衆院外務委員会で「日米貿易協定」を質問

2019年11月13日

松本委員長

次に、穀田恵二君。


穀田委員

日本共産党の穀田恵二です。
初めに、日米貿易協定の影響試算について農水省に質問します。
私は、十月二十三日の本委員会で、農水省が貿易協定の審議の前提となる影響試算を、枚数にしてわずか一枚、これですね、それも暫定版しか公表していない問題を指摘し、二〇一七年公表のTPP11や日欧EPAの試算との比較分析とともに、農産物の品目ごとの正式な試算を、なかんずく本委員会に提出するよう強く求めました。その後、十月二十九日になって、農水省から品目別の参考資料、これですね、約七十枚の資料が新たに提出されました。
そこで、伊東農林水産副大臣に伺いたい。
貿易協定は十月二十四日の本会議で審議入りしたけれども、農水省はなぜ十月二十九日に追加提出した品目別の参考資料を審議が始まる前に公表しなかったのか、お答えいただきたいと思います。


伊東副大臣

穀田議員の御質問にお答えをいたします。
日米貿易協定による農林水産物の生産額への影響につきましては、今委員お話しのとおり、九月二十六日の日米貿易協定の最終合意を受け、できるだけ早く情報提供を行うという観点から、これまでの算出方法に直近の生産額や単価を当てはめ、これは機械的に算出したものでありますが、十月十八日に暫定版としてこの試算結果の概要を公表したところであります。
その後、お話にありましたように、十月二十三日、外務委員会の質疑におきまして穀田委員より品目ごとの試算を提出するよう御要望があったところであり、また、翌二十四日、農林水産委員会におきまして影響試算の詳細資料についての御要望があったということでございまして、それぞれの委員会の理事会等にお諮りした後に、十月二十九日に品目ごとの詳細な資料を農林水産委員会並びに外務委員会に提出させていただいたところであります。
経緯は以上であります。


穀田委員

経緯を聞いているんじゃなくて、本来、始まる前に何で公表せえへんねと言ったわけですよ。
十月二十九日に提出された参考資料、これを二つ見ますと、品目別に、考え方のシナリオ、イメージ図などが添付されています。算出方法については、相変わらず、今お話があったように、暫定版として機械的に算出したとなっています。生産額も、貿易協定によって最大一千百億円、TPP11と合わせると最大二千億円減少するという試算結果も、十月十八日に提出されたわずか一枚の暫定版と全く変わらないんです。
つまり、十月二十九日に提出された品目別の参考資料は、当初提出された一枚物の暫定版のもとの資料、原本に当たるのではないか。そうであるならば、貿易協定の審議が始まる前に十分に提出できたじゃないか。なぜそうしなかったのかと、みんなが疑問に思う。
はなから提出したらよいじゃないか、それは誰もが考える疑問だと思うんですね。その点、いかがですか。


浅川政府参考人

お答え申し上げます。
今回、十月十八日に影響試算ということで公表いたしましたけれども、この日にちについては、政府全体の影響試算の中でこの日にちが決まって、農水省もそれに合わせて公表したということでございます。
これまでの影響試算においても、品目別の試算の単価やデータを明らかにした参考資料というのを公表してまいりましたので、今回も準備が整い次第お示しするということを考えておりまして、それで、資料をということで、既にあったものを提出したということでございます。


穀田委員

あったものを提出したと、あったんですよ。
品目別の参考資料は、当初、外務委員会の理事、オブザーバーにしか配付されなかったんです。日米貿易協定の審議が行われる主要委員会であるこの外務委員の全員に配りもしなかった。事態を知った私が、せめて全員に配付すべきだと要求したら、先週の六日になって、ようやく各委員の事務所に配ったと言われています。
貿易協定について、国民の不安は農産物にどれだけ影響があるのかという、固唾をのんで見守っているというのに、積極的に議論に供するのが当たり前じゃないですか。それなのに、あれこれの理由をつけて、貿易協定の審議の前提となる資料を小出しする。野党の追及を受けて渋々提出するというのは、極めて許しがたい対応だと言わなければなりません。
農水省がいかに国会審議を軽視しているか、そうした姿勢が端的に示されていると指摘しておきたいと思います。
農水省はこの間、全国各地で行った貿易協定に関する説明会で、国内対策が定まっていないにもかかわらず、国内の農家の所得や生産量は一切減らない、食料自給率も変わらないと指摘してきました。
こうした農水省の説明について、例えば、日本農業新聞の十月二十四日付の論説は、「そもそも国内対策の検討が始まるのはこれからで、まだ決まっていない。にもかかわらず、なぜ日本の農家所得や生産量に影響なしと言い切れるのか。首をかしげたくなる農家も少なくないだろう。」と指摘しています。全くそのとおりだと思うんです。
せっかく先ほど浅川さんが立たれたので聞きます。農水省は、既に国内対策を講じた場合の品目ごとの影響を分析した資料を作成しているんじゃないですか。


