ウクライナ情勢/陸幕長が「反戦デモ」敵視講演

2022年04月6日

穀田委員

 日本共産党の穀田恵二です。  初めに、ウクライナ情勢について質問します。  ウクライナではロシア軍による民間人への残虐行為が明らかとなり、世界中が衝撃を受けています。ロシア軍が地上部隊を撤収させたウクライナの首都キーウ周辺で、軍服を着ておらず、武器も持っていない、市民と見られる人々が路上で多数死亡しているのが見つかった。ウクライナ司法当局は三日、これまでに各地で四百人以上の民間人の遺体が発見されたと発表しています。民間人殺害は断じて許されない国際法違反の非人道的行為であり、我が党は、ロシア軍による残虐な戦争行為を強く非難するものであります。  林大臣のこの件についての所見を伺いたいと思います。

林国務大臣

 ウクライナ政府の発表や各種報道によりまして、ロシア軍が占拠していたキーウ近郊の地域において、無辜の民間人が多数殺害されるなど、残虐な行為が繰り広げられていたことが明らかになっております。  我が国としては、ロシア軍の行為によりウクライナにおいて多くの市民が犠牲になっていることを極めて深刻に受け止め、強い衝撃を受けております。こうした無辜の民間人の殺害は、重大な国際人道法違反であり、断じて許されず、厳しく非難をいたします。  こうした残虐な行為の真相は明らかにされなければならず、ロシアの責任は厳しく問われなければならないと考えます。我が国としても、戦争犯罪が行われたと考えられることを理由に、ウクライナの事態を国際刑事裁判所、ICCに付託しておりまして、ICC検察官による捜査の進展を期待をしておるところでございます。

穀田委員

 キーウ北西のブチャの市長は、三百人以上が殺されたと告発しています。報道によると、道のあらゆる場所に遺体が横たわっていた、建物の地下室では、体の一部が切断され、拷問されたと見られる子供の遺体もあった、ある人は自転車に乗ったまま横倒れに、またある人は買物袋を握り締め、路上で息絶えていたと伝えています。  今大臣からもお話がありましたけれども、ロシア軍による残虐行為の真相を明らかにする必要があります。国連のグテレス事務総長が、独立した調査によって責任を明確にすることが不可欠だと指摘していることは極めて重要だと私は考えます。  ロシアは調査を受け入れるべきだと考えますが、この件に関しての大臣の考えを伺いたいと思います。

林国務大臣

 我が国といたしましては、グテーレス国連事務総長の声明も踏まえつつ、引き続き、国連を含む国際社会と緊密に意思疎通を行って対応してまいりたいと考えております。  無辜の民間人の殺害は重大な国際人道法違反であり、断じて許されません。こうした残虐な行為の真相は明らかにされなければならず、ロシアの責任は厳しく問われなければならないと思っております。  繰り返しになりますが、戦争犯罪が行われたと考えることを理由にして、ウクライナの事態を国際刑事裁判所に付託しており、このICCの検察官による独立した捜査の進展を期待しております。

穀田委員

 後半は全く同じことを二回繰り返しているんですけれども。  ロシア軍による国際人道法に反する犯罪行為は、その責任を厳しく追及されなければならない。ロシアはそのことについて受け入れるということを我々としては要求したいと思っています。  次に、前回の質疑で取り上げた、防衛省の陸上幕僚監部が作成した資料について聞きます。  私は、三月三十日の本委員会で、今皆さんにお配りしている配付資料一枚目、これにあるように、陸上幕僚監部が二〇二〇年二月四日の記者勉強会で配付した「陸上自衛隊の今後の取組み」と題する資料で、「予想される新たな戦いの様相」として、反戦デモをテロやサイバー攻撃と同列視し、グレーゾーンの事態に明示していた問題を質問しました。  その際、鬼木防衛副大臣は、反戦デモという表記については、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーンの事態の例として記述したことは誤解を招く表現であったと答弁されました。  そこで、改めて聞きますが、反戦デモをテロと同列視し、自らの主張を受け入れるよう相手に強要するものとしてグレーゾーンの事態に明示したことは、不適切だったと考えているんですか。

鬼木副大臣

 お答えいたします。  御指摘の、令和二年二月の陸上幕僚監部による記者勉強会において使用された資料に記載された反戦デモについて、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーンの事態の例として記述したことは誤解を招く表現であり、その意味において不適切であったと考えております。  防衛省としては、対外説明に際して、このような誤解を招く表現を使用せず、正確で分かりやすい情報提供に努めてまいります。

穀田委員

 この間、官房長官も、この問題について指摘を受けたときには、相変わらず、誤解を招く表現だったとばかり強弁していたことは記憶に新しいところです。  今日は、改めて、不適切だったということを認めるということですね。

