ウクライナ情勢/元陸幕長が「反戦デモ」敵視講演

2022年04月13日

穀田委員

 日本共産党の穀田恵二です。  私は、本委員会で、ロシアのウクライナ侵略を止める上で最も重要なのは国際世論による包囲であり、ロシアに対して、国連憲章違反、国際法違反、ジュネーブ条約に違反する無法と厳しく批判する必要性を主張してまいりました。そして、日本政府としてその立場に立った外交活動を行うべきこと、非軍事の人道的支援の強化を提案してまいりました。  そこで、聞きたいと思います。  三月十六日は、日本・モルドバ共和国外交関係樹立三十周年の日に当たります。この日、両国外相会談が行われました。会談では、ロシアのウクライナ侵略に対しての対応、難民支援についてどのような議論と一致点があったのか、答弁いただきたいと思います。

林国務大臣

 今委員から御紹介いただきました三月十六日の電話会談でございますが、ポペスク・モルドバ外務・欧州統合大臣との間で、ロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権及び領土一体性を侵害し、国際法の深刻な違反であり、強く非難されるべきものであること、及び、力による一方的現状変更であり、国際秩序全体を揺るがすものであるということで一致をいたしました。  また、私からは、モルドバが多くのウクライナ避難民を受けていることをたたえた上で、モルドバを含む避難民受入れ国に対する我が国の緊急人道支援についても説明を行いました。これに対しまして、ポペスク大臣から深い謝意が述べられるとともに、避難民受入れの状況を含め、ウクライナとモルドバをめぐる情勢について説明をいただいたところでございます。  なお、三月二十五日にも、ソコラン駐日モルドバ大使の表敬を受けております。ウクライナ情勢が話題の中心でございましたが、モルドバが、人口比でいいますと、周辺国で最大の避難民を受け入れている、こういうことを踏まえて、日本からの緊急人道支援や二国間支援を通じてモルドバを支えていきたい意向を改めて私から同大使に伝達したところでありますので、申し添えておきたいと思います。

穀田委員

 ドイツやフランス、ルーマニアの呼びかけで、四月五日、モルドバ支援国際会議がドイツで開催されました。日本を含む三十か国以上の代表が、オンライン形式も含めて参加しています。  モルドバ共和国のガブリリツァ首相は、冒頭、長い間モルドバはヨーロッパの中で最も貧しい国として知られてきたと述べた上で、厳しい財政状況の中、避難してきた人への対応を迫られていると説明し、支援を訴えました。ドゥミトル・ソコラン駐日モルドバ共和国大使は、豊かでなくても、私たちはできることをしたいと思っているとインタビューに語っています。心から私も敬意を表したいと思います。  人口二百六十四万の国が、先ほどありましたように、一五・七%に匹敵する四十一万人もの難民を受け入れている。本当に頭が下がります。  そこで、国際機関を経由して二億ドルを支援しているというのが日本政府ですけれども、それだけではなくて、日本として二国間支援が必要だと思うんですが、その点の御見解をお聞きしたいと思います。

林国務大臣

 今委員からもお話がありましたように、モルドバは、ウクライナ周辺国の中で最も規模が小さいにもかかわらず、既に今、人口の一〇%以上、正確な数字を委員からもお示しいただきましたが、それに相当する避難民が押し寄せるということで、非常に厳しい状況にあると承知をしております。  三月十七日のG7外相会合におきまして、モルドバ支援グループ、これを立ち上げることで一致をいたしました。我が国は、ウクライナ及びモルドバを含む周辺国に対して、三月十一日、そして四月五日にそれぞれ一億ドル、計二億ドルの緊急人道支援を決定し、このうちモルドバに対しましては、避難民の保護、食料配布、保健医療等の分野で支援を既に実施をしておるところでございます。  三月十九日にJICAが人道支援、保健医療分野協力でのニーズ調査団、これを派遣いたしまして、既に、現地でのニーズの把握に加えて、WHOと連携した形で避難民への国際医療支援の総合調整や医療データ管理等に貢献をしているところでございます。  今後、同調査の結果も踏まえまして、モルドバ支援グループや、四月五日に立ち上げられましたモルドバ支援プラットフォーム、これとも連携しながら、既に実施中の計二億ドルの緊急人道支援に加えて、モルドバのニーズに応える形で二国間支援を実施できるよう、具体的な内容を詰めてまいりたいと考えております。

