「環境分科会」で、建設アスベスト、琵琶湖の保全・再生、大戸川ダム問題で質問

2021年02月26日

穀田分科員

 日本共産党の穀田恵二です。  小泉環境大臣にまずお伺いしたいと思います。  今年一月二十八日、最高裁は、京都建設アスベスト第一陣訴訟において、国の責任を断罪し、かつ、主要なアスベスト建材メーカーが石綿の危険性を知りつつ適切な警告をせず製造、販売を続けたことの共同行為責任を認めました。これは、最高裁の判決としては全国初の画期的なことだと思います。  建設アスベスト裁判では、京都第一陣訴訟が提起されてから九年七か月になります。全国各地でもその裁判過程で約七割の方々がお亡くなりになられているが、京都でも、被害者五十一人のうち三十七人が解決を見ることなくお亡くなりになっています。  ある原告の御遺族は、中皮腫を発症して僅か八か月で帰らぬ人となった夫の遺志を継いで闘い、ついに敵を討った、真面目に働いた者がばかを見るとの夫の無念を晴らせたとおっしゃっていました。  また、原告団長の娘さんは、被害原告の年齢、病気の身を案じれば国も企業も解決を急いでほしいと切々に訴えられておられます。  大臣は、国の責任及び建材メーカーの責任を断罪した今回の最高裁の決定を受け、政府の一員としてこの重さをどう受け止めているのか、答弁願いたい。

小泉国務大臣

 これは、穀田先生、この訴訟が環境省の所管ではないということは御承知の上でのお尋ねだということは私も承っておりますが、厚労省などにおいて対応している、まずそれは言っておきたいと思います。  環境省が担当している石綿健康被害救済制度、これは、原因者と被害者の個別的な因果関係を明確にすることが困難という石綿による健康被害の特殊性を鑑みて、民事上の責任とは切り離して、社会全体により迅速な救済を図ることを目的に、労災補償の対象とならない方々について広く救済の対象としているところであります。  環境省としては、今後とも、こうした救済制度の基本的考え方に基づいて、安定的かつ着実な制度運営を図ることによって、石綿により健康被害を受けられた方に対する迅速な救済を促進をしていく思いです。

穀田分科員

 迅速な救済とおっしゃっていました。  最高裁が、首都圏の訴訟に続き、京都訴訟でも国の責任を断罪しました。国敗訴の最高裁決定を受け、先ほど厚生労働という話がありましたけれども、田村厚生労働大臣は、記者会見並びに昨日の予算委員会の分科会で、責任を感じ深くおわびすると述べました。  まず、私は、政府として、全ての被害者に真摯な謝罪をすべきだ、また、最高裁判決で確定した被害者への賠償は当然のことですが、係属中の訴訟の早期の和解、解決、一人親方を含む全ての被害者の救済、先ほど救済という話がありました、一刻も早く実施すべきだと思います。  そのため、国と建材メーカーが共同で出資する建設アスベスト被害補償基金制度、これを創設し、直ちに、未提訴の方を含め、全被害者を救済できる仕組みをつくるべきだと思うんですが、先ほど救済の話をされましたから、考え方をお述べいただきたいと思います。

小泉国務大臣

 まず、先ほど申し上げましたが、お尋ねのアスベスト訴訟については厚労省において今対応していると承知しています。環境関係の法規について争われているものではないことから、この件についてお答えすることは差し控えますが、我々が担当している救済制度、この救済制度の中で、労災補償の対象とならない方々について広く救済の対象としているところでもあります。  環境省としては、こういった制度、考え方、これに基づいて、安定的に、かつ着実な制度運営を図ることで、石綿により健康被害を受けられた方に対する迅速な救済を促進していく思いです。

