米朝首脳会談について

2019年03月8日

若宮委員長

次に、穀田恵二君。


穀田委員

日本共産党の穀田恵二です。
先月末に行われた第二回米朝首脳会談について質問します。
最初に、改めて、今回の首脳会談の結果に対する受けとめを河野外務大臣にお聞きしたいと思います。


河野国務大臣

米朝で合意が成立しなかったことは残念と言わざるを得ませんが、事前の実務協議の段階で、なかなか進展は難しいということを日米で共有をしておりました。国際社会は、北朝鮮が大量破壊兵器あるいはミサイルのCVIDを目指すという、この決意でしっかりと団結をしておりますので、さらなる米朝プロセスを後押しをし、北朝鮮の非核化をしっかりと実現をしてまいりたいと思っております。
先ほども申し上げましたが、今回、ベトナムで会談が行われたということは、金正恩委員長に、共産党の一党支配、あるいはアメリカとベトナム戦争という戦争を戦ったという、このベトナムという国が、正しい決断をすれば経済をしっかりと発展させられるということを金正恩委員長の自分の目で見ていただこうということもあって、このベトナムという会場が選ばれたわけでございますが、そこについては、金正恩委員長がみずからハノイに出かけて、そうした状況を目でしっかりと見た、北朝鮮も経済発展のためには非核化が大事だということは認識をしてもらえたのではないかというふうに期待をしているところでございます。


穀田委員

アメリカ側は、今回の首脳会談の結果について、合意には至らなかったものの、いずれも建設的それから生産的だったと評価しています。
トランプ大統領は、会談後の記者会見で、非常に建設的な二日間だったと述べ、サンダース大統領報道官も、三月一日の声明で、米朝首脳は極めて生産的な会談を行ったと発表しています。ポンペオ国務長官も、昨年の首脳会談よりも前進したと強調しています。
このように、米側は、今回の首脳会談では米朝双方の主張の隔たりを埋めるまでには至らなかったものの、会談が成果のないものでは決してなかったと評価しています。
河野大臣も、その点ではそういうことの認識でよろしゅうございますね。


河野国務大臣

金正恩委員長とトランプ大統領の首脳会談が続いているということに関して言えば、非常に、成果というんでしょうか、会談が続いているということについてはいいことだと思いますし、前回と比べて、実務者協議がなかなか結論を見るには至らなかったとはいえ、かなり丁寧なプロセスを前回に比べて踏んだということは一定の評価があるというふうに思います。


穀田委員

今大臣からありましたように、内容的にも、そういう準備の過程やその経過についても前進があったということについては共通の認識だと思うんです。
今回の首脳会談の結果については、北朝鮮側も、三月一日付の朝鮮労働党の機関紙、労働新聞で、生産的な対話を継続することになったと伝えています。今大臣からもありましたように、私も続いているということが大事だと思うんですね。
私は、昨年の米朝会談が行われる前に、この外務委員会で、南北の話合いが行われ、米朝が話合いをするということが報じられた中にあってこの発言をして、対話が継続することが今後大事だ、いろいろ紆余曲折はあるけれども、話合いを続けていくということが大事だということを当時主張しましたが、その意味でも私は大事なことだったと思うんです。
したがって、米朝双方が今回の会談を建設的、生産的だったと高く評価し、双方とも、今お話あったように、交渉を継続させることを表明している、ここが重要ですし、今大臣のお話にもあったように、極めて重要な位置づけといいますか、そういう点は共有できると思うんです。ツイッターなんかを見ていますと、トランプ大統領は、お互いのどこを、何を求めているのかわかり合えたということも言っていますので、私は貴重だったと思うんです。
そこで、今回の首脳会談について、関係国はどんな反応を示しているのか、韓国、中国、ロシアの反応について、外務省からお答えをいただきたいと思います。


田村政府参考人

お答え申し上げます。
韓国は、二月二十八日に、大統領府報道官が、首脳会談で完全な合意に至らなかったことは残念に思う、米国と北朝鮮が今後もさまざまなレベルで活発な対話を継続することを期待すると発表しています。また、三月四日には、文在寅大統領が、結果としては非常に残念だが、非常に重要な成果を確認できた旨述べたと承知しております。
中国につきましては、二月二十八日に、外交部が、米朝双方が引き続き対話を維持することを強く希望すると述べたと承知しております。
また、ロシアにつきましては、二月二十八日に、外務省が、トランプ大統領と金正恩委員長の米朝対話を継続しようとする志向を肯定的に評価している旨発表していると承知しております。
以上でございます。


