パレスチナの国家承認は世界的な流れだ

2015年04月17日

土屋委員長

次に、穀田恵二君。


穀田委員

きょうは、パレスチナの国家承認問題について質問します。
私ども日本共産党は、中東和平の問題で次のような基本的立場を明確にしてまいりました。イスラエルが占領地から撤退すること、パレスチナ人に独立国家樹立を含めた完全な民族自決権を保障すること、パレスチナ、イスラエルが相互の生存権を承認すること。
実はこの立場は、パレスチナ側が、当時はPLOでしたけれども、イスラエルの存在を認めない、イスラエル抹殺論に立っていた一九七〇年代から維持されてきたものであります。その点で、パレスチナの国家承認は、日本共産党としての数十年来の主張であるということであります。
そこで、世界の大勢がパレスチナ国家承認に向かいつつある中で日本がおくれているけれども、今からでも私は承認すべきものだと考えています。きょうは、順を追って一つ一つただしていきたいと思います。
まず、中東和平の交渉が行き詰まっている現状と要因について日本政府はどのように見ているのか、お述べいただきたいと思います。
〔委員長退席、三ッ矢委員長代理着席〕


岸田国務大臣

まず、中東和平につきましては、二〇一三年七月末ですが、ケリー米国国務長官の仲介によりまして、三年ぶりにイスラエル及びパレスチナ自治政府との直接交渉が再開されました。しかしながら、昨年四月、交渉が中断いたしました。それ以来、昨年のガザの紛争等を経て、交渉再開の見通しは立っていない、こうした現状にあると認識をしています。
我が国としては、独立したパレスチナ国家とイスラエルが平和かつ安全に共存する二国家解決を支持しており、交渉が中断していることについては憂慮しております。
我が国としては、引き続き二国家解決の実現に向けて、関係者との政治対話、当事者間の信頼醸成、あるいはパレスチナ人への経済的支援等を通じて積極的に貢献をしていきたいと考えております。
ぜひ、こうした対話が進むことを目指して、我が国としても貢献を続ける所存であります。


 

穀田委員

和平交渉進展にとって最大の障害となってきたのは、イスラエルによるパレスチナ占領地への入植地建設の拡大であります。アメリカや日本も含め入植地拡大を批判しているけれども、イスラエルのネタニヤフ政権は、拡大政策をさらに進展する、推進するといいますか、そういう構えを示しているわけです。そこは微妙な点はあるんですけれどもね。
そこで、イスラエルのこの間の動向について聞きたいと思うんです。
ネタニヤフ首相は、総選挙期間中に行った地元のメディアのインタビューで、首相続投が決まった場合、パレスチナの国家樹立を認めず、占領地の東エルサレムなどへの入植活動も継続する考えを明らかにしています。
その一方、同首相は、その後のアメリカのテレビのインタビューで、私は一国家のみの解決策を欲していない、持続可能で平和的な二国家での解決策を望んでいると述べ、二国家共存による和平を否定した前言を事実上修正する構えを見せたとされていますけれども、外務省、その間の事実関係を簡潔にお願いします。


上村政府参考人

お答え申し上げます。
まさに委員御指摘のとおりでございます。本年三月十七日にイスラエルの総選挙が行われました。その前に、ネタニヤフ首相が、まさに今御指摘のような発言、すなわち、自分が首相に再選された場合にはパレスチナ国家が樹立されることはないという趣旨の発言をしたということが、現地紙のハーレツにも大きく報じられております。
他方、総選挙後でございますけれども、これも御指摘のとおり、これは三月十九日でございますでしょうか、アメリカのNBCのテレビのインタビューにおきまして、これは選挙の投票後でございますが、同じくネタニヤフ首相が、逆の発言、すなわち、パレスチナ国家樹立への支持を撤回したことはない、ネタニヤフ首相の二〇〇九年六月のバル・イラン大学での演説での言質を、それは撤回したことはない、持続可能で平和的な二国家解決を望んでいるんだというふうに述べたという報道がございます。
まさに御指摘のとおりでございます。


穀田委員

そこで、そういうパレスチナ国家樹立を拒否する考えを示したネタニヤフ首相の発言に対して、ホワイトハウスのアーネスト大統領報道官は、先ほど局長からお話があった三月十九日の日なんですが、その定例会見で、オバマ大統領がネタニヤフ首相との電話会談で、イスラエルとパレスチナの二つの国家共存が我々にとってこの地域の緊張を静める方法であると強調したと伝えられているけれども、具体的にどのような言及があったとホワイトハウスは発表したのか。もう少し短く。


上村政府参考人

今まさに御指摘のとおりでございます。アメリカの国務省の報道官の発表はなかなか歯切れが悪うございます、その点は。
例えば、方針の違いが、我々にとってネタニヤフ首相がおっしゃったことはアメリカの方針とは違うということを、そういう評価をさせられたというような発言をしているというのが事実関係でございます。


