定置網の減価償却期間、柔軟対応を確約。沿岸漁業の支援を提案

2021年04月28日

あべ委員長

 次に、穀田恵二君。

穀田委員

 日本共産党の穀田恵二です。  茂木大臣に最初に質問します。  本日の議題である条約のうち、租税条約及び投資協定に関しては、後ほど討論で問題点を指摘したいと思います。  そこで、今日は、今国会に提出されている大西洋まぐろ類保存条約改正議定書に関連して質問します。  今回の改正は、直接は条約の対象となる魚種を拡大する等のものだが、漁業の資源管理や予防原則を明文化するなど、重要な点もあります。  そこで、マグロ類等、高度回遊性の資源の管理、中長期の影響を見据えた漁獲の規制、ルール作りについて、外務省としてどのような取組をされてきたのか、簡単にお答えいただければと思います。

茂木国務大臣

 穀田委員、常に議論を先取りして、いい議論を展開していただいていることに感謝を申し上げたいと思います。  世界有数の漁業国であります我が国は、国連海洋法条約、そして国連公海漁業協定等を締結して、漁業資源の保存管理に関する国際的なルール作りを推進してきております。  また、我が国は、条約区域におけるマグロ類に関する漁獲枠の設定等の保存管理を積極的に貢献してきておりまして、本議定書の作成過程においても、日本は中心的な役割を果たしてきております。  日本は、マグロだけではなくて様々な海産物について、漁獲というか漁業の面でもそうでありますけれども、消費、こういった面でも主要国であるわけですから、そういった主要国の立場として、様々なルール作りで主導的な役割、これからも果たしていきたいと思っております。

穀田委員

 いつもうんちくのあるお話、ありがとうございます。  持続的漁獲が可能な水準の維持に、FAOの持続的漁業の行動規範、SDGsや、さらにはWCPFC条約でも、小規模、伝統的漁業の存続に特別の配慮を明記しています。私は、これが世界の常識だと思っています。したがって、資源管理と予防原則の大切さ、これをしっかり踏まえて、今後も私どもとしては取組を強めていくべきだと考えています。  次に、資源管理に入る前に、農水担当の副大臣にお伺いしますが、現場からの切実な声を踏まえ、二、三、要望を踏まえてお聞きしたいと思います。  定置網漁の位置づけについてです。  私の地元京都府では、穏やかな若狭湾と対馬暖流の影響を受ける日本海に面しているため、暖流に乗って来遊するマグロやサワラなど浮魚類、そして日本海固有の冷水で生活するズワイガニやカレイ、沿岸性のアワビやトリガイなど、四季を通じて様々な漁業が営まれています。中でも、生産量、生産額とも大型定置網の比率が高く、生産量の約八割、生産額の約六割を定置網が占めています。  先日、舟屋で有名な伊根町の漁業関係者の話をお聞きしました。定置網漁は待つ漁業であり、資源管理そのものだとおっしゃっていました。その方々の話では、定置網に百匹の魚が入ると、六十匹ほどは逃げてしまい、三十から四十匹ほどが残るということでした。  このように、定置網漁は魚を待ち受けるという漁法であり、良好な資源状況の下で成り立っている。これは、水産資源の再生産という点でもとても調和の取れた漁法であり、だから、日本で約七百年以上も続いてきた。さらに、地域の雇用機会の創出に大きく貢献してきました。  そこで、伝統的な定置網漁の果たしてきた役割、また小規模沿岸漁業者の役割について、認識を改めて確認したいと思います。

葉梨副大臣

 穀田先生おっしゃるとおり、定置網漁業でございますけれども、全国の沿岸漁業の生産量の四割を占める。そういうことで、それぞれ地域によって魚種は異なりますが、ブリ、イワシ、サバなどの日本の食卓に欠かせない多種多様な魚の安定供給に大きく貢献してきました。  そして、小規模沿岸事業者、一本釣り、刺し網とかいろいろございますが、少量ですが単価の高い魚や、ウニ、アワビ、そういったいそ根資源や海藻等の多種多様な魚介類、これを水揚げしていただいておりまして、漁村の活性化、さらには、日本の食文化の形成、さらに、行事に色を添えるというようなこともございまして、非常に重要な役割を果たしてきたというふうに認識をしています。

穀田委員

 極めて多様で広範囲な形で重要な役割を果たしているということがお話がありました。  そういう下で、現実は極めて厳しい。さきに紹介した舟屋の町、伊根町でも、かつて二百数十隻の船が操業していましたけれども、今では十五隻ほどに激減しています。全国的には、沿岸漁業に関わる経営体数は、一九八八年には十八万あったけれども、二〇一八年には七万四千にまで激減しています。  ここまで激減した原因を農水省はどのようにお考えですか。