穀田分科員

 じゃ、迅速な救済をやろうと思いますと、本当にこういう制度をつくらなければならない。補償基金制度をつくってきちんとやっていくこと、しかも、迅速なとおっしゃいましたよね、一刻も猶予は許されないということをしっかり胸に刻んでやらないと、その被害の方々、また御遺族の方々の思い、これがどれほど痛切かということについて思いをはせていただく必要があると思っています。  次に、琵琶湖の環境問題について質問します。  琵琶湖は、近畿圏約千四百五十万人の生活と産業活動を支えています。また、四百万年に及ぶ歴史を持つ世界有数の古代湖でもあります。琵琶湖には、六十種を超える固有種を含む一千種以上の動植物が生息しており、自然生態系の宝庫でもあります。  こうした琵琶湖であるからこそ、今皆さんに配付をしていますが、ありますように、国は二〇一五年、琵琶湖の保全及び再生に関する法律を制定し、その第三条では、琵琶湖の保全と再生のために、水質汚濁の防止及び水源の涵養、生態系の保全及び再生、景観の整備及び保全に取り組み、国は必要な財政的措置を講ずるとしています。  そこで、汚染問題について聞きます。  琵琶湖総合保全整備計画、いわゆるマザーレイク21計画では、二〇五〇年の琵琶湖のあるべき姿、その第一の目標として、琵琶湖の水はあたかも手ですくって飲めるように清らかに満々としてある、こう言っています。  果たして実情はどうか。  私は、琵琶湖の北湖にある朝日漁業に足を運び、実情をお聞きしました。  皆さんにお配りしているこの写真を見ていただきたいと思います。この写真は、昨年五月四日、琵琶湖の固有種で、高級珍味であるフナずしに最も適していると言われているニゴロブナの漁に使う刺し網です。これを北湖の水深三十メートルに数時間つけたらどうなったか。これがその写真です。  琵琶湖のニゴロブナ漁で使う刺し網の糸は大変細く、魚が判別でけへんから、それでかかってしまうということなんですよね。ところが、網がこうやってすぐに汚れてしまうから、全く魚はかからない。  近年、上流部の田んぼの代かきの濁水が出る四月下旬から五月上旬の汚れが一番ひどいとのこと。この時期が実はやはりフナの漁獲時期と重なっており、ニゴロブナの収穫はここ三年連続で大変な不漁となっているという訴えがありました。  そこで、伺います。  大臣は、琵琶湖に注ぐ河川からの農業濁水の現状と漁業への影響についてどう認識されておるのか、そして、この改善方策についてどのようにお考えか、お示しいただきたい。

小泉国務大臣

 近年、琵琶湖の流域では、代かき、田植期間である四月から五月にかけて、水田由来と考えられる濁りが生じており、アユの遡上行動に影響を及ぼすのではないかとの指摘などがなされていると承知をしています。  このため、滋賀県においては、琵琶湖への農業濁水の流出防止対策として、河川の透視度調査を行うほか、水田からの濁水の流出防止などの取組を行う環境こだわり農業の活用などによる農業濁水対策を推進していると聞いています。  先生先ほど御指摘された法律の施行後五年を踏まえて、関係省庁や関係地方公共団体で組織をされた琵琶湖保全再生推進協議会が令和二年九月に取りまとめたフォローアップ報告書において、水質汚濁防止のための措置などとして、「代かき・田植え期間に琵琶湖に流入する農業濁水は、長期的には改善傾向にあるものの、一部の河川で依然濁りが大きいことから、重点モデル地区での技術実証など一層の取組を行う。」とされたところです。  私も、琵琶湖保全再生推進協議会の共同会長を務めていますので、今後とも、この法律に基づいて、関係省庁や関係自治体と連携して、農業濁水への対策を含めて、琵琶湖の保全再生施策を推進してまいりたいと思います。

