自民党「提言」ー官邸も「指揮統制機能」 国家中枢を攻撃対象に

2022年04月27日

穀田委員

 日本共産党の穀田恵二です。  条約の問題点については、後ほど討論の際に指摘することにしたいと思います。  自民党の安全保障調査会は、先週二十一日、政府が年末に予定する国家安全保障戦略など三文書の改定で焦点となる敵基地攻撃能力について、提言をまとめました。  この日の会合には、内閣官房や防衛省のほか、外務省からも総合外交政策局の有馬審議官が参加したと聞いております。  自民党の提言は、敵基地攻撃能力、これを反撃能力と言葉だけ換えて、保有を求めています。また、攻撃対象を敵基地だけにせず、指揮統制機能等にも広げています。さらに、軍事費を五年以内にGDP二%以上、金額にして十兆円を超える大軍拡を狙っています。どれも非常に重大な内容ですが、とりわけ敵基地攻撃能力の保有を公然と求めていることは看過できません。  これまで政府は、国会で、一九五九年に伊能防衛庁長官が、「平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持っているということは、憲法の趣旨とするところではない。」と述べました。また、七〇年には中曽根防衛庁長官が、「非攻撃性の装備でなければならない」と答弁し、攻撃的な兵器、すなわち敵基地攻撃能力の保有は憲法違反だとはっきり表明してきました。  林大臣、今回の提言は、こうした政府の憲法解釈を根底から覆し、専守防衛をかなぐり捨てるものではありませんか。

林国務大臣

 いわゆる敵基地攻撃能力と憲法の関係につきまして、政府は、誘導弾等による攻撃が行われた場合、そのような攻撃を防ぐのに万やむを得ない必要最小限の措置を取ること、例えば誘導弾等による攻撃を防御するのに他に手段がないと認められる限り、誘導弾等の基地をたたくことは、法理的には自衛の範囲に含まれ、可能であると解してきております。  こうした見解と、そして、相手から武力攻撃を受けたとき初めて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ、また、保持する防衛力も自衛のための必要最小限のものに限るなど、憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略の姿勢をいう専守防衛の考え方、これは整合するものと承知をしております。  いずれにいたしましても、総理の指示の下で、いわゆる敵基地攻撃能力も含めてあらゆる選択肢を検討し、防衛力の抜本的な強化に取り組んでおります。  なお、この検討は、憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考えを維持しつつ、行われておるところでございます。

穀田委員

 この内容をおよそ専守防衛の範囲内と考えることはできないのは当たり前だと思います。  一九五六年二月に船田防衛庁長官は、「他に防御の手段があるにもかかわらず、侵略国(相手国)の領域内の基地をたたくことが防御上便宜であるというだけの場合を予想し、そういう場合に安易にその基地を攻撃するのは、自衛の範囲には入らない」と明確に述べています。そうした過去の政府見解には一切、政府も含めて言及しないのは、余りに私は御都合主義だと思います。  そこで、鬼木副大臣に聞きます。  自民党の提言は、反撃能力の攻撃対象について、相手国のミサイル基地に限定されるものではなく、相手国の指揮統制機能等も含むとしています。攻撃対象をめぐっては、安倍元総理が講演などで、相手国の中枢を加えるべきだと再三主張してきた経緯があります。  鬼木防衛副大臣、提言で言う指揮統制機能等とは、相手国の中枢ということではありませんか。

鬼木副大臣

 自民党の提言につきましては、一つ一つについてコメントすることは差し控えたいと考えております。

穀田委員

 この調査会その他も含めて、ずっと鬼木さんも出席されているんじゃないんですか。それについて、いわば自民党が提言している、これは政権与党が提案しているものとして、逆に言うと、それらの問題について全く見解を持たないということになりますと、これは政府としていかがなものかと思います。一度も出席もせぬと、黙って後でぱっと見たというのやったらしゃあないですよ。ずっと関与していろいろなことをやっているということについて言うと、情けないと言わなければならないと思います。  私は、指揮統制機能等とは相手の中枢ではないかと聞いたわけですよね。  政府は、この間、国家安保戦略改定に向けた有識者との意見交換を実施してきました。意見交換に出席した元統合幕僚長の折木良一さんは、一月十二日付の日経新聞で、反撃能力とは、相手の基地に限らず、指揮統制施設や通信施設などへの攻撃も含むと述べています。報道によれば、指揮統制機能等について、防衛省幹部は、日本でいえば、都心の防衛省や首相官邸も含み得ると指摘しています。  それで、具体的に聞きます。  防衛省本省には中央指揮所というものがあります。配付資料の一枚目ですね。この中央指揮所に関する政府の答弁です。二〇〇七年五月三十一日の参議院外交防衛委員会で、当時の大古防衛政策局長が、中央指揮所が自衛隊指揮命令中枢だと答弁しています。  鬼木副大臣、この答弁からも、中央指揮所は自衛隊の指揮命令の中枢ですね。

