ウクライナ情勢/防衛省が「反戦デモ」敵視

2022年03月30日

穀田委員

 日本共産党の穀田恵二です。  国連総会は、先週二十四日、ロシアのウクライナ侵略に関する緊急特別会合で、ロシア軍による民間人や民間施設への無差別攻撃を非難し、即時停止を求める決議案を百四十か国の圧倒的賛成多数で採択しました。  決議は、ロシア軍の即時、完全、無条件の撤退を迫った三月二日の総会決議の完全履行を求めるとともに、敵対行為の即時停止、ジュネーブ諸条約等の国際人道法の尊重、民間人保護、病院等民間施設の保護、ロシア軍による都市包囲の解除など、深刻な人道危機を打開することを強く求めています。  フランスとメキシコが推進し、五大陸全てにわたる九十か国が共同提案国に加わって採択された今回の決議は、ロシアによる侵略と戦争犯罪を非難し、その中止を求める国際社会の揺るがぬ意思を示したものと考えますが、林大臣の所見をお伺いしたいと思います。

林国務大臣

 現地時間の三月二十四日でございます、国連総会の緊急特別会合におきまして、ウクライナ及びEU等が主導する、ウクライナに対する侵略の人道上の影響、この総会決議が、我が国を含む九十か国が共同提案国となりまして、百四十票の賛成を得て採択をされました。  この決議と、これに先立ち、今委員からもお触れいただきました、現地時間三月二日に採択されたウクライナへの侵略を非難する決議は、共に百四十か国以上の賛成票を得て採択をされたところでございます。  このことは、ロシアのウクライナ侵略を非難し、また、それによる悪化するウクライナ人道状況への迅速な対処の重要性に関する国際社会の大多数の強い意思、これを重ねて示したものとして重く受け止めておるところでございます。  我が国は、これらの決議の採択に向けて各国へ積極的に働きかけてきたところであり、この決議が速やかに実施されることが重要であると考えております。  政府としては、引き続き、G7を始めとする国際社会と緊密に連携していく考えであり、国連においても、我が国の基本的立場を踏まえ、積極的に貢献してまいりたいと考えております。

穀田委員

 我が党は、今回の決議の採択を心から歓迎するとともに、ロシアが国際社会の総意に従うことを強く求めます。  今回の決議は、第一項といいますか第一番目に、先ほど大臣もお話ありましたけれども、三月二日の国連総会の決議の完全履行を求めています。これは非常に重要なことだと私は思います。  また、オーストリアは、次のように国連の代表が述べています。我々はどんな軍事同盟にも属していない中立国だ、中立とは、国際法違反に直面し、何らの立場も取らないということではない、被害者と侵略者をはっきり区別する決議案を私たちは支持すると述べ、中立とは侵略の傍観者になることではないと強調しています。私も、この意見に強く共感するものであります。  決議採択の過程で、ロシアによる侵略という事態の性格を曖昧にし、ロシアを名指しせずに、全ての当事者による敵対行為の即時停止だけを求める動きも浮上しましたが、ロシア提出の安保理決議案はロシア、中国のみの賛成で否決され、ロシアが支持する南アフリカ提出の総会決議案は、多数の反対で、採択にかけられないまま廃案となりました。ロシアによる侵略という事態の本質に目をつぶるこの種の議論が国連総会の場で通用しなかったことは、国際社会でのロシアの孤立ぶりを明確に示すものとして、私は極めて重要な到達点だと考えています。  ロシアによる侵略から一か月。ウクライナのゼレンスキー大統領は二十四日、世界に向けて反戦デモを呼びかけました。こうした中、今、世界各地で、ロシアの侵略を非難し、ウクライナに連帯する集会、デモが広がりを見せています。  お配りした資料、ちょっと縮小していますのでなかなか見にくいかと思いますけれども、これにもありますけれども、ロンドンでは数万人が反戦デモに参加し、ウクライナと共にあると訴えました。  ベルリンでは、十万人がデモ行進を行いました。  スペインのマドリードで行われた反戦デモでは、参加者が、交渉によって平和を目指す外交努力を強化すべきだと訴えました。  バンコクやニューヨークでは、犠牲者を追悼し、ロシア軍の無差別攻撃に怒りの声が上がっています。  同時に、ロシア国内でも大きな動きがありまして、反戦デモが行われています。  プラハでは、チェコ在住の数千人のロシア人が、私たちがロシア人であるからといって自動的に戦争を支持するわけではない、私たちは戦争に反対だとデモ行進を行っています。  翻って日本を見ますと、日本でも、全国各地で平和を求める取組が続いています。渋谷区で行われた反戦デモには数千人が参加し、また、港区のロシア大使館前では、中学、高校の生徒たちが抗議集会を開き、なぜウクライナの人たちが悲しまなければならないのか、私たちは抗議するとの声を上げています。  林大臣、今最も大事なことは、世界の多くの国々と市民が、侵略やめよ、国連憲章を守れ、この一点で声を上げ、力を合わせて、そうした国際世論でロシアのプーチン政権を包囲し、孤立させることではないでしょうか。御所見を伺いたいと思います。