穀田分科員

 琵琶湖の汚染という点では、漁業者は当然ですけれども、農業者、関係者も何とか改善したいと心を痛めておられます。  私は、先日、長年琵琶湖の汚染問題を研究している方とお会いして、その原因と対策について意見交換しました。琵琶湖の固有種で二年魚、ふ化して二年というイサザの農薬汚染を一九八〇年以降ずっと研究されてこられ、イサザ体内の農薬汚染は琵琶湖周辺の圃場整備事業の進捗と明確な相関関係がある、かつては、使われた農薬の排水が時間をかけて琵琶湖に流入して自然浄化されていたけれども、琵琶湖総合開発による圃場整備が進み排水がダイレクトに川に流され、それが短時間で琵琶湖に流入することによる影響が大きいと、意見を述べられていました。  私は、その意見は賛成なんですね。したがって、対策のために二つの点が重要だと思うんです。一つは、琵琶湖に流れ込む農業排水の水質改善に取り組むこと。もう一つは、琵琶湖に短時間でダイレクトに流れ込むということをいかに防ぐか。  この点での琵琶湖の水質汚染の原因と対策についてどうお考えか、改めてお聞きしたい。

小泉国務大臣

 環境省としては、琵琶湖の保全及び再生に関する法律などに基づいて、関係省庁や関係自治体と連携して、琵琶湖の植物プランクトン及びその生態系等への影響について必要な調査研究を行っていくことが重要であると認識をしています。  琵琶湖の植物プランクトンについて、かつては珪藻類が主体であったと言われていますが、最近では緑藻類が主体となるなど、水質や環境の変化などによって藻類の優占種が変化しているとの指摘がなされていると承知をしています。また、平成三十年には、琵琶湖の南端部にある南湖で植物プランクトンの特異的な増殖により水質が悪化したと認識をしています。  琵琶湖のこの法律の施行後五年を踏まえて報告書がまとめられましたが、今後も生態系の変化や水質汚濁などに関するメカニズムの解明などの調査研究を実施することとされており、環境省としても、琵琶湖の水質及び生態系の保全、再生に関する調査研究に取り組んでまいりたいと思います。

穀田分科員

 私の先の方の質問にもちょっとお答えをいただいて申し訳ないんですけれども。  では、その問題について一言言っておきますと、今あったように、植物プランクトンの問題、今大臣が指摘されましたよね。これは、滋賀県の水産試験場の調査では、湖中に設置する時間の短い、今述べた刺し網でも、植物プランクトンで形状が糸状のものが網に絡みついて、また、粘りのある物質を分泌することによって浮遊する泥とともに網に付着して、写真のような状態になると。  さらに、一千年以上続く琵琶湖の伝統漁法である、えり漁ですね。これは仕掛けを一定時間設置するけれども、したがって、粘りのある物質を分泌する植物プランクトンが網の上で増殖し、マット状の汚れとなることが確認されているんですね。これは洗ってもなかなか落ちひんわけですよね。  だから、植物プランクトンというのは、今、動物プランクトンが捕食できない大型のものになっているという現状だとか、今ありました、網の汚れのほか、それから、この間、琵琶湖の水道水の異臭の原因ともなっているということになっています。  私は、琵琶湖の生態系保全と水質の保全、この両方を視野に入れて、こうした植物プランクトンの変化、その琵琶湖への影響について、改めて、これは全国でいろんなところで起こっているんだけれども、この生態系、この問題が余り分かっていないんですよね。したがって、改めて調査研究する必要があると思いますが、これは簡単に一言だけ。

小泉国務大臣

 先回りをして答えたみたいで、済みませんでした。  先生が言うように、この調査研究を行っていくことは非常に重要なことだと思いますので、そしてまた、琵琶湖の重要性は特に地域の皆さんにとって非常に大きなものがありますから、我々としても、この法律に基づいたものでフォローアップもできて、この調査研究を、指摘もされていますし、しっかりと取り組んでいきたいと思います。

