衆院外務委員会・大臣所信質疑「日米貿易協定について」

2019年10月23日

松本委員長

次に、穀田恵二君。


穀田委員

日本共産党の穀田恵二です。

初めに、日米貿易協定の影響試算の問題について茂木大臣に伺いたいと思います。

私が要求して、先週十八日の夕方、内閣官房と農水省から影響試算の暫定版、暫定値が届けられました。A4判で、わずか二枚の資料でした。これです。

安倍内閣総理大臣は、十月九日の参議院本会議で、経済効果分析については既に作業に着手したところであり、できるだけ早く情報提供させていただくと答えました。

茂木大臣も、十月十一日の衆院予算委員会で、協定の審議に当たりましては、経済についての効果、これは用意をさせていただきたいと答えていましたが、この二枚の資料がそれですか。


茂木国務大臣

先日十八日に内閣官房が公表いたしました日米貿易協定の経済効果分析、そのお示しいただいたものがそれに当たると思っております。

きちんとGTAPモデルを回して、これはスタティックモデルでありますが、均衡する値でどういう結果になるか、こういったことについての暫定値が示されているものであり、そこの中で、我が国の実質GDP、これは日米貿易協定がない場合に比べて約〇・八%押し上げられるとの見込みでありまして、これを二〇一八年度GDP水準で換算をいたしますと、約四兆円に相当するということです。


穀田委員

おっしゃる点は、今お話ありました、途中からは中身について説明しているんですけれども、これやねんなということを聞いているわけですね。

そうしますと、私、外務委員会にこの間所属していまして、TPP11や日欧EPAの審議では、二〇一七年に内閣官房と農水省から公表された二百ページ近くの試算があります。これです。これはTPP11、そしてこれが日欧EPA。ですから、これらをもとに質疑が行われました。それが、今回の日米貿易協定ではわずか二枚。しかも、暫定値だ、暫定版だということしか公表しない。

茂木大臣、日米貿易協定の審議は、あすの二十四日から本会議で始まります。政府はこのわずか二枚の暫定試算の公表で済まそうというのかどうか、ここは最初にお聞きしておきたいと思うんです。


澁谷政府参考人

お答え申し上げます。

直接経済効果分析を担当している者でございますけれども、TPP12のときは、経済効果分析、初めて合意内容についてGTAPを回したということで、相当大部な説明資料を用意させていただきました。

TPP11と日・EUのときは、内閣官房の経済効果分析に関しては、そんなに多くの資料ではなかったと思います。要は、TPP12のときの説明書で方法論は全て書いてあるという趣旨でございます。

今回も同様でございまして、TPP12と全く同じ手法でGTAPを回したというのが内閣官房でございまして、暫定値と申し上げているのは、過去の分析のときは経済学の専門家の先生三名の方に検証をお願いしていたわけですけれども、まだその作業が整っていないからということでございまして、暫定値とは言っておりますけれども、結果はほぼこのとおりだというふうに考えております。


穀田委員

私は、これは政治家である茂木大臣に聞いたわけです。

これは審議の前提なわけですよね。大部であるか、大部でないか、それはいろいろな意見があるでしょう。しかし、どういう影響があるかということについては、それこそ、こっちの方でいきますと、合板から何から、それから農林水産物の生産額への影響についても事細かに全部出ていますよ。

それが今度の場合、誰が考えたかて、こういう二枚でおしまいになる、そして、御説明なさろうとしたけれども、どういうメカニズムでやろうとしているかというような話をしたとしても、どういう影響があるかというのはさっぱりわかりはしないというのが今日の問題だと思います。そこで、私は、そういう意味でいいますと、国会軽視も甚だしいと言わなければならないと思います。

十月十九日付の日本農業新聞はこのように語っています。「政府は今回、審議を急ぐため、過去のような」今お話ありました、「専門家の分析や農産品の品目ごとの分析などを欠いた「暫定版」を公表した。確定する頃には、協定は」「承認されている可能性すらある。」と批判しています。まさに私はそのとおりだと思うんです。

同時に、このことは何を意味するかということなんですね。総理は、また大臣も、ウイン・ウインな形だとか、日米双方に大きな好影響だとか、国民にとって利益だ、こう何回もその都度その都度言っています。しかし、そういうものが、では、国民にとって理解を求めるという姿勢が欠けていては、幾らそんなことを言ったって私はだめだと思うんです。

