業化が進む中で、国内産業と雇用の空洞化が生じたという事実を、この数字とこのグラフが示しているではありませんか。

だから、インフラ輸出というのはこれをさらに加速することになりやしないかということを、大臣の見解を問いたいと思います。


太田国務大臣

まず、交通と都市開発ということを考えて今回のテーマを設定している。橋をつくって便利にします。そして、そこで都市を開発します。あるいは、港を整備いたします。鉄道というものをつくって、あるいは地下鉄が欲しいということで進出しますということですから、それはそれで、我が国の技術水準というものを海外に展開するということで、私は重要なことであろうというふうに思います。

その問題と、例えば自動車ということがありましたが、自動車がそれによって、海外で生産拠点を持つゆえに日本が空洞化するのではないかというのは、ちょっと次元の違うお話ではないかというふうに思っているところです。


穀田委員

次元は一緒でして、橋をつくっていって便利になる、橋をつくる人たちは、別に下請企業を一緒に連れていくわけじゃないんですよ。だから、日本だって、橋をつくって、大きな橋をつくったからといって雇用がふえたわけじゃないので、それは三年前の予算委員会でやりましたけれども、私は、そういう事実はないということだけ言っておきます。

だから、海外インフラ整備による効果はどうかといいますと、インフラ建設の大部分は、当然現地で資材を調達し、現地の労働者を当然使うわけですよね。下請企業にもほとんど回らない。だから、例えば新幹線の輸出だって、アメリカなどは、発注先の企業がアメリカの国内に車両工場を設立して生産することを希望しているんですね、鉄道とか言わはったので言っておくと。

だから、わずかな中枢部分だけは国内で生産するかもしれないが、日本の国内生産を増加させる効果はほとんどない、この戦略を発信、要求し続けたのは日本経団連だということを改めて先ほどの話をして、リスクは国と国民に、もうけは、利益は大企業へ、残ったのは国内産業と雇用の空洞化では踏んだり蹴ったりだということだけ指摘して、きょうは終わります。


梶山委員長

これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

―――――――――――――


梶山委員長

これより討論に入ります。

討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。


穀田委員

株式会社海外交通・都市開発事業支援機構法案に対する反対討論を行います。

本法案は、海外の交通や都市開発分野の大規模開発事業を日本企業が受注しやすくするため、インフラ整備にかかる莫大な費用や整備、運営に伴うリスクを軽減するなどの支援を行う機構を設立しようとするものであります。

法案に反対する理由の第一は、海外インフラ事業に参入する大企業の利益を保証するための支援策であり、インフラ整備にかかる莫大な費用や整備、運営に伴うリスクを日本政府が引き受け、国民の負担を拡大することになりかねないからであります。

この海外インフラ事業は、高速鉄道、高速道路、港湾、空港などの交通施設やその周辺の都市開発などをパッケージ化した大規模開発事業であり、参入する企業はゼネコン、鉄道会社や総合商社などの大企業です。大規模開発事業が持つ莫大な資金等のリスクが軽減されれば、事業に参入する大手企業は受注機会が増大し、受注した企業は、開発工事や資材、鉄道車両などの販売により確実に大きな利益が得られます。

一方、大規模開発事業が持つリスクは、日本政府が負うことになります。

採算性の見込めない基礎インフラ部分は公的資金で整備し、採算性の見込まれる部分への投資や運用は民間で行うという日本経団連の身勝手な要望を正面から受け入れ、それを実施するものにほかならないからであります。

反対理由の第二は、海外の大規模開発事業においても自然環境と現地住民への悪影響に対する配慮は当然必要ですが、機構の支援にはその視点が全くないからです。

海外インフラ事業の対象は、アジア総合開発計画に組み込まれたインドや東南アジアなど開発途上国が多くを占めています。開発途上国への支援は、大規模開発や資源開発によって、環境破壊と住民の貧困化や、水、食料を奪われるような悪循環に陥ることがないように、生物多様性の維持や環境保全を前提にすべきです。二〇一二年の国連持続可能な開発会議でも提唱された、環境を優先するグリーン経済への移行が強調されています。

しかし、機構の業務にはこうした視点はありません。環境と現地住民への悪影響に対する配慮の視点がなく、ただ大型開発事業の受注支援を推し進めるばかりです。

反対理由の第三は、日本企業の海外生産拠点づくりを支援し、日本の産業の空洞化を加速することになるからです。

海外インフラ整備は、当該対象国のみならず、日本の自動車産業などの海外進出企業にとっても利用しやすい基盤を整備することになります。これは、日本企業が現地から海外に輸出する生産拠点を整備することにもつながります。日本企業が海外に生産拠点を移せば、日本国内での生産が減少するのは明らかです。電機や自動車などが、部品メーカーも含め、国内の工場閉鎖、リストラを相次いで実施しているのが実情です。海外インフラ整備により、日本国内の産業空洞化が加速されるのは明白です。

以上で、本法案に対する反対討論を終わります。