『絶対安全』という企業の社会的責任を果たすため、JALは解雇した労働者を職場に戻すべきだ

2015年08月26日

今村委員長

次に、穀田恵二君。


穀田委員

私たちは、航空法の改正案については賛成するものです。
ことしは一九八五年の御巣鷹山への日航機墜落事故から三十年。重要な空の安全に関連して、JALの問題についてきょうは質問します。
日航機墜落事故は、五百二十人が犠牲になるという未曽有の事故でした。節目の年、その教訓を全ての航空行政に生かしているかどうかを検証すべきです。
遺族の方々は八・一二連絡会を結成し、事故後毎年、手記文集「茜雲」の冊子を作成しています。
みずからも九歳の次男を失い、事務局長として遺族支援や原因究明などに奔走する美谷島邦子さんは、事故三十年目の「茜雲」、これですけれども、これにこう記しています。「三十年前、八・一二連絡会が発足したときに集まった遺族の人たちと心から共有したことは、お金では換算されない「いのち」のことでした。」こう触れています。そして、「乗り物は人と人をつなぎ、街と街をつなぎ、希望や夢を運ぶもの。利便性や快適性、運賃よりも何よりも安全を優先に。それは命を運ぶからです。安全は命を守ること。それが最大の使命です。そして安全には終わりがありません。」こういうふうに記していまして、これは交通運輸にかかわる全ての人が常に胸に刻まなくてはならない重い言葉だと私は思います。
事故当時、日航は、会長名で、「日本航空全社員はこころを一つにして「絶対安全」の確立を誓います。」さらに、翌年一月一日に出された同社の広報誌、これですが、「季刊おおぞら」では、「「絶対安全」の極限に挑戦する」と述べています。
私は、この絶対安全こそJALの再建にとっても必要だと何回も提起してきました。公共交通機関である日航の真の再建は絶対安全の教訓を生かしたものでなければならない。
大臣に聞きたいと思います。
絶対安全の教訓は今回のJALの再生において生かされているか、徹底されているか、この点についての認識を伺いたいと思います。


太田国務大臣

航空輸送にとって最も大事なのは安全ということである、そして、命のことに触れましたが、私も、人間で最も大事にすべきは命、生老病死のことであろうというふうに思っています。公共輸送を担う航空会社においては何よりも安全確保が大事であって、国交省においても最も重要な課題であると認識をしています。
日本航空におきましては、再生後も引き続き、日本航空安全憲章において、「安全運航は、JALグループの存立基盤であり、社会的責務」としているところです。
これを踏まえて、再生後初めての中期計画であります二〇一二年から二〇一六年度のJALグループ中期経営計画におきまして、「安全を守る人財の育成」、「安全を守るシステムの進化」、「安全を守る文化の醸成」といった取り組みを進めており、高い水準の安全確保のために努力を行っているものと認識をしています。
具体的に、安全のための教育プログラム「JALグループ安全教育」を新たに策定して全社員を対象として実施をしていく、また、運航や整備に関するふぐあいの未然防止促進のため、ふぐあい等の情報を蓄積する安全情報データベースの整備、あるいは、運航や整備に関するマニュアルを全面的に見直し使いやすいものに改定する、こういった取り組みを行っているということです。
国交省としては、引き続き、日本航空を監視、監督し、同社の運航の安全確保について常に注視し、万全を期してまいりたい、このように考えています。