浅川政府参考人

今回提出させていただいた資料については、国内対策が万全に講じられるということを前提に試算した資料となっております。


穀田委員

要するに、国内対策を講じた場合の分析した資料を作成しているんじゃないか、もう一度お答えください。


浅川政府参考人

提出させていただいた影響試算につきましては、国内対策が講じられるということを前提として試算したものでございます。


穀田委員

私は、資料提出の不十分さを指摘したことに対して、農水省が十一月五日に本委員会の理事会に提出した補足説明、これがあります、によりますと、暫定版で示された試算結果というのは既に国内対策が措置されることを見込んだもので、暫定版でなくなることで試算の数値が変化するものではないとありました。つまり、国会に提出した一連の資料は、国内対策を講じた場合の最終試算を示したものだと言うことができます。今もそういうことだとおっしゃっていました。
そうすると、十月二十九日付の品目別の参考資料、十月二十九日付には国内対策に関する具体的な記述が何らないということ、なぜなんですか。これは伊東さんにもお聞きしたいと思います。


伊東副大臣

資料には、これまで行ってきた算出方法に直近の生産額、単価を当てはめる暫定版として機械的に算出したと記載しているところでありますが、政策大綱、これは年末までに出るものでありますけれども、これに基づく国内対策の効果により国内生産量が維持されるというふうに私ども見込んでいるところであります。
また、今回の日米貿易協定でも、十月一日の政策大綱改訂に係る基本方針で、農林水産業の生産基盤を強化し、新市場の開拓等、万全の施策を講ずるとされているところでございまして、これを踏まえて、これまでの試算でお示ししたような万全の国内対策が今回も措置されることを見込んで使ったものであります。
また、暫定版という文言につきましては、現在、政策大綱の改定作業が進められているということから用いたものでありまして、今後の試算の数値が変化することを意味するものではありません。


穀田委員

後半の方は先ほど言ったんやからね。よう聞いておいてくれなあかんわね。そんな話していないんですよ。前半だけでいいんですよ。突然答弁書を渡されると、そういうふうになっちゃうんだけれどもね。
私は、今お話あったように、暫定試算が国内対策を見込んだ試算であり、しかも、万全のと来るわけですよね。それで、変わらないと。だとしたら、品目別の参考資料の中にある考え方のシナリオ、イメージ図には、二〇一七年公表のTPP11や日欧EPAの影響試算の資料と同じように、国内対策を講じた場合の品目ごとの影響に関する記述があってしかるべきだと思うんです。
これはTPP11のときの資料です。これが日欧EPAのときの資料です。これはいずれも、国内対策による影響緩和、さらに、イメージ図というところで、何を行っているかということで具体的に出ています。
だとしたら、この記述が、先ほどお話ししたこの二つの資料には一切ない、今。そういう形の記述が一切ないということはおかしな話なんですね。だから、国内対策に関する記述を省いたものを参考資料として作成、提出したということになるんですか、浅川さん。


浅川政府参考人

お答え申し上げます。
今、副大臣からもお答えさせていただいたとおり、現在、TPP大綱が改定中ということで、暫定版として今回お示ししたところでございます。
したがいまして、この政策大綱の改定が成り、対策が決まった段階で、それを書き込んで最終版ということでお示しするという考えでおります。


穀田委員

それだと、先ほど言ったように、数値は変わらないと言っているわけで、国内対策を見込んだ試算だと言うんだったら、国内対策を講じた場合の品目ごとの影響を分析したデータは当然あるんじゃないですか。


浅川政府参考人

お答え申し上げます。
提出しております試算値につきましては、万全の対策が講じられるということを前提とした試算でございます。それによって生産量が変わらないということを前提に置いて試算をしたものでございます。