林国務大臣

 今回のロシアによるウクライナ侵略、これは、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をいたします。  各国がロシアの動向に関する見通しや立場を積極的に発信し、国際社会に対して連帯を訴えてきたことにより、ウクライナ危機への対応に当たって、G7を始めとする国際社会において、今委員からも御紹介もいただきましたけれども、非常に広範な連帯が生まれていると考えております。  我が国は、一刻も早くロシアのウクライナ侵略を止めさせ、ロシア軍を撤退させるために、G7各国、国際社会とともにロシアに対して強力な制裁措置を取っていくことが必要だと考え、迅速に厳しい措置を打ち出してきているところでございます。  また、岸田総理からは、G7首脳会合等の場で、我が国が追加の制裁措置を行っていくことを説明をいたしまして、高く評価をされたところでございます。  我が国としては、今後とも、様々な機会、手段を通じて我が国の立場を明確に発信するとともに、国際社会と緊密に連携して、一層の国際世論の喚起、これを行ってまいりたいと考えております。

穀田委員

 大臣が最後にお話あったように、国際世論を喚起していく、やはり国際世論で包囲していくということ以外に道はない、そのために私たちも力を尽くしたい。  前回、前々回でしたか、大臣に、あわせて、各国に対する働きかけが重要だということを私は申しました。  私たち日本共産党として独自に、この間も述べましたように、働きかけを行い、さらに、この間はロシア駐日大使と話合いをし、この暴挙をやめよということを申し伝え、とりわけ、いわば今日の国連憲章違反の事態に対する厳しい批判を堂々と訴えてきたところであります。  そこで、鬼木防衛副大臣に聞きますが、今、何よりも大事なことは、ウクライナ侵略やめよの一点で国際社会が力を合わせ、先ほど言いましたように、世論でプーチン政権を包囲し、孤立させることが大事だと思います。ところが、問題は、こうした市民の平和を求める行動を防衛省がどのように捉えているかということであります。  それを示す資料が三枚目ですね。これを見ていただくと分かります。  この資料、陸上幕僚監部が作成した「陸上自衛隊の今後の取組み」、本体はこれですけれども、今、三枚目に示したのはこの一部であります。二〇二〇年二月四日に防衛省で行われた記者勉強会で使われたもので、私の資料要求に対し、先日、防衛省が提出したものであります。資料には、「予想される新たな戦いの様相」として、グレーゾーンの事態に関する記述があります。そこには、「武力攻撃に至らない様々な手段により、自らの主張を受け入れるよう相手に強要」するものとして、六つの事例が挙げられています。  鬼木副大臣、その六つの事例とは何か、簡単にお答えいただきたいと思います。