穀田委員

そこは極めて大事でして、いろいろ解釈の、まあ文章はいろいろあるんですけれども、違いという点を出したのは明確だと思うんですね。
定例会見で、今述べた報道官は、パレスチナの国家樹立を拒否した発言を事実上修正したことを受け入れず、このような例において発する言葉は重要だ、一旦しゃべったことは極めて重要だということを指摘して、首相も発言の重要性については認識しているはずだと。
先ほど方針の違いとありましたけれども、異例の厳しさでアメリカがイスラエルの対処方針を見直す意向を示したと評されているけれども、岸田大臣はその問題をどう見ておられますか。


岸田国務大臣

先ほどの国務省報道官の発言ですが、まず、我が国として、米国と他国との関係について何かコメントするという立場にはありませんので、それは控えたいと思います。
御指摘の国務省報道官の発言ですが、大変歯切れが悪いという説明を、今、上村局長からさせていただきましたが、この国務省報道官は、イスラエルでどのような政府が誕生しようとも、イスラエルと軍事、インテリジェンス、安全保障の面で緊密な協力を継続していく、こういった旨をまず述べつつ、先ほどありましたように、ネタニヤフ首相の発言により、中東和平交渉を発展させるためのアプローチの評価をさせられた、こういった発言をしているとのことであります。これは、こういった発言があったということを承知しているということであります。
いずれにしましても、我が国としましては、先ほど申し上げましたように、二国家解決の実現に向けて、直接交渉が再開されるよう後押ししていくべきだと考えております。


穀田委員

ただ、控えたいというのはわかるんですけれども、メディアは、これをめぐって、やはり報道しているんですよね。イスラエルに自制を要求するということなんかが一つのポイントでして、読売新聞は、イスラエルに自制を要求、米大統領は擁護政策見直し示唆ということを述べていますし、さらに日経新聞も、パレスチナを認めないということを受けて、アメリカはイスラエルを牽制しているということで、オバマ氏は見直しを示唆ということまで報道されているくらいなんですね。
だから、確かに局長がおっしゃっているように、もう一つはっきり、煮え切らないみたいな言い方をしていますけれども、しかし、違いを出しているということは、みんな認めているんですよ。そこがポイントだと思うんですね。
ネタニヤフ首相の発言には、国連内でも、この発言に対して反発が広がっているとされています。こうした中で、フランスのファビウス外相は、三月二十七日、国連本部で記者団に対して、中東和平交渉を促進するため、国連安保理で決議案採択の協議を数週間以内に始める意向を示したと言われています。
パレスチナの国家樹立による二国家共存を目指す決議案が念頭にあると見られているけれども、外務省、その辺はどのような内容として掌握していますか。


上村政府参考人

お答え申し上げます。
まず、報道に出た件でございますが、今先生御指摘のことに加えまして、ファビウス・フランスの外務大臣は、さまざまな場で同じような趣旨の発言をされておられます。
例えば、フランス24という、フランスの番組の中でも、明らかに、さまざまなパートナーと連絡をしながら、中東和平に関する安保理決議案の採択を目指して取り組むというようなこともおっしゃっておられます。
我々外務省といたしましても、フランスの外務当局とは、日々、我々局長、あるいは出先の大使館レベルで意見交換をしております。フランスの外務省も、新しい安保理決議に向けて、さまざまな可能性について今検討しているというふうに我々は承知しております。
以上です。


穀田委員

フランスの動向は、非常に私は興味深いといいますか、大事なことだと。なぜかといいますと、同外相は、フランスはこれまで、交渉の指針を定義したり、交渉を促進したりする決議案には賛成してきたとしましたけれども、今後、関係国との協議を踏まえ、決議案の提案に参加すると述べたと言われています。
国連安保理では、昨年末、イスラエルとパレスチナの中東和平に関する決議案の採決が行われました。和平交渉の一年以内の合意、イスラエルには二〇一七年末までの占領地からの撤退を求める決議案は、アメリカなどの反対で否決されたわけだけれども、今回のファビウス外相による決議案の提案発言に対して、アメリカは反対していないとされていて、アメリカの対応が変わる可能性も伝えられていますけれども、その辺の岸田大臣の意見をお聞かせいただきたいと思います。
〔三ッ矢委員長代理退席、委員長着席〕


