日中韓外相会談と「歴史認識」を問う

2015年03月27日

土屋委員長

次に、穀田恵二君。


穀田委員

日本共産党の穀田恵二です。
在外公館にかかわる法案については、当該地域の実情を踏まえた改正と言えるので、賛成です。その態度表明だけしておきたいと思います。
そこで、きょうは、先日行われた日中韓外相会議に関連して、岸田大臣に質問します。
三カ国外相会議では、「歴史を直視し、未来に向かうとの精神の下、三外相は、三か国が関連する諸課題に適切に対処すること、」このことを明記しました。第七回日中韓外相会議共同報道発表が発出されています。
岸田大臣は、日本政府として、歴史をどう直視し、どのような諸課題に適切に対処するおつもりなのか、お聞きしたいと思います。


岸田国務大臣

今回、三年ぶりに日中韓外相会談を開催いたしました。そして、御指摘の共同報道発表という形で三国で文書をまとめることができたということ、このことは意義あることだと思いますし、こうした日中韓の対話のプロセスが再開したことは評価できるのではないかと思っています。
そして、その中で、この共同報道発表に盛り込んだ文言ですが、御指摘のように、「歴史を直視し、未来に向かう」という文言を盛り込んでおります。この表現は、これまでも過去に日中韓サミットの発出文書等において何度か使った表現であります。また、昨年十一月、日中の間においては、四項目の確認というのを行いました。この確認された四項目の中にも同じ表現、「歴史を直視し、未来に向かう」という表現を使っております。
こうした表現をこの共同文書の中に盛り込んだわけですが、まず、この歴史ということにつきましては、七十年前の歴史、これはもちろんであります。それに加えて、我が国は、さきの大戦の反省に基づいて、自由や民主主義や法の支配といった価値観を大事にしながら、戦後七十年間、平和国家として歩んできた、こうした歩みも歴史でありますし、また、一九六五年、そして一九七二年に、韓国、中国とそれぞれ国交を正常化したわけですが、この国交正常化後の私たちの先輩たちの努力、今日の二国間関係の繁栄に結びつけるためにされた多くの努力、これも歴史の中に含まれるというふうに認識をしております。
加えて、その文書を見ていただければわかりますが、これは努力するのは日本だけではありません。三カ国が、今申し上げた歴史に対して適切に対応する、こういった文書を、この共同報道発表の中に盛り込んだ次第であります。


穀田委員

今聞いたのは共同発表ですよね。
その次にお聞きしたいのは、共同記者会見でどう言っているかということを見ますと、中国の王毅外相は、近年、とりわけ中日関係、韓日関係では歴史認識の問題が困難をつくり、協力を妨げ、三カ国の共通利益にもかなっていない、戦後七十年が過ぎて、三カ国にとって歴史問題は過去形ではなく現在進行形だ、歴史を直視して未来を切り開くこと、これが今回得られた三カ国の共通認識だ、また、最も重要で意義のある成果だと。
文書をつくったことと再開したこととあわせて、そういうことも含めて相手は言っているわけですけれども、その点での認識はいかがですか。三年ぶりだということと、同じだということはわかっているんです。


岸田国務大臣

王毅部長の記者会見の発言の真意とか背景については私から申し上げる立場にはありませんが、王毅部長を含めて、韓国の尹炳世長官も交え、三カ国の外相会談におきましては各国のさまざまな関心事について議論したわけですが、その中で、歴史について中国、韓国から発言はありました。そして、私の方から歴史認識について、一緒に行われた二国間のバイ会談も含めて述べさせていただきました。
日中外相会談におきましては、王毅外交部長より、ことしは戦後七十年ということで、日中双方にとって重要かつ敏感な年である、この機会に世界の人々が歴史について注目することは必然であり、日本がどのような態度で歴史に向き合うのか注目が集まっている、そういった指摘がありました。これに対しまして、私の方から、安倍内閣は歴代内閣の歴史認識を全体として引き継いでおり、これからもそうしていく、そのことはこれまでにも何度も表明している、こうした我が国の立場を説明いたしました。
日韓の間におきましても、日韓外相会談において、日韓関係の前進に向け日韓の協力関係を中心に前向きな意見を行い、そして、本年が、日韓国交正常化五十周年が意義深いものになるよう協力していく、こういったことで一致をした次第であります。
このように、今回、三カ国の会談あるいはバイ会談におきまして、歴史についてさまざまな意見交換を行いました。率直な意見交換ができたことは意義ある機会であったと受けとめています。