葉梨副大臣

 漁業者の数でございます。  御指摘のとおり、沿岸漁業者につきましては、二〇〇八年に十八万三千人だったものが二〇一八年には十二万四千人と、三二%の減となっています。この間、沖合、遠洋漁業者も二八%減となっているんですが、それよりも多い減少ということです。漁獲量自体は、沖合、遠洋漁業が非常に低下している中で、沿岸漁業は、下がってはいるんですけれども、沖合、遠洋ほどの下がり方ではないんですけれども、やはり、高齢化が非常に大きな問題だと考えています。  沿岸漁業者の約四三%が六十五歳以上、リタイアが進んでいます。沿岸漁業者の八三%に後継者がいなくて、経営を継続できなくなって、廃業に至ることなどが考えられています。しっかりと対策を取っていかなければいけないというふうに考えています。

穀田委員

 数字と現象面、それはそのとおりです。  問題は、私は原因を聞いているわけですね。原因分析並びに対策を仮に講じてきたとしても、それが効果を発揮していないという責任が問われている。そこからスタートすることが必要だと私は思います。  沿岸漁業者の実態は、先ほど述べたように、大変厳しいわけです。そこで、具体的な問題について、幾つか提案したいと思うんです。  一点目は、定置網リースへの補助制度についてです。  二〇一八年まで、定置網は消耗品であるとの理由で、リースへの補助がありませんでした。漁業者と私ども日本共産党の度重なる要望に応えて、政府は、ようやく二〇一九年度予算から、リース方式での定置網の導入に対し二分の一の補助をすることになりました。  定置網の新規導入は二億円ぐらい超えますし、高いものでは八億円規模の投資が必要です。修理にも二千万から三千万かかる。漁業者にとっては大変重い負担になってきました。この補助金導入により、京都府では、二〇一九年度に三事業者、二〇二〇年度には六事業者が補助を受けて、とても喜んでおられます。  ところが、このリース事業への補助金は一回こっきりのものだと聞いています。定置網の寿命は十年程度ですから、一回きりの補助ではなく、次の更新時に再度補助できるような、恒久的な制度として発展させるべきでは、充実させるべきではないんでしょうか。

葉梨副大臣

 御案内のように、御指摘のリース事業による定置網事業への支援、これは令和元年に始まりました。これまで、全国での実績が百十三件というふうになっています。  実際のところを言うと、なかなか一般的に、補助対象物件の更新というのに更に補助事業の対象というのはなかなか一般的には例がないというのも御存じの上で質問されているんだというふうに思います。  定置網ですけれども、もう釈迦に説法ですが、網を固定する部分は長もちしますので、一旦設置されれば、十年又はそれ以上にわたって網を補修しながら使用されているというふうなことで、この事業の対象になったものが更新時期になっているというものは多分今ないんだろうというふうに思います。  なかなか、今申し上げたように、非常に厳しいものがございますので、更新の際にリース事業を利用できるかについては、リース事業によって定置網漁業にどういう効果があったということをしっかり見極めながら慎重に検討していかなければいけないというふうに思っています。

穀田委員

 十年後というもので見れば、お互いそういう認識、共通しているわけだけれども、元々、この定置網リースの補助制度というのは、水産業成長産業化沿岸地域創出事業として始まったものです。  その政策目標は、漁業者の所得向上、五年間で一〇%以上というものであります。この政策目標の達成年は二〇二三年です。再来年ですよね。再来年までに沿岸漁業者の所得を一〇%向上させるという目標は達成される見通しでしょうか。

葉梨副大臣

 結局、この水産業成長産業化沿岸地域創出事業、これの事業目標が、おっしゃるとおり、五年間で一〇%ということなので、基本的に、この事業の対象になるものについてはそれをしっかりと目標にしていくということになっていきます。

穀田委員

 いや、目標になっているのは知っているから、だから聞いているんですよ。  だから、はっきり言うと、なかなか現場の現実というのは、政策目標の達成は現状では困難だと。ですから、だとすると、私は、制度の趣旨からも、次の更新時も使えるよう、恒久的なものとして継続すべきではないかと。  漁網へのリース補助ができたことによって、現場では、よし、漁業を続けようという新しい意欲、インセンティブが生み出されています。  京都では、漁船の造船所がなくなったこともあって、お隣の福井県にお願いしていますけれども、福井県の造船所には発注が相次ぎ、船を発注しても六年待ちという盛況だそうです。  ですから、私、珍しく、喜ばれているということを言っているわけですからね。けなしているわけじゃないんですよ。これをもうちょっとやろうやないかということなわけですね。  ただ、網がなければ漁業はできない。網がなければ漁業はできない、これを命綱というわけですね、簡単に言えば。まあ、そういうことなんですよね。そういう命綱の制度なんです。だから、継続すべきだと思うんです。  関連して、もう一点伺いたいと思います。  同じく伊根町に、定置網の固定資産税の評価について聞きました。定置網の減価償却期間が三年間となっているが、定置網は大切に使い、先ほども大臣もお話ありました、耐用年数は十年以上となっているので、減価償却期間を実態に合わせて延長してほしいとの要望でした。  確かに、この問題は個々のケースによって難しい問題もあると思うんです。現場が何より大事で、農水副大臣はいろいろ現地に行っていろいろなことをお聞きしていただいていますから、是非一度、直接意見を、要望をお聞きいただければなと思っています。  その上で国税庁に聞きますけれども、減価償却期間の延長について水産庁から具体的な検討要望があった場合に検討いただけるか、また、現行制度で、減価償却資産のうち、漁網について耐用年数の適用を長くして償却する方途、道筋はないのか、この点についてお答えいただきたいと思います。