岸田国務大臣

先ほど申し上げましたように、米国政府の対応について今コメントするのは控えなければなりませんが、オバマ政権関係者が、主権があるパレスチナ国家を求める国連安保理決議を支持する可能性がある、こういった旨述べたという報道があることは承知しております。
そして、他方、米国務省副報道官代行は、安保理における米国の行動を予断することはない、こうした発言をされているということも承知しております。
我が国としましては、米国を初めとする国際社会が緊密に連携しながら、二国家解決の実現に向けて、直接交渉が早期に再開されるよう後押ししていくべきであると考えており、こういった観点から、安保理でのこうした動きは注視していきたいと考えます。


穀田委員

今、後押しする上でということを述べられたことについては、確認しておきたいと思っています。
次に、では、国連がこの間どんなふうな形で議論をしてきたのかという問題について、少し大臣と議論をしたいと思うんですね。
国連におけるパレスチナ問題は、当時、国連でパレスチナを代表していたのはPLOで、当初オブザーバー組織だったけれども、オスロ合意に基づいてパレスチナ自治政府がつくられまして、そのもとで、オブザーバー組織を国家に格上げする動きが始まりました。
PLOは、二〇一一年の国連総会にパレスチナ国家としての国連加盟を申請し、交渉と議論の末に、翌二〇一二年十一月二十九日に、国連総会でパレスチナをオブザーバー国家として承認する決議が採択されました。この決議は、日本を含む賛成百三十八、反対九、棄権四十一で採択されました。
この際の日本政府は、この決議に賛成しております。この態度の根拠と、米国とのすり合わせの問題の経緯について、お述べいただきたいと思います。


岸田国務大臣

先ほども申し上げましたように、我が国は、従来から、イスラエルと将来の独立したパレスチナ国家が平和かつ安全に共存する二国家解決を支持してきました。こういった観点から、御指摘の国連総会決議に賛成票を投じました。
そして、本件を含め中東和平問題に関しては、我が国はこれまでも緊密に米国と協議をしております。今後とも、米国を含めた関係国と連携し、和平実現に向けて、イスラエルとパレスチナとの間の交渉をしっかり後押ししていきたいと考えております。


穀田委員

この国連決議は、国際社会がパレスチナ人民の民族自決権を支持し、パレスチナの独立とイスラエルとの平和共存を強く求めることを示したわけであります。
こうしたもとで、パレスチナを国家として承認する国の数もふえており、昨年十月にはスウェーデンが正式承認し、EUの主要国としては初の承認として注目されました。パレスチナの国連代表部のウエブサイトによると、スウェーデンの承認によって承認国は百三十五カ国に達しています。これは国連加盟国の約七割に当たります。
スウェーデンが承認した際の理由と、パレスチナ国家承認問題に関するEU並びにヨーロッパ各国における議会の動向について、報告してください。


上村政府参考人

お答え申し上げます。
二〇一四年十月三十日、スウェーデン外務省は、パレスチナ国家を国家承認したことを発表いたしました。その際、バルストローム外務大臣の説明でございますが、和平交渉におけるイスラエルとパレスチナの立場をより平等にしていくことによって、スウェーデンとしてその交渉を促進していきたいという理由づけを専らおっしゃっていると理解をしております。
欧州議会初めヨーロッパの各国議会での動きでございますけれども、昨年後半以降現在までに、欧州議会の決議を含めまして、イギリス、フランスを含めまして、九カ国と私は理解しておりますが、欧州の国の議会におきましてパレスチナの国家承認を求める決議が採択されたと承知しております。


穀田委員

今お話あったように、促進していきたいと。大臣が述べている後押ししていきたいというのと似たようなものだと私は思うんですが。
私は、日本が、オブザーバー国家となることに賛成したのに、どうして日本としてパレスチナの国家承認に進まないのか、今、多くの国が国家承認を求めていく意向を示しているときになぜできないのか、この点について外務大臣にお聞きしたいと思います。


岸田国務大臣

日本としましては、パレスチナの独立国家樹立の権利を含む民族自決権を支持し、そうした観点から、国家樹立に向けたパレスチナ人の努力を政治経済面から支援しております。そして、イスラエルとの中東和平交渉が進展し、遠くない将来に日本がパレスチナを国家として承認できる日が来ると信じております。
そして、国家として日本がパレスチナを承認するか否かという点につきましては、国際法上の観点ももちろん重要でありますが、あわせて、和平プロセスの進展に資するかどうか、こういった点をしっかり考えた上で総合的に検討していかなければならないと存じます。こうした和平プロセス、直接交渉が進むという観点からどうあるべきなのか、それを考えた上で日本の対応を考えていく次第であります。
よって、我が国がパレスチナの非加盟国オブザーバーステータスに関する総会決議に賛成したことと、パレスチナを国家として承認するということ、これは別個の問題であり、今申し上げました観点を重視しながら取り組みを考えていかなければならないと考えます。