鬼木副大臣

 お答えします。  いわゆるグレーゾーンの事態とは、純然たる平時でも有事でもない幅広い状況を端的に表現したものであります。例えば、国家間において、領土、主権、海洋を含む経済権益などについて主張の対立があり、少なくとも一方の当事者が、武力攻撃に当たらない範囲で、実力組織などを用いて、問題に関わる地域において頻繁にプレゼンスを示すことなどにより、現状の変更を試み、自国の主張、要求の受入れを強要しようとする行為が行われる状況を言います。  その上で、御指摘の六つの記述について申し上げますと、このような行為に該当する可能性がある例として、一、事実に反する事柄を意図的に報道する行為、二、テロリストによる破壊活動、三、暴徒化した暴力を伴う非合法なデモ、四、サイバーの領域において自衛隊の活動を妨げる行為、五、領空侵犯や領海侵入といった我が国の主権を侵害する行為、六、民間の重要インフラ施設などの破壊や人員に対する襲撃、要人暗殺などの特殊部隊等による攻撃といったものを念頭に列挙したものであります。

穀田委員

 配付した資料には、グレーゾーンの事態として、今述べた六つの事例が列記されています。しかし、その中に報道が挙げられていることについては看過できません。  更に重大なのは、暴徒化したデモとある箇所であります。私が入手した資料では、こちらの資料では、暴徒化したデモとある箇所には反戦デモと書いてあります。これですね。ここに反戦デモと書いています。暴徒化したデモと反戦デモでは趣旨が大きく異なることは明らかでありますし、違ってくると思います。  鬼木副大臣、この配付した防衛省提出の資料は、反戦デモとあった箇所を暴徒化したデモに書き換えたのではありませんか。

鬼木副大臣

 経緯を御説明いたします。  令和二年二月四日に陸上幕僚監部が記者を対象に行った勉強会において、「陸上自衛隊の今後の取組み」と題する資料を配付しました。当初配付した資料には、グレーゾーン事態の例として、テロやサイバー攻撃のほか、反戦デモという記述がありましたが、参加者から、用語が不適切ではないかとの御指摘を受けました。このため、資料を一度回収して、誤解を招かないよう、暴徒化したデモと修正した上で、翌二月五日に記者に対して再度配付したと承知しております。  修正前の資料については既に廃棄しているため、今般の穀田議員からの資料要求においては、二月五日に再配付した修正後の資料を、修正箇所を、何をどう修正したと明示した上で提出させていただいたところです。  以上です。

穀田委員

 いずれにしても、そういうことを書き換えたことは認めた。だから、要するに、配付した防衛省の提出の資料は、当初、反戦デモとあった箇所を暴徒化したデモに書き換えたものだということを確認してよろしいですね。

鬼木副大臣

 ただいま御説明したとおりでございます。

穀田委員

 私が入手した書換え前の資料では、市民が平和裏に行う反戦デモを、自らの主張を受け入れるよう相手に強要する事例の一つに挙げていたことは事実だと。しかも、配付資料の下の部分にあるように、敵企図、敵の企図ですね、「グレーゾーンの事態における対応」というところに、一番上に書いていますわな、敵企図の解明と書いていますように、敵の企てとして敵視していることは明らかであります。  私が得た情報では、記者勉強会の当日、陸幕防衛課の防衛班長は、反戦デモと記した理由について次のように述べています。二〇一四年のウクライナの状況を踏まえれば、反戦デモがどのような組織の組成になっているのかということはなかなか分かりかねるところがあると説明していると私は聞いています。  鬼木副大臣、防衛省にとっては、反戦デモとは、どのような組織の組成になっているか分からない、いつ暴徒化するか分からないというものだという認識で臨んでいるわけですね。

鬼木副大臣

 そのときの発言やお考えというものについては私は承知するものでなくて、防衛省がそうした考えを持っているということではないと。  御指摘の資料に記載された反戦デモという表記については、合法的に行われている場合も含めて、一様にグレーゾーン事態の例として記述したことは誤解を招く表現であったと考え、修正をさせていただいたということであります。