穀田委員

生産量が変わらないというふうに言うんだったら、少なくともこういう形でデータがあるわけですよ。それを、データを出しなさいと。当たり前じゃないですか、委員長、そう思いませんか。
だから、何回も言うように、暫定試算が国内対策を見込んだもので、試算の数値は最終版でも変わらないと何回も言うわけですよ。だとしたら、品目ごとの国内対策を講じた場合の影響を分析した資料を過去のTPP11や日欧EPAの資料と同じように作成しているということになるじゃありませんか。
その大もとの資料、データを明らかにせず、国内対策に関する記述を欠いている、省いているものを国会に提出したのであれば大問題になるわけですね、これは。だから、貿易協定の審議に、根幹にかかわる重大問題だと思うんです。
そこで、委員長に私は提起したいと思うんですけれども、作成している影響試算に関する資料、データを包み隠さず本委員会に提出されることを強く求めます。


松本委員長

データの提出をということですが、農林水産省浅川大臣官房総括審議官。


浅川政府参考人

提出させていただいたデータの最後に、諸元ということで詳しいデータが全て入っております。


穀田委員

先ほど述べたように、入っていないから言っているんです。それは、あるんだったらそれを出していただきたい。それは委員長に要求し、理事会で協議を求めます。


松本委員長

後刻、理事会で協議をさせていただきます。


穀田委員

事ほどさように、まことにデータさえも出さないというような事態になっていて、あれこれ強弁して、違う中身についてもさっぱり同じだというようなことを平気で言っているという、これは議論の前提がないということを一つ示したと思います。
今度は茂木大臣に、貿易協定の審議の根幹にかかわる問題として、ただしたいと思います。
茂木大臣は、十月十一日の衆院予算委員会で、貿易協定の審議に当たっては、これまでの経済連携協定のときと同様に、必要かつ、わかりやすい説明書を用意させていただきたいと答えています。その説明書とは、外務省が提出、配付した十ページの冊子、日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定の説明書、このことですか。


茂木国務大臣

さようです。


穀田委員

これですね。この外務省の説明書の九ページ目を見ると、説明書の九ページですね、これを見ますと、協定に関連して作成された文書として、農産物の緊急輸入制限措置、いわゆるセーフガードですね、この運用に関する日米政府間の交換公文の説明が書かれています。これを見ると、牛肉でセーフガード措置がとられた場合、「発動水準を調整するため協議を開始する」と書かれています。しかし、この部分は本来、交換公文では、「発動水準を一層高いものに調整するため、協議を開始する。」となっているものであります。
なぜ説明書で「一層高いものに」という文言を削ったのか、これは茂木大臣の指示でございますか。


茂木国務大臣

指示ではございませんが、牛肉のセーフガード、発動をされた場合に、協議をする場合は、当然、今回、二〇一八年のアメリカからの日本への牛肉の輸出、これは今回のセーフガードより高い数字になっている。そういった中で、協議については、そういった形で協議を行われることになるだろうと。
ただ、協議の結果、合意するか、また、どんなセーフガードになるか、このことについては、予断を持って決めているものではございません。


穀田委員

前回、私、質問しましたけれども、高い水準になっているというのは、それはTPP11との関係を含めて、きちんとしたセーフガードの文言を調整しなかったからにすぎません。
そこで、交換公文は、今もお話ししたように、セーフガードが発動した場合に、単に協議の開始を約束しただけではありません。その発動水準を一層高いものに調整する、いわば発動水準を引き上げるための協議を開始することが約束されているわけであります。
したがって、「一層高いものに」というこの文言は、このセーフガードの運用に関する交換公文の内容を正確に把握をする上で必要不可欠な文言であり、核心部分なのであります。したがって、説明書で削るなどということは絶対にあってはならないことであります。
説明書を見ると、この重要な文言を削った箇所は牛肉の部分だけではありません。豚肉やホエー、オレンジのセーフガードについても、発動水準を調整するための協議を開始するとなっており、「一層高いものに」という文言が同じように削られている。
茂木大臣、これは余りにも意図的、作為的ではありませんか。


