選挙制度は民主主義の土台 本会議で代表質問に立つ

2016年04月22日

議長(大島理森君)

穀田恵二君。
〔穀田恵二君登壇〕


穀田恵二君

質問に先立ち、冒頭、熊本県を中心とする地震で犠牲となられた方々と御遺族に、心からお悔やみを申し上げます。そして、被災された皆様に心からお見舞い申し上げます。
政府は、救命救助に引き続き全力を挙げつつ、緊急の課題として、震災関連死を防ぐことに力を集中することを強く求めるものであります。
私は、日本共産党を代表して、議題となりました両法案について、各党の提案者に質問します。(拍手)
まず第一に、選挙制度は民主主義の土台であります。主権者国民の代表の選び方、国民の参政権のあり方を決めるものであり、十分な議論が必要です。
衆議院選挙制度をめぐっては、二〇一一年十月から、国会を構成する全政党が参加する各党協議会を二十九回行ってきました。ところが、一部の党が、全党協議では結論が出ないとして一方的に協議を打ち切り、政党としての責任を放棄し、第三者機関、選挙制度調査会に丸投げしたのであります。
調査会への諮問は現行制度維持と定数削減を前提としたもので、本年一月、答申が提出されるや、その内容についての議論を全く行わず、答申尊重の名のもとに、行司役の議長が各党に法案提出を促してきました。前代未聞な異様なやり方と言わなければなりません。
しかも、両案は、先週金曜日に提出されたばかりです。国民的議論もないまま、本日、本会議での趣旨説明、質疑、来週数日間の委員会質疑で採決し、衆議院通過を図ろうとしています。
自民、公明両党も民進党も、それぞれ野党時代は、与党が数の力で選挙制度を変えることを憲政史上類を見ない暴挙、与党の暴挙と批判していたではありませんか。今回のこのような横暴なやり方をどう思うのか、自民党、公明党、民進党、各党提案者に答弁を求めます。
第二に、そもそも選挙制度の根本は、国民の多様な民意を正確に議席に反映することです。ところが、現行制度は、民意の反映が著しくゆがめられています。ここに最大の問題があります。
今日の民意は、消費税増税反対、TPP批准阻止、辺野古新基地建設ストップ、原発再稼働ノー、憲法違反の安保法制廃止であります。
この国民多数の声と逆の方向に暴走しているのが安倍政治です。
なぜ国民多数の声が国会に届かないのか。その原因は、現行の小選挙区比例代表並立制にあります。
今の自民党安倍政権を支える三百に迫る議席は、絶対有権者比でたかだか一七%の支持で獲得したものであります。このもとで、昨年、安保法制が強行成立させられたのであります。平和主義、立憲主義を破壊する暴挙が、現行の小選挙区制の害悪を明白に示しています。
各党は、こうした民意と議席の乖離をどう考えているのか、答弁を求めます。
この二十年間、小選挙区制のもとで七回の総選挙が行われました。小選挙区において第一党は、四割台の得票率にもかかわらず七から八割もの議席を占め、議席に反映しない投票、いわゆる死に票は各小選挙区投票の半数に上っています。まさに、小選挙区制の根本的欠陥を浮き彫りにしたものにほかなりません。
だから、二十九回にわたる各党協議会でも、自民党も民主党も含め全党が、小選挙区による過度な民意の集約に問題があるという認識で一致したのであります。各党は、この認識に変わりありませんか。答弁を求めます。
いわゆる政治改革において、政権交代を可能とするため、民意の集約が必要だと小選挙区を導入したことに諸悪の根源があることは明白であります。虚構の多数による強権政治の害悪が明白となった今、政治改革を根本から問い直すべきであります。各党の見解を求めます。
第三に、なぜ議員定数を削減しなければならないのでしょうか。
日本国憲法は、「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」と前文の冒頭に明記しています。主権者国民が国会に意見を反映させるツールが議員であり、その削減は、国民の声を切り捨てるものにほかなりません。