したがって、国民に理解を、この資料で国民が理解する、そういったものについて深く自分たちの問題として議論し深めるということにならないということだけは、誰が考えたかて確かだと思うんです。

そこで、私は、審議に当たって正式な試算を公表しないことがいかに重大かということについて少し述べたい。

農水省の暫定試算を見ると、日米貿易協定によって農産物の生産額が最大一千百億円減少するとあります。品目ごとの影響を見ると、牛肉、豚肉、乳製品の減少額だけで全体の八五%、九百三十七億円を占めます。

このうち最も大きな影響を受けるのが牛肉で、最大四百七十四億円減少するとあります。この牛肉について、二〇一七年のTPP11の試算では最大三百九十九億円減少するとされていたわけで、今回の試算と比べると、日米貿易協定によって牛肉は、TPP11を七十五億円上回る、すなわちTPPを超える減少額となるわけですが、農水省に聞きます。この数字は間違いありませんね。


浅川政府参考人

お答え申し上げます。

今回の農水省が発表した資料でございますけれども、牛肉の生産減少額は約二百三十七億円から四百七十四億円となってございます。


穀田委員

合うているということですわな、要するに、簡単に言うと。

要するに、四百七十四億円がいずれにしても今回の場合には減少するということだということですよね。そうおっしゃった。前の数字はもうちょっと小さ目に言うてはりましたけれども。

何か口を開けばTPPを超えるということにならないということを言っておられる。私は、TPPを超えなきゃいいかという問題はまた別だという意見なんですね。TPPそれ自身が大きな国内産業に対しての打撃を与えたということですから、何か、このことを超えなけりゃいいんだという立場をとっていません。しかし、あなた方が言うところのTPPを超えるということについて言えば、この減少額というのは明らかに超えているということだけは確かだ。

暫定試算によれば、TPPを超える影響を受けるのは牛肉だけではありません。日米貿易協定によって、TPP11では影響が見込まれなかった鳥肉でも最大三十二億円、鶏卵でも最大四十八億円の減少額となる。これについてもそのとおりですね、農水省。


浅川政府参考人

お答え申し上げます。

今回試算として出しました、鶏肉につきましては影響額が約十六億円から三十二億円、鶏卵につきましては二十四億円から四十六億円となっております。


穀田委員

あなた方が出した数字でこう言っているわけで、どうしてこう少な目に次々と言うのか、それがようわからぬ。いずれにしても、今まで、あなた方が仮にそういう数字を、多少違う数字を出そうが、前回の中にはなかったものだということだけは確かであって、そして、大きな減少額が見込まれるということは確かだと。

だから、私、鶏卵関係や鶏肉関係の方も、いろいろ聞きましたけれども、今後どうなるか、それは見きわめてみたい、そして、そういうものが更に下がる、関税の税率が下がるとなれば大きな問題になるだろうという話をしていらっしゃるということについては言っておきたいと思うんです。

したがって、私は、この審議に当たって今数字がいろいろ出ます、だけれども、暫定試算では、大体、日米貿易協定とTPP11と合わせると、生産額が最大二千億円減少とされているわけだけれども、その具体的な試算の根拠や、そして品目ごとの比較分析など、審議に当たって重要な資料が一切明らかにされていない、それだけは確かだというふうに思います。これだけしかないんだから。

私は改めて大臣にお聞きしたいんですけれども、総理は農家の不安にしっかり寄り添うと強調されました。茂木大臣は、わずか二枚のこの暫定試算で農家の不安が払拭されるとお思いでしょうか。


茂木国務大臣

先ほどからの農水省の答弁を聞いておりますと、多分、TPP11と比べてどうなるかという話でありまして、全体のTPP12と比べた場合はまた違った数字というのが出てくるわけであります。それは御案内のとおりだと思いますけれども、それと比べれば低くなるわけであります。

そこの中で、一つ一つ、今回の審議の中で、農家の皆さんにとっても更に懸念等が払拭できるように、丁寧に説明をしていきたいと思っております。


穀田委員

前の方から言うと、やはり、TPP11との関係でいけば、牛肉は多うなっているんですよ。こちらの説明どおりなんですよ。

問題は、今、今後とも説明していきたいということは、逆に言うと、今の段階では極めて不十分だと。まあ、不十分か、不十分だとは言っていないけれども、今後も説明が必要だということだけはお認めになったということでよろしゅうございますね。まあいいです。そういうことですよ。要するに、今後丁寧な説明が必要だということはおっしゃった。

