予算委基本的質疑 「敵基地攻撃能力」「日米共同作戦計画」をただす

2022年01月26日

穀田委員

 日本共産党の穀田恵二です。  敵基地攻撃能力を中心に質問します。  先週二十日の衆院本会議で、我が党の志位委員長は、敵基地攻撃に関わって、安倍元総理が昨年十一月の講演で、敵基地だけに限定せず、抑止力として相手をせん滅するような打撃力を持たなければ日米同盟は成り立たないという趣旨の発言をしていることを指摘し、岸田総理に、この安倍元総理が主張する打撃力という議論をきっぱり拒否できるのかと質問しました。これに対して岸田総理は、安倍元総理の発言にコメントするのは控えると、答弁を避けました。  安倍元総理が行った発言というのはこれです。資料一、御覧ください。  そこには、十一月二十日に開かれた日本協議会・日本青年協議会結成五十周年記念大会で行った記念講演、問題の発言箇所は、講演では元総理はこのように述べています。「よく「敵基地攻撃能力」という言葉が使われますが、この表現は私はあまり適切ではないのではないかと思います。」と言っていまして、「敵基地だけに限定せず「抑止力」として打撃力を持つということです。」と述べています。その上で、「米国の場合は、ミサイル防衛によって米国本土は守るけれども、一方で反撃能力によって相手を殲滅します。この後者こそが抑止力なのです。」と、打撃力とは相手をせん滅する能力だと説明しているわけであります。  そこで、資料を作ってまいりました。二つ目です。  この配付資料の二枚目は、総理、あなたが総理になる前の昨年三月、自身のツイッターに掲載した「安全保障上の喫緊の課題について」と題する提言の一部であります。  ここで総理は、中国や北朝鮮のミサイルを、我が国にとって直接的かつ喫緊の脅威と述べた上で、「相手領域内でのミサイル阻止能力、すなわち、敵のミサイル発射能力そのものを直接打撃し、減衰させることができる能力を保有することが必要です。」と主張しています。  これは、安倍元総理が主張する打撃力の議論と何が違うのか、お答えいただきたい。

岸田内閣総理大臣

 私が発言しております敵基地攻撃能力というのは、急速なスピードで変化、そして進化しているミサイル技術などに対して国民の命や暮らしを十分守ることができるのか、こういった課題に対してあらゆる選択肢を排除せず議論するべきである、敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除するべきではない、こういったことを申し上げているわけであります。  そして、御質問に対しては、これから敵基地攻撃能力については国家安全保障戦略の議論等の中で議論するわけですが、少なくとも、憲法とか国際法とかそれから日米の基本的な役割分担、これはしっかり維持した中で日本の安全保障を考えなければいけない、これは当然のことであります。その範囲内で何ができるのか、これを具体的に考えていかなければならないと思っています。  安倍元総理の発言についてコメントすることは控えますが、逆に、志位議員が指摘されたような、いざというときは相手国をせん滅する全面戦争を行う、それができる軍事力を持てという引用された部分がありますが、そういったことは全く考えているものではありません。

穀田委員

 るる述べますけれども、肝腎な問題は、私はどこがちゃうのかと言ったわけですよね。だから、そういう考えは持っていないとおっしゃいましたけれども、はっきりしているのは、岸田総理も安倍元総理も、敵基地だけに限定せず、打撃力を持つということについては違いはないということなんです。この文章を見たら分かりますよね、そう書いてはるのやから、打撃力を持つと。だから、それを言っているわけで。  しかも、総理は、当時の提言で、我が国が講じるミサイル抑止策は、弾道ミサイル防衛システムによる迎撃体制のみですと言っていますよね。常時持続的なミサイル防衛を実現するため、昨年十二月、イージスシステム搭載艦二隻の整備が閣議決定されました、しかし、変則軌道のミサイルや飽和攻撃への対応には不十分ですと強調していますね。  この点でも安倍元総理の認識と全く同じですよね。安倍さんは、ミサイル防衛能力をずっと追求し続けることには限界がありますと述べて、日本が「打撃力を持たなければ、私は日米同盟は成り立たないと思っています。」と強調しています。つまり、相手国をせん滅するために出撃する米軍への協力に日本の打撃力が不可欠だというのが彼の見解ですよね。  ですから、このような議論は、いずれにしても、何かすぐ、聞かれると憲法の範囲内と言っていますけれども、まさに戦争放棄をうたった憲法とは絶対相入れない、そういう立場だということを私は述べておきたいと思います。  そこで、次に質問します。  岸田総理は、一月二十四日の本委員会で、敵基地攻撃能力に関し、安倍政権時代に平和安全法制の議論を行い、新しい武力行使の三要件を確認したと。さらに、我が国の武力行使については、その原則に基づいて対応すべきものであると説明されました。覚えておいでだと思います。  これは、武力行使の新三要件を満たせば集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うということなのか、明確にお答えいただきたいと思います。

