「台湾有事」 安保法制適用も

2021年04月21日

あべ委員長

 次に、穀田恵二君。

穀田委員

 共産党の穀田恵二です。  茂木大臣、最初に一言お聞きしたいんですけれども、先ほど連絡がありまして、菅内閣総理大臣のインド出張が中止になったという報告が来ました。お互いのことですから、これは理由は何なんですか。

茂木国務大臣

 申し訳ありません。私、ずっと一日委員会におりまして、まだ外務省に戻っておりませんので、様々なことについて、先ほどまで参議院の方でずっと本会議があったりしていましたので、申し訳ないんですけれども、その確認は取れておりません。

穀田委員

 とても大事な海外出張で、その問題について私の方が早く知っているというんじゃ、ちょっとね。幾ら委員会に……(茂木国務大臣「しようがない。帰してもらっていない」と呼ぶ)いやいや、ですから、幾ら委員会にあったとしても、それぐらいの報告は必要かなと思うんですよね。そこだけ言っておきたい。別に他意はないんです。だから、何でそういう、理由が何なのかということをお聞きしたかったということであります。  では、本番に入りますというか、本題に入りたいと思います。  日米首脳会談について聞きます。  菅総理とバイデン大統領による初の首脳会談を受け発表された共同声明は、台湾海峡の平和と安定の重要性に言及し、両岸問題の平和的解決を促すことを明記しました。しかし、看過できないのは、この台湾海峡をめぐる問題が、軍事同盟の一層の強化を全面的に打ち出す中で位置づけられていることであります。  台湾問題で中国が軍事的圧力や威嚇を強めていることは、断じて容認できるものではありません。同時に、日米両国が台湾問題に軍事的に関与する方向に進むことは、問題の解決に逆行することは明らかだと考えます。  台湾問題の解決は、台湾住民の自由に表明された民意を尊重し、あくまでも平和的な話合いで行われるべきではないかと思うんですが、所感をお伺いしたいと思います。

茂木国務大臣

 後半の部分についてはかなり穀田議員と一致する部分はあるんですが、まず、日米同盟に対する見解というのは、かなり幅があるのかなと考えております。  日米同盟は、元々二国間の関係でありましたが、今や、地域そして世界の平和、安定、さらに繁栄の礎になっている、このように考えております。  そういった中で、今回、バイデン大統領が就任して初めての首脳会談、英国でもお隣のカナダでもなく日本の菅首相との直接の会談ということになりまして、そこの中では、もちろん、台湾問題だけではなくて様々な国際的な課題、コロナ対応、そしてまた気候変動問題、自由で開かれたインド太平洋の実現、こういったことについても認識の一致を見ているところでありますが、中国であったりとか地域に関する情勢の中で、台湾をめぐる問題、これが当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待する、これは我が国の従来からの立場でありまして、これを日米共通の立場としてより明確にしたということは大変意義のあるものだ、このように考えております。

穀田委員

 茂木大臣は、今もお話ありましたけれども、台湾海峡をめぐる問題については、これまでも、当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待すると答弁しています。しかし、さきの日米2プラス2や共同声明の内容は、それに全く逆行するものだと私は考えているんですね。  といいますのは、共同声明は、日米2プラス2の共同発表文を踏襲し、中国に対抗するために、日米同盟の抑止力、対処力の強化を確認しています。しかし、これを見ていますと、重大なことは、日米同盟とインド太平洋地域の安全保障を一層強化するとして、日本が自らの防衛力を強化する決意を表明したことであります。  菅総理は、今回の共同声明を日米同盟の羅針盤と強調していますが、これを盾に日米両国が中国との軍事力の増強を競い合うという事態になるんだったら、大変なことになる。軍事対軍事の悪循環をもたらし、台湾問題の平和的解決につながらないのは明白ではないかと思うんですが、いかがですか。

茂木国務大臣

 日米共同声明、私は英文で見ましたので、ちょっとページ数が違うところはあるかもしれないんですが、たしか二ページ目の最初の部分で、おっしゃったような、日米の抑止力、対処力を強化する、こういう言葉があって、中国の文脈の中で最初の部分に若干出てきますけれども、そこと台湾の部分は離れたところで書いてあった、このように記憶をいたしております。