江島政府参考人

 お答えいたします。  御質問いただきました定置網につきましては、税制上、漁具の資産区分に含まれておりまして、その耐用年数は御指摘のとおり三年……(穀田委員「もうちょっと大きい声で言ってくれない」と呼ぶ)済みません、繰り返します。御質問にありました定置網につきましては、税制上、漁具の資産区分に含まれておりまして、その耐用年数は御指摘のとおり三年となっております。  この定置網の耐用年数に係る具体的な要望につきましては、まずは所管省庁であられる農林水産省において、その使用実態等を踏まえ、どのような対応が必要かを御検討していただく必要があるものと考えております。

重藤政府参考人

 御質問は、三年という期間よりも長く償却することができるかという点だったと思います。  まず、税法上、法人でありますと、現行税法でも、法定の耐用年数よりも長い期間で償却するということはまず可能でございます。  そういう一般的な取扱いとは別に、また、この漁網に関しまして申し上げますと、漁網の償却限度額の計算につきましては、所轄の国税局長の認定を受けた場合にはその償却率によることができるとされておりまして、その場合の償却率は、その漁網の種類に応じて、新たに取得して事業の用に供された日から、その漁網の修繕等を行いつつ、最終的に廃棄されると予想される日までの経過月数に応じて、それに対応した率によるということになっておりまして、その場合には、償却期間は、法定耐用年数である三年ではなくて、償却率に応じて、短い場合は二年、長い場合は二十年までの期間で償却するということが可能でございます。

穀田委員

 今二つお答えいただいて、だから、水産庁として、漁具のそういう今の現実について一つ一つやはり検討してもらうということが必要だと思うんですね。  これは、先ほど、一番最初に副大臣は、この沿岸漁業の極めて重要な位置づけを多彩にお述べになったわけですよね、まさに。ただ、それは生活を支え合ってこそということがありまして、それを支える意味では、それを援助してあげてこそ成り立つんだということですから、よく検討していただきたいと私は思うんです。  あわせて、今、制度の問題がありました。これは、私どもも初めて、こういうことについては、ああ、こういう制度があるのやな、こういうやり方もあるのやなということが、ほとんどこれは、はっきり言って、知られていないんじゃないですかね。  といいますのは、私は、一番最初に言いましたように、償却の仕方については、その時々、うんともうかったとかいろいろなことがあって、形が随分あるんですよね。それは分かっているんですよ。だけれども、そうじゃない方々が、声を上げられない方がいらっしゃるわけですよね。だから、そのような制度があれば、関係団体に、そして関係者に広く周知すべきだと。私は改めて、それはええ制度やなと思いましたわ。  したがって、制度が広く知られていないことを前提に、水産庁としても、事業者が税務署と相談できるような、親身できめ細かな対応をすべきだと。やはり、検討ということと、そういうことでのきめ細かな対応、この点について、副大臣の決意を聞きたいと思います。

葉梨副大臣

 今、そういう切実な要望があるということ、私も承りましたので、まず、要望している伊根ですかの漁協、その背景、具体的内容をしっかり伺っていきたいと思いますし、また、関係団体にも同様の要望があるのかどうかということも含めて、しっかりと承っていきたいというふうに思っています。その上で、我々として何ができるか、検討していきたいと思います。

穀田委員

 いつも、葉梨副大臣とはばんばんとやり合っているんですが、今日は、全体としては前向きな努力とお互いの認識の一致があったということでは、画期的なことだったと思います。  ここからはまた少し態度が変わるわけですけれども、クロマグロの資源管理と小規模沿岸漁業について聞きたいと思います。  まず、魚種ごとの総漁獲可能量を定めたTAC制度について。  日本の漁業の九四%は小規模沿岸漁業経営体で、その経営体数は約二万。片や、ニッスイやマルハニチロなど大手水産関連会社も参加する大型、中型のまき網漁業の経営体数は二十程度しかありません。しかし、クロマグロの漁獲規制、漁獲枠の上限は、まき網、大規模漁業優遇となっていて、日本企業の九四%を占める小規模沿岸漁業者に不利な枠組みとなっている。  この点を是正すべきではないか。端的に。