穀田委員

JALがそう言っているのは、前から、前半の部分の話は何回も質疑でやってきたことで、さして目新しいものではありません。
問題は、墜落事故の大きな背景として指摘されたのは、安全を二の次にする利益優先の日航の体質とそれを助長した国の航空行政のゆがみでありました。
事故後に一新された経営陣は、絶対安全の確立、現場第一主義、労使関係の安定、融和など、最高経営会議方針を発表しました。
しかし、この内容が安全の原点、こういうものが日航内部で深められ、体質の改善が図られたとは到底私は思えません。なぜなら、事故後の日航は、一九九九年、二〇〇五年の二度にわたって、運輸省、当時ですね、それから国交省の事業改善命令を受けたように、極めて重大な安全上のトラブルを続発させました。その結果、日航は最も危険な航空会社として国民の信頼を失い、今日の経営破綻につながる原因の一つにもなりました。
日航の再建策は、先に人員削減ありきで、安全と公共性の視点を置き去りにしたものでありました。安全運航のかなめであるベテラン労働者を一律に肩たたきし、事実上、組合役員を狙い撃ちにして整理解雇を行い、航空の現場に欠かせない熟練、熟達、技術の伝承も困難な状況を生んだやり方だったと言わなければなりません。
そういう中で、絶対安全を担ってきたのは現場の労働者であり、チェックしてきた労働組合でありました。会社更生法適用直前の二〇〇九年十二月、日本航空安全アドバイザリーグループのまとめた報告書、「守れ、安全の砦」と題した提言書では、「安全への投資や各種取り組みは、財務状態に左右されてはならない」、「財務状態が悪化した時こそ、安全への取り組みを強化するくらいの意識を持って、「安全の層」を厚くすることに精力を注がなければならないのである。決して安全の層を薄くすることで、コスト削減を図ってはならない。薄氷を踏みながら航空機を運航するエアラインを、誰が選択するだろうか。」こういう提言を出したことは、何度も私は提起してまいりました。
ところが、稲盛会長は、利益なくして安全なし、一年前は安全が第一で、利益は二の次だった、今後は数字に強い人材の育成につなげると。管財人は、京セラのように一兆円の内部留保を築いてから安全を語れということを社内教育で述べるなど、利益第一のJALの再建方向を繰り返し述べていました。御巣鷹山の事故に至っては、これを稲盛さんはトラウマとまで言って否定をしていたわけであります。
そして、実際、人減らし先にありきという整理解雇を強行した。その後、JALの現場では、労働者のモチベーションが低下し、コミュニケーション不足で安全性を脅かす事態が起こっている、現場は深刻な状態にあると私は告発しました。
これに対して、当時、大畠大臣は、整理解雇がベテランのパイロットやベテランの整備士にも及んでいて、安全性をどうやって担保できるか確認したいということで私の質問に答え、社長、会長にも話を伺うということで立入調査を実施しました。三カ月後の五月十三日、大畠大臣は立入調査について報告し、「各職員の業務内容の変化に起因すると考えられるトラブルも発生している」と述べ、整理解雇を初め、リストラ、人員削減が安全を脅かしていることを事実上認めました。
この点は当時の会議録で確認できると思うが、改めて確認したいと思います。いかがですか。


太田国務大臣

平成二十三年五月十三日の国土交通委員会におきまして、当時の大畠大臣が、日本航空に対する立入検査の結果として、次のとおり報告したというふうに承知をしています。
同社において安全上のトラブルに増加傾向はないこと。個別のトラブルについては、原因分析や評価、再発防止策の徹底等の対応がとられていること。各職員の業務内容の変化に起因するトラブルが発生していたが、大型機であるボーイング747型機の急速な退役等に伴うものであること。これらについて、同社では、教育訓練等人材能力の強化、効果的な安全管理システムの構築を行う計画であること。
御指摘のあった、整理解雇ということで職員のモチベーション低下等に起因したトラブルが発生したことについて報告したという事実は承知していないところでございます。


穀田委員

それは余りにもねじ曲げていますよ。ねじ曲げていると言わなくちゃならぬ。
今言ったように、それは確かに「大型機の急速な退役等に伴う」と言っているんですよ。そういうことをわざわざ言うぐらい大変だったんですよ。そして、「各職員の業務内容の変化に起因すると考えられるトラブルも発生している」と言っているわけです。そこが大事であって、だから、当時、そういった問題について言わざるを得ないところに現実があったということを見なければならないと私は思います。
だから、不当な整理解雇を初め、過剰な人員削減による労働環境の悪化で安全が脅かされているということは認めたことになるというのが当時の認識だったわけですよ。だから、それを忘れたようなふりをしちゃだめだと私は思っているので、わざわざ指摘したわけであります。
そこで、では、真の再生とはどうあるべきか。
本委員会で私は繰り返し議論してきました。何度も言うように、JALというのは人の命を運ぶ大量輸送機関であって、何よりも優先すべきは絶対安全であります。また、地方航空路線などの国民の足を確保する公共性も持った公共交通機関としての役割を果たすこと、この二つですね。つまり、絶対安全と公共性を現場で支える、そういうことが必要だし、それが労働者の職場復帰があってこそ真の再生だと私は思っています。
そこで、この間の経過を踏まえて幾つか確認していきたいと思います。
まず、そもそも経営破綻した原因は何か、その責任は誰にあったのか、労働者の責任に起因する破綻の原因はあったのか、これについての所見を伺いたいと思います。


