衆議院本会議で2014年度補正予算案・財政演説に対する代表質問に立つ

2015年01月27日

副議長(川端達夫君)

穀田恵二君。
〔穀田恵二君登壇〕


穀田恵二君

私は、日本共産党を代表し、財政演説に関して質問します。(拍手)
質問に先立って、いわゆるイスラム国を名乗る過激組織による蛮行についてです。
湯川遥菜さんが殺害されたとする写真がネット上に投稿されています。残虐非道な蛮行に対して、強い憤りを持って非難するものであります。後藤健二さんを直ちに解放することを強く要求するものです。
政府は、人命最優先で、人質解放のため、あらゆる努力を尽くすよう求めるものであります。
今国会は、総選挙を受けて初めての論戦を行う国会です。第三次安倍内閣を組閣した総理が、なぜ所信表明演説を行わないのですか。国政に臨む基本姿勢を示すことは、国会と国民に対する当然の責任ではありませんか。答弁を求めます。
総理は、今回の総選挙で、引き続きこの道を真っすぐ進んでいけと国民から力強く背中を押していただいたと述べています。総理、あなたは、今回の総選挙で国民から白紙委任を受けたと思っているのですか。
総選挙での自民・公明政権与党の三百二十六という議席は、第一党に四割台の得票で八割近くの議席を与える小選挙区制がつくり出した虚構の多数にほかなりません。比例代表選挙における自民党の得票率は三三%にすぎないのであります。
消費税の一〇%増税を初め、集団的自衛権の行使、原発の再稼働、TPP推進など、国民の多数が反対している問題を数の力で強行することは、断じて許されません。答弁を求めます。
沖縄では、昨年の名護市長選挙での稲嶺市長の再選、県知事選挙での翁長候補の勝利、引き続く総選挙で、新基地建設反対を掲げたオール沖縄の候補が全ての小選挙区で勝利しました。沖縄県民は新基地建設ノーの審判を、疑う余地のない明白な形で示したのです。この審判を一顧だにしない政府の姿勢は、およそ民主主義の国とは言えません。
そもそも、沖縄の米軍基地は、国際法にも違反して無法な土地強奪によってつくられたものであり、無条件に県民に返還されるべきものであります。
総理、辺野古への新基地建設は直ちに断念すべきです。昨日、沖縄県は、前知事が行った辺野古埋立承認を検証する第三者委員会の設置を発表し、政府に対し、検証作業中の工事の中止を要求しました。あわせて総理の見解を求めます。
原発問題では、選挙が終わるや、全国の原発を次々に再稼働する動きを強めています。どの世論調査でも、原発再稼働反対の声は過半数に上っています。未曽有の事故から四年がたつというのに、いまだに東京電力福島第一原発事故の原因は究明されておらず、なお十二万人もの方々が避難生活を強いられています。この深刻な事態をそのままにして、経済再生の名で原発の再稼働や海外輸出を進めることは、決して許されるものではありません。
次に、総理は、この道しかないとアベノミクスを推進しています。大企業を中心に経常利益は過去最高水準となりましたが、そもそも国民生活の実態や日本経済についてどのように認識しているのか、伺います。
まず、消費税増税の深刻な影響です。
内閣府が一月十三日に発表した「日本経済二〇一四―二〇一五」、いわゆるミニ経済白書は、消費税率引き上げによる物価の上昇は実質的な所得の減少をもたらし、将来にわたって個人消費を抑制する効果を持つと書いています。さらに、実質所得の減少を通じて、二〇一四年四―六月期から七―九月期にかけて個人消費を合計で一兆円弱程度、いわゆる実質GDPの〇・二%程度を押し下げていると試算されると指摘しています。
総理、八%への消費税増税がここまで個人消費を冷やしたことをどのように認識していますか。景気への深刻な影響が明らかであっても、二〇一七年四月には消費税を一〇%に引き上げるのですか。一〇%増税は中止すべきです。あわせて答弁を求めます。