穀田委員

 述語の問題と何か文脈の問題に話が行っていますけれども、本質問題をちょっと私は言っているつもりなんですね。ページ数がどこかと、私は余り詳しく、英語訳の問題について、そこのページ数を言っているわけじゃありませんので。問題は、共同声明で記した抑止力、対処力の強化とは一体何かということになりますよね。  対処力とは、抑止力が破綻した後に起こる事態に対応するための軍事力のことではないか、これが普通の常識だと思うんですね。だから、共同声明で対処力の強化を明記したということは、台湾海峡をめぐる問題で、抑止力が破綻した場合を想定した軍事力を日米双方で強化しようということを約束したということになると私は考えます。  そこで、米国は、インド太平洋軍司令官が、六年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があるなどと危機感をあおり、沖縄からフィリピンを結ぶ第一列島線に精密打撃ネットワークを備えた統合部隊を展開するなどの構想を打ち出しています。御存じのとおりだと思います。  日本に対しては、次期インド太平洋軍司令官に指名されたアキリーノ氏が、日本は中国からの攻撃に対抗できるよう、米軍との相互運用が可能な防空、ミサイル防衛、航空優勢、警戒監視と情報収集、諜報、偵察能力を強化すべきだと述べて、まさに軍事力の一層の増強を求めています。  茂木大臣は、こうした米側の要求にお応えになっていくというおつもりですか。

茂木国務大臣

 まず、先ほど申し上げたのは、確かに抑止力、対処力の強化ということは書いてありますけれども、それは台湾の文章について書いてあるのではない、その書いてあった位置について申し上げたので、決して何か議論を散らすために申し上げたのじゃない、趣旨としてはそういうことであります。  その上で、今我が国を取り巻きます安全保障環境、これは穀田委員も御案内のとおり、一層厳しさを増している、このことは、恐らく、ここにいらっしゃる委員の方、誰も否定はされないんだと思います。  そういった中で、日米、同盟国でありまして、その抑止力、対処力を高めていく、これは、我が国の国民の安心、安全、生命、こういったものを守っていく上で不可欠であると考えております。

穀田委員

 先ほど私言いましたように、次期インド太平洋軍司令官に指名されたアキリーノ氏が言っている中身、これは、米軍との相互運用が可能なということで、防空、ミサイル防衛、航空優勢、警戒監視と情報収集、諜報と全部言っているんですよね。まさに、日本は軍事力そのものを強化すべきだということまで言っているわけです。だから、一層の厳しさを増している、一般論はそのとおりで、認識はそうなんでしょうけれども、具体的にそれに応じるのかということを私は言っているわけです。  皆さん、こういうことを言うと、日本は日本なんですと当然、いつも大臣は言うわけですよ。でも、米軍は、第一列島線付近で武力衝突が発生した場合、増援部隊が到着するまでに三週間かかる、こう言っています。そして、その間、水陸両用能力などを持つ日本の自衛隊が対処することを求めています。さらに、先ほど述べた次期アキリーノ氏は、日本が中国の弾道ミサイルや巡航ミサイルの攻撃に自ら対処できる能力を持つことは、日米と同盟諸国にとって死活的に重要だとも強調しています。  このように、米国が日本に求めているのは、台湾有事などの軍事作戦で中国との戦力差を埋めるための役割。それに応えていくことは、日本が米中の軍事衝突の最前線に立たされることになりかねないということだということを、今、私としては警告しておきたいと思います。  私の考えるような考え方、あえて、また次はそういう点を議論したいと思うんです。  そこで、中山防衛副大臣に伺いたいと思います。  岸防衛大臣は、三月二十三日の記者会見で、台湾海峡をめぐる問題について問われ、「防衛省・自衛隊としてもあらゆる事態に備えて、わが国の法令の範囲内で適切に対応できるように不断に検討をしている」と答えています。  そこで、ここで言う「わが国の法令」とは一体何なのか、具体的に法令を挙げていただきたいと思います。

中山副大臣

 穀田先生、ありがとうございます。  まず、今御指摘のありました令和三年三月二十三日火曜日の午前九時三十五分から九時五十六分までの会見、記者からこのような質問がございました。  先日の日米防衛相会談で、台湾海峡の平和と安定の重要性について認識されたと発表されていますが、その後共同通信が、大臣とオースティン国防長官との間で、台湾有事で緊密に連携する方針を確認したという報道がありまして、これが事実かどうか。これが事実だった場合に、どのような連携を具体的に確認したのか教えて下さい。 大臣からは、  台湾海峡については、防衛大臣会合の中でですね、台湾海峡の平和と安定が地域の平和と安定にとって重要であるという認識を共有したところでございます。これ以上の具体的なやり取りの内容については、答えを差し控えさせていただきたいというふうに思います。わが国として領土・領海・領空、そして国民の命、平和な暮らしをしっかり守り抜くという政府の責任をしっかり果たしていかなければいけません。防衛省・自衛隊としてもあらゆる事態に備えて、わが国の法令の範囲内で適切に対応できるように不断に検討をしているところでございます。台湾海峡を巡る問題については、当事者間の直接の対話によって平和的に解決をされる、また、地域の安定に寄与することを期待するというのがわが国の立場でございます。中国が軍事力を強化させる中で、中台の軍事バランスは全体として中国側に有利な方向に変化し、その差が年々拡大しているような状況が見られます。防衛省としても、引き続きこの状況については、しっかり注視をしてまいりたいと考えております。 ということでございます。  この岸大臣の発言は、あくまで、我が国に係るあらゆる事態に備えて、現行の様々な法令に基づき適切に対応できるよう不断に検討を行う旨を申し述べたものであり、特定の法令を念頭に置いたものではないというのが見解でございます。