国会の役割で最も大事なことは、政府を監視し、暴走させないようにすることです。議員が削減されれば、国会の政府監視機能が低下することは明らかであります。
そもそも、我が国の衆議院議員定数は、男子普通選挙法制定時の一九二五年、四百六十六でスタートしました。当時の人口は現在の半分です。戦後の改正で五百十二となりました。
今回、定数を四百六十五まで削減しようとしていますが、なぜ我が国の議会政治史上最も少ない水準にしなければならないのですか。
スタート時の定数は人口十二・八万人に一議席であったのが、今や二十六・八万人に一議席となっています。主要国の下院を見ると、おおよそ十万人に一議席の水準であり、我が国は国際的に見ても極端に議員が少ない国となっています。
だから、調査会答申は、現行の衆議院議員の定数は国際比較や過去の経緯などからすると多いと言えずと述べ、定数削減について、積極的な理由や理論的根拠は見出しがたいとしたのであります。
各党は、我が国の衆議院定数が歴史的に見ても国際的に見ても少ない水準にあることをどう思うのか、また、定数削減に根拠はないという調査会の結論をどう捉えているのか、答弁を求めます。
次に聞きたいのは、定数削減を選挙公約にしている理由であります。
各党は公約だからと言いますが、定数をどのように考えているのか、定数削減の根拠と理由について説得力ある説明を聞いたことは一度もありません。各党の答弁を求めます。
今般の定数削減の契機となったのは、民主党野田政権が、国民の皆さんに消費税増税をお願いする以上、政治家も身を切る改革が必要だと言って、比例八十削減を持ち出したことにあります。
消費税増税を押しつけるために国民の代表である議員定数を削減するというのは、全くのすりかえであり、何の道理もありません。各党の答弁を求めます。
さらに問題なのは、両案とも、東日本大震災でいまだに苦しむ東北や、今も絶え間ない余震で不安な中にいる熊本、九州を削減対象に含んでいることであります。この点について各党の見解を求めます。
第四に、定数配分の計算にアダムズ方式を採用する問題です。
両案提出者は、最高裁判決の要請に応えるためだとしています。最高裁は、小選挙区間の投票権の平等を侵害する違憲状態を生み出している要因が一人別枠方式であると指摘しています。その一人別枠方式と大差ないものがアダムズ方式なのです。それなのに、なぜ採用することにしたのか、明確な説明を求めます。
その上、両案が、比例代表の定数配分にもアダムズ方式を採用するのはなぜでしょうか。本来の比例配分に近いヘアー式最大剰余法を採用している現行制度をなぜ変更しなければならないのですか。
重大なことは、両案とも、アダムズ方式を採用するにとどまらず、自動的に定数配分と区割りを行う仕組みを盛り込んでいることであります。このもとで、少なくない有権者が、市町村の行政単位や地域社会を分断する異常な線引きを押しつけられ、毎回、選挙のたびに不自然な選挙区変更を強いられることになるのであります。
結局は、現行制度の根本的な問題に手をつけず、小選挙区制を温存させようとするものでしかありません。
各党は、将来にわたって、民意をゆがめる小選挙区制を維持していくおつもりですか。明確な回答を求めます。
日本共産党は、現行制度が提案されたときから、小選挙区制が民意の公正な議席への反映をゆがめ、比較第一党に虚構の多数を与え、強権政治をつくり出す根本的問題があると反対してまいりました。改めて、小選挙区制を廃止し、民意を反映する選挙制度へ抜本的に改革することを主張するものであります。
最後に、憲法公布七十年、女性参政権実施七十年、十八歳選挙権施行のこの年に、国民の代表を選ぶ選挙制度とはどうあるべきなのか、国民的議論をすべきであります。このことを強調し、私の質問を終わります。(拍手)
〔細田博之君登壇〕