穀田委員

今、三人そろっての会談とバイの会談についてお話がありましたけれども、韓国の尹炳世外相からは、三カ国会議が二〇一二年以来三年ぶりとなったことについて、過去に起因する対立を克服できず、不信と緊張が他の分野の協力の進展まで阻害したためだという指摘があったと報道されていることは事実ですね。


岸田国務大臣

今、報道について御指摘いただきましたが、その部分はちょっと確認しておりませんので、後ほど確認いたします。


穀田委員

報道があったということで、そういう事実はなかったかということを聞きたかったわけですが、そういう指摘はありましたかと。まあいいです。
あわせて、大臣はバイの会談の話もしてはります。そこで聞きたいんですけれども、歴代内閣は引き継いでと、いつもこのパターンを繰り返しておられるわけですけれども、やはり、日中会談でいうと、王毅外相からは、日本がどういう態度であの侵略戦争を扱うかが中日関係の政治的基礎にかかわると述べたと言われています。報道ではそうなっています。
岸田大臣は、今、繰り返し、歴代内閣の立場を全体として引き継いでいくということを何度もおっしゃっているんですけれども、問題は、その中心であるところの国策の誤り、植民地支配と侵略を行ったという村山談話の核心部分を含めて引き継ぐのかどうか、そこを明確にしてほしいんです。


岸田国務大臣

おっしゃるように、政府としましては、歴代内閣の歴史認識を全体として引き継ぐということを申し上げております。そして、その歴代内閣の歴史認識を全体として引き継ぐわけですから、その中にあります個々の部分について、ここを引き継いでここを引き継がないなどということはあり得ません。全体として引き継ぐ、そのとおりであります。


穀田委員

繰り返しになりますけれども、全体として引き継ぐ、いつもこう言って、私どもの笠井議員の質問に対しても、もう一度質問されたときには、もう一回答えているんですけれどもね。
大事な問題は、国策を誤り、植民地支配と侵略を行ったという部分は確実に含まれていると言っていいですね。


岸田国務大臣

全体として引き継ぐと申し上げている以上は、御指摘の点も含めて引き継いでいる、当然のことであります。


穀田委員

なぜそういうことを言うかといいますと、安倍総理は、二月二十五日の戦後七十年談話に関する有識者懇談会で次のように述べています。さきの大戦への反省、戦後七十年の平和国家としての歩み、そしてその上に、これからの八十年、九十年、百年がありますと述べているんです。しかし、ここの有識者懇談会の提起の中でも、侵略、それから植民地支配という村山談話の核心的部分の文言は避けてやっています。だから、幾ら反省するといっても、それは全く中身のない反省ということになりはしないかというふうに私は思います。
そこで、日本と韓国、それから日本と中国の間には、一九九八年の二つの宣言、小渕総理と金大中大統領による日韓共同宣言、小渕総理と江沢民主席による日中共同宣言がある、これは岸田大臣もよく御存じですよね。


岸田国務大臣

先ほどの穀田委員の御質問を聞いておりまして、まず一つは、歴史認識については、歴代の内閣の歴史認識をしっかり全体として引き継ぐ、これは申し上げたとおりであります。途中から、御発言が七十年談話の話に変わってしまいました。
七十年談話は、これは総理が発する談話でありますし、加えて、今、有識者の中で議論をしていることでありますので、この部分は、これからそういった作業が進むものだと思います。それをちょっと整理した上で、確認をさせていただきたいと存じます。
そして、今二つの文書について御指摘をいただきました。そういった文書があるということを承知しております。


穀田委員

日韓共同宣言には、「我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた。」と明記されています。また、日中共同宣言には、「過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省を表明した。」と記されています。いずれの宣言も、今回の三カ国共同報道発表と同じく、過去を直視することを重要な共通認識として、村山談話で示された核心部分を引き継いだものとなっています。
大臣は、七十年談話という問題について、話が二つと言っていますけれども、もともと、この七十年をどう見るかという問題について、王毅さんからも、韓国からも提起されている、そのつながりで話をしているわけです。ですから、これを見ても、日本政府として、村山談話が歴史認識の問題に対処する上での外交の基礎となっているということではないんですか。