岸田内閣総理大臣

 まず、さっきの続きを一言だけ申し上げさせていただくならば、まず、ミサイル迎撃システム、これは引き続き大変重要なシステムであり、この迎撃システムの信頼性向上のために引き続き努力をしていかなければいけません。しかし、それで十分なのかどうかという観点から、あらゆる選択肢を排除せず、議論をしていかなければならないということを申し上げているわけですが、しかし、その際に、憲法、国際法、それから日米の基本的な役割分担、これはしっかりと維持していきますということを再三申し上げているわけであります。  安倍総理の発言についてはコメントは控えますが、御指摘のような相手国をせん滅するような全面戦争、こういったことを全く考えているものではなく、憲法とか国際法、日米の基本的な役割分担、これを守るということは、その範囲内で議論するということは、御指摘の点とは全く違うということは御理解いただきたいと思います。  それから、後半の方の新三要件の方の話でありますが、昭和三十一年当時の政府見解、これは、当時はいわゆる旧三要件の下で示された敵基地攻撃に関する政府答弁ですが、旧三要件の下で示されたものであり、その後、平和安全法制が成立をし、私も外務大臣として当時答弁に立ったわけですが、武力行使の要件というのが新しくなった、いわゆる三要件になったということでありますので、あくまでも一般論として、我が国の武力行使は新三要件に基づいて行われる、こういった趣旨を申し上げたわけであります。  武力の行使が新三要件に基づいて行われる、これはどんな事態であっても、これは変わらないと思っております。

穀田委員

 前段の話でいいますと、さっき言いましたように、皆さんのところに資料でお示ししました、いわば打撃力ということでいうと、相手をせん滅しますということを言っている。打撃力という問題について、相手領域内でのミサイル阻止能力、ミサイル発射能力そのものを直接打撃し、減衰させることができる能力、こういうことで、余り変わらぬということを私は言っているわけですよ。  そして、なおかつ、ミサイルの機能の問題についても、敵基地だけに限定しないと。敵基地だけに限定しない打撃力、この点では同じだということを私は指摘しているわけですよ。  今ありましたけれども、武力行使の新三要件を満たせばということなんですけれども、日本に対する直接の攻撃がない場合であっても、安保法制による集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うことがあるのかないのか、そこを明確にお答えください。

岸田内閣総理大臣

 敵基地攻撃能力については、国家安全保障戦略等を考える中で、先ほど申し上げました、憲法や国際法や日米の役割分担、この従来からの、こうした我々が守るべき様々なルールに基づいて、しっかりと議論をしていくということであります。  間違っても、こうした憲法や国際法や日米の基本的なルール、これを逸脱するような議論は行うつもりはありませんし、その範囲内で何ができるのか、これを具体的に、これから考えていこうということを申し上げているわけであります。

穀田委員

 私は、二十四日に答弁なさったから、そのことを聞いているわけですよ。一般論を聞いているんじゃないんですよ。きちんとそういうことをお答えになったから、具体的に言えばそういうことかとお聞きしているわけです。  しかも、安倍さんは、十二月一日に行われた台湾のシンクタンクが主催する会合で、台湾有事は日本有事、すなわち日米同盟の有事だと発言しています。さらに、昨年の十二月十三日の報道番組で、台湾有事に関連し、米国の艦艇に攻撃があれば、集団的自衛権の行使もできる存立危機事態となる可能性があると述べているわけですよね。具体的に一つ一つ、ずっとこう話を行っているわけですよ。  だから、安保法制の下で日本が敵基地攻撃能力を持てば、日本に対する攻撃がないのに、アメリカを守るためとして、自衛隊が米軍とともに他国の領域まで攻め込んで攻撃できるようになるんではないかということを具体的には尋ねているわけです。