細田博之君

穀田議員にお答えをいたします。
非常に多岐にわたる御質問を頂戴いたしました。
穀田議員とは、先ほど出ました全党による協議会、二十九回行われましたが、その全てに穀田議員と私は出席しているわけでございます。そこで、穀田議員の御主張は本当に何遍も何遍も伺ってきております。大変、少数政党といいますか、小選挙区比例代表並立制という制度自体が、支持率の少数の政党にとって著しく不利な制度であるという御批判を常にいただいてきているわけでございます。
まず、この法案の提出の経緯でございますが、総選挙における区割りについて、選挙区間の人口格差が二倍を超えている、違憲状態という最高裁判決があり、一票の格差の是正をしなければならないということは喫緊の課題であります。
この格差がふえている主原因は、大都市圏である東京の人口増加、そして、最も人口の少ない鳥取二区の人口減少に起因するわけでございますが、これは構造的な面が含まれているということが非常に大きな問題であります。
そして、二十九回にわたる各党協議を重ねても、根本的な制度につきまして合意が得られなかったので、衆議院選挙制度に関する調査会が設けられて答申が出たわけでございまして、その答申の中でも、今の制度を維持しながら、アダムズ方式その他、内容を改善、改革せよ、こういう答申が出たわけでございますから、我々はそれを尊重しながら案を作成しているわけでございます。
議長におかれましては、このような事情、長い間の事情を踏まえられた上でいろいろな御判断をされたということを承知しておりまして、強引に数の力で選挙制度を維持するとか変える、そういうことをしているつもりはございません。
そして、小選挙区比例代表並立制の問題点については、先ほど申しましたとおり、民意の集約が過度になるのではないか、つまり、支持率がある程度低くても小選挙区で勝てば当選するということから、大変にその乖離が大きくなるのではないか。しかし、これは、政権という観点から見れば、政権交代が大幅に起こるという経験もしたわけでございまして、それは今の制度導入のまた主要な要素であったということは確かでございます。
ただ、この調査会の答申においても、現行の比例代表並立制を維持するとする一方で、選挙制度は民意の集約と反映を基本として、その間の適正なバランスに配慮しつつ不断に見直していくべきであるという旨が述べられておりますので、この内容を受けて、与党案では附則に見直し条項を置いているということを御理解いただきたいと思います。
定数削減についてのお尋ねがございました。
調査会答申においては、衆議院議員の定数を何人とするかについて絶対的基準があるわけではないとか、小選挙区選挙について、大幅に定数を削減すると、選挙区間の一票の格差の縮小は難しくなるなどと言及されておりますし、諸外国の人口との比較をすれば、確かに穀田議員の御指摘のとおり、我が国の国会議員数は多いとは思いません。
ただし、近年の社会経済状況等を考慮する必要があること、地方では平成の大合併もあり議員数を大幅に減らしていることなどを総合的に勘案すると、議員数を削減すべきであるとの政治決断のもとに、比例定数削減を目指すことを我が党としても選挙公約に掲げたところでありますし、このたびは党の決断として定数の十の削減を提案しているわけでございます。
立法府としての機能をこれからも十分に発揮する観点から、国会はどうあるべきかという考え方を基本にしまして、議員の選出の方法、投票制度、選挙運動の方法や議員定数のあり方などについて大いに議論を深める必要があるのではないかと考えております。
また、穀田議員の御指摘のとおり、東北あるいは熊本県の震災のことを思うときに、私も政治家の一人として、地方創生の時代にあって、地方に温かい政策判断があってもよいのではないかという強い思いは持っておりますが、大乗的見地に立って、それらを包含して、今回与党案として提案しているところであります。(拍手)
〔逢沢一郎君登壇〕


逢沢一郎君

穀田先生より、アダムズ方式の導入に関して質問をいただきました。
いわゆる佐々木調査会の答申でも述べられておりますように、アダムズ方式には、まず、人口比例的な配分方式であるということ、都道府県間の一票の格差を小さくするものであること、都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、そして、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であること等の長所があると申し上げたいと存じます。
アダムズ方式は、各都道府県への小選挙区の定数配分を人口比例的に行う方式の一つであり、各都道府県の人口をある除数で割り、商の小数点以下を切り上げた値を各都道府県の定数とする方式でございます。
このように、アダムズ方式では、人口比例的に定数を配分する計算過程で行われる切り上げの結果として、各都道府県に定数が少なくとも一ずつ配分されるものであり、最初に一ずつ配分する一人別枠方式とは基本的に考え方が異なるものであると申し上げたいと存じます。
また、衆議院選挙制度に関する調査会は、平成二十六年六月十九日に議院運営委員会でその設置が議決されたものでありますけれども、その際に、「各会派は、調査会の答申を尊重するものとする。」とされたところでございます。
こうしたことから、本法律案でもアダムズ方式を採用することといたしました。
加えて、比例代表の定数配分方式につきましても、小選挙区の定数配分方式などと同様に、調査会の答申を尊重するという立場から、アダムズ方式を導入することといたしました。
また、結果といたしまして、アダムズ方式で定数を配分いたしますと、最も定数の少ない四国ブロックについて、現行定数の六をかなり長期間にわたり維持することができる見込みであります。比例代表の持ついわゆる民意反映機能が維持されるものとなっていることを申し上げておきたいと存じます。
アダムズ方式を導入することで小選挙区を維持するつもりかとの趣旨のお尋ねがございました。
先ほど細田議員の答弁もございましたように、現行制度の導入時からの議論や今回の調査会の答申の内容を踏まえて、現行制度におけるアダムズ方式の導入とともに、今後の選挙制度のあり方につきましては、附則に見直し条項を置いているところであります。
今後の国会における、また各党間の議論を待ちたいと存じます。
どうぞよろしくお願いをいたします。(拍手)
〔逢坂誠二君登壇〕


 