茂木国務大臣

決してそのような意図は持っておりません。
その上で、もう一度説明をさせていただきますと、日米貿易協定におきましては、米国の牛肉のセーフガードの二〇二〇年度の発動基準数量を、二〇一八年度の輸入実績であります二十五万五千トンを下回る二十四万二千トンとして、それ以降については、TPP11の発動基準と同じ比率で増加させることといたしました。
米国とTPP発効国を合わせた牛肉輸入におけます米国のシェアは、近年で最も高い二〇一八年で四一%であります。一方、今回の米国の牛肉セーフガード発動基準数量は、毎年TPP全体の発動基準数量の三九%台に抑えていることから、日米とTPP発効国を合わせてもTPP12を上回る、こういう事態にはならないと考えております。
なお、二〇二三年以降については、TPP11協定が修正されていれば、米国とTPP11国からの輸入を合計してTPPの発動基準に適用する方向で米国と協議をする旨を、米国との間で交換公文において確認をしております。
交換公文で、牛肉のセーフガード措置がとられた場合に協議を行うとされておりますが、この協議の結果、具体的な数字がどうなるか、また結論が出るか、それについても予断をするものではございませんで、我が国としては、国益に反するような合意を行うつもりはございません。
このことにつきましては、何度か御指摘をいただいた段階でも丁寧に国会において説明をしておりまして、決して、その部分を省いたりとか、いずれにしても、ある部分というか、合意した内容でありますから、それにつきまして、それを隠すということは全く行っておりません。


穀田委員

牛肉のセーフガードの問題について、今お話あったように、そのパーセンテージや高さの問題については、前回、私、質問しているんですよ。そこの中で、当時TPP11で合意した内容とそれから米国との内容は別個にやっているものだから、当然それを上回ってくるという話は、既に私、しているんですよ、前回。ですから、そのことを踏まえて言ってくれなあかん。
問題は、そういう話をすると、予断を持ってやっていないということと、それから国益を守る、この二つが大体キーワードで、いつもそういう答えをするんですよ。それはもう知っているんです、それは何回も同じことを聞いているわけで。
ただ、問題は、相手との交渉との関係で、交換公文で約束された内容と明らかにそれは違うと。「一層高いものに」という文言があるとないとでは違う、大きく変わってくる。そして、政府の側は、この文言は、今お話にあったように、大した話じゃないんだということに勝手に判断をして、結局のところ、説明書から省いて提出、配付するなどについては言語道断だと私は思うんです。
ですから、この文言自身が、大臣がおっしゃっているように、国益に反する重大な踏み出しなんだってことを提起したいと思うんです。
ですから、そんな重大な文言を意図的、作為的に削除した説明書を是として、これ以上質疑を続けることはできないと私は思います。


松本委員長

今のは質問、大臣に対する質問ですか。
質問を続行していただきたいと思います。


穀田委員

私、十月二十三日の質疑でも指摘しましたけれども、セーフガードが発動した場合というのは、国内の畜産農家に重大な損害を及ぼす数量の輸入が米国から行われる、また行われたということなわけですよね。
そんな事態になったにもかかわらず、交換公文では、「発動水準を一層高いものに調整する」、つまり、発動水準を引き上げるという協議を行うことがアメリカ側と約束されているわけですやんか。まさにセーフガードを、この間も言いましたけれども、更に事実上無力化させるという貿易協定の重要な論点の一つであります。そういう極めて重要な文言を削除した説明書を配付するなど、到底許されることではないというのが私の見解です。(茂木国務大臣「ちょっと」と呼ぶ)まだいてください、まだしゃべっているんですから、私は。
そして、外務省の説明書をめぐっては、私、思うんですけれども、かつて衆議院のTPP特別委員会で、当時の岸田外務大臣が、「説明書に関しましては、所管官庁として、外務省が責任を持たなければならないと思っています。」つまり、交換公文やそういった文書についての一つ一つについて責任を持つということを言っておられるわけですよね。単なる違いじゃないということを含めて、先ほど明らかにしました。
「よって、外務大臣である私が」とそこで言っているんですけれども、「よって、外務大臣である私が責任を持たなければならない問題であると認識をしています。」こう答えているんですね。
私は、したがって、この問題は、まさに文言の中心問題は、茂木大臣の責任が問われる問題だと思うんです。
私は、先ほど述べた農水省の資料といい、外務省の説明書といい、まさに国会に対して審議を軽視している、それから、いろいろな形で不安を持っておられる国民に対して無視している、これがその態度だと思うんです。したがって、外務省の説明問題は私は許すことはできないし、これ以上質疑はできないということを述べております。


