港湾法改定案に反対。地方港の重視、競争から調和への転換を

2014年04月4日

穀田委員

港湾法の一部改正法案について質問します。

まず、聞きたいのは、二〇一〇年に策定した国際戦略港湾政策の目的それから目標、こういうことについてまず聞きたいと思うんですね。

この政策は、民主党政権の時代に、それまでのスーパー中枢港湾の政策にかわるものとして作成されました。その際の目的、目標、これは何だったのか。同時に、今それがどういう到達点、どうなっているのかということについて、かいつまんでお答えいただければと思います。


太田国務大臣

パナマ運河の拡張やシェールガス革命、地球温暖化に伴う北極海航路の開通などによりまして、今後、国際物流が劇的に変化していくことが見込まれているところでありますが、二〇一〇年ということからいきますと、国際物流の拠点となる港湾は、経済のグローバリゼーションの中で、都市間競争、ひいては国の競争力に直結するために、各国は港湾の機能強化にしのぎを削っているという状況にあります。

特に、アジアでは港湾間の競争が激化しておりまして、かつて世界のトップクラスでありました日本の港湾の競争力は、大変おくれをとるようになったと思います。このため、厳しい国際競争に勝ち抜いていくための港湾の機能強化は極めて重要であるというふうに考え、そして、国際コンテナ戦略港湾政策を強力に推進していく必要があるということです。

国際コンテナ戦略港湾の選定時の具体的目標としては、二〇一五年に国内ハブの完成、トランシップ率半減、二〇二〇年、東アジア主要港としての地位の確立を設定しています。三年ほど経過したわけでありますけれども、これまで、阪神港及び京浜港を国際コンテナ戦略港湾として選定して、大水深岸壁の整備や民の視点による効率的な港湾運営を図るなど、ハード、ソフト一体となった施策に取り組んできたところです。

次のような成果が上がっています。

水深十六メーター以上の大水深岸壁の供用、阪神港は五バース、京浜港は三バース、暫定を含んでいる。コンテナターミナルのリース料の一五%低減、これは神戸港です。港湾運営会社によるポートセールス件数の倍増。フィーダー機能強化によるトランシップ貨物の回復、二十五年度ですと約八万TEUになります。神戸港において北米基幹航路が一便増便をしたということで、十二便から十三便になっております。

今後とも、国が前面に立って、目標達成に向けて全力を挙げてまいりたいと考えております。


穀田委員

もともとの目標といいますか、今言った国際競争力ということが一つの大きな柱だということはよくわかりました。

しかし、現実はどうかということで、成果の話はされましたけれども、その内容における、例えば欧州航路が週二便にまで減少している問題だとか、さらには北米航路についても東の方へ行くところが減少しているという問題だとか、負の方の話をはっきり言って余りされなかったということですね。それはもう笑っておられますけれども。私は、当時目指していた欧米向けの基幹航路の強化という問題を一つ掲げていたわけですね。はっきり言って、それはうまくいっていないということだけは確かだと。

そこで、当時、私は何度もこれは質問していまして、基幹航路の維持強化ということを大目標にしていました。さらに、釜山港から貨物を奪い返す、こう言ってもいました。実際は、基幹航路は縮小する、それから、釜山港などへのトランシップ率も改善が見られない、これが現実だと思うんですね。

問題は、これまでにどれだけの予算を使ってきたのか、これからまだどれだけ使うつもりかという点について明らかにされたいと思います。


山縣政府参考人

お答えいたします。

国際コンテナ戦略港湾政策に係る今後の事業量については、平成二十三年三月の衆議院国土交通委員会におきまして、水深十六メーターの大水深コンテナターミナルの整備等に、二〇二〇年までに約五千五百億円を見込んでいるとお答えしたところでございます。

本事業の進捗状況につきましては、平成二十三年度から二十五年度までに約千九百億円を計上しておりまして、今後の事業量としては約三千六百億円を見込んでいるところでございます。


穀田委員

当時質疑があったとき、二〇一一年で、東日本大震災直後でありました。民主党政権の時代でしたよね。私は、被災した港湾施設の復旧に今のお金を回せということを主張しました。

九〇年代以降の港湾政策につきましても、先ほど来お話ありましたけれども、大交流ということで、中枢・中核港湾、これは約七兆円以上使っています。さらには、スーパー中枢港湾ということで五千百億円使っています。こういうふうに巨額の予算を使いながら効果がほとんどなかったことを指摘して、国際コンテナ戦略港湾構想にも成果が上がらないんじゃないか、政府が言うところのアジアの港に奪われた貨物を取り返すことができるかということについて疑問を呈したことを今でも私は覚えています。