穀田分科員

 そこで、先ほど環境こだわり農業についてありましたので、農水副大臣にお聞きします。  先ほどあったこだわり農業というのを後押しする、国の環境保全農業直接支払交付金について若干提案したいと思うんですね。  農家の皆さんは、化学肥料や農薬を半分以下に抑える、琵琶湖への農業排水の流入を抑えるなどの相当な努力をされています。ただ、現場からは、言い方はいろいろありますけれども、労多くしてなかなか大変だよね、手間がかかる割には経営は大変やねという声が出ています。具体的には、直接支払交付金の補助金単価が低い、対象が狭い、何とかならへんかという要望が出されています。  農家の御苦労に応えて、県や市町村は道の駅での販売企画など環境こだわり農産物の販路拡大に努力されていることは、葉梨副大臣も御承知かと思うんです。国としても、環境保全型農業直接支払交付金について、メニューの単価の引上げ、交付対象の拡大など、更に支援を充実させるべきだと思うんですが、いかがでしょうか。

葉梨副大臣

 穀田先生は本当によく制度、仕組みを御存じのとおりだと思いますけれども、この交付金は、一応、通常の慣行栽培でかかるのと、こういった、農薬とか化学肥料を半減する取組、地球環境、温暖化を抑える、さらには生物多様性に優しい取組について、客観的に、通常の営農作業よりもかかる資材費とかそれから労賃とか、これを上乗せしているというものなものですから、この予算の仕組み自体をこの単価という意味では変えなきゃいけなくなってしまって、なかなかこれは厳しいところがあるんですが。  交付対象については、令和二年度に見直しを行いまして、地域特認ということで、例えば滋賀県からも、緩効性肥料の利用及び長期中干し、こういったものも地域特認の取組ということで認めさせていただいて、これが大体五千八百ヘクタールぐらいに広がっていると。  また、さらにそういった形で交付対象も広げる取組をしておりますので、活用していただければと思いますし、また、販促の取組も、滋賀県等としっかり連携して支援をしていきたいなというふうに思っています。

穀田分科員

 この概要にもありますように、確かに一定改善されているんだけれども、現実は、何で一〇〇%いかへんかというと、今、四三%ぐらいで止まっているわけですよね。その実態や悩みもしっかり見ていただく必要があるということは言っておきたいと思うんです。  では、漁業について聞きます。  これも大変な状況でして、一九五五年当時、琵琶湖の漁獲量は一万六百十六トン、これが最大でありましたけれども、最近の資料では、二〇一七年には七百十三トン、最大時の約七%まで落ち込んでいます。  同じ期間に、各魚の種類の最大漁獲量と二〇一七年を比べますと、アユが一四%。フナが八%、ホンモロコが五%まで落ち込んでいます。特にセタシジミの落ち込みは深刻で、一九五七年に六千七十二トンだったものが、二〇一七年には五十七トン、〇・八七%まで落ち込んでいます。  セタシジミを始め、漁獲量の激減の原因をどうお考えでしょうか。

葉梨副大臣

 御案内のとおり、琵琶湖の漁獲量、非常に落ち込んでおりますし、また、セタシジミ、これですと、令和元年は四十一トン、平成元年が百九十トンだったものが四十一トンまで落ち込んでいるということで、原因としましては、南湖において、河川からの砂の流入の減少、砂の採取などによって砂地が減少している、砂地に泥が堆積するなど湖底環境が悪化している、そういったことが挙げられるかというふうに考えています。  この状況については、滋賀県による水産環境整備事業や、漁業者、地域住民による水産多面的機能発揮対策事業を活用して、砂地の造成、さらに湖底の耕うんなどの取組が行われておりまして、耕うんや砂地を造成したところではシジミの生息量が増加しているというデータもございます。  引き続き、関係自治体と連携しながら私どもも取り組んでいきたいというふうに思っています。