そこで、私はなぜこんなことを言っているかというと、安倍総理が、日米貿易協定によって、TPP11と日欧EPAを合わせて世界経済の六割を占める自由経済圏が誕生される、こう何度も強調されているんですよね。しかも、今度の場合、この影響試算について言うならば、残念ながら、暫定試算には、影響試算も、日欧EPAについての試算も示されていない。結局のところ、日欧EPAを加味すると一体どれほどの生産減少額となるのか、明らかにするのが筋だと思うんですね。

私、そこで、外務委員長に言いたいと思うんですね。影響試算は日米貿易協定の審議の前提となるもので、この暫定試算では審議のしようがないじゃないかと。

当時、松本委員長も外務大臣も経験なさっていらっしゃいます。そういう意味では、これで審議ができるのかということは、本当に、率直に言って、変やなと誰かて思いますわな。

したがって、二〇一七年のTPP11の試算や日欧EPAの試算との比較分析とともに、正式な品目ごとの試算を国会に、なかんずく当委員会に、審議する当委員会に提出させるべきだと思うんですが、いかがお考えですか。答える立場にありませんか。


松本委員長

委員長としては、理事会で御協議をいただいた、合意を得た中で委員会の運営を進めてまいりたいと思います。


穀田委員

私は、そういう今述べた資料を本委員会に提出することを改めて要求します。


松本委員長

理事会にて御提起をいただいたものは、理事会で協議をさせていただきたいと思います。


穀田委員

一言言いますと、理事会で提起されたらじゃなくて、委員会で私は提起しているんですよ、出すべきだと。だから、それだったらそれを受けて、理事会で議論しますと言えばいいんですよ。理事会で、では、また改めて提起しなきゃできないというものじゃないということを言っておきます。そんな委員会運営はないと一言述べておきます。

次に、牛肉のセーフガードについて少し聞きます。

牛肉のセーフガード、緊急輸入制限措置ですね。これは、現在およそ六十万トンを占めているTPPの発動基準数量とは別に、アメリカのみを対象とした発動基準を新たに設け、二〇二〇年度の二十四・二万トンから三三年度には二十九・三万トンに拡大するとしています。

そこで、確認ですけれども、TPPで定めている現在のセーフガードの発動基準数量というのは、アメリカがTPP交渉から離脱する前に合意されたものであって、これには米国分も含まれている、間違いないか、確認です。


澁谷政府参考人

TPP12で合意をした際の牛肉のセーフガードの発動基準数量は、TPP国全体、すなわち、当時アメリカも入っておりましたので、アメリカ込みの数字でございます。TPP11協定がまとまった際は、まだアメリカがTPPに戻るということについて、参加国同士、そういう思いがあったということもありまして、それは一切修正をしていない、そういうことでございます。


穀田委員

今、二つありました。

TPPの発動基準数量が、現在もアメリカ分を含んだ水準のままだということなんですね。したがって、修正はしていない。それ自体が、私は極めて重大なことだということを述べておきたいと思うんです。

要するに、アメリカがTPPを離脱した後も、発動基準数量からアメリカ分が差し引かれないで、縮小もされずにあるということなわけであります。つまり、現時点で、TPP参加国にはセーフガードが実際には発動されにくい状態にあるということは、客観的な数字上の問題でもあります。

TPPの参加国からの輸入には、結果として、事実上セーフガードがきかない状態にあるということじゃないのか。なぜなら、今お話があったように、アメリカが離脱した後にも六十万トンを発動基準としていたということは、TPP参加国にしたら、当時四十五万トンぐらいがアメリカを除く分なわけですから、その程度から上限が高くなったことを意味する。したがって、セーフガードの発動の要件が緩くなっているということであり、先ほど述べたように、事実上セーフガードがきかない状態にあるということではないのか、確認したいと思います。


澁谷政府参考人

TPP国からの牛肉の輸入が我が国の牛肉の輸入のほぼ九九%近くを占めておりまして、アメリカが大体四割近くを占めているところでございます。そういう数字である、そういうことでございます。


穀田委員

数字を聞いているのと違うて、能弁でばあっと長い方が、今度は珍しく短いですな。

要するに、私が聞いたのは、事実上セーフガードがきかない状態にあるんじゃないのかと。四割を占めている、それは結果としてそういうことでしょう。

私が聞いているのは、その数字の範疇の四割を占めているかどうかなんてことを聞いているんじゃなくて、そういう実態にあるということは、そういう事実からすれば、セーフガードが発動しにくい、きかないという事態になっていることはお認めになりますよね。