茂木国務大臣

先ほど、この説明書、貿易協定についてはこの説明書をお配りをしてございます。
そして、交換公文を交わしてございます。交換公文に関しましては、日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定に関連して作成された文書ということで、この説明書と一緒にお配りをいたしております。
そして、この中にそれぞれの交換公文が出ておりまして、御指摘をいただきましたセーフガード措置につきましては、その一ページ目に、「アメリカ合衆国及び日本国は、農産品セーフガード措置がとられた場合には、当該農産品セーフガード措置に適用のある発動水準を一層高いものに調整するため、協議を開始する。」ということが明確に書いてございまして、この資料も一緒にお配りをしてございます。


穀田委員

何度も言うように、その内容とこの内容が違うじゃないかということを言っているわけで、そういう意味では、質問ができないということです。
以上です。


松本委員長

穀田君、質疑を続行してください。
必要な資料については、先ほど理事会への御要請もいただきましたので、協議をさせていただくことになっておりますので、穀田恵二君、審議を続行していただきたいと思います。(発言する者、退場する者あり)
速記をとめてください。
〔速記中止〕


 

松本委員長

速記を起こしてください。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時五十六分休憩
――――◇―――――
午後四時三十分開議


松本委員長

休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。
穀田君の残余の質疑を行いたいと思います。穀田恵二君。


穀田委員

穀田恵二です。
私は、本日の午前中の質疑で、茂木大臣が、日米貿易協定の審議に当たり、必要かつ、わかりやすい説明書を用意するとして国会に配付された外務省作成の説明書で重大な文言が削られていることを指摘しました。
もう一度言いますけれども、具体的には、説明書の九ページ目にある農産品のセーフガードの運用に関する交換公文の説明で、本来あるべき「一層高いものに」という文言が削られ、「発動水準を調整するため協議を開始する」とだけ書かれている事実を指摘しました。
交換公文は、日米両国は、セーフガードが発動された場合、単に協議の開始を約束しただけではありません。セーフガードが発動された場合、その発動水準を一層高いものに調整する、いわば発動水準を引き上げるための協議を開始することが約束されているのであります。
したがって、説明書から削られた、私からいえば削られた、そちらでいえば書いていない「一層高い」という文言は、このセーフガードの運用に関する交換公文の内容を正確に把握する上で必要不可欠な文言であり、私は核心部分だと思っています。
そこで、もう一度整理して言います。
最初に、説明書には、大臣が報告された、必要かつ、わかりやすいという説明文書にはそれが書いていないということは確かですよね。


茂木国務大臣

説明書の方には記載をしてございません。
私の説明が不十分だったのかもしれませんが、説明書は、日米貿易協定についての国会の御審議に資するために、同協定の作成の経緯や内容を説明したものでありますが、協定に関連して作成された交換公文についても、その要点を簡潔に説明し、一方、交換公文の詳細については、午前中も最後の答弁で申し上げましたが、詳細については参考資料の方に譲っております。
確かに、委員から御指摘のありましたセーフガードの発動基準の調整、これは重要な問題と意識をいたしております。そこで、当該交換公文につきましては、委員会での御審議に当たり、参考資料としてその全文をお配りをしております。


穀田委員

もう一度整理して言いますと、説明文書、説明書には書いていないことは確かだということは確認すると。
その上で、私がなぜこういうことを言っているかという問題なんですよ。
今大臣は、説明書と交換公文の両方渡したということもるる言われる、先ほどもそういう説明でした。
そこで、私が言っているのは、この「一層高いものに」という文言があるとないとでは、交換公文で約束された協議内容の理解が大きく変わってくるということを私は主張しているわけです。
それを政府の側で、今お話ありましたように、コンパクトとか要約とか、それから両方出しているからとかいうお話ありましたけれども、そういうことで説明書から省いて配付するというのは、私は、間違っているんじゃないか、言語道断だ、こう言っているわけですよ。私の立場は。
そこの上で、午前中の質疑でも指摘しましたけれども、セーフガードが発動した場合というのは、国内の畜産農家に重大な損害を及ぼす数量の輸入がアメリカ側から行われたということだと思うんです。
そんな事態になったにもかかわらず、つまり、大きな被害を受ける事態があったにもかかわらず、交換公文では「発動水準を一層高いものに調整する」、つまり発動水準を引き上げるということに文書上ではなっているじゃないか、そのことが、米国側と約束されている根本の中心問題じゃないかと。
そういう意味で、今大臣がおっしゃったように、重要な問題だと指摘がありました。その点が、私、改めて確認したいわけですよ。つまり、事実上セーフガードを無力化させるという貿易協定の重要な論点の一つだ、極めて重要な論点の中心ポイントだと思うんですね。
だから、そんな重大な文言を意図的に、まあ、大臣に言わせれば、両方出しているからとか、そういうのを要約したんだからとか言うんだけれども、やはり私としては、意図的、作為的に削除した説明を配付するなど許されないんじゃないかということを改めて思うんですが、いかがでありましょうか。