今度は、その延長線をさらに、国際コンテナ戦略港湾政策の深化と加速に向けてと言ってやって、新たな目標も設定しています。それによると、「欧州基幹航路を週三便に増やすとともに、北米基幹航路のデイリー寄港を維持・拡大する。」などとしています。この維持のために、集貨、創貨、国際競争力強化を進めるとしています。

そこで、集貨について聞きます。

そもそも集貨とは何か。京浜港、阪神港に全国から貨物を集めるということだと思うんだけれども、どうやって集めるのか。実際は、九州や日本海側などの地方港を使う貨物会社、荷主らは、釜山港をトランシップとして貨物輸送を行っています。理由は、近いし使用料も安いなどのメリットがあるからではないかと思うんですが、その貨物をどんなふうにして戦略港に集めるおつもりか、お聞きします。


山縣政府参考人

お答えいたします。

国際コンテナ戦略港湾への効果的かつ広域的な集貨活動を促進するために、港湾運営会社が行うさまざまな集貨事業に対しまして、国が支援する国際コンテナ戦略港湾競争力強化支援事業を、今年度、二十六年度予算において創設したところでございます。

具体的な事業の内容でございますが、地方の港湾から東アジアの主要港、釜山等でございますけれども、経由して欧米向けに輸送されている貨物のうち、国際コンテナ戦略港湾発着への利用転換を図るものに対して一定額のインセンティブを支援する事業などを想定しております。

以上です。


穀田委員

私、これはまたうまくいくんかいなと思うんですね。やはり、そういう問題提起もしている人がいないと、何かそれ行けどんどんで、よっしゃよっしゃといって、あと誰も責任をとらぬでは困るわけで、そういうのがおったというのが大事なんですね。

今、山縣さんの話を聞いていると、荷主や運航会社というのは、やむなく釜山経由を選択した経緯があるんじゃないか、私ははっきり言ってその背景を思うんですよね。

政府がスパ中だとか戦略港湾などで、いわゆる選択と集中ということによりまして京浜港や阪神港中心の運営をして、地方の港湾、輸送環境を後回しにした結果、費用的にも安く、時間的に短縮できる釜山経由や上海経由のルートを活用してきた面もあるんですね。それは、そういう発言をされている方も現にいらっしゃいます。

今回の法案その他の内容について見ますと、荷主ら事業者に対して、地方港から戦略港にいわば乗りかえすれば奨励金を出すというような方法なんですね。だから、今、携帯電話だとかそれからスマホでやっていますが、乗りかえてください、乗りかえてくださったらキャッシュバックしますみたいな話とよく似ているんですね。

では、地方港を管理する地方自治体から見たらどうなるかということを少し言ってみたいと思うんですね。

地方港の背後には、どこでも地域の企業が存在します。その企業が荷主となって、物流コストを低減するため地方港からの輸出入を積極的に進めてきたというのもこの間の実情だと思うんですね、そういうやり方をして。

また、一部の地方港では、開設されたコンテナ航路を活用して地元の特産品の輸出が行われているということを聞きます。物流コストが低下したためにコンテナ航路で結ばれた海外を新たな市場として開拓する動きも出ています。

これらは、地場産品を生かした一種の地域振興ということでもあって、地方港はより地域に密着した存在になっています。だから、こうした効果を期待して、地方港の港湾管理者や港湾の所在する地元自治体の中には、コンテナ貨物の取り扱いをふやすために、港湾施設使用料の減免やインセンティブ補助の交付などについて助成事業を行っています。

だから、この際ちょっと聞いておきたいんですけれども、地方港の役割というのは地域経済社会の活性化にとっても重要だ、その点をまず確認しておきたいと思うんですが、いかがですか。


野上副大臣

四方を海に囲まれる我が国におきまして、港湾は、海外からの物資の輸出入の拠点、あるいは産業の立地空間として重要な役割を担っております。

御指摘の地方港についてでありますが、これは、当該地域の物流の拠点として、また産業立地を通じた産業活動の拠点として、地域の経済に大きく寄与をしております。

港湾所在の自治体等の調査によりますと、大都市の港湾についても地方の港湾についても、各港湾の経済波及効果や雇用創出効果が大きいとの試算がなされております。

例えば、播磨工業地帯の中心に位置する姫路港などでは、市内総生産に対して約四割程度、また東北海道の物流拠点であります釧路港におきましては、三割を超える経済波及効果があると試算をされています。