岸田国務大臣

これは中国や韓国にも説明していることですが、村山談話を含めて、歴代内閣の歴史認識を全体として引き継いでおりますということであります。


穀田委員

相手の国が本当にそうとってくれているのかということが大事な問題なんですよね。ロジックで含めてという話をされても、一番大事な核心部分は何かという問題について私は指摘しているわけですよね。
そこで、この基本認識というのは、実は、日中、日韓だけではなくて、二〇〇二年の小泉総理と北朝鮮の金正日総書記による日朝平壌宣言でもそういう認識が書かれているんですね。「過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。」こういうふうに書かれて、引き継がれているわけですよね。
今お話ししたように、村山談話の核心部分というのは、日中、日韓、日朝、つまり北東アジアの主要国との外交の基礎となっている、これほど重いものだと私は思うわけですね。この一連の北東アジアにおける共同宣言、ずっとやってきた中にそれが位置づけられている、そういうものだという認識はありますか。


岸田国務大臣

歴史認識につきましては、先ほど申し上げましたように、歴代内閣の歴史認識を全体として引き継いでいます。
そして、それに基づいて、さまざまな外交の場面において議論を行い、さまざまな文書を交わし、外交を進めているというのが我が国の外交のありようです。


穀田委員

さまざまな文書というふうにさらりと言われると困るんですよね。
やはり、時代時代の区分、そして、それが、三十年とか四十年とかという、国交回復を初めとした動きだとか、和解と協力という一つの節目に当たって行われた宣言である。ましてや、日朝の宣言などは、初めて行った宣言なんですね。小泉総理大臣が行った宣言は初めての宣言であります。
ですから、いわば、日中、日朝、それから日韓、北東アジアにおける一つの大きなかなめとなっている問題だという認識だと言ってよろしいですね。


岸田国務大臣

我が国の歴史認識ですが、まず、歴代内閣の歴史認識は全体として引き継いでいます。
そして、歴史を語る際には、先ほど申し上げました七十年以前の歴史、もちろん歴史です。戦後七十年間、我が国は平和国家として国際社会に貢献してきました。この歴史に誇りを持っています。こうした国際社会に貢献した平和国家として歩んできた歩み、これも歴史としてしっかり各国に受けとめてもらわなければなりません。
中国との間においても、一九七二年、国交正常化してから後、多くの先輩たちが努力をし、今や、両国の間、三千億を超える貿易量、五百万人を超える人が行き来をする、こういったところまで発展することができました。こうした一九七二年以降の先人たちの努力、これもないがしろにしてはならないと思っています。
こうしたものを全て含めて歴史としっかり捉えて、歴史を直視し、そして未来に向かっていかなければいけないと考えています。


穀田委員

私は、平和国家としての歩みということを再三大臣はおっしゃいますけれども、それが揺らいできているという事実があるからこそ、戦後の、出発点に当たっての歴史認識が問われている、こういう問題だということがお互いわかって言っているわけですよね。
日本共産党は、私どもは、北東アジア平和協力構想というのを提唱しています。これは、ASEANが実践している地域の平和協力の枠組みを北東アジアにも構築しようというものであります。私どもの考え方は、北東アジアにおける友好協力条約の締結の問題や、さらには、北朝鮮問題を六カ国協議で解決する問題、領土問題の外交的解決、あわせて、侵略戦争と植民地支配の反省は不可欠の土台となる、この四つの項目を明らかにして、北東アジア平和協力構想というのを打ち出しています。
外相会議の共同発表の資料では、「韓国の「北東アジア平和協力構想」を高く評価し、歓迎した。」と述べています。これは、二〇一三年五月、朴槿恵大統領がアメリカ議会で北東アジア平和協力構想を提起し、北東アジア全体で多国間対話のプロセスを進め、平和と協力のメカニズムを構築することを訴えたものであります。日本共産党の立場と一定共通するものがある。ですから、私どもは、先ほど述べたように、日中、日韓、日朝、それらを含めて本当に今大事な時期に来ているということだと思っています。
そこで、七十年談話が出てくるわけであります。村山談話で示された核心部分を曖昧にしたり、後退させる、そういう談話は、発表するのであれば、百害あって一利なしだと私は考えています。いわば戦後政治の出発点を否定することになると、私はあえて言っておきたいと思うんです。
第二次世界大戦後の国際秩序というのは、日独伊の侵略戦争を不正不義のものとして断罪した上に成り立っています。その上に立って私は対処すべきだと考えています。そのことを強調して、終わります。