澁谷政府参考人

まさにTPP協定というものを所管している者として、なかなか、これはきかないものだとかそういう発言は私としてはできないわけでございますけれども、ただ、TPP12のときに想定していた状況とは違っているというのは事実でございます。


穀田委員

できないというのは発言できないと。それは妙な話ですね。

十月三日付の日本農業新聞は、澁谷統括官が、二日に行われた公明党の対策本部の会合でこのように述べたということを記しています。TPP参加国からの輸入は、現時点では事実上、セーフガードがきかないと認めたと報じています。

与党には、では、そういう説明をしているということですな。


澁谷政府参考人

そのような御指摘があって、たしか私はそれを否定しなかったというふうに記憶しておりますけれども、今回も、穀田先生の話を私は否定しているわけではございません。


穀田委員

否定していないという、まあ、珍しく穏便にお答えになっているわけですけれども、そういうことだと認めたというのは事実上の、いや、私ね、何でそんなことを言っているかというと、それだけかいなと思ったら、こう言っては悪いんですけれども、元大臣政務官が、そういうTPPの担当の方がわざわざその記事を引用されてホームページに張りつけているぐらいやから、それほど、こういうときにはセーフガードがきかないと認めたということを公に発表されておられる方がいらっしゃる。本人はもごもご言っていて、否定していないという形でやんわり逃げる。それはあきまへんで。やっぱり、要するにそういうことなんだということはようわかりました。いや、ほんまに。

我々の論というのがそういう形で時々展開しますけれども、今回は、澁谷統括官がお認めになったという点では極めて大きいことだなと思っています。簡単に言えば、結局、アメリカのTPP離脱後も発動基準数値が見直されないで、現在もアメリカを含んだ基準のままだということだと。やっぱり、きかないということがあるということですわな。

問題は、では、そのような状態のもとで日米貿易協定が発効されれば一体どうなるのかという問題なんですよね。

アメリカを含んだそのままのTPP発動基準数量とアメリカ向けに新設された発動基準数値が併存することになり、TPPを超える影響が出るおそれがあるんじゃないかと推察されるんですが、いかがですか。


澁谷政府参考人

先生よく御存じだと思いますけれども、我が国の牛肉市場というのは、外国産牛肉と、競合する国産牛肉、これはかなりの内外価格差があるわけでございます。ほぼほぼすみ分けが成っておりまして、TPP11、日・EU発効後も、国産の牛肉の価格等に影響は出ていないという状況でございます。

また、二大輸入国、彼らにとっての輸出国であるオーストラリアとアメリカ、過去の例を見ますと、どちらかの輸出がふえるとどちらかの輸出がその分減る。つまり、お互いに競合し合っているという状況にあるわけでございます。

特に、二〇一八年度でありますけれども、外食産業等で輸入牛肉の需要が非常にふえたということで、現在は三八・五%の高関税がかかっているアメリカの牛肉の需要が非常にふえたという実態がございます。二〇一八年度のアメリカの輸入実績が二十五万五千トン、これは近年の中で最も高いシェアでありまして、TPP国とアメリカを合わせた輸入全体のアメリカのシェアが二〇一八年度四一%、これは近年で最も高い数値であります。

今回、通常、セーフガードというのは、直近の実績よりももうちょっと上の数字でセットするというのが通常のセーフガードの発動基準数量の決め方なんですけれども、アメリカの牛肉が現在三八・五%であるにもかかわらず非常に引きが高い、こういう状況の中で、アメリカの牛肉については、アメリカには大変申しわけない形になっているわけですけれども、実績よりも低い数字でスタートするということで、二〇一八年度の輸入数量を下回る二十四万二千トンから、しかも二〇二〇年度からスタート、そういうことであります。

先ほど申しましたとおり、二〇一八年度のアメリカのシェアは四一%ですので、アメリカの牛肉のセーフガード発動基準数量はTPP全体の発動基準数量の全て三九%台におさまっているということですので、合わせてもTPP12を上回るという事態にならない。

牛肉の市場の実態をよくわかっている方、私もいろいろお話を伺いましたが、アメリカが関税が下がるということに対してアメリカに厳しいセーフガードをかけるということが、結果として、TPP国全体も含めて、我が国の国産、国内の牛肉への影響を最小限に抑えられる、こういうふうに考えた次第でございます。