このように、地方の港湾は、地域の経済活動にとって極めて重要な役割を果たしているものと認識をいたしております。


穀田委員

ですから、役割は極めて大きいということが一つ。ところが、先ほど港湾局長、お話ありましたけれども、インセンティブでいろいろなふやすことについてはあるんですけれども、では、地方港における荷物が減ったからといって、地方自治体に対して減った分の補填はあるかというと、これはないんですね。ですから、そういう意味ではちょいとおかしな話だなと私は思うんですけれども。

そこで、地方港から乗りかえをして戦略港に集める。太平洋側など内航海運で運べるところは、まだ地方港の貨物が減るわけでもないかもしれません。しかし、日本海側などは、内航海運での輸送は物理的に無理があって、高速道路でのトラック輸送に当然なるわけですね。地方港を使う貨物が陸上輸送に取ってかわられることになります。ますます京浜や阪神圏に貨物が集中をする。トラック輸送がふえれば、モーダルシフト政策にも逆行する。地方港から見れば、陸上輸送になれば、地方港から確実に貨物量が減る。釜山港から貨物を取り戻すだけじゃなくて、地方からも貨物を奪うということになりはしないか。逆に言えば、地方港を犠牲にして戦略港湾に集めるということになるのではないのか。これは私はおかしいと思うんですが、その辺の見解を示してください。


野上副大臣

まず、欧米と我が国を直接結ぶ国際基幹航路の維持拡大につきましては、これまで申し上げてまいりましたとおり、必要不可欠であると考えておりまして、この国際基幹航路の寄港地決定につきましては、大型コンテナ船の寄港に必要な貨物量が確保されるか否かが主要な判断基準となることから、現在、釜山港と東アジア主要港でトランシップされている貨物の国際コンテナ戦略港湾への集貨を推進していく必要があると考えております。

一方で、今御指摘のありました地方の港の話でありますが、これは、アジア地域の発展や国際分業の進展に伴いまして、今、日本海側という話がございましたが、各地域と対岸諸国とを直接結ぶ、そういう輸送ニーズも高まってきております。地方の港湾についても、各地域の立地産業ですとか、あるいは港湾の特徴、個性を生かした取り組み、あるいは立地を生かした取り組みが進められておりまして、これらの取り組みに対して国としてしっかり支援していくということが重要であるというふうに考えております。


穀田委員

それは、支援していくことは重要だと言っているんだけれども、要するに、地方港から集めたら、そうならぬのじゃないかということを言っているわけですよね。私は、何回も言っているように、地方港というのは、日本政策投資銀行なんかでもレポートを出していて、地方港の役割というのは地域に密着した極めて大事なことだと言っていて、地方財政を豊かにする意味でも極めて決定的だと書いているんですね。そういったところから荷物を集めたら、そうなるかということを私は提起しているわけですよね。

そこで、この一連の問題の一番のポイントは何かということなんですね。

そもそも、貨物取扱量が、アジアの主要国としてふえていないわけですよね、ほかのところのふえ方に比べれば。ふえていると一生懸命国交省は常に言いますね。あれだけ金をかけて、これだけしかふえてへんのかという問題があるんですよね、根本問題は。

そこで、原因は、私、この間の海外インフラ輸出のときに大臣とやり合いましたけれども、大量貨物を生む国内製造業自身の空洞化にあるんじゃないかということなんです。片や、中国や韓国が急激に取扱貨物量をふやしているのは、自国の経済成長とともに、日本企業などがアジアなどに海外進出し、生産拠点化している現実があります。そのために、日本国内の製造業が空洞化している。だから、港湾が幾ら頑張っても、製造物である貨物を生み出すわけじゃないんですよ。製造業なり生産するところがあって、運ぶんですよ。だから、幾ら港湾が頑張っても、運ぶものをどこでつくり出すかということがなけりゃうまくいかないんですね。

だから、こういう実態や背景、その要因を見ないで、港湾政策で貨物を取り戻すなどと競争するのは非現実的じゃないか、これを私は思うんですけれども、いかがですかね。


山縣政府参考人

お答えいたします。

確かに、荷主さんがいて、そこから貨物が出るわけでございまして、私ども今やろうとしていますのは、日本できちっと企業が競争力を持つ、すなわち、ほかの国と比較して日本の企業が競争力を持たなければ、日本での生産活動は伸びない、あるいは新規の投資も出ない。その中で、結局、輸送コストというものが競争力のある部分を占めますので、そこをきっちりと他の国と比べて低くしていく施策をとらないといつまでたっても日本の企業の競争力は伸びない、上がらないのではないか、そんな問題意識でございます。