穀田委員

 そういう点を詰めていただきたいと思います。  次に、防衛省の陸上幕僚監部が作成した「陸上自衛隊の今後の取組み」と題する資料について質問します。  私は、本委員会でこれまで二度にわたり、陸上幕僚監部が二〇二〇年二月四日の記者向けの勉強会資料で、「予想される新たな戦いの様相」として、反戦デモや報道をテロやサイバー攻撃などと同列視し、グレーゾーンの事態に明示していた問題を質問しました。  鬼木副大臣は、前回の質疑で、この陸幕資料の記述について、誤解を招く表現であり、その意味において不適切だったと考えていると答弁されました。その後、松野官房長官や岸防衛大臣もそれぞれ記者会見で同じ見解を表明しています。  しかし、問題は、誤解を招いたということが不適切なのではありません。反戦デモや報道という憲法二十一条で保障された正当な権利を、自らの主張を受け入れるよう相手に強要するものとして敵視すること自体が極めて不適切で重大なんだと私は主張しているところです。そうした政府の根本認識が問われている問題だということをまず指摘しておきたいと思います。  そこで、鬼木防衛副大臣に聞きます。  鬼木副大臣は、三月三十日の答弁で、反戦デモと記した修正前の資料が保存期間一年であるにもかかわらず、記者勉強会翌日の二〇二〇年二月五日に回収した、その日に過って廃棄したと推定していると説明されました。防衛省ではこの問題について調査を実施していますが、総括文書管理者などに報告した年月日を述べてほしいと思います。

鬼木副大臣

 お答えします。  令和二年二月四日の記者勉強会で配付した修正前の資料を誤廃棄として総括文書管理者などに報告した件名及び年月日については、一、陸上幕僚監部から総括文書管理者に第一報を行った日が令和三年九月二十四日、二、防衛省から内閣府へ第一報を行った日が令和三年九月二十八日、三、陸上幕僚監部から総括文書管理者に調査の報告を行った日が令和三年十一月十七日、四、防衛省から内閣府に最終報告を行った日が令和四年一月七日となっております。

穀田委員

 防衛省が四月四日に回答した、配付資料の一枚目にあるとおりだと確認します。これですね。  防衛省は、先日、私の資料要求に対して、今答弁にあった四つの年月日ごとの調査文書を提出しています、これぐらいになりますけれども。全部で十三ページあります。  そこで、配付資料の二枚目は、二〇二一年九月二十四日に陸上幕僚監部から総括文書管理者の大臣官房長に第一報を行った際の文書であります。これを見ていただければ分かります。  これを見ると、防衛省の内局では、この件の概要報告を当時の防衛大臣に行い、大臣想定を作成していたことなどが記されています。  問題は、「陸幕監理部としての対応」とある箇所に「行政文書を誤廃棄したものとして処置」と記されていることであります。この記述からも、防衛省の調査は初めから誤廃棄ありきで処理することで進められていたのではありませんか。

鬼木副大臣

 令和三年九月二十四日に陸上幕僚監部が総括文書管理者に第一報を行った際に用いられた、行政文書の情報公開請求に係る対応についてという資料にある「陸幕監理部としての対応」には「行政文書を誤廃棄したものとして処置」と記載されております。  修正前の資料については、陸上幕僚監部が、保存期間が一年未満の行政文書として認識して、既に廃棄しておりました。このため、令和三年七月二十六日の情報公開請求に対しては、不存在として回答するところで調整していたところ、総括文書管理者たる大臣官房長から、修正内容は内容の修正に当たることから、当該資料は保存期間を一年未満とすることができる類型に該当しないものであり、廃棄は適切ではない旨指摘したところであり、当該記述はこれを誤廃棄と評価すべきとしたものであります。

穀田委員

 防衛省の調査は第一報から誤廃棄ありきで、処置するという言葉、辞書を引いたことありますか。これ、片をつけると出るんですよね。だから、誤廃棄で片をつけるということで進められていたということが大事だと私は思います、見逃せないと。  防衛省の説明では、反戦デモと記した修正前の原本の電子データに修正後の内容を上書き保存したため、修正前の電子データが廃棄されたとしています。  配付資料の三枚目は、今年一月七日に防衛省から内閣府に最終報告を行った際の文書の一部であります。  ここには、陸幕防衛班の担当者が防衛班長の指導を受け、陸上幕僚監部の共有フォルダ上の元データを用いて内容の修正を行い、上書き保存したとあります。  この防衛班長とは誰ですか。