穀田委員

少し能弁になりましたけれども、私が言っていることと余りうまくかみ合って答えていないことは確かだと。国内産の問題ではなくて、併存するということはTPPを超えるということになるんじゃないのかということを言ったわけであります、私は。

いずれにしても、セーフガードの問題のあり方について、日本政府としては、ずっと文書で書いていますように、TPP参加国に協議を求めなくてはならぬということは確かですよね。そこはいいですよね。


澁谷政府参考人

いずれ日米協定が発効して、その後の輸入状況などを見ながら、適切な時期にTPP国とはよく相談をしていきたい。

その旨は、既にTPP委員会がニュージーランドで十月の初旬に開かれまして、各国にその旨の説明をしているところでございます。


穀田委員

いずれじゃなくて、相手方は随分早くからそういう話はしているわけですからね。私は、TPP参加国に協議を求めなければならないということ自体がこれまた極めて重要だと思います。

政府は輸入量が全体としてふえないよう協議すると言うけれども、先ほど指摘したように、TPP参加国にとって現在のセーフガードは事実上発動されにくい状態にある。それを現在より発動されやすくするという形での協議や見直しに各国が応じるとは到底思えません。

実際、八月二十七日付の日経新聞によれば、日本の輸入牛肉シェア一位のオーストラリア、マッケンジー農相は、取材に対し、「TPPの再交渉は考えていない」とおっしゃっています。

茂木大臣、先ほど、その後にはとありましたけれども、TPP参加国が見直し協議に応じる保証が一体どれほどあるとお考えですか。


茂木国務大臣

今、外務大臣として、日米貿易協定、この審議については答弁をさせていただきますが、TPPの問題は内閣官房西村大臣が担当されると思っております。


穀田委員

それはそれで確かですな。しかし、従来そのことをやってこられた方の見識をお伺いしたつもりでしたけれども、領域問題でお逃げになったということですな。

マッケンジー農相は、「TPPに参加するカナダやニュージーランドが牛肉の対日輸出を増やし、米国は貿易協定がなくても輸出を伸ばしている」ということで、日米合意にある意味では危機感を示したと言われています。このことを見ても、TPP参加国が見直し協議に応じる保証がないのが私は実態だと思っています。

それで、私、もう一つ、仮に、統括官からお話があったように、協議が行われたとしても当然一致しない場合があるわけですよね。そうしますと、その間、アメリカ分を含めたTPPのセーフガードは事実上発動されず、TPPで想定した以上の数量の牛肉が低関税で流入するおそれがある。もちろん、すみ分けとか競合とか、いろいろ言っていますけれども、客観的にはそういう問題をはらんでいるということだと思うんです。

しかも、重大なのは、茂木大臣、これだけはお伺いしたいんですけれども、日米貿易協定の交換公文では、セーフガードが発動された場合、日米両国が、「適用のある発動水準を一層高いものに調整するため、協議を開始する。」と明記しています。

茂木大臣、これは、事実上、セーフガードを無力化するものではないでしょうか。


茂木国務大臣

交換公文、サイドレターの話がありましたが、牛肉のセーフガード措置がとられた場合の協議、行うとされておりますが、協議の結果を何ら予断しているものではありませんので、いずれにしても、我が国として、今後そういった協議が行われる場合も国益に反するような合意をするつもりはございません。


穀田委員

そういう話をした場合、必ず協議という話をすると次に答えが出てくるのは、フレーズが決まっていまして、国益に反する合意はしない、こういうふうに言うわけですよ。だけれども、このことについて言うならば、今のセーフガードよりも一層高い形でセーフガードを決めるという交換公文それ自身が反しているんじゃないかというふうに私は思うわけですね。

だから、セーフガードが発動された場合というのは、国内の畜産農家に重大な損害を及ぼす数量の輸入がアメリカから行われるということであって、そんな事態になるにもかかわらず、交換公文では発動水準を一層高いものに調整する協議を行うというのは、論理的に言って、今の現実からいえば、更に言えば、セーフガードを事実上無力化する以外の何物でもない。したがって、日米貿易協定がTPPを超えることは明らかだと思います。

私は、審議に欠かせない資料も提出せずに、TPPを超える影響を受けるおそれがある日米貿易協定については承認すべきでない、このことをあらかじめ主張して、質問を終わります。