岸田内閣総理大臣

 安倍元総理の発言については、私は直接コメントは申し上げておりません。  一般論として、我が国が武力の行使を行う際に、新三要件に基づいて、そのルールに基づいてしっかりと行う、これはもう当然のことであり、先ほど申し上げた、憲法や国際法や日米の基本的な役割と併せて、どんな事態であっても、この新三要件に基づいて武力の行使が行われる、これはもう当然のことであり、そうした枠組みの中で何ができるのか、国家安全保障戦略の議論の中で具体的に考えていきたいということを申し上げております。

穀田委員

 私が聞いたのは、武力の行使の新三要件を満たせば、つまり、集団的自衛権の行使として敵基地攻撃を行うということかということを聞いているんですよ。

岸田内閣総理大臣

 いや、敵基地攻撃能力そのものをどうするのか、その具体的な議論をこれから始めようとするわけですから、今の時点で具体的に申し上げることはできません。  しかし、これから議論をするにしても、先ほど申し上げましたように、憲法や国際法や日米の基本的な役割分担、さらには、武力の行使の新三要件を始め我々が守るべき基本的なルール、これはしっかりと守った上で議論を進めていく、こういったことを申し上げております。

穀田委員

 私は、二十四日の答弁に基づいて、具体的にはこういう場合どうなるのかというふうに聞いているわけで、それで、その後考えるというような話ではない、このとおりにいけば必ずそうなるという話を今しているわけですよね。やはり安保法制の下で、今話を私がしたように、日本が敵基地攻撃能力を持てば、集団的自衛権の行使として、日本が攻撃を受けていないのに、アメリカを守るためとして他国を攻撃することが可能になる、こういうことを論理的に私は表明しているわけです。  ですから、その意味で、私たちが安保法制を憲法違反の戦争法だと厳しく批判してきたのはそのためだということも言っておきたいと思います。  次に進みます。  今月七日に行われた2プラス2の共同発表は、日米双方が、緊急事態に関する共同作業についての確固とした進展を歓迎したとあります。新たな共同計画の策定が進んでいることを明記しました。  問題は、この共同計画の内容であります。  報道では、自衛隊と米軍は、台湾有事を想定し、鹿児島県から沖縄県の南西諸島に攻撃用の軍事拠点を置く新たな日米共同作戦計画の原案を作成したと報じられています。  そこで、資料の三枚目です。そのことを伝えた沖縄の地元紙であります。  記事では、「南西諸島にある有人、無人合わせて二百弱の島のうち、軍事拠点化の可能性があるのは約四十カ所。大半が有人島で、水を自給できることを条件に選んだ。陸自がミサイル部隊を配備している奄美大島、宮古島や配備予定の石垣島も含まれる。」とあり、実行されれば南西諸島が攻撃対象となるのは必至で、住民が戦闘に巻き込まれる可能性が高いと指摘しています。  日米共同でこのような作戦計画を策定しているんですか。

岸国務大臣

 二〇一五年に策定されましたいわゆる日米ガイドラインの下で、日米両政府は、我が国の平和と安全に関する緊急事態についての共同計画を策定、更新することとしています。  共同計画の策定状況や具体的内容等の詳細については、緊急事態における日米両国の対応に関わるものであることから、事柄の性質上、お答えを控えさせていただいております。  なお、2プラス2におきましては、共同計画についての確固とした進展を歓迎しましたが、これ以上については差し控えさせていただきます。