鬼木副大臣

 防衛班長がどなたかという御質問だと思います。  三浦英彦氏であります。

穀田委員

 三浦班長といえば、私が前回の質問で指摘した、反戦デモがどのような組織の組成になっているか分からないと述べた人物であります。  また、同じく配付資料の三枚目には、陸幕広報室の報道係が修正前の資料を回収するとともに、修正後の資料を新たに配付し、回収した資料は報道係が広報室において細断したとあります。  回収した修正前の資料を細断した、廃棄した日が分かる機械的な記録は残っているんですか。

鬼木副大臣

 細断した日が分かる機械的な資料があるかという御質問だと思いますが、細断した日が機械的に分かる資料というものはありません。

穀田委員

 細断した日、廃棄した日が分かる機械的な、前の方しか言ってはらへんけど、しゃあないよね、ちゃんと聞いてはらへんから。  防衛省が四月四日に回答した配付資料の一枚目にあるように、回収した修正前の資料については、電子データのように廃棄日が分かる機械的な記録が残っていないので、関係者の聞き取り等から、二月五日に廃棄したものと考えているとあるわけですね。つまり、廃棄日を裏づける記録すら残していないということになるわけですね。  このように、提出された調査文書を見ると、陸幕の担当者が、反戦デモと記した修正前の資料をいかに廃棄ありきで拙速に処理していたかが分かる。  私は、三月三十日の質問で、修正前の資料を回収したその日に即日廃棄するなど、故意に廃棄した、隠蔽したとしか考えられないと指摘しましたが、調査文書の内容は、まさにその疑いがますます強まったということが言えると思います。  私は、前回の質問で、陸上自衛隊のトップの湯浅陸幕長が、二〇一九年十月十一日に行われた公益財団法人偕行社の総会で、反戦デモや報道を、「反戦気運などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性がある」ものと発言していたことを指摘しました。この湯浅陸幕長の発言について、私は事実関係の調査を強く求めましたが、鬼木副大臣は、調査する必要があるとは考えていないと繰り返しました。  しかし、自衛隊員が部外で意見発表する場合、その手続について定めた防衛大臣の通達があります。我が党のしんぶん赤旗の調査で明らかになったものであります。  防衛大臣の通達では、自衛隊員が職務に関係する意見を部外に発表する際には、あらかじめ文書をもって届け出ることが定められており、各幕僚長に当たっては、大臣官房長に対して通報するとあります。したがって、湯浅陸幕長が偕行社の総会で行った講演内容も事前に届出が行われており、湯浅氏が反戦デモをグレーゾーンの事態に位置づける発言をしていたことも把握していたのではありませんか。

鬼木副大臣

 偕行社講演については、陸幕長から官房長宛てに事前に通報がなされたと承知しております。  以上です。

穀田委員

 なされておる事実は、それはそのとおりなんですよ。だから、私が言っているのは、当然そういうことがあるんだが、中身、問題は、そういう点でいうと、事前の届出が行われており、ここは確認しておると言っているんです。問題は、反戦デモをグレーゾーンの事態に位置づける発言をしていたことも把握しているんじゃないのかと言っているんですよ。

鬼木副大臣

 当該通報の際に添付された資料には、グレーゾーンの事態の例として、反戦デモの記述があったと承知しております。

穀田委員

 あったということじゃないですか。極めて重大な問題だと私は思いますよ。  つまり、陸幕長がそういう講演を行っていたということに対して、調査する必要がないとまで言っている。そういう発言を不適切だといった発言をしていながら、それの調査を求めたら、しないと言っている。聞いてみたら、ちゃんと通知があった。そして、通知の中にその内容も書いてあったということ。要するに、事前に知っていたということは極めて重要じゃないですか。  だから、その意味でいいますと、前回の質問で、鬼木副大臣が調査する必要がないと拒否したのは、既に、湯浅陸幕長が反戦デモをグレーゾーンの事態に位置づけたと発言していることを防衛省として把握していた、だからかたくなに私の調査要求を拒否したということになるではありませんか。  防衛省は、湯浅陸幕長の、反戦デモや報道が「反戦気運などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性がある」、この内容の講演内容、これを是としているわけですね。

鬼木副大臣

 その表現については是としておりません。陸上自衛隊として、これまで、合法的に行われる反戦デモをグレーゾーンの事態の一つとして位置づけたことはありません。  反戦デモについて、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーンの事態の例として記述したことは誤解を招く表現であり、その意味において不適切だったと考えております。  その上で、重要なことは、対外説明に際して、このような誤解を招く表現を使用しないことであると考えており、網羅的な調査が必要であるとは考えておりません。  防衛省としては、正確で分かりやすい情報提供に努めてまいります。