逢坂誠二君

穀田議員の質問にお答えいたします。
私も、与党時代、各党の選挙制度の協議会全てに出席をさせていただきました。その際、細田先生、さらにまた穀田先生からもたくさんの御指導をいただきました。そのことに対して厚くお礼申し上げたいと思います。
その上で、選挙制度に関するこれまでの議論の進め方や今回の国会審議の進め方についてお尋ねがございました。
穀田議員からは、選挙制度については十分な議論が必要である、そういう指摘をいただいたわけでありますけれども、私も全く同感であります。
その上で、選挙制度改革、そうした思いのもとで、長きにわたって政党間で協議を重ねてまいりましたけれども、残念ながら結論には至らなかったものであります。
しかしながら、選挙制度というのは、国の政治のあり方を決めるものでありますから、本来、これは政治家がしっかりと議論をしてその方向を定めるというのが大きな原則だというふうに思いますが、残念ながら結論に至らなかったということ、そうしたことも踏まえまして、今回、第三者機関に諮問をしたものというふうに理解をしております。
一方で、最高裁から三度にわたって違憲状態との指摘を受けるに至り、このことがもはやいっときも先送りできない喫緊の課題であるのは自明のことでございます。立法府に身を置く我々としては、その重みを強く認識すべきだというふうに思います。
そうした観点から、今回、できる限り早目にこの選挙制度の改革というのを行うべきだ、そういう趣旨に立ちまして、答申を受けた法改正を行うべき、そういうことで調査会答申を忠実に法案化いたしたという経過でございます。
二点目でございますけれども、現行の小選挙区制による民意の反映の点についてお尋ねがございました。
小選挙区比例代表並立制、これは基本的には、政権交代可能な政治の実現、政策本位の政党政治の実現を目指して導入された制度であると承知をいたしております。そうしたことを踏まえまして、振り返ってみますと、ある一定程度の機能を果たしているのではないかと認識をいたしております。
加えまして、今後の改革の方向性でございますけれども、今回提出をさせていただきました附則の第四条、ここに不断の見直しを行うことを明記させていただいております。この際に、両院制のもとで各議院が果たすべき役割を踏まえるとともに、民意の集約と反映を適正なバランスで実現するといったことも念頭に置く必要があろうかと思います。
いずれにいたしましても、党の垣根を越えて、衆参両院それぞれが果たすべき役割を議論しつつ、民意を適切に国政に届ける制度、有権者の視点から納得を得られる抜本的な制度改革の議論に取り組んでまいりたいと考えております。
次に、定数削減の必要性などについてお尋ねがございました。
御指摘のとおり、現行の衆議院議員の定数は、国際比較や過去の経緯などからすると多いとは言えないと指摘をされているところでございます。しかしながら、この間、各党それぞれ考え方はあろうとは思いますけれども、定数削減についての一定の議論があったことも事実だというふうに認識をいたしております。
そして、さらに、先ほど来幾度か紹介がございましたけれども、二〇一二年十一月十四日、この党首討論におきまして、当時の野田総理、そして当時の自民党の安倍総裁との間で、大幅な定数の削減を行うということを国民の前で約束しているということも事実であります。この約束は非常に大きなものであるというふうに私も考えておりまして、我々民進党は、この国民との約束を守り抜く立場にあるということを改めて表明させていただきたいと思います。
同時に、被災地への言及がございましたけれども、定数や制度改革にかかわりなく、震災、災害に見舞われた皆様の声を真摯に受けとめ、緊急対応に政治の総力を注ぎ、復旧と復興、そして防災対策に全力を注いで取り組んでいくことは当然のことでございます。
次に、アダムズ方式の導入についてお尋ねがございました。
衆議院の選挙制度調査会の答申でアダムズ方式により行うことが求められているわけでありますけれども、まずアダムズ方式につきましては、一つ目、人口比例的な配分方式であること、二つ目、都道府県間の一票の格差を小さくするものであること、三つ目、都道府県の配分議席の増減変動が小さいこと、四つ目、一定程度将来にわたっても有効に機能し得る方式であることといった長所があると認識をしております。
そこで、答申の内容をでき得る限り忠実に法案化している民進党案におきまして、小選挙区と比例代表の定数配分にアダムズ方式を導入したものでございます。
また、現行の小選挙区比例代表並立制に対する評価については、さきにお答えしたとおりでございますけれども、基本的には、政権交代可能な政治の実現、政策本位の政党政治の実現を目指して導入された制度であると承知をしており、一定程度の機能を果たしていると認識をしているところでございます。
以上でございます。(拍手)