鬼木副大臣

 はい。合法に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーン事態の例として記述したということは誤解を招く表現であり、その意味において不適切であると考えております。

穀田委員

 じゃ、もう一度聞きますけれども、鬼木副大臣は前回の質疑で、反戦デモの記述については、二月四日の勉強会で参加者から用語が不適切ではないかとの指摘を受けた、このため、資料を一度回収して、暴徒化したデモに修正した上で、翌二月五日に再配付したと答弁されました。  つまり、参加者から反戦デモの記述は不適切だと指摘されなければ、修正する考えは毛頭なかったということになるわけですね。(鬼木副大臣「済みません、もう一度お願いします」と呼ぶ)

城内委員長

 じゃ、穀田恵二君、再度質問をお願いします。

穀田委員

 参加者から、記者勉強会に参加した人からこの反戦デモの記述は不適切だと指摘されなければ、修正する考えは毛頭なかったということですかと聞いているんです。四日と五日の件ですよね。

鬼木副大臣

 毛頭なかったというよりも、その表記について不適切ではないかという御指摘はそうだと考えて、修正させていただいたということであります。

穀田委員

 明確にちょっと違うんやね。要するに、誤解を受けるおそれがあるからと言っているから、その点で不適切だという質問があって、そうは思っていなかったんだよね、当時。当時思っていなかったことは明らかなんですよね。分かりますか。だから、修正したって、そう言うてはんねやから。副大臣が答弁されたことと、当時、担当官が説明したことは違う話をしていることを指摘しているわけですよ。  要するに、防衛省としては、反戦デモの記述は誤解を招くということについては、それぞれの性格の違いをちょっと言って、適当に話を曖昧にしているということが特徴だと思うんですね。  そこで、資料の二枚目を御覧いただきたいと思うんです。  二月四日の勉強会で、参加者から反戦デモの記述が不適切だと指摘された際に、陸幕防衛課の三浦英彦防衛班長は、国内で反戦デモが行われたとき、例えば、どのようなやり方がされているのかというのはなかなか難しいのではないかと考える、それは、二〇一四年のウクライナの状況を踏まえれば、反戦デモがどのような組織の組成になっているのかというのはなかなか分かりかねるところがあると説明しています。これ、出ていますよね。  副大臣、三浦班長が二月四日の勉強会でこのように参加者に説明したのは間違いありませんね。

鬼木副大臣

 そのやり取りについて、事実関係をお答えいたします。  御指摘の点について、令和二年二月四日に陸幕が主催した記者勉強会において、陸幕担当者が記者からの質問に対し、国内で反戦デモが行われたとき、例えば二〇一四年、ウクライナの状況を踏まえると、反戦デモがどのような組織の組成になっているのか分かりかねるところがあります、一義的にはこういった行為は法執行機関が対処すべきですが、軍事力を使っているのかいないのか分からない、我が国の治安を乱すような行為への対処を考えていかなければならないと思いますと発言したことを確認いたしております。  また、この発言に対し、記者から、基本的にはデモは平和裏に終わるものであり、デモをグレーゾーンに認定するのは乱暴かと、いかにも破壊活動をするように扱うのは危ないのではないかと思いますと質問があり、これに対し、陸幕担当者が、同意です、したがいまして、破壊活動とは区分して記載させていただいていますが、反戦デモだから危険なものかという指摘に関しては、全くそのとおりだと思いますので、表現は考えさせてくださいと発言したことを確認いたしました。

穀田委員

 当日の勉強会で、今、この文書を見せましたけれども、これはそのとおりだということはもう認めた。  鬼木副大臣は、前回の質疑で、防衛省としての考えではないと即答弁されたんですね、この事実を示した瞬間に。それには私、驚きましたけれども。三浦氏は、当時、陸上幕僚監部の防衛班長の立場で発言しています。三浦班長は、反戦デモと記した理由について、ここに書いていますように、二〇一四年のウクライナの状況を挙げて、反戦デモがどのような組織の組成になっているのか分からないからだと正当化していたわけですよね。それを参加者から指摘されて、まずいと気づいたにすぎないということが今の話でお分かりいただけると思うんですね。  また、資料を再配付した翌二月五日の勉強会では、防衛班の富山武史氏が、反戦デモの記述を修正、回収するに当たり、我々陸自としまして、グレーゾーンの事態というのは何が起こるか分からない事態だと想定しておりますので、他国の諜報員の方とかに扇動されたデモというのがエスカレーションすることによって我が国の主権が脅かされる可能性があるという意図で使用していると説明しています。  富山氏が二月五日の勉強会でこのように説明したことも事実ですね。