穀田委員

 そんな空論を言ってもあきませんよ。  まず、陸幕長がそういう反戦デモというのは国家崩壊に向かわせてしまう危険性がある、こういう講演内容をやることを知っていて、是正しなかったということは事実じゃないですか。そうでしょう。是正していないんだから、受け取っているのやから。  湯浅氏は当時陸幕長の立場で、陸上自衛隊を代表してやっているわけです。しかも、その内容は、今言ったように、防衛省は事前に把握していたわけで、その意味でいいますと、防衛省の考え方であるということは明白だと思います。  私は、前回の質問で、湯浅陸幕長が、偕行社の総会だけでなく、二〇二〇年一月に東京都防衛協会が開いた会合でも、陸上自衛隊の今後の取組と題する講演を行っていることを指摘し、先ほどの配付資料の三枚目の、防衛省から内閣府に行った最終報告の文書によれば、記者勉強会で配付した修正前の「陸上自衛隊の今後の取組み」と題する資料は、陸幕防衛班が令和二年一月に陸上幕僚長が部外講演をした際の資料を参考に作成したと書いているわけですよね。  この湯浅陸幕長が部外で行った講演とは、二〇二〇年一月二十日に東京都防衛協会などが共催した新春防衛講演のことではないんですか。

鬼木副大臣

 御指摘の陸上幕僚長の部外講演については、令和二年一月二十日に、当時の陸上幕僚長がホテルグランドヒル市ケ谷において、新春防衛講演という名称で実施したものであります。

穀田委員

 簡単に。この日の講演でも湯浅陸幕長は、反戦デモをグレーゾーンの事態に位置づける発言を行っているのではないですか。

鬼木副大臣

 新春防衛講演の資料には、グレーゾーンの事態の例として、反戦デモの記述があります。

穀田委員

 もうずっとあるわけですよね。これ、お分かりかのように、反戦デモという内容について、陸幕長がいろいろなところで講演しているということで、しかも、それを基礎にこの資料を作ったというのが今回の大問題なわけですよね。  もう一度言いますと、湯浅陸幕長がこの時期の講演で使用した資料というのは、二月四日、二月五日の一連のことを私、指摘しましたよね、副大臣。修正前のものしか存在しないわけですよね、当然。二月四日、五日のことなんですから、その年の一月二十日なわけだから。したがって、湯浅陸幕長が反戦デモとして記された資料を使っていたことは間違いないと今もお互いに確認しました。  陸幕長が、二〇二〇年の一月二十日の講演で使用した反戦デモの資料は、記者勉強会で配付した資料の大本になったものであります。この湯浅陸幕長が使った資料のデータは、反戦デモの記述を修正しているんですか。

鬼木副大臣

 そのとき使われた文書は、実際に使われた行政資料ですので、修正せず、そのまま存在しております。

穀田委員

 それはえらいことじゃありませんか。  我が党のしんぶん赤旗日曜版の調査では、記者勉強会から八か月後の二〇二〇年十月、北海道の釧路ロータリークラブの例会で、釧路駐屯地の幹部が修正前の、反戦デモと記された資料を使って講演しています。そのほかにも、同じ年の九月に開かれた札幌大通倫理法人会のセミナーで、第五二普通科連隊の連隊長が同じテーマで講演している。  こうした講演で幹部が使った資料が、湯浅陸幕長による二〇二〇年一月の講演で使用したデータを基に作成されたことは疑いない。反戦デモの記述を暴徒化したデモに修正したのは記者勉強会限りの話にすぎないということがこれで明らかになった。  事前も事後も、その後もずっと訂正もしていない、修正もしていないということからしますと、まさにこの反戦デモの記述を修正したのは記者勉強会限りの話にすぎないということがはっきりしたと言えると思うんです。  陸上幕僚監部が定める内規によれば、部外に対する意見発表の届出に際し添付する原稿や配付資料の保存期間は三年間と定められています。つまり、今でも……

城内委員長

 穀田君、申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。

穀田委員

 はい。  湯浅陸幕長が使用した資料は保存されているはずです。  副大臣の方も時間の省略に協力してほしいものだと思います。  外務委員長、本委員会に今の資料を資料として提出するよう求めます。

城内委員長

 後刻、理事会にて協議いたします。

穀田委員

 終わります。