穀田委員

 結局、そのときの発言を読み上げたというのが主な内容で、あと言っているのは、あくまでそういう準備をしているんだという一般論を言っているだけなんですよね。  私が聞いたのはそうじゃないんですよ。台湾海峡をめぐる問題で、防衛省・自衛隊があらゆる事態に備えると。あらゆる事態に備えるんでしょう、そのために一体どんな法令に基づいて対応を検討しているのか、その法令とは具体的に何かということを聞いているんですよ。

中山副大臣

 大臣は我が国のいわゆる防衛について言及をしたまででございまして、台湾有事という今先生から御指摘のあった仮定の質問についてお答えすることは差し控えますが、いずれにせよ、いかなる事態においても、我が国の領土、領海、領空、そして国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは政府の最も重要な責務であり、引き続き万全を期していくという考えでございます。

穀田委員

 問われた内容を、もう一遍言いますよ。  大臣が問われたのは、そういう台湾に関係して、それをどうするのかと答えているわけですやんか。私が今度聞くと、一般的決意を述べているだけなんですよ。  要するに、あらゆる事態に備えて、国民の命って、それは考え方の根本にあるんでしょう。だけれども、そういう場合というのは何か、何でもかんでもできるわけじゃないんですよ。どういう検討をしてはんねんと。あらゆる事態に備えるために法令に基づいて対応を検討しているのか、その法令は何かということを聞いているわけですよ。  ないなら、ないということで、そういうことについては答えられないなら答えられない、何かきちっと言ってくれないと。

中山副大臣

 あえて御指摘の岸大臣の発言ということではなく申し上げれば、防衛省・自衛隊は平素より、防衛省の所掌事務などを定めた防衛省設置法、それから自衛隊の任務、自衛隊の権限等について定めた自衛隊法などに基づき、業務を遂行しているところであります。

穀田委員

 そうすると、あらゆる事態に備えて対応を検討していると説明しておきながら、今の説明は、防衛省設置法、自衛隊法でやっているんだと。それはないでしょう。それが全てになっているわけではないことは明らかだと思うんです。  では、少し角度を変えて聞きますけれども、現行法令には重要事態法や事態対処法というものがある。これらの法律は、防衛省・自衛隊であらゆる事態に備えて対応を検討しているという様々な法令、私ども回答をいただきました、そういう文書の回答が来ているんですけれども、様々な法令から除外されるのかということはどうですか。

中山副大臣

 いかなる事態が、例えば重要影響事態、それから存立危機事態、武力攻撃事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することになるため、一概にお答えすることは困難であるというふうに申し上げたいと思います。

穀田委員

 そういう一般論を聞いてそれをどういうふうに判断するかというのは、別の、次のカテゴリーの問題なんですよ、本来。  今私が聞いているのは、全体の法体系と皆さんがおっしゃっているんやから、しかも、現行法令には、そういうように重要影響事態法やそれから事態対処法というのがある、この二つ。これを、防衛省・自衛隊であらゆる事態に備えて対応を検討しているという、その法令からは除外されるのかと聞いているんですよ。

中山副大臣

 今も申し上げたように、何か事態が実際生じるまでの仮定の質問には、なかなか具体的には、御納得いただく範囲でお答えができかねるわけでありますけれども、先ほど申し上げたように、重要影響事態、それから存立危機事態、武力攻撃事態、そういった事態を判断するというのは、そのときそのときに応じてしっかりと適宜判断をさせていただくということになろうかと思います。

穀田委員

 それは、そういう起こっている事態がどういうのに値するかという話であって、何回も聞いているように、そういうあらゆる事態に備えて対応を検討しているという法令からは除外されるのかどうかと聞いているわけですやんか。ということは、除外されないということですか。どっちなの。