太田国務大臣

日本航空の破綻の原因につきましては、経営破綻前の同社は、不採算路線の存在に加えて、燃費効率の悪い大型機の大量保有等の構造的な高コスト体質となっていたものと考えています。
また、当時、同社におきましては、硬直的な組織体制や意思決定のおくれが指摘をされており、これらが抜本的な改革のおくれにつながったものと考えられます。
これらに加えて、二〇〇八年秋以降の世界同時不況と新型インフルエンザによる影響を受けて航空需要が著しく減少して、特に国際旅客収入が減少したというふうに承知をしています。
以上の結果、厳しい経営状況に至ったものと認識しているわけですが、これに至るには、特に経営者の責任が重いというふうに私は思いますが、経営者を初めとする社員、株主等による会社全体として関与したものと考えているところです。


穀田委員

最後の方はよく言うよと私は思いますよね。
だって、当時、今ありましたけれども、大量の保有、これは、政府の過大な需要予測によるいわば空港の乱造や、それからアメリカからの二兆円もの高額なジャンボ機を大量購入する。これは別に購入するのは労働者が要求したわけじゃないんですよ。これは経営陣の責任であることは明らかであります。
しかも、当時、皆さんも知っているとおり、海外投資やリゾート開発などの放漫経営、これがあったことは誰知らぬ者はないんです。それぐらい日航の経営というのはでたらめだった。
問題は、これを指摘し改善を求めていたのはほかでもない労働組合であったことを銘記しておく必要があると私は思います。全くそういう意味では、責任は経営陣にあるということは明らかであります。
一方、では、銀行等の大口株主はどうしていたか。経営者を選び、経営を任せていたし、銀行等の大口債権者は経営者らの要請に応えて融資し、株主も債権者も、ずさんな経営で破綻するリスクを承知した上で、出資し、融資、貸し付けを行ってきたわけであります。
従業員、労働者は、経営陣が実施する経営方針のもとで、その中でも安全運航に努力をしてきたわけであって、労働者には何の責任もないということは明らかであります。
二〇一〇年一月、JALは、経営破綻で会社更生法による更生手続を開始し、十一月三十日、裁判所が更生計画を認可しました。その間、更生計画の確実な実行という名で急速な人減らしが行われ、人減らし先にありきというのが強行されました。労働者には退職を強制し、労働組合には争議権確立を妨害する支配介入をするなど、違法な不当労働行為まで繰り返し、まさに人員削減は過酷なものだったと言わなければなりません。このときの会社側の人員削減のやり方がいかに違法なものであったか。
先日、関連する裁判で、高裁で判決がありました。東京地方労働委員会が認定した会社側の不当労働行為に対して、東京高裁は不当労働行為だったと認める判決を出しました。その主要な点について、厚労省に中心点を確認したいと思う。簡潔にお願いします。


山本副大臣

本件につきましては、労働組合が争議権を確立する組合員投票を行っている最中に、JALの更生管財人のディレクターらが争議権を確立されたならばそれが撤回されるまで出資を行わない旨の発言をしたことが、労働組合法上禁止されている労働組合の運営に介入するものであるか否かが問われた事案でございます。
御指摘の平成二十七年六月十八日の東京高裁判決におきましては、争議権の確立は、労働組合が会社と交渉する際に、会社との対等性を確保するための有力な対抗手段となるものであって、労働組合にとって最も根幹的な権利の一つであり、争議権の確立を目指して行う組合員投票は極めて重要な組合活動であり、組合員投票の最中に行われた本件発言は、労働組合としての主体性や自主性や独立性を阻害するものであって、労働組合法上禁止される労働組合の運営に介入する行為であり、不当労働行為であると判示したものであると承知しております。