鬼木副大臣

 中央指揮所は、防衛出動等の自衛隊の行動等に関して、防衛大臣が情勢を把握し、適時所要の決定を行い、部隊等に対し命令を下すまでの一連の活動を迅速かつ的確に実施することを目的とするものであり、その機能は、自衛隊の指揮通信等において必要不可欠なものであると考えております。

穀田委員

 必要不可欠で中心だと。  防衛省にある中央指揮所が自衛隊の指揮命令の中枢であることは、二〇〇八年七月十八日の防衛省運用企画局作成の資料でも、「自衛隊の指揮命令中枢である中央指揮所」と明記されています。つまり、中央指揮所は自衛隊の事実上の最高司令部ということであります。  更に聞きます。  自衛隊の最高司令部の中央指揮所には中央指揮システムというのが設置されています。そこで、資料の二枚目ですね、見ていただくと、これは非常に分かりやすい。二枚目です。これは折木良一氏が統合幕僚長だった二〇一〇年五月に作成されました。「指揮システムの概況」と題する資料であります。これには、防衛大臣が指揮統制を行うためのシステムとして中央指揮システムというのがあると記されています。間違いありませんね。

鬼木副大臣

 防衛省・自衛隊では、自衛隊のオペレーション時の指揮命令の伝達や情報共有を円滑に行うため、中央指揮システムを始めとした指揮システムを整備しております。  委員御指摘の中央指揮システムは、弾道ミサイル対処や大規模災害等の各種事態に迅速かつ柔軟に対応するため、各自衛隊の指揮システムと連接し、各自衛隊が保有するオペレーション上必要な情報を一元的に集約する機能を有するシステムであり、防衛大臣が指揮統制を円滑に行うためのシステムとなります。

穀田委員

 だから、防衛大臣が指揮統制を行うためのシステムということで、非常に重要だということですよね。  それで、私が指摘した中央指揮システムの資料要求に当たりまして、これなんですけれども、持参したのはちょっと違っていまして、これを新たに持ってきました。これは、いつかと言いますと、驚いたのは、防衛省の指揮系システム、令和四年四月二十五日、防衛省。ということは、おととい、私が質問する前に、新しく資料として作ったということなんですね。  何を言いたいかというと、要するに、私が皆さんにお渡しした資料というのは、先ほど述べた、折木さんが統幕長の時代ですよね。しかし、それ以来ずっと変わっていないということだということが一つ。  もう一つ驚いたことがあります。私が配付した資料は、昨晩まで総理官邸のホームページでダウンロードできていました。ところが、今日はできなくなっている。私が通告のレクを行った後に削除したと思われる。こういうやり方までせなあかんのかと。作った資料をダウンロードできないようにする。その一方で、新しい資料を持ってきて、それをいつ作ったかというと、四月二十五日に作った。こういう経緯がずっとある。まさに、不可思議であり、ふざけていると言わなければなりません。  結局、配付した防衛省の指揮システムに関する資料に明記されているように、中央指揮システムは、防衛大臣が指揮統制を行うためのシステム、つまり、指揮統制機能だと記されているわけであります。ここが肝腎なんですね。だから、やはり、指揮統制機能というところにポイントがある。あれやこれや言うてはりますけれども、結局そのことなんですね。  配付した指揮システムに関する資料によれば、中央指揮システムは、中央システム、陸海空幕システム、情報支援システムの五つのシステムから成る統合システムで、内閣総理大臣官邸、関係省庁と連携していると記されています。在日米軍ともホットラインで結ばれている。間違いありませんね。