第二に、労働者の置かれている状態です。
実質賃金は十七カ月連続でマイナスとなり、非正規雇用労働者は史上初めて二千万人を超えました。ミニ経済白書も、非正規雇用労働者の増加が個人消費を落ち込ませ、非正規と正規の格差が拡大していると指摘しています。
日本共産党は、厳しい経済状況に置かれた国民生活を打開するため、大企業の内部留保の一部を活用し、大幅賃上げで景気回復を図ることを一貫して提案してきました。政治の責任で、中小企業に対して税、社会保険料の減免などの支援を拡充し、最低賃金の抜本的引き上げを図ることが必要です。この方向こそ、今、求められているのではありませんか。
生涯派遣を進める労働者派遣法の改悪、残業代ゼロ法案など、さらなる雇用破壊はやめるべきであります。
第三に、日本経済の根幹、中小零細企業の問題です。
どこへ行っても、中小企業の皆さんから、好循環というが大企業だけだ、我々には恩恵は全くないという声を聞きます。中小企業団体は、既にアベノミクス不況だとまで言っています。
製造業を中心に、円安がもたらす原材料とエネルギーコスト上昇の影響をまともに受けています。消費税増税分と物価上昇分を価格に転嫁できず、中小零細企業は困難に追い込まれています。
大企業の法人税は二年間で一兆六千億円も減税しようとしながら、その穴埋めとして、資本金が小さい中小企業や赤字企業にまで外形標準課税を押しつけようとするのは本末転倒です。
中小企業の振興なくして日本経済と地域経済の再生はないのではありませんか。見解を伺います。
第四に、社会保障の問題です。
政府は、年金給付を物価下落分以上に引き下げることや、後期高齢者医療保険料の軽減措置の廃止、入院給食費値上げ、介護報酬引き下げ、生活保護予算の削減など、手当たり次第に切り下げています。消費税増税は社会保障のためといいながら、国民に際限なく負担増を押しつけ、社会のセーフティーネットを破壊するものです。こうした社会保障の大改悪の中止を求めるものであります。
国民生活と日本経済のどの問題を見ても、総理が進めようとしている道は、国民が求める方向に逆行するものです。日本経済を国民の暮らし第一に根本から切りかえ、応能負担の原則に立って、富裕層と大企業に応分の負担を求めるなど、消費税に頼らない別の道をとることを強く求めるものであります。
さらに、政治の姿勢が問われている災害の問題です。
総理は、東日本大震災について、復興を加速すると言っています。東日本大震災から四年、今なお多くの被災者が避難生活を強いられています。全ての被災者の生活となりわいが再建されるまで、国が責任を果たすべきです。そのためには、生活再建支援法の抜本的拡充は不可欠です。
ことしは、阪神・淡路大震災から二十年です。借り上げされた復興住宅からの追い出し、災害援護資金の返済で苦しめられている、こうした現実を総理は御存じなのでしょうか。
被災者が一日も早く自立したもとの生活を取り戻すため、必要な支援を行うことが政治の責任であり、大震災の被災者に新たな苦難を押しつけることは、政治のやるべきことではありません。総理の見解を求めます。
最後に、ことしは戦後七十年の節目の年であります。あの戦争で三百十万人の日本国民、二千万人を超えるアジア諸国民が犠牲になりました。侵略戦争と植民地支配の反省の上に、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにすることを決意し、日本国憲法を確定したのであります。これが、戦後政治の出発点、原点であります。
この憲法の平和主義を守り抜くことこそ、日本が、アジアと世界で信頼され、真の友好を実現する道であることを強調し、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕


内閣総理大臣(安倍晋三君)

穀田恵二議員にお答えいたします。
所信表明演説についてお尋ねがありました。
経済の再生、復興、社会保障改革、教育の再生、地方創生、女性が輝く社会の実現、そして外交、安全保障の立て直し、私たち自由民主党と公明党は、さきの総選挙において、これらの課題に精いっぱい取り組んでいくことを訴えました。その結果、この道を真っすぐに進んでいけと、国民の皆様から力強く背中を押していただきました。第三次安倍内閣は、その負託に全力で応えていく決意であります。
こうした基本姿勢のもと、経済最優先で取り組み、アベノミクスの成果を全国津々浦々に届けるため、まずは平成二十六年度補正予算を一刻も早く成立させていただくことを願う次第であります。
演説も含めた国会の具体的な日程については、こうした政府の考え方を尊重いただき、院において御判断いただいたものと理解しております。
なお、内閣の施政全般に係る基本方針については、平成二十七年度本予算の提出に際して明らかにしたいと考えております。
総選挙結果の受けとめと政策実行に係る政治姿勢についてお尋ねがありました。
今回の総選挙では、再び連立与党で三分の二を上回る議席をいただくことができました。選挙で国民の皆様に訴えた公約を実現していく大きな力をいただくことができたと考えております。
そもそも、選挙の結果が白紙委任であるはずがありません。それぞれの政党が公約を掲げ、それを踏まえて国民が政権選択をした結果であります。ですから、政権与党には、その国民への約束を一つ一つ実現していく責任があります。
私たち自民党は、御指摘のあった、消費税、安全保障政策、エネルギー政策、そしてTPPについても、その考え方を公約に明確に掲げております。そして、選挙戦を通じ、報道各社のインタビューやテレビでの党首討論などで説明してまいりました。
今後も、国会審議などを通じ、国民の皆さんに私たちの考え方を丁寧に説明し、御理解を得るべく最大限の努力を続けながら、一つ一つの政策を確実に実現してまいりたいと考えております。
沖縄における選挙の結果及び普天間の辺野古への移設についてお尋ねがありました。
選挙の結果については、いずれも真摯に受けとめたいと思います。
最も大切なことは、住宅や学校に囲まれ、市街地の真ん中にある普天間の固定化は絶対に避けなければならないということです。これが大前提であり、かつ政府と地元の皆様との共通認識であると思います。
辺野古への移設は、米軍の抑止力の維持と普天間の危険性除去を考え合わせたとき、唯一の解決策です。この考え方に変わりはありません。
これは、現在の普天間を単純に辺野古へと移す計画ではありません。普天間が有する三つの機能のうち、辺野古に移るのはオスプレイなどの運用機能のみです。空中給油機は、既に全機、山口県岩国基地へ移りました。緊急時の航空機受け入れ機能も本土へ移します。また、オスプレイの県外訓練等も着実に進めています。
埋め立て面積は、全面返還される普天間の三分の一以下です。
飛行経路は、市街地の上空から海上へと変更されます。これにより、住宅防音が必要な一万以上の世帯数がゼロとなります。
このように、辺野古への移設は、沖縄の負担軽減に十分資するものであります。負担軽減に取り組む政府の姿勢が民主主義に反するとは考えていません。
沖縄県による第三者委員会の設置については、詳細を承知していないので、コメントは差し控えたいと思います。
政府としては、地元の皆様の御理解を得ながら、普天間の一日も早い返還に向け、安全に留意しながら、着実に移設を進めてまいります。
原発の再稼働と海外輸出についてお尋ねがありました。
原発については、痛ましい原発事故により、福島を初め多くの方々に多大な御迷惑をおかけしています。復旧復興はいまだ道半ばであり、原発への反対の声があるのは当然のことと思います。
他方で、原発が全てとまり、これに伴う燃料輸入増により、毎日百億円もの国富が海外に流出しています。電力料金が上昇し、国民や中小・小規模企業の方々への影響は大きなものとなっています。また、温室効果ガスの排出量は震災前に比べて大幅に増加しています。
こうしたことを考えると、国民生活や産業活動、中小・小規模事業者を守り、責任あるエネルギー政策を実現するためには、原発ゼロというわけにはいきません。
原子力政策の推進に当たっては、福島第一原発事故を片時も忘れず、事故を真摯に反省し、いかなる事情よりも安全性を最優先させることとしております。
原子力規制委員会が科学的、技術的に世界で最も厳しいレベルの安全審査基準に適合すると判断した原発について、地元の理解を得ながら再稼働を進めてまいります。
また、福島第一原発事故の経験から得られた教訓を国際社会と共有することで世界の原子力安全の向上に貢献することは我が国の責務であり、相手国の事情や意向を踏まえつつ、安全性の高い原子力技術を提供してまいります。