穀田委員

だから、極めて重要な判決が出され、あの争議が行われていた時期に、整理解雇をめぐるそういう時期に、いわば三千五百億円の融資が行われない可能性がある、そういう決定をしたということまでやっておどす、そういう虚偽の事実に基づいて恫喝をする、こういうことが行われることは全く許しがたいことだということであって、憲法からこれは労働権の問題を説き起こしている点についても、極めて私は重大な問題として把握しなければならないと思います。
もう一点、厚労省に聞きます。ILO勧告の履行についてであります。
塩崎大臣は、ILO勧告を受けて、JALのようなケースの場合、整理解雇された職員の再雇用に関する事項についても、まずは労使の当事者が自主的に解決に向けて努力をしなければならないということに尽きると思いますと。そして、労使で話し合いをするということが大事で、今申し上げたように、JALとおやめになった方々との間に話し合いが、やりとりが行われているというわけでありますので、ちゃんと話し合いが行われることを我々としても注視していきたいというふうに思いますと答弁しています。
解雇者の再雇用について、労使で自主的解決の努力、話し合いをすることが大事だと言っているわけですよね。そして、JALとおやめになった方々との間に話し合いが、やりとりが行われるという認識を述べていますけれども、実際にやりとりが行われているという認識ですか。


山本副大臣

今御指摘いただきました、以前厚生労働委員会で塩崎厚生労働大臣が答弁いたしましたとおり、会社側からは、再雇用に関する事項についても労働組合との間でやりとりを行っていると伺っております。他方で、労働組合側からは、再雇用に関しましては実質的には協議がなされていないと伺っております。
私たち厚生労働省といたしましては、実質的な協議が行われているか否か、これを判断する立場にはございませんが、労使の意見がこのように一致しない場合におきましては、まず労使の当事者が自主的な解決に向けた努力をしていただきたい、それが望ましいと考えております。


穀田委員

それは余りにも、客観的に物を一つ判断する上で、何がどうなっているかと、よく聞けばわかる話なんですよ。だって、注視をするとまで言っているわけだから、事実をきちんと確かめることが必要なんですよ。
これは相手側の経営者も言っているわけで、確かに団体交渉は行われているわけですよね。しかし、組合員たる被解雇者も出席している、だからそれでやっているというふうに話を彼らはしているわけですよね。それは余りにもなんだと思うんですね。被解雇者の問題を議題にせよという交渉は行われているんですよ。それを交渉しているというふうに見るのかどうかという問題が問われているわけですよ。
JALとおやめになった方々との話し合いというのは再雇用というような問題を議題にしてやっているのかということについて、再雇用を議題にしてやっていると厚労省はつかんでいるんですか。


山本副大臣

個別企業の労使関係のことにつきましては、労使自治の観点から、介入するような発言をすることは適当ではないと考えておりますけれども、今おっしゃっていただきましたように、使用者側が誠実に団体交渉を行っていない場合には、労働組合が労働委員会に申し立てて、不当労働行為と認定されれば、使用者に誠実に交渉するよう命令し、救済される仕組みとなっております。
このために、実質的な協議が行われているか否かというのは、申し立てをしていただいて、労働委員会において判断すべきものと考えておりまして、我々としては、労使の中でしっかりと自主的な解決が図られることが望ましいと考えております。