鬼木副大臣

 当該資料に記載のとおり、中央指揮システムは、総理官邸や関係省庁、在日米軍とつながっております。

穀田委員

 つながっていると。要するに、中央指揮システムというのは、内閣総理大臣官邸や関係省庁、在日米軍とも連携されているということでいいですね。

鬼木副大臣

 同じ問いでございますので、そのとおりでございます。

穀田委員

 間違いないということと、連携しているということが大事だなということを聞いているんですよ。  配付した指揮システムに関する資料では、防衛省・自衛隊の中央指揮システムは、官邸や関係省庁、在日米軍とも連携しており、文字どおり、防衛大臣の指揮統制機能だということであります。さらに、この中央指揮システムは、陸海空自衛隊の指揮官が作戦指揮を行うために、全国の自衛隊部隊ともシステムでつながっている。  林大臣、自民党の提言で言うところの指揮統制機能等は、敵基地だけにとどまらず、日本でいえば、防衛省本省、総理官邸、関係省庁などを攻撃対象にするということだと言わなければなりません。林大臣、これは、相手国を丸ごと攻撃対象にするものであり、国際法上許容される武力行使の範囲を逸脱した全面戦争を行うということではありませんか。

林国務大臣

 防衛副大臣からございましたように、党の提言というのは、まだこちらは見ておらないわけでございますし、党の提言でございますから、その中身やそれが何を意味するかについて、政府としてお答えすることは差し控えたいと思います。というか、お答えする立場にないと思っております。

穀田委員

 私が聞いているのは、まさにこの図にありますような内容というのが非常にリアルに分かるし、こういう指揮系統になっている。結局のところ、これはまさに指揮統制機能を指しているものだねと。ということは、今自民党やその他が言っているような、敵基地にとどまらず、そういう指揮統制機能等を対象にしようとするということは、まさに相手国を丸ごと攻撃対象にするという論理的帰結を聞いているわけです。いかがですか。

林国務大臣

 穀田先生、非常に説得力があるものですから、そうだと言いそうになるところもあるわけでございますが、先ほど申し上げたとおり、党の提言、まだ受け取ってもおりませんし、党の提言の文言や解釈についてはコメントはする立場にはないと思っておりますが、いずれにしても、政府としては、国民の命や暮らしを守るために十分な備えができているのか、これを憲法及び国際法の範囲内で、専守防衛の考え方を維持しつつ、現実的に検討してまいりたいと考えております。

穀田委員

 小野寺元防衛大臣は、民間人がいるとか非軍事施設が対象になることはないとしています。しかし、提言では、攻撃対象となる指揮統制機能には「等」の文言があり、攻撃対象は、軍の司令部だけでなく、国家の中枢まで標的にするなど、際限なく拡大するおそれがある。  さらに、小野寺氏は、相手国が攻撃に着手したと認定すれば攻撃は可能だと説明したと報じられています。そうなれば、国際法違反である先制攻撃との区別も事実上不可能であるというところが今最大の大きな問題になっているわけであります。  そういう点もあるんだが、いかがお考えですか、大臣。

林国務大臣

 先ほど申し上げたとおりでございまして、我々としては、総理の指示の下で、いわゆる括弧つきの敵基地攻撃能力、この保有も含めてあらゆる選択肢を検討して、防衛力の抜本的な強化に取り組んでおるところでございます。  大事なことは、やはり国民の命や暮らしを守るため十分な備えができているのかということがあり、憲法や国際法の範囲内で専守防衛の考え方を維持する、現実的に検討してまいりたいと考えております。

穀田委員

 この考え方は専守防衛の考え方に反する、命を守ること、すなわちそれは憲法を守ることと同義語であって、そのことによって守るんだということを私は言っておきたいと思います。  最後に、この問題で重大なのは、今進められている敵基地攻撃能力の議論は、安保法制施行以前に議論されたものとは異なるということであります。  私は一月二十六日の予算委員会でも指摘しましたが、安保法制で存立危機事態と認定すれば、日本に対する武力攻撃がなくても、他国と戦争を始めた米国を支援するために、米軍とともに相手国の中枢をたたくことができる、これはまさしく憲法九条に真っ向から反するのは明らかであります。  私どもは、このような考え方は間違っている、危険な動きであるということを指摘し、私どもは、憲法を守ること自身がやはり命を守ることだという同義語であって、そのことのために頑張ることをお話しして、質問を終わります。