穀田分科員

 考え方、二つ言っておきたいと思うんですね。  地元では、琵琶湖の生態系を映す鏡と、セタシジミについて言われているんですよね。これが最盛期の〇・八七%しか捕れない。他方、島根県の宍道湖では、確かに漁獲量は減少傾向にありますけれども、ヤマトシジミは年間約四千トン捕れます。金額にして約二十億円余です。片や、面積では宍道湖の八倍以上ある琵琶湖のシジミの漁獲量は五十七トン。宍道湖の七十分の一でしかないんですね。  シジミ漁は、小さな漁船と小さな鋤簾があればできるということになっています。  宍道湖では、徹底した資源管理を行って、週三日間は休む、休漁、そして一回の操業は四時間以内、採捕量は百キロまでとしておって、それで年収は五百から六百万あるということになっていて、二百七十人の方がシジミ漁に携わり、青年部の活動も非常に活発というふうに聞いています。  今お話あったように、砂の流入を始め、いろんなことをやっています。年間二千万個の稚貝の放流も含めて、砂地造成などをやっているけれども、残念ながら成果は上がっていないというのが県の方々の思いです。私は、宍道湖のような厳格な資源管理が必要だと。  先ほどお述べになりませんでしたけれども、私は、漁業が随分衰退している原因の一つに、やはり中長期的な琵琶湖漁業の再生のために何が必要かと。それは、この間、総合開発の在り方への真摯な反省の上に立って、総合的な生態系を守り育てる対策が必要だと思います。  先ほど述べた研究者の話とも重なるんですけれども、琵琶湖の内湖の保全、それからヨシの再生、自然の力、自然浄化力を育てる、こういうこと自身も含めて必要だ、この二つがあると思うんですが、簡潔に。

葉梨副大臣

 私どもとしては、資源管理の方はやはりしっかりやっていかなきゃいけないなというふうに思っています。  それと、先ほども申し上げましたように、ヨシとかいろいろあるんですが、まず当面、何もしていない湖底ですと、一平米当たり二十三個体しかないのが、これが耕うんしたり砂を造成すると三百個体以上になっていますので、これをやはりしっかり進めていくのが先決かなというふうに思っております。

穀田分科員

 それはよく知っているんですけれどもね。本当に相当なお金を投入しているんだけれどもなかなか大変という現実は、知事もおっしゃっておられることはよく御存じかと思うんです。  次に、全層循環について聞きたい。  琵琶湖の全層循環というのは、表層の水と下層の水が混ざり合って、酸素が湖底にまで届く、いわゆる琵琶湖の深呼吸とも言われています。  この全層循環、すなわち琵琶湖の深呼吸ができなければ、酸素が欠乏し、漁業を始め琵琶湖の生態系に決定的な影響がある。  環境省が二〇一二年度に実施した近未来気象条件下のシミュレーションでは、この全層循環が止まるのは二〇三四年から三六年の三か年と予測しており、しかも、こうした事態が必ずしも起きるとは限らないと書いていました。  ところが、二〇一九年、二〇年と、ここ二年間、全層循環は起こらずに、関係者は、まだまだ先の話と思っていたが、猛暑の夏と暖冬が続き未完了となった、この状態が続くと琵琶湖の生態系が元に戻らなくなると、いたく心配されています。  今年、ようやく全層循環が三年ぶりに確認されたわけですけれども、事態は極めて深刻と言って過言ではありません。  大臣に聞きます。  私は、琵琶湖の全層循環が起こらないというアラームは、琵琶湖が人類に対して、早く手を打たねば手遅れになるぞ、生態系の危機だぞという警告を発しているんじゃないかと考えますが、大臣の認識を簡潔に伺いたい。

小泉国務大臣

 穀田先生の言ったそのメッセージ、この思いというのは、三日月知事からも私も伺っています。まさに私も、これは気候変動も含めた生態系からのメッセージである、そういった受け止めの下、これからしっかり琵琶湖の環境再生、環境の保全に取り組んでまいりたいと思います。  この全層循環については、先生から今御指摘ありましたが、平成三十年度の冬季そして令和元年度の冬季、二年連続で全層循環が起きなかった。今年度は、二月に全層循環が完了した。つまり、起きたことが確認をされて、三年連続での全層循環の未完了、全層循環が起きないことが三年連続ということは回避をされたというふうに思いますが、引き続き、気候変動はどんどん悪化をしていますから、この気候変動政策を全体として強化をしていくということも含めて、琵琶湖の再生、保全に取り組んでいきたいと思います。