中山副大臣

 いずれにしても、法律の中に含まれているということだと思います。

穀田委員

 もう一度聞きますよ。  そうすると、あらゆる事態に備えるための、どんな法令に基づいて対応を検討しているのかという場合、その法令の中に重要影響事態法や事態対処法というのは含まれるということでいいんですね。

中山副大臣

 基本的に、防衛省・自衛隊というのは、我が国の防衛に資する、そのための法律でありますから、その我が国を守るための法律の中には、今先生が御指摘になられたような、私たち、国を守るという意味での法令、法律は全てこの中に含まれる、そういう認識でございます。

穀田委員

 何回も聞いているその話を、あっちゃこっちゃずらしたらあきませんで。  一番問題にしているのは、私は、台湾海峡をめぐる問題であらゆる事態に備える、その中にそういう法律はあるのやなと聞いているんだけれども、もう一度。  だから、一般論じゃなくて、分類をどうするかとか当てはまるかと聞いているんじゃなくて、それは除外されないんだなということでいいんですね。もう一回。

中山副大臣

 先ほど、なぜ当日の記者会見を読ませていただいたかというと、大臣は台湾海峡の有事について答弁しておられません。ですから、我が国の防衛についての話を答弁されているということをあえてリマークしたかったので申し上げた次第です。  その上で、台湾有事という仮定の質問にお答えすることは差し控えたい、かように考えております。

穀田委員

 それは、認識の、まさに話をずらすための話でしかないですよね。問われているのは、台湾有事の問題というのが問われているんですよ。要するに、結局、そのことを言うことになるとはっきりせぬわけだけれども、四の五の言って。日本防衛その他という話じゃなくて、客観的には台湾有事が来た場合ということについて質問しているから答えているわけで、そういう脈絡で話をしている内容をそらしては駄目ですよ。  要するに、防衛省・自衛隊では、重要影響事態法や事態対処法など安保法制に基づいて、台湾海峡で起こり得るあらゆる事態を想定し、既に対応を検討しているということを言わざるを得ないと思います。  更に聞きます。  防衛省は、先ほどありましたように、いかなる事態が重要影響事態や存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して判断すると言います。先ほどもありました。  そこで聞きますけれども、防衛省・自衛隊が対応を検討しているあらゆる事態には重要影響事態や存立危機事態は含まれないんですか。

中山副大臣

 まず、いかなる事態においても、我が国の領土、領海、領空、そして国民の命と平和な暮らしを守り抜くことは、政府の責任であります。防衛省・自衛隊としても、あらゆる事態において適切に対応できるよう不断に検討しているところですが、事柄の性質上、そのような内容について申し上げることは差し控えさせていただきたい、かように思います。  その上で、いかなる事態が重要影響事態や存立危機事態、武力攻撃事態に該当するかについては、先ほど来御指摘のあったとおり、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断するということになるため、一概にお答えさせていただくことは困難であるということでございます。

穀田委員

 安保法制の議論のときも同じ答えをやって、そうじゃないんですよ。言っているのは、事態の判断を聞いているんじゃないんですよ。判断を聞いているわけじゃないんですよ。防衛省や自衛隊が対応を検討しているあらゆる事態には重要影響事態や存立危機事態は含まれないのか否かということを聞いているんですよ。答えてくださいよ。

中山副大臣

 先ほど来申し上げていることが、繰り返しになると思いますけれども、いかなる事態が重要影響事態それから存立危機事態、武力攻撃事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報を総合して客観的、合理的に判断することになるため、一概にお答えすることは困難であるという認識です。

穀田委員

 壊れたレコードみたいに同じことを言っているわけなんです。私が言っているのは、事態の判断を聞いているんじゃないと何回も言っているわけですやんか。  河野前統合幕僚長は、三月三十日付の朝日新聞で、「今後、想定されるのは台湾有事だ。台湾有事で米軍が出動した場合、日本も「重要影響事態」と認定して米軍の後方支援にあたる可能性は十分にある。」と明言しているんですよ。もしそうなれば、約五万人が駐留する在日米軍基地は出撃拠点になる。  菅総理は、台湾有事が集団的自衛権行使を可能とする存立危機事態に該当することについては否定していないわけですよ。

あべ委員長

 申合せの時間が経過しておりますので、御協力願います。

穀田委員

 はい。  存立危機事態に認定されるような事態になれば、自衛隊が戦渦に巻き込まれるリスクが一気に高まります。中国への軍事的な対応を強化することは、こうした軍事対軍事の危険な悪循環を生み出すだけだ。そのことを指摘して、質問を終わります。