葉梨副大臣

 端的に、簡潔に申し上げます。  小規模の漁業者に対しては、相当、我々としても配慮をさせていただいておるということを私どもは認識しておりまして、例えば、三十キログラム未満のクロマグロの小型魚の配分、これについては、大中型のまき網は半減、さらに、二〇一八年から三分の一ですけれども、そっちは四割削減にとどめている、二〇一五年の基準年度。三十キログラム以上の大型魚についても、大中型まき網漁業は減らしているわけですけれども、沿岸漁業については更に上乗せ配分をしているというようなことで、運用面で相当配慮をさせていただいているということをお答えさせていただきたいと思います。

穀田委員

 大体いつもそういうふうにお答えになっているんですけれども、ICCATは、沿岸漁業に配慮する一方、漁獲圧力の高い大型まき網漁業者に対しては、禁漁期間を十一か月、要するに年間一か月しか漁を認めないという厳しい規則を取っています。それから、スペインでは、漁船に監視員を乗せ、監視カメラで不正がないか監視しています。アメリカでも、沿岸漁業者が漁獲枠を超えて捕り過ぎた場合は大型まき網船の方の漁獲を削るという、こんなふうに、沿岸にそうして回している。日本近海でどうしてこういう規制措置を国内に適用しないのか。  漁獲枠の上限が決まっているんだったら、小型沿岸漁船の権利を守ることをまず優先して、その上で、漁業資源に最大の圧力となっている大型まき網の漁業に対して規制を行うのが当然じゃないかと私は思うんです。  先ほど、魚の重さの話が出ましたけれども、沿岸漁業者は普通、五キロ以下のマグロは捕りませんが、京都であれば八キロ以下も捕らないということで、ずっと厳しい自主規制を行っているんですよね。しかし、定置網であればマグロは勝手に入ってくるわけで、枠を超えたものについては、もう一度網を海に投げてマグロを海に帰している。その際、一緒に入ったブリやサワラも逃げてしまうということになるわけですね。漁業者にとってみれば、事は死活問題なんですね。そうまでして厳しい漁獲枠の上限を守っているのが沿岸なんですね。  ところが、一方で、大型まき網船団の横暴、勝手は目に余るものがあります。これは一昨年十二月に我が党の田村議員が取り上げましたけれども、テレビ東京の「ガイアの夜明け」という番組で、クロマグロをまき網でごっそりと捕る、マグロの重みで下の方のマグロが圧死する、そして、死んだマグロは海に投棄する。個体が死んでいるかどうかにかかわらず、その数量は漁獲量です。これを海に捨ててカウントしない、これは資源管理の大問題です。厳しい漁獲枠を強いられている沿岸漁民の皆さんがこの映像を見て怒るのは当たり前なんですね。  農水省は、こんな不法な操業を繰り返す大型まき網事業者に対して、きちんとした調査、指導を行ったんでしょうか。

葉梨副大臣

 御指摘の報道でございますけれども、我々も調査をさせていただいたんですが、具体的な船名や日時等が不明で、報道側からもこれを特定する情報が得られなかったということで、事実関係を確認することができなかったんです。  その上でなんですが、クロマグロについては、改正漁業法に基づく管理の対象となる前の平成三十年から、海洋生物資源の保存及び管理に関する法律に基づいて、漁獲可能量制度の対象とされてきております。正確かつ迅速な漁獲量の把握は非常に重要であると認識しておりまして、今後、改正漁業法に基づく数量管理を基本とした資源管理を実施していくに当たり、管理の透明性の確保、これが重要と考えています。  我が国としてどのような取組が可能か、しっかり検討をしていきたいというふうに思います。

穀田委員

 最後にしますが、それは条約に書いているとおりなんですけれども、私は、スペインなどで取り組まれている監視員の乗船、監視カメラの設置の義務づけも含めて、有効な対策を取るべきだと思います。調査したと言いますけれども、たかだか二十なんです、会社は。あなたのところ、やったんかと聞けば、やっていないかどうかというのは分かるわけで、それは、私は甘いと思うんですね。  しかも、水産庁は、大型まき網船がどこで操業しているかモニターしているはずなんです。死んだマグロが底引きで大量に揚がった、あるいは海に大量に浮いているなどの……

あべ委員長

 申合せの時間が経過しておりますので、御協力願います。

穀田委員

 漁業者の通報を促し、漁船を選定し、厳しく取り締まるべきだということを思います。  残念ですが、環境省を呼んでいたんやけれども、堪忍してください、ちょっと時間が来ましたので。申し訳ありません。  終わります。