穀田分科員

 同じ立場に立っていただくということだと思います。  ですから、滋賀県などが取り組んでいるCO2ゼロへの様々な取組をしっかり支援していただきたいと思います。  最後に、大戸川ダムについてお伺いします。  滋賀県甲賀市から大津市を経て瀬田川に流入する大戸川に計画されている大戸川ダムは、当初、計画当時は、治水、利水、発電を目的とした多目的ダムとして計画されましたが、途中で利水については撤退し、さらに、治水ダムとしても、二〇〇八年に滋賀、京都、大阪、三重の四府県知事が優先度が低いとして建設凍結を求め、二〇〇九年、淀川水系河川整備計画において、大戸川ダムの本体工事は当面実施しないとされたものであります。  ところが、建設再開への動きが始まっています。大戸川の目的について、国交省は下流の淀川水系の治水安全度の向上としていますが、その効果は全く限定的なものです。しかも、その本体工事は約千八十億円と莫大なものです。  そこで、数字を聞きますが、大戸川ダムが完成した場合、二百年に一度の大洪水が発生すると仮定して、淀川の基準点である枚方地点の水位は何センチ低下しますか。

岩井副大臣

 お答えいたします。  大戸川ダムの治水効果は、委員から御提示のありました条件である二百年に一度の洪水が発生した場合、淀川、宇治川など、延べ約七十キロ以上の区間で水位を引き下げ、その水位低下量は、御質問の枚方地点では約二十センチと推定をされております。  この結果、淀川、宇治川等におきましては、水位低下による越水の回避や、堤防への負担軽減による決壊リスクの軽減もありますし、あとは、何といっても、本河川の水位低下により排水機場の運転停止が回避されることによる、今大変問題になっている内水被害の軽減等様々な効果があることも念頭に置きながら、国交省としてはしっかりと対応していきたいと思っております。

穀田分科員

 水位にして十九センチ、約二十センチということだと思うんですね。  国交省は、大戸川ダムを造り水位を十九センチ引き下げないと、淀川の水位が計画高水位を十七センチオーバーし、今、破堤、氾濫するとしています。しかし、実際の堤防の高さは十七センチどころか、計画高水位よりも約四メートル高く、実際に破堤することは想定しにくい。  さらに、菅首相は、総裁選挙に立候補した際に、想定外の豪雨災害への洪水対策、その目玉政策として掲げたのが利水ダムの活用であります。菅さんは、洪水対策の切り札とした。その後、一級河川の全九十九水系で事前放流の協定が結ばれ、洪水への対処能力は従来の二倍となったと言われています。  大戸川ダム建設予定地の下流にも、関電の利水ダム、喜撰山ダムがあって、大戸川ダムの三分の一の容量を持っています。また、かつて国交省は、利水ダムだから治水には使えない、関電がうんと言わないなどと述べてきました。これが活用できることになった。協定では、喜撰山ダムだけでも事前放流による洪水調整可能容量は四百九十七万トンとされると。したがって、ますます大戸川ダムが必要とされる根拠はなくなると思うんです。  したがって、一つだけ、もう時間もありませんので聞きたいんですけれども、治水効果に関わって、大戸川ダムの貯水量は二千万トンと予定されていますが、これは琵琶湖の水位にすると何センチ分に相当するか。数字だけ言ってください。