穀田委員

 修正の経過を知っているということは、どういう説明を当時したか、先ほどありましたように、記者からの意見があってということを言っておられるんでしょう、言っていましたね、ということは、記者からこういう意見が出たということについて知っておられるということは、何をしゃべったかということも、当然、つかんでこなあきませんわな、普通。記者から要望が出た、だから変えた。そのときにどういう説明をしていたんやということを知らずに、のほほんとしているわけにはいかぬでしょう。  そこには、さらに、何が起こるか分からない事態、他国の諜報員などに扇動されたデモがエスカレートすることで我が国の主権が脅かされる可能性があるという意図で使用している、ここまで言っているわけですよね。だから、結局のところ、陸幕の防衛班長は、反戦デモをグレーゾーンの事態の対象に挙げたのは、さっき説明したように、反戦デモがどのような組織の組成になっているか分からないからだと説明しているわけですね。  つまり、幾ら反戦デモを暴徒化したデモと書き換えても、防衛省にとっては、今述べたように、反戦デモは、二〇一四年のウクライナ情勢のように、いつ暴徒化するか分からない、テロと同じく、主権、領土、国民を脅かす対象という認識は変わりがないということになるではありませんか。  反戦デモというのは、憲法に保障された表現の自由でありますし、それをテロと同じく、自らの主張を受け入れるよう相手に強要するものだと敵視する、極めてこれは重要だと言わなければなりません。  ですから、いつも鬼木さん、私、質問する内容を伝えていて、しかも、ちゃんとどういう記者から要望があったかまで言っているわけじゃないですか。そうしたら、どういう発言をしたかぐらい、それを知らないというのは、それは余りにも無責任と言わなければなりません。  そこで、問題はまだあります。  陸上幕僚監部は、書換え前の反戦デモと記した資料を既に廃棄したようだけれども、それはいつ、どういう理由で廃棄したんですか。

鬼木副大臣

 お尋ねの、修正前の資料の保存期間については、陸上幕僚監部において修正後の資料の保存期間を一年としており、修正前の資料も同様に一年の保存期間とするべきものであったと考えております。  また、修正前の資料を廃棄した日については、令和二年二月五日に陸上幕僚監部において当該資料を回収しており、同日中に廃棄したものと推定しております。  修正前の資料を廃棄した理由についてでありますが、当該資料が一年未満の保存期間とすることができる条件に該当すると当時の担当者が誤った認識を持ち、その認識に基づき廃棄したものであります。  いずれにせよ、行政文書の誤廃棄が発生したことは大変申し訳なく、真摯に反省して、再発防止に努めてまいります。

穀田委員

 今時間がかかったけれども、私、ちゃんと事前の質問レクで言ってんのやから、さっさと出てきてくれなあかんわね。  今お話しされましたように、同日中に廃棄したものと推定しているって、大事なものをいつ廃棄したかも分からない。要するに、後から見ると、このときと推定している。二月四日に出したものを二月五日に廃棄している、しかもそれを推定している。はっきり言って、こんなむちゃくちゃなことはありますか。  本来、副大臣が答弁されたように、一年間の保存義務がある行政文書を過って廃棄した。しかも、修正後の書類はまだ残っているわけですよね、今、我々、もらっているんだから。本当にふざけた話なんですよ。あってはならないことなんですね。  何回も言うように、回収したその日に即日廃棄するなど、反戦デモと記した資料が情報公開などで国民に知られることがないように故意に廃棄した、隠蔽したとしか考えられません。まさに、私、これはずっと前に質問しましたけれども、自衛隊の日報廃棄の問題と全く同じだと言わなければなりません。  先ほどお話があったように、こういう既に廃棄した資料が私のところには、少なくとも防衛省として、修正後の資料は、同じ一年間ではあるんだけれども、あって、届けている、その前のものについて言えば推定、こういう訳の分からぬことを平気でやっていること自体に、訳の分からぬことといっているよりも、まさにこれを意図的に隠すというところに根本があったということは、これは明らかだと言わなければなりません。  ですから、私、言いましたように、反戦デモを敵視し、これを指摘されたから直したというけれども、考え方は変わっていない、それは廃棄したと。二重の私は誤りがあるし、極めて重大と言わなければなりません。  ですから、私は、世界中で、今、ウクライナ侵略やめよという一点で声を上げ、平和を求める行動が広がっている。しかも、先ほど、私、最初に述べたように、大統領自身が反戦デモの訴えを呼びかけている。こういうことが広く国際世論を起こす上で重要なことだというふうな点が今起こっているさなかに、こういうことが明らかになる。  ですから、そうした市民の抗議行動をグレーゾーンの事態と位置づけて敵視することなど絶対許されない、この根本的な誤りについて指摘し、今日の質問は終わります。