穀田委員

今回の首脳会談について、今お話ありましたけれども、文在寅大統領は、今月の四日、過去と違う点があるとしまして、米朝が合意に至らなかったにもかかわらず、両国が互いを非難しなかった点や、両首脳が相手への変わらない信頼を表明し、対話の継続を通じて妥結の意思を明確にしたことを評価しています。
中国の王毅外相は、先月の二十八日、北朝鮮の李吉聖外務次官と会談した際に、米朝双方が辛抱強く対話を継続して歩み寄り、目標に向かって努力することを望むと述べています。
ロシア大統領府のペスコフ報道官も、同じく二十八日、米朝双方が柔軟性や譲歩を示し、少しずつ合意にたどり着く必要があるとの考えを明らかにしています。
私、先ほど報告ありましたように、共通しているというのは、対話と協議の継続を期待しているということと、また、半島の非核化と平和体制の構築を関係国として一緒にやっていくという意味での見解が明らかにされているというのが重要だと思うんですね。
このように、六カ国協議の関係国が共通して指摘しているのは、今お話ししたように、粘り強い対話と交渉の継続ということだと思うんですが、外務省はその辺についてどうお考えですか。


河野国務大臣

北朝鮮とのあらゆる交渉が粘り強くやらなければいかぬというのは、もうこれまでの枠組み合意、六者協議その他から我々はよく学んでいることでございまして、当初、ポンペオ国務長官が北朝鮮といろいろと話合いを始めたころに、我々としては、これはもう粘り強くやるしかないんだ、北朝鮮というのは非常に交渉相手として手ごわい、だから、結果がすぐに出ないからといって落ち込む必要もないし、諦める必要もないというようなことを申し上げたことがございます。
やはり、きちんと対話を続けるということがこれは大事だというふうに思いますし、そのためにも、国際社会がこれまでのように一致団結しているということがやはり同じように大事だというふうに思っております。


穀田委員

その意味で、私も今お話ししましたように、六カ国協議の関係者がやはりそういう立場に立っているということについては、大事なことだと思っています。
何度も言いますけれども、やはり米朝というのは長年にわたって厳しく対立関係があったわけですよね。その意味では、非核化と平和体制の構築という事業を成功させるためには、長い、いろいろな経過がある話をまとめ上げるわけですから、それなりの時間がかかるということについては私は必要だと思っています。
そこで、当委員会への大臣の所信表明でもありましたように、米朝プロセスを後押しする立場を表明されているけれども、米朝両国が非核化と平和体制構築に向けたプロセスを前進させる上で何が重要だと認識されているか、外務大臣に基本の考え方だけお聞きしたいと思います。


河野国務大臣

二つあると思っておりまして、一つは、やはり国際社会がこれまでのようにきちんと一致して安保理決議を履行していくということ、それからもう一つは、米朝間でお互いに信頼関係をしっかりと醸成していくということなんだろうと思います。
特に、北朝鮮に核、ミサイルの放棄を求めているわけですから、その後の体制の安全の保証というのがしっかりと得られるという確信が北朝鮮側になければなかなかCVIDにはつながらないということから、米朝間の信頼醸成が大事でありますし、逆に、国際社会はそれを後押しをするということもしっかりやっていかなければいけない。
ですから、北朝鮮に対して安保理決議を通じて交渉へ出てくることを促すと同時に、北朝鮮に対して、アメリカの体制の保証を国際社会である面担保するというようなことができるんだと北朝鮮に確信を持ってもらうということが大事なんだろうと思います。


穀田委員

とても大臣のは大事な発言だと思うんですね。
もちろん当たり前のことですけれども、やはり安保理決議に基づいて国際社会が一致して行う、しかも、そのことによって、全体が、国際社会が担保しているんだよということを相手にもわからせるという意味でも非常に大事かと思うんです。
同時に、今ありましたように、二つ目の、信頼関係の醸成という意味では、長らく対立関係にあった両国としては大変大事なことだと思うんです。
今回の首脳会談では、何が大事かということを浮き彫りにする事例がありました。北朝鮮の李容浩外務大臣が三月一日未明に行った記者会見によれば、北朝鮮側は、今回の首脳会談で、寧辺のプルトニウムとウランを含む全ての核物質の生産施設を、米国の専門家の立会いのもとで、両国の技術者が共同作業で永久的に完全に廃棄すると提案しています。これについて、李外相は、朝米両国間の現在の信頼基準で見るとき、現段階で我々ができる最も大きい非核化措置だと説明したそうですけれども、事務方の方に事実関係について確認したいと思います。


田村政府参考人

お答え申し上げます。
委員御指摘のとおり、三月一日未明に、北朝鮮の李容浩外相はベトナム・ハノイで記者会見を行いました。
その際、李容浩北朝鮮外相は、朝米当局の首脳は今回すばらしい忍耐力と自制力を持って二日間にわたり真摯に会談を行ったと述べた上で、我々は、第一回朝米首脳会談においてなし遂げた信頼醸成と段階的な解決という原則に基づき現実的な提案を行った、これは、朝米両国間の現在の信頼水準に鑑みると、現段階において我々が踏み出すことのできる最も大きな歩幅の非核化措置であると述べました。
また、委員御指摘のとおり、寧辺地区のプルトニウムとウランを含めて全ての核物質の生産施設を、米国の専門家による立会いのもとで、共同作業により恒久的に完全に廃棄するという提案を行ったということも述べております。さらに、李外相は、今後、米国側が交渉を再び提起した場合にも、我々の方策に変わりはないだろうということも述べております。