鬼木副大臣

 現時点におきまして、委員御指摘のように、陸幕から、我々陸自としまして、グレーゾーンの事態というのは何が起こるか分からない事態だと想定しておりますので、他国の諜報員の方とかに扇動されたデモというのがエスカレーションすることによって我が国の主権が脅かされる可能性があるという意図で使用しているとの発言があったとの事実は確認できておりません。  現在、引き続き状況について確認しているところであり、準備ができましたら回答したいと考えております。

穀田委員

 副大臣、この問題、二つ、私は出して、四月の一日に、事実関係を説明されたしということを述べたわけです。そのことについて説明に来た防衛省の方々は、いまだ特定できていないというお話で、昨日の夜十時過ぎまで特定できていないというお話でした。  そこで、私は言ったんです。この事実というのは、二〇二〇年の二月四日、二月五日、まず日にちが明らかだ。誰が述べているか、三浦英彦さんと富山武史さんが述べておられる。そして、内容も明らかにしている。だから、この事実を調べようと思うと、特定された日にち、誰が、内容、全部私は明らかにしていて、片方、二月四日の分だけは話をしたけれども、二月五日の分が分からないと。しかも、四月の一日に要請し、ずっと待っていたけれども来なかった。  この経過は全く不届きと言わなければなりませんし、二月の五日分が明らかにならない、不可解ではありませんか。

鬼木副大臣

 二月の五日ですね、二月の五日分。

穀田委員

 これは言っているんだから。二月の五日です。

鬼木副大臣

 二月の五日につきましては、二月四日の記者勉強会での御指摘を受け、修正した資料を再度配付したものであり、記者勉強会といったものではなかったと承知しております。  その上で、現時点においては、委員御指摘のように、発言の部分、ちょっと省略しますが、その発言があったという事実が確認できていないということでございます。

穀田委員

 本当に不可解と思いませんか。  二月の四日、二月の五日、お名前も特定し、どこでという話も特定しているということで、調べることができない。そんな、防衛省って事実を特定することに五日も六日もかかって、たかだかこんな話の内容が分からぬというようなことがあるの。本当に情けないと言わなければならないと一言言っておきます。  富山氏の発言は、反戦デモがエスカレーションすることによって我が国の主権を脅かす可能性がある、そこまで言っているわけですよね。  だから、副大臣、デモの違いをいろいろ言って話をそらそうとしているけれども、話は明確なんですよ。反戦デモがエスカレーションすることによって我が国の主権を脅かす可能性があると強調して、グレーゾーンの事態に明示したことを当然視しているというのがこの問題の中心なんですよ。つまり、防衛班の二人の説明は、反戦デモがいつ暴徒化するか分からない、テロと同じ危険なものだという防衛省の認識を端的に示しているものだと言わなければなりません。  しかも、反戦デモと記した修正前の「陸上自衛隊の今後の取組み」、この間明らかにしたこれですよね、この資料は記者勉強会以外にも使われた疑いがある。我が党のしんぶん赤旗の調査で、二〇一九年十月十一日に行われた公益財団法人偕行社の総会で、当時の湯浅陸幕長が講演を行っていることが分かりました。このときにも問題の資料を使っているのではありませんか。

鬼木副大臣

 昨日通告いただきました御指摘の資料について、現時点で確認できておらず、お答えすることは困難であります。  いずれにせよ、陸幕の記者勉強会の資料に記載された反戦デモについて、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーン事態の例として記述したことは誤解を招く表現であり、その意味において不適切であったと考えております。  防衛省といたしましては、対外説明に際して、このような誤解を招く表現を使用しないことが重要であると考えており、正確で分かりやすい情報提供に努めてまいります。

穀田委員

 合法、非合法という問題を今どき言う話がありますか。反戦デモが非合法な場合があるのか。区分けして話をそらしたり、そういうことを見ているとしたら重大問題じゃないですか。反戦デモで非合法って、どういうデモなんですか。言えますか、そんなこと。言ってごらんなさいよ、じゃ。

鬼木副大臣

 非合法ということは、その中で暴力的な行為等がある場合には非合法、法律に触れるということだと思いますので、反戦デモ自体は問題があるということではないということであります。