穀田委員

私は、だから言っているわけじゃないですか。輸送というのは、物があって初めて動くんですよ。そのつくるところがぐっと減少しているということを見なけりゃ、幾ら港を、輸送するところをふやしたってだめなんですね。

あなた方は、例えばスパ中とか大交流時代から含めたら、七兆円使っているんですよ。次、五千億円使っているんですよ。だから、めちゃめちゃな金を使っているんですよ。それで全く伸びないという、全くと言ったらあれだけれども、伸び方が緩いという現実を見なくちゃならぬ。

だから私は、主要なコンテナ港そのものが集貨力を低下させているというよりは、日本発着貨物のいわば増加量が伸びていない、伸び悩んでいるということだと思うんですね。日本国内に大量貨物を発生させる製造業が少なくなってきているところに最大の要因がある。だから、産業配置の変化、アジアの方でいいますと、貨物を生み出す産業が大きく移転し、そこで動いているという事実を見なければ、私は木を見て森を見ないということになるんだと思うんです。

そこで、私はこの間の質疑でも、前回の港湾法のときも質疑したんですけれども、当時私は、奪われた荷物を取り戻すとか、そのためにより大きな船が入れるバースの整備を競い合う、こういう競争一辺倒ではだめだ、アジア諸港との協力、そして協調する発想への転換が必要だということを前回の問題のときに提起しました。

今考えるべきは、現実を直視して、競争優先の戦略港湾政策ではなくて、先ほど何で地方港を言ったかというと、地方経済の活性化ということが大事だ、それから住民生活の保持、活性化、そういう物流、港湾政策について大きく転換する必要があるんじゃないかという根本問題を私としては提起しているつもりなんです。

その辺のお考え、その辺についての御所見を大臣に承っておきたいと思います。


太田国務大臣

経済全体の活性化というのは、地域経済の活性化ということも極めて大事なことで、これはかなり幅広い、港湾というのみならず、大変幅広い領域における、今、アベノミクスといっておりますが、そうしたことがどういうふうにデフレを脱却しながら経済を再生させるか、その中で、物づくりを初めとしてどういうふうにこれをさらに伸ばしていくか、これは経済全体の戦略の問題だというふうに思っています。

その中で、港湾というのが一体どういう働きをしているかというと、ただ物を受けて、自然の水の流れのように来るものを受けて、そしてできたものを出すというものでないというところに実は大きな問題があって、日本に来るという貨物がなぜ来にくいのかという中には、それは、経済全体の規模という以上に、荷を揚げる費用が非常に高いんだとか、あるいは、水深、船をとめるという岸壁がないんだとか、そういうようなことがかなりあって、世界の物流というものがあって、そして、物流があって、それが一つのまた経済の基盤になっているということのまさにネックとなり隘路になってきているのが今の日本の状況ではないのかというところで、そこの水深の岸壁というものを、さらに大水深をつくっていったり、さまざまな、そうした交通の問題も考えたり、あるいはまた、日本が、耐震ということがちゃんとなければ危ないな、こういうようなことがネックになるとするならば、そういうことをしていく。

全体の経済戦略の中で、一つのネック、隘路になってきている港湾を、そうではない、やりやすい港湾にしていかなくてはならないというところに大きな任務があるのではないかというふうに思っているところです。


穀田委員

その隘路という事態は、その発言、またそれらの大水深バースというのは、もう九〇年代からずっと言っていることなんですよ。

そのときに言って、いわば全国で百二十九ばかりの重要港湾をつくって、七兆円ばかりつぎ込みました。たしか七兆四千九百億円だったと思いますけれども。その次に、先ほど述べたように、スーパー中枢港湾で五千百億円も使いました。だから、これだけでもう八兆円なんですね。これで、今度、この間の五千五百億円と。ですから、これだけつぎ込んで、依然として隘路になっているとなったら、今まで何をやっておったんだということをまず言わなければならないと思うんですね。

要するに、八兆円もつぎ込んで、その隘路が依然として今あるなどということになっているのか。そうすると、その反省がまず必要だなということは思います。

というのは、この問題について言いますと、二〇一一年に議論したときに、やはりそういう無駄や、若干そういうことが、政策的に言うと、全て十分とは言えないということを当時の大臣は言っていたことを付言しておきます。