消費税率引き上げについてお尋ねがありました。
三本の矢の政策により、有効求人倍率は二十二年ぶりの高水準、平成二十六年の賃上げ率は過去十五年間で最高、企業の経常利益は過去最高水準となるなど、経済の好循環は生まれ始めています。
他方、昨年四月の消費税率引き上げが個人消費に影響を及ぼしたのも事実であり、アベノミクスの成功を確かなものとするため、一〇%への引き上げを十八カ月延期することとしました。
平成二十九年四月の一〇%への引き上げを確実に実施するため、経済運営に万全を期し、経済再生と財政健全化の両立を目指してまいります。
賃上げや雇用についてお尋ねがありました。
政労使会議で賃上げをお願いした結果、昨年の春闘では、賃上げ率が過去十五年で最高となりました。また、昨年の政労使会議では、経済界の皆さんに、賃上げに向けた最大限の努力と、取引企業の仕入れ価格の上昇等を踏まえた価格転嫁といった取り組みに合意していただきました。
最低賃金についても、この二年、大幅な引き上げを行ってきたところであり、こうした賃上げの流れを継続させ、経済の好循環を全国に届けてまいります。
また、提出を検討中の労働者派遣法改正案は、派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップを支援するものであり、生涯派遣を進めるものでは全くありません。
労働時間制度の見直しは、ワーク・ライフ・バランスの観点から、働き過ぎを是正するとともに、多様で柔軟な働き方を進めるため検討を進めているものであり、残業代ゼロとは全く異なるものであります。
法人税改革と中小企業の振興についてお尋ねがありました。
今回の法人税改革において、御指摘の外形標準課税の拡大は資本金一億円以下の中小企業を対象外としており、大企業の減税を中小企業の増税で穴埋めするとの御指摘は当たりません。
また、中小・小規模事業者は、地域の経済と雇用を支える重要な存在です。経済の好循環の波を全国津々浦々までお届けし、景気回復を実感していただけるよう、中小・小規模事業者の支援に万全を期してまいります。
社会保障についてお尋ねがありました。
消費税率の引き上げは、社会保障制度をしっかりと次世代に引き渡し、子育て支援を充実していくためのものであります。その増収分は全額社会保障の充実、安定化に充てられ、社会保障給付として国民に給付されます。
消費税率の八%への引き上げにより、平成二十六年度において、子育て支援や難病対策などの施策を実施しております。平成二十七年度予算案ではさらに、本年四月からの子ども・子育て支援新制度の予定どおりの施行、認知症施策等の推進、国民健康保険の財政基盤の強化などの施策を実施することとしています。
これらにあわせて、社会保障制度を持続可能なものとしていくため、負担能力に応じて公平に負担いただくとともに、例えば保険料等への影響も考慮して介護報酬を設定するなど、必要な給付が適切に行われるよう制度の重点化、効率化を行うことが必要と考えております。
社会保障の財源のあり方についてお尋ねがありました。
世界に誇る社会保障を次の世代に引き渡すため、その安定財源の確保は喫緊の課題です。
その財源としては、税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定していること、勤労世代など特定の者への負担が集中しないことから、消費税がふさわしいと考えております。
震災被災者への支援についてお尋ねがありました。
借り上げ期間の終了する阪神・淡路大震災の災害公営住宅に住む被災者の方々や、災害援護資金を借り受けながら経済的事情から返済できていない被災者の方々を含め、被災者の生活支援について、個々の状況を踏まえ、関係自治体と連携しながら全力で取り組んでまいります。
一方、被災者生活再建支援制度の拡充については、他の制度とのバランス、国や都道府県の財政負担などを勘案して、慎重に検討すべきものと考えます。
戦後七十年を迎えるに当たっての見解についてお尋ねがありました。
さきの大戦では、たくさんの先人たちが、祖国の行く末を案じ、家族の幸せを願いながらお亡くなりになられました。そのとうとい犠牲の上に、私たちの現在の平和があります。
戦後七十年の間、日本は、さきの大戦の深い反省とともに、ひたすらに自由で民主的な国家をつくり上げ、アジアや世界の友人たちの平和と発展のために、できる限りの貢献を行ってまいりました。
この平和国家としての歩みは、これからも決して変わりません。その上に立って、次なる八十年、九十年、そして百年に向けて、日本は、国際協調主義に基づく積極的平和主義のもと、アジアや世界の平和と安定のため、より一層貢献を行っていく所存であります。(拍手)