穀田委員

報告があって、李容浩外相の記者会見の内容はそういうことだと。
ここで着目すべきは、北朝鮮側が、寧辺の核施設廃棄の提案について、これが現段階の米朝両国間の信頼水準で可能な最大非核措置と主張したことだと思うんですね。現段階の米朝両国間の信頼水準というのは、すなわち、これが最大の提案だという態度を示したということだと思うんです。
この北朝鮮側の対応からも、米朝両国が非核化と平和体制の構築を達成するためには、互いに相互不信を解消し、先ほども外務大臣もお話あったように、一層の信頼醸成を図りながらプロセスを前に進めていく、そのことの重要性を示しているんじゃないかと思うんですが、大臣の見解をお伺いしたいと思います。


河野国務大臣

国際社会が求めている大量破壊兵器、ミサイルのCVIDということから考えると、この寧辺の施設というのはその一歩でしかないわけでありまして、北朝鮮がもし経済制裁の解除を求めるならば、しっかりと非核化を実現をしてもらわなければならないわけであります。
次回の交渉に至る道筋で、北朝鮮側がしっかりと核、ミサイルのCVIDに向けた大きな歩幅で踏み出してくれることをしっかり期待をしたいと思います。


穀田委員

北朝鮮の外務大臣の歩幅というのもありまして、今引用されましたけれども、そういう意味で、CVIDの問題の解決というのは、当然、凍結、無能力化、廃棄、検証などの段階が必要で、一歩ずつ、一段階ずつ進んでいくアプローチが現状況では非常に唯一の進め方だという点では論をまたないと思うんです。
そこで、相互の信頼関係の醸成というのは非常にこの問題の解決に向けて大事な一歩なんだろうと、先ほどありましたし、昨年の参議院の外交委員会で外務大臣はそのことを一貫して述べています。ですから、河野外務大臣の一貫した立場は、その意味では、相互の信頼関係の醸成というのは極めて重要だということをずっと言っておられる、その辺は私は共有できると思っています。
北朝鮮側の寧辺の核施設廃棄の提案に対し、トランプ大統領は記者会見で次のように述べています。ポンペオ国務長官と十分に協議した上で、寧辺の施設の規模は非常に大きいが十分ではなく、我々はそれ以上を要望したと述べて、今お話があったように、双方の主張に隔たりがあったことが明らかになっています。
こうした米朝双方の主張の隔たりを埋めていくためには、相互不信を解消し、信頼醸成を図る一層の努力が双方ともに私は求められると思うんです。
それで、米朝両国をめぐっては、この間、北朝鮮が核・ミサイル実験の中止を表明し、核実験場を破壊するという行動をとりました。それに対して、米国は米韓合同軍事演習を中止するという行動を決定しました。
そうした一つ一つの積み重ねによって、双方が相互不信を解消し、信頼醸成を図り、プロセスを前に進めていく、そうした努力の継続が重要だと私は考えているということを述べておきたいと思います。
そこで、最後に、拉致問題についても一言お聞きしておきたいと思います。
安倍総理は、今回の首脳会談に関連して、拉致問題について、我が国として、拉致問題を解決するために何が最も効果的かという観点から今後の対応を真剣に検討していくと、去る三月五日の参議院予算委員会で答えています。
河野大臣は、日朝首脳会談の実現を含め、対話による問題解決を図る上で何が重要だと考えているか、その辺のポイントをお示しいただければと思います。


河野国務大臣

核、ミサイルの問題が主に米朝プロセスで行われているのに比べると、この拉致問題というのは日朝間の問題でございますから、日朝で最終的には解決をしなければならないという問題でございます。
今の時点でトランプ大統領が米朝の会談の中で拉致問題を再三にわたり提起をしてくださっているということは、逆に言うと、アメリカを始め国際社会がこの拉致問題に関して日本をバックアップしているということを明確に示してくれている、そういう意味で、非常にありがたいことだと思っております。
最終的にこの拉致問題を解決をするために、いずれ首脳会談ということもこれは考える必要があると思いますが、そこに至る道筋というのはまだまだいろいろあるんだろうというふうに思っております。
日本側として、日朝平壌宣言にうたっているとおり、核、ミサイル、拉致問題を解決し、不幸な過去を清算して国交正常化をし、そして国交を正常化した後には経済支援をするという用意がある。この日朝平壌宣言でうたったこと、ここから日本政府の立場に変わりはないわけでございますから、それを北朝鮮側にしっかりと認識をしていただいて、核、ミサイルの交渉と並行して、この拉致問題の解決に向けた糸口をしっかりとつかんでいきたいというふうに思っております。