穀田委員

 作戦計画の内容について、総理に、じゃ、お聞きします。  記事には、米軍は中台紛争への軍事介入を視野に、対艦攻撃ができる海兵隊の高機動ロケット砲システム、HIMARSを拠点に配置、それから、自衛隊に輸送や弾薬の提供、燃料補給など後方支援を担わせ、空母が展開できるように中国艦艇の排除に当たる。海兵隊は相手の反撃をかわすため、拠点となる島を変えながら攻撃を続けるとあります。  まさに、日本の島々を米国と中国の戦争の拠点にするということではないんですか。総理にお聞きします。

岸田内閣総理大臣

 共同計画の策定状況ですとかその内容、これはまさに我が国の緊急事態における日米両国の対応に関わるものでありますから、こうした場でお答えすること、事柄の性質上、これは控えなければならないと思っています。

穀田委員

 そういうことではないと思いますね。  記事には、海兵隊の新たな運用指針、EABO、遠征前方基地作戦に基づき、自衛隊に提案されたとあります。  私は、このEABOについて、昨年五月十二日の外務委員会で質問しました。アメリカ政府がこういうことを考えているということについて、当時の防衛副大臣は答弁しました。  具体的には、その構想は、列島線が生み出す自然の障壁を活用しつつ、地上発射型ミサイルを含む多様な機能を持つ臨時拠点を前方に一時的に設置するもので、危機前の状況から展開することにより既成事実化の取組に対応するものというふうに副大臣は認めているんですね。まさに、実際に進行している作戦計画なんですね。だから私は聞いているわけです。  しかも、EABOが正式な作戦構想となった二〇一九年に、島嶼要塞と銘打ってミサイル配備拠点を明らかにしているわけです。明らかにしているんですよ、アメリカは。しかも、現に昨年十二月には東北と北海道でそういう訓練が、想定した訓練が行われている。  だから、アメリカが言っている、具体的にそういう想定をした訓練を行っている、なぜそれが明らかにできないのか、まさにそれが作戦計画ではないのかということを聞いているわけです。

岸田内閣総理大臣

 二〇一五年に策定された日米防衛協力のための指針の下、日米両政府は、我が国の平和と安全に関連する緊急事態についての共同計画を策定、更新することとしております。  しかし、この内容については、まさに緊急事態、国民の命や暮らしに関わる事柄でありますからして、お答えを差し控えさせていただきたいと申し上げているところであります。

穀田委員

 国民の命と暮らしに関わることだから明らかにするべきだ。相手のアメリカは言っている、具体的に作戦計画に基づいて訓練を行っているという事実を私は示しているわけですよね。  海兵隊が反撃をかわすために拠点となる島を変えながら攻撃を続ければ、拠点となった島は一体どうなるのか。人々がそれこそ生活する島です。まさに、沖縄戦の悲劇を繰り返すことになりかねないんですね。  総理はすぐ住民の命という話をするが、まさに住民の命をないがしろにする計画作りが秘密裏に進められているんじゃないのかということが大問題だと私は言っているわけです。したがって、この点では、国民の前に逆に明らかにすべきことが政府の責任だと私は思います。  沖縄県の玉城デニー知事は、沖縄県民の不安を著しく高める、これ以上の基地負担と、台湾有事で攻撃目標とされる事態はあってはならないと述べて、詳細を明らかにするように求めています。先ほど述べたように、国民の命と暮らしを守ると言いながら、そういう問題の内容を国会や国民に隠して、住民を戦闘に巻き込むということは許されないと私は思います。  今、日本政府に求められているのは、敵基地攻撃能力の保有など、破局的な戦争につながる軍事的な対応を強化することではないと私は思います。国際ルールに基づく、あらゆる紛争を話合いで解決する確固たる外交努力だと私は思います。  中国による東シナ海や南シナ海での覇権主義の行動に対しては、国連憲章と国際法、それこそ何回も言っていますように、大臣もおっしゃっていました、国際法に基づく対処が必要だと、私は外交的批判が必要だと思います。  今述べたように、軍事に対して軍事で備えるならば、軍拡競争の悪循環に陥り、衝突や戦争という破局的な事態を招きかねないと私は思います。  憲法九条を生かした平和外交に徹することが改めて必要だし、情報をきっちり国民に開示して、それで信を問うていくというのが本来の政治の役割だということを述べて、終わります。