そこで、最後の方の、国の出資問題について少し聞いておきたいと思うんです。

港湾のそういう管理というのは、もともと今、地方自治体になっていますよね。それで、それはなぜ国直轄管理がないのか、その理由を制定当時の趣旨を含めて簡潔にお答えください。


中原大臣政務官

お答えをいたします。

昭和二十五年の港湾法制定時以来、港湾の管理につきましては、地方の熱意と工夫によって港湾の開発、発展を図ろうとの狙いから、港湾管理者を地方公共団体または港務局のいずれかによるものとしており、国の監督規制につきましては、国家的利益を確保するために必要な範囲にとどめております。

今回の法改正は、自治体管理を原則とする港湾管理者制度を何ら変更するものではなく、国家的な見地から国際戦略港湾の競争力を強化するため、港湾運営会社に対し国が出資できることとし、国、港湾管理者、民間の協働体制の構築を図るものでございます。


穀田委員

私は、これはもうちょっと、港湾法制定のときにどんな議論をされているのかということを知っていてあの程度の話しかしないというのは、ちょっとまずいと思うんだな。

これは、港湾法というのは、第二次世界大戦の終結を受けて、港湾を国の造営物とするという明治以来の考え方を根本的に変えたんですよね。それで、港湾の管理運営に関し、最大限の地方自治権を与え、かつ国家的及び地方的利益に最も適合する港湾管理主体の形態を設置する機能を地方公共団体に与えるということを目的としてやったんですね。

だから、この点でいいますと、当時議論になったもう一つの内容は、平和産業港湾都市に転換し、民主的な日本の実現に寄与することを目的とした旧軍港市転換法もあわせて成立している。こういう動きについて全く言わないというのは、ちょいと、その趣旨をどういうふうに理解したかは別として、やはり地方自治体のところに管理を置いている意味というのは、その歴史的経過があるということを見なければならないと私は思います。

国家権力による国民的財産の包括ではなくて、地方自治権の尊重や平和的な地方都市の産業基盤の向上という考え方に基づいているということを指摘しておきたいと思っています。

そこで、今、政務官は変更するものではないということを言っていましたけれども、もともと地方自治体が管理することが港湾法で決められて、さっき述べた港湾法の理念ということからして、国が出資する意図は何かという点での疑問を感じざるを得ないんですね。国際コンテナ戦略港湾政策を強引に地方自治体に押しつけるものだと私はちょっと推察するんですね。

東京都などでも、今回の法改正で反対を表明しているということもあります。お聞きすると、国が主導するような出資というのはノーだということで協議を続けているようですが、それらも踏まえて、私は、地方自治体に押しつけるのはどうかな、間違っているんじゃないかという考えを持っているんですけれども、その辺はいかがでしょうか。


山縣政府参考人

お答えいたします。

東京都の意見のお話もございましたので、国土交通省では、国際コンテナ戦略港湾政策推進委員会等の場におきまして、国際コンテナ戦略港湾の港湾管理者等も入りますけれども、あるいは港湾運営会社を含みます関係者に対しまして、国の出資の意義あるいは効果について説明をしてきております。

東京都につきましても、国際コンテナ戦略港湾の国際競争力の強化を図る必要性については共有しておりまして、また、今回の法改正の趣旨及び改正内容について反対しているものではないと認識しております。

国土交通省としては、港湾運営会社に対します国の出資は、国、港湾管理者、民間それぞれの強みを生かしたオール・ジャパンの体制を構築するため必要なことと考えており、引き続き関係者との調整をしっかりと進めてまいりたいと考えております。


穀田委員

最後に一言だけ言います。

私は、この間ずっと、競争力強化とか、それから、この発想の中心は、アジアの成長を取り込むということをしきりに政府は強調していますし、大体そういうことが基本になっていると思うんですね。

しかし、私は、この二十年間というものを、どれだけのお金をつぎ込んできたのか、注ぎ込んできたのかということを考えますと、この港湾整備等にお金を注ぎ込んだことによって、その結果が港湾労働者の豊かな生活になったか、それから、自治体を通じてその成果が広くあまねくみんなに返されたかということを見ると、そんなことになっていないということだと思うんですね。

ですから、その意味で、政策の大もとというのをもうちょっと考える必要があるということだけ述べて、きょうは終わります。