穀田委員

別個の問題ですからね。それはわかっているんですよ。だから、百三十八カ国が賛成をしたけれども、そのうちで二十カ国余りはまだ承認をしていなくて、百三十五カ国が承認しているという問題は別なんですよね。それはわかっているんです。
ただ、問題は、今お話がありましたけれども、国際法だけでなくて、和平に資するかということが観点だと述べました。
そうしますと、では、今までスウェーデンは、先ほどありましたけれども、促進していきたいと。そして、報告していなかったことをちょっと言いますと、スウェーデンの外務大臣は今回の承認が停滞した中東和平プロセスに新たな勢いを与えるとの見通しを示したということで、つまり、今世界各国が、この承認問題をめぐって、承認をすることがどういう位置づけになるかということをそれぞれ述べているわけですね。
だから、先ほど局長から報告がありましたように、九カ国という数字はちょっとあれですけれども、イギリスの下院、アイルランド上院、スペイン下院、フランス下院も、パレスチナの国家承認を求める決議を相次いで採択しているんですね。そして、その決議は、大体共通してイスラエルとパレスチナの二国家共存による中東和平の実現を支持していて、そのことによってさらに進展するであろうということから述べているわけです。まさに和平に資するという立場から述べているわけですね。
そうすると、ちょいと立場が違うと。和平に資するかどうかということになりますと、では、今承認することは、大臣は和平に資さないという立場だということですか。


岸田国務大臣

我が国としましては、二国家解決の実現を目指すという立場に立っています。そして、我が国は今日までイスラエル、パレスチナ双方に対しまして働きかけを続けてきました。要は、直接交渉再開に資さないような行動は控えるべきであるという働きかけを行ってきたところであります。国際法上の観点に加えて、和平プロセスの進展に資するかどうか、こういった観点が重要だという立場から働きかけを行ってきたわけです。
他国の判断、考え方について何か論評する立場にはありませんが、我が国としましては、引き続き、イスラエル、パレスチナ、この直接交渉が再開され、そして二国家解決が実現するために、何が我が国として最も適切なのか、現実的なのか、こういった観点から具体的な対応は考えていきたいと考えます。


穀田委員

先ほどの局長の発言じゃないですか。アメリカの態度も含めて、非常に煮え切らないとかいろいろ発言がありましたけれども、どうも外務大臣の発言もしゃきっとせえへんね。後押しするということを述べているわけですやんか、先ほど言ったように。
では、我々がそういう国家承認をしたら直接交渉にマイナスに響くとお考えなんですか。


岸田国務大臣

今、現状において、イスラエル、パレスチナ双方に、直接交渉再開に資することがない、こういった行動を控えるよう働きかける、これが最も重要であると考えます。
イスラエル側においては、入植の問題が指摘をされています。あるいは、パレスチナ側においては、国連等へのかかわりが指摘をされているわけですが、いずれにせよ、直接交渉の再開を害するような行動は控えるということをしっかり働きかけることが、現状、重要だと考えております。
先ほど申し上げましたように、中東和平交渉が進展して、遠くない将来に日本がパレスチナを国家として承認できる日が来ると我々は信じておりますが、そうした結果に向けて、より現実的な対応を考えていかなければならないと考えます。


穀田委員

私が何で外側からいろいろなことを言っているかというと、要するに、フランスもそういう新しい提起をし出している、アメリカも態度を少しずつ変化させている、こういうのがある。それから、国際的にも、今までEUを初めとした主要国がそういう承認をしない事態から、少し動き出している。国連やフランスやEU、アメリカと、こういうことをずっと述べてきたわけですよね。そういう中で、日本だけがおくれることになるでということを私は逆に問いたい。
そこで、今の態度については根拠のないものであったということは私さっき言ったんですけれども、日本外交は、確かに、先ほどありましたように、一方では、アラブ諸国と経済、外交で良好な関係を築いてきました。他方では、アメリカに気兼ねしてイスラエルの横暴をきちんと批判できないという弱点が、率直に言うとあると言わなければなりません。
そこで、この問題になぜ日本の承認の意味があるかということについて最後に述べたいと思うんです。
私ども、アラブ諸国の方々ともいろいろ話し合いをしています。そういう中で、アラブ諸国からは、パレスチナ国家の承認は日本としてのメッセージを発することになると。一つは、パレスチナへの支援のメッセージだ、二つは、イスラエルに対して二国家共存の重要性を示すメッセージになる、三つには、国際社会に対しても、そういう方向でこそ真の解決ができるというメッセージだ、こういう声が上げられています。
先ほども私は外側をいろいろ述べたわけですけれども、大臣が言っておられる遠くない将来ではなくて、近い将来にする必要がある、そのことが和平に資する、直接交渉にもプラスになる。したがって、国際的な流れに合流し、役割を今果たさなければならない時期に来ている、そういう認識だということを主張して、質問を終わります。