茂木国務大臣

先ほども御説明申し上げましたが、この貿易協定、そして、貿易協定を締結するに当たりまして、サイドレター、交換公文というのを結びます。これは一般的なやり方でありまして、そこで、今回、この貿易協定を結ぶに当たりまして、この貿易協定そのものの説明書、それから交換公文につきましては日米で交わされました文書の全文、これをお配りをして、国会での審議に資するような形をとらせていただいている。
先ほど申し上げましたが、セーフガードの発動基準の調整は重要な問題だと意識をしておりまして、日米貿易協定の交換公文におきましては、委員にも配付をさせていただいたこの交換公文全文の中で、「発動水準を一層高いものに調整する」、そのように書いてあるわけであります。「一層高いものに調整」と書かれているわけでありますが、この交換公文の内容は、協議の結果、これを予断するものではありません。
いずれにしても、我が国として、国益に反するような合意を行うつもりはございません。


穀田委員

大臣、私、この言葉に関して、枝葉末節をとっつかまえて言おうという気はないんです。
問題は、私の問題意識というのは、このセーフガードの中心問題というのは、やはり発動するという場合の基準なんですよね。それを、この話合いの交換公文で、一層高いものにするということは、簡単に言えば、緩和することになるじゃないかと。それをいわば核心として見ないというのではまずいんじゃないかということを指摘したかったわけですよね。
それで、先ほど大臣は、いわば重要な問題だということを言ったので、その意味では、私が極めて大事だと言ったことについては了解いただいたという理解をしていいということですね。


茂木国務大臣

それで結構でございます。同じ問題意識でございます。


穀田委員

わかりました。
私は何でこういうことを言ったかというと、最後にちょっとだけ言わせていただきたいんですけれども、この説明書というのは、やはり大臣がおっしゃったように、コンパクトだとか、両方出しているとか、全員に配っているとかで理解してもらえるというんじゃないんだということを言いたいわけです、私は。やはり中心、核心問題を説明書に書かなければならないということを言っている。
なぜそう言っているかというと、先ほど、午前中にも言いましたように、二〇一六年の十月十七日の、改めてちょっともう一遍見てきたんですけれども、衆議院TPP特別委員会で、当時の岸田外務大臣がこう言っているんですね。「説明書に関しましては、」と、説明書のことを言っているんですよ。だから、いわゆる説明じゃないんですよ。説明書に関しましては、所管官庁として、外務省が責任を持たなければならないと思っています、よって、外務大臣である私が責任を持たなければならない問題であるとの認識を示しています、と答えています。
したがって、この問題というのは、まさに茂木大臣の責任が問われる問題だというふうに私は思ったから質問したわけで、そういう点は御理解いただけましたか。


茂木国務大臣

重要であるということについては理解いたしました。
整理として、日米貿易協定、この本体はもちろん附属書も含めたものでありますが、この説明書をつくらせていただいて、サイドレターの場合は別途結んでおりますので、そのサイドレターについては参考資料として全文をお出しした、こういう形式でありまして、あらかじめそういったことを丁寧にこれから説明するように心がけたいと思います。


穀田委員

今後、そういうことについて、今お話ありましたように丁寧に説明。ただ、いつも、丁寧に説明するという言葉を聞くと総理大臣の言葉を思い出して、またああいうことを言うのかいなと思って、結局、丁寧な説明を聞いたことは一度もないので。いや、ほんまに。というので、大臣も笑ってはるかね。笑っていませんか、そこで。いや、私の言葉に対して笑っているので、総理の言葉に対して笑っているとは思いませんけれども。
だから、私は何回も言うんだけれども、説明書の問題は、国会の審議を軽視する政府の姿勢があらわれているんじゃないかということであって、貿易協定の審議の根幹にかかわる重大問題だということだけもう一度指摘し、しかも、なおかつ、このセーフガードの問題についての充実が極めて大事な問題だということを大臣が答弁なさったということを確認して、きょうは終わります。


松本委員長

これにて両件に対する質疑は終局いたしました。