岩井副大臣

 お答えいたします。  大戸川は琵琶湖に流入する河川ではないため、大戸川ダムの貯水量と琵琶湖の水位上昇量を比較することは少し、ちょっと問題があるのかなとは思うんですが、単純に大戸川ダムの治水容量約二千百九十万立方メートルを琵琶湖の面積約六百七十平方キロメートルで割ると、約三センチメートルとなります。  実際三センチなんですけれども、少ないというお話がある中で、実は、平成二十五年の洪水の際に、琵琶湖のピーク水位から三センチメートル下がるのに実は三十五時間もかかったということもありまして、国土交通省といたしましては、大戸川ダムの治水容量、この二千百九十万立方メートルをしっかりと認識しながら、また、琵琶湖周辺の浸水被害の軽減、これに貢献するということを念頭に置きながら、流域全体をしっかりと俯瞰した治水対策を行っていきたいと思っております。

穀田分科員

 流域全体は当然なんです。  問題は、大戸川ダムを造ることによって、今問題のところでいいますと、この下流での洪水を防ぐために、瀬田の洗堰、これを全閉操作や時限放流によってコントロールしているということなんですね。  だから、問題は、大戸川ダムを造ることによって、この瀬田洗堰の全閉時間を短くすることができるのか。先ほど、時間はありました。言い換えると、大戸川ダムの効果がストレートに琵琶湖の洪水調整に生かされるのかということなんですね。  この問題を研究しておられる滋賀県の土木交通部が、大戸川ダムが滋賀県内に与える効果の検証についてというレポートを発表しています。その中の、四、大戸川ダムの整備が瀬田川洗堰操作に与える影響の検証、何と言っているのか、結論部分だけお読みください。

齋藤主査

 国土交通省若林水資源部長。時間ですので、簡潔にお願いします。

若林政府参考人

 お答え申し上げます。  委員御指摘の資料は、大戸川ダムの治水効果や瀬田川洗堰操作に与える影響につきまして、滋賀県が取りまとめた報告書等を参考に、滋賀県職員が発表された論文と承知をしております。  滋賀県職員が発表された論文の瀬田川洗堰操作に与える検証にある検討の結果におきまして、大戸川ダム整備が瀬田川洗堰操作に与える影響の検証結果として、「今回検証した降雨の中で最大の規模であるH二十七豪雨を除き、全閉や制限放流の時間が短縮することが判明した。H二十七豪雨では、全閉の時間が一時間延長された。これは、大戸川ダムへの貯留によって、淀川でのピーク水位に遅れが生じ、天ケ瀬ダムの操作に影響を与え、結果として洗堰の全閉の時間延長につながったものである。」と記載されております。  なお、滋賀県が取りまとめた報告書では、御指摘の瀬田川洗堰操作に与える影響について、全閉時間が短縮されるとした上で、ただし、時間、超えるような一定規模以上の洪水では、全閉時間が長くなる場合もあったと付記されておるところであります。  また、先ほどの論文では、大戸川ダムの整備による……

齋藤主査

 手短にお願いします。

若林政府参考人

 琵琶湖水位への影響の検証結果として、「大戸川ダムの整備後において、その放流量や方法により、整備前に比べて水位上昇を低減もしくは同程度に抑えることが確認された。」と記載されております。

穀田分科員

 今ありましたように、水位上昇が低減若しくは同程度に抑えられるとして、しかも、全閉操作が逆に一時間延長するということになっているわけで、つまり、ダム整備による効果は微々たるものだということなんですよ。  私は、今日は数値しかやりませんでしたけれども、この基本的な数値の検証から、治水効果がさほど期待できないということだけは述べておきたいと思います。  私は、巨大なダムを築いて洪水を閉じ込め流下させるという明治以来の治水方針は、治水事業が進めば進むほど、それが破綻した場合に水害被害は甚大化するという大きな矛盾をはらんでいると思います。現在、想定を超える集中豪雨が多発する中で、その矛盾は一層顕在化していると思います。  私は、大戸川ダムまずありきではなくて、利水ダムである喜撰山ダムの事前放流を始め、これまで不十分であった堤防整備や河川掘削などの河川対策、緑のダムや水田活用などの治水対策など、流域全体で治水対策に取り組む流域治水の考え方を対策の根幹に据えるべきである。  まずダム建設ありきという方針の撤回を求めて、質問を終わります。  ありがとうございました。