穀田委員

 話が全然かみ合うてへんというか、大体、まとまってへんというのがよう分かりましたわ。  昨日聞いたから分からぬと。そんなこと、調べればすぐ分かりますよ。  偕行社が発行する雑誌「偕行」、これですよ、二〇一九年十二月号、これを見ますと、湯浅陸幕長は、資料と同じ、「陸上自衛隊の今後の取組み」と題する講演を行っていまして、そこで、グレーゾーンの事態について、「これらは報道戦、テロ行為、扇動による反戦デモなど多様な形態がある。この事態の特徴は、国家が非常事態であると認識する以前に反戦気運などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性があることである。」と述べているんですよね。よろしいか。「反戦気運などを高めて国家崩壊へ向かわせてしまう危険性がある」、ここまで言っているんですよ。  だから、この内容からしましても、湯浅氏が講演で修正前の資料を使っていたのは疑いない。分かりますやろ。そうしかでけへんわね。誰が考えても分かるわけですよ。  しかも、湯浅陸幕長は、この偕行社の講演以外にも、例えば東京都防衛協会で、二〇二〇年一月に同じテーマで講演しているわけです。  鬼木副大臣、反戦デモと記した修正前の資料について、先ほど、不適切だったと言いましたけれども、陸上自衛隊のトップ、陸幕長がその修正前の資料を使ってあちこちで講演している疑いがある。今、この「偕行」という話も知らぬと言うてはったけど、それやったら、こういうことも知らぬのやから、事実関係を調査して公表することはできますね。

鬼木副大臣

 防衛省として、これまで、合法的に行われる反戦デモをグレーゾーンの事態の一つとして位置づけたということはございません。したがって、防衛省として、反戦デモについて、そうした記述の有無を網羅的に調査する必要があるとは考えておりません。  いずれにしても、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーン事態の例として記述したことは誤解を招く表現であり、その意味において不適切だったと考えておりますので、防衛省としては、こうした誤解を招く表現がないよう、正確で分かりやすい情報提供に努めてまいります。

穀田委員

 質問に答えていないじゃないですか。私は偕行社の話をして、そうしたら、鬼木副大臣は、昨日の夜やったから、質問が夜あったので分からへんと言ったんでしょう。これは知らぬと、まだ。言ったんでしょう。それまで覚えてへんとは、さっき言ったことやんか。調べられへんかったと言っているんでしょう。

鬼木副大臣

 昨日の時点で知っていたか、知らなかったかというと、知らなかったと。

穀田委員

 そういうふうに聞いてへんですやん。これ、知っているかと、こんなことをやっているのを御存じかと私聞いたら、昨日聞いたばかりやから分からぬと言ったんじゃないですか。そうでしょう。

鬼木副大臣

 そうです、存じません。はい。

穀田委員

 だから、だとしたら、この「偕行」という、その文章の中に、そういう説明をしている、陸幕のトップがやっている、同じことを言っている。しかも、その内容が、いわば修正される前の記述でやっているんだろうと。しかも、私が今言ったように、ほかでもやっている。それを事実かと聞いているわけですよ。分からぬのでしょう、今のところ。分からぬのやったら、しかし、重大だから、その時点では修正前のやつをやっている可能性がある、だから調べたらどうやと言っているわけです。調べますな。

鬼木副大臣

 防衛省として、これらの合法的な反戦デモを……(穀田委員「そこを聞いてへんて」と呼ぶ)なので、グレーゾーンと位置づけたことはありませんので、したがって、そうした記述の網羅を具体的に行う必要があるとは考えておりません。

城内委員長

 申合せの時間が経過しております。御協力をお願いいたします。

穀田委員

 協力しているんですよ。協力していないのはあっちなんですよ。  だって、二〇二〇年の二月にやった話をしたんじゃないですか、私。その前に、二〇一九年にやっているじゃないかと。そうしたら、修正前のでやっていることは事実じゃないですか。  日にちを言っているんだよ、私。二〇二〇年の二月四日、出したんでしょう。五日に修正したんでしょう。ところが、陸幕長は二〇一九年にやっていると。修正前のやつでやっているしかないじゃないですか。その事実関係を聞いているのに、話を別なことにしたらあかんよ、あんた。あんたってあかんけれども。

城内委員長

 既に持ち時間が経過しておりますので、質疑を終了してください。

穀田委員

 ですから、これはきちんと公表すべきだと。一言言ってくださいよ、調査しろと。

城内委員長

 鬼木防衛副大臣、答弁は御簡潔にお願いいたします。

鬼木副大臣

 防衛省としては、合法的に行われる反戦デモをグレーゾーンの事態と位置づけておりませんので、調査する必要は考えておりません。(穀田委員「最後、一言だけ」と呼ぶ)

城内委員長

 じゃ、最後、一言短く。もう時間が経過しておりますので。

穀田委員

 余りにも、それはほうけているよ。  この資料には、反戦デモに加えて報道がグレーゾーンの事態と明示されているわけですよ。しかし、反戦デモや報道は、憲法二十一条で保障された表現の自由ですよ。反戦平和の主張をテロと同列視して敵視することは、憲法十九条の思想、良心の自由を侵害する行為と言わなければなりません。それを、陸上自衛隊のトップの陸幕長が先頭に立って喧伝している、まさに憲法に抵触する重大問題だということを改めて指摘し、調査を要求します。  以上です。