穀田委員

今大臣からありましたが、私も、日朝首脳会談の実現を含め、対話による問題解決を図る上で最良の指針が二〇〇二年の日朝平壌宣言だと思います。
日朝平壌宣言の考え方というのは、核、ミサイル、拉致、過去の清算など、両国間の諸懸案を包括的に解決して国交正常化に進もうというものです。
そこで、包括的な解決とは何か。それは、交渉に当たって、諸案件に優先順位をつけないということだと思います。日本が拉致問題は最優先だと言い、北朝鮮は過去の清算が最優先だと言い、互いに優先順位をつけて、それを相手に認めさせようとしたら、交渉のテーブルに着けない。どれも大事な問題ですが、優先順位をつけないで、全てをテーブルの上にのせて、ワンパッケージで解決する、この考え方をまとめたのが日朝平壌宣言であります。ここには外交の英知が働いていると思います。
こうした立場で取り組んでこそ、拉致問題の解決の道も開かれ得ると思いますが、そういう認識で大臣も臨まれているということでよろしゅうございますね。


河野国務大臣

もちろん、核とミサイルの問題は、現実的には今、米朝プロセスの中で取り上げられているわけでございますから、日本が全面的に北朝鮮と交渉をする、話し合うというときには、拉致問題と過去の清算というものが議題になるわけでございまして、しかし、それと核、ミサイルの問題の解決というものが足並みをそろえて行われていくということが大切なんだろうというふうに思っております。


穀田委員

日朝平壌宣言には、もう一つ大事な観点が書かれてあります。
それは、宣言の第四項に明記されている、北東アジア地域の平和と安定のために互いに協力していくということであります。両国間の諸懸案を解決するとともに、更に広く、北東アジア地域の平和と安定のために協力しようという合意であります。
日本政府として、今後、外交交渉に乗り出す際に、北東アジアの平和体制をどうやって構築していくのかということについて、主体的な外交ビジョンを持って臨む必要があります。この点でも日朝平壌宣言を指針にしていくことが大切ではないかと私は考えているんですが、その辺の考えをお示しいただければと思います。


河野国務大臣

北朝鮮の核実験、ミサイルの実験といったものが北東アジアの安全保障に大きな脅威となっていたのが現実でございます。実験は行われなくなりましたが、核とミサイルの放棄というのがやはり北東アジアの平和と安定に大きく寄与するのは間違いのないことでございますので、ここは、日朝、あるいは周辺国を含めた信頼醸成をしっかりとやりながら、この問題をしっかり解決に導き、北東アジアでの平和と安定をつくり出すということにつなげてまいりたいというふうに思っております。


穀田委員

私ども日本共産党も、北東アジア平和構想ということで、北東アジアにおける平和が今どういう形で進むべきかということについての方向性も出しております。
そこで、今、北東アジアの地域の敵対関係の解消ということになりますと、米朝間には、朝鮮戦争以来の戦争状態が法的にはいまだ続いている。戦争状態に終止符を打ち、平和協定に進むという課題があります。南北間でも、朝鮮戦争以来の戦争状態から、いかに平和、繁栄の半島に転換するかという問題があります。
この地域には解消すべき敵対関係が二重にあるということでもあります。その点でのお考えを示していただきたいと思います。


河野国務大臣

朝鮮戦争の状況が法的にはまだ続いているという中で、これをいかに終わらせるかというのは先々考えていかなければいけないことだろうと思います。しっかりと米朝プロセスを後押しをする中で、核、ミサイルのCVIDをなし遂げ、両国の、米朝間の信頼醸成のもとにこのプロセスが前に進めば、最終的に平和条約の締結というところに恐らく持っていけるだろうというふうに期待をしているところでございます。


穀田委員

その意味では、私、日本と北朝鮮はどうかという問題だと思うんですね。
日本は、朝鮮戦争の際に、米軍の出撃、兵たん基地になりましたが、直接、朝鮮戦争に参加したわけではありません。日朝は戦争状態にあるとは言えませんが、しかし、日本は、過去に朝鮮に対する植民地支配を行った、その清算ができていません。日本として、戦後処理が進んでいない唯一の国が北朝鮮だということであります。
日朝は、やはり対立状態が続いており、それを解消するという課題があります。この地域の敵対的対立関係を全て清算し、友好協力の関係を築こうとすれば、南北、米朝とともに日朝の国交正常化は不可欠であります。それなしにはこの地域の敵対的、対立的関係の終結になりません。そうした歴史的視野を持って日本政府は取り組む必要がある、そのことについて強調して、私の質問を終わります。