穀田委員

そういうのを介入と言うんじゃないんですよ。事実を確かめろと私は言っているんですよね。しかも、そういうのを労働委員会にやったらどうだと、そんな言い方をしていたんじゃ、この問題の解決は、要するに、政府としてはおよそそういう立場に立っていないということをあからさまに示したと言わなければならない。そういう話を私は聞いたことがないですよ。
そんな議論をして、一般論としてそういう問題があった場合にはというのは、それは答弁でちゃんとしていますよ。そんなことは知っていますよ、私。だけれども、今、現実の問題提起している話からすれば、そうなんじゃないじゃないかということを言っているわけですよ。そんな一般論を言ってもだめですよ。
だから、問題は、いわばこういったことが正規の議題にならないとしたら不当労働行為に当たるということが大事なのであって、そういうことをしちゃならぬよという話を指導するのがあなたのところの責任じゃありませんか。それを、文句があったら提訴しろみたいな言い方をしておったんじゃ、それじゃ会社側とほとんど同じだということを言わなきゃならぬですね。
しかも、JALは、ILO勧告について、当局の指導があれば従うとまで言っているわけですよ。これをあっちゃこっちゃと、こっちの厚労省とそっちでキャッチボールしていたらだめですよ。きちんと最後まで私は見切るべきだと思っています。その点はきつく言っておきたいと思います。およそ納得できる話じゃない。もう一度出直してきてほしいと私は思います。
次に、国交省の対応と責任について問いたいと思います。
簡単にこの間の事実経過を振り返りますと、二〇一〇年一月、会社更生法を適用し、十一月に更生計画認可、十二月三十一日に百六十五人の整理解雇を強行、二〇一一年三月に裁判所が更生手続を終結、そして、二〇一二年九月、日本航空は再上場を果たした。財務ベースでは、一一年三月の更生手続終了前から二千億近い営業利益を上げ、純利益も毎年千五百億円を超える規模にまで回復している。
しかし、この回復も、公的資金の投入など政府の手厚い支援を初め、従業員や利用者、債権者などの利害関係者、ステークホルダーの支援があってのことであります。とりわけ、コスト削減による収益回復を図るため、大規模リストラ計画が実施され、安全を担ってきた一万六千人もの現場労働者が削減され、整理解雇されたパイロット、客室乗務員は職場に復帰できていません。その意味で、私はJALの真の再生は終わっていないと考えています。
国交省は、再上場の直前、「日本航空の企業再生への対応について」を発表しています。その中に「利益の社会的還元について」の項目があり、「関係者の理解の下に公的資金の投入や債権放棄・減資等の協力が行われてきた経緯を踏まえ、社会に対する貢献方策についての検討を要請する。」としています。
書いてある内容、この項目を入れた趣旨について、簡単にお答えいただけませんか。


太田国務大臣

「日本航空の企業再生への対応について」は、社会貢献方策の検討を要請している趣旨は、日本航空の再生過程におきまして、関係者の理解のもとに公的資金の投入や債権放棄、減資等が行われた経過を踏まえて、日本航空に対して、社会に対する貢献方策について検討を要請するものであります。
これを受けて、日本航空においては、パイロット奨学給付金制度の設立や地域航空会社への支援といった努力を行っているものと認識をしているところでございます。


穀田委員

私は、一般論はそのとおりなんですけれども、この八月十日ペーパーと言われている国交省の指摘は、破綻した企業が関係者に迷惑をかけた、その協力の上で利益を上げるようにできるようになった、こういうふうに見ているとすると、迷惑をかけたのは、株主だとか、それだけじゃないんですよ。株主それから銀行などは、もともとそういうことを含めて、リスクをしょってやっていたわけですから。しかし、問題は、迷惑をかけた従業員に対して、職場復帰をさせることが企業の社会的責任を果たすことになると思います。
大体、整理解雇を前にしたときに、大西社長は、当社のために汗水流して働いた社員だということもあり、人員規模の適正化のためとはいえ、本人や御家族に対して申しわけないという気持ちでいっぱい、まさに断腸の思い、身が引きちぎられるような思い、血のにじむような思いで、一日も早く再生したいと述べているんですね。だとしたら、きちんとした従業員に戻ってきてもらう必要があるんだと思うんですね。
しかも、稲盛氏も会見で、百六十名を会社に残すことが経営上不可能かといえば、そうでないことは皆さんもおわかりになると思います、私もわかっていますと。裁判になっているが、きっと将来そういう方々に何らかの形でお返しすることができると思っている、こうまで言っているわけですよね。
だから、そういうことについてきちんと指導をして、先ほど述べた社会貢献の一つの大きな柱として、被解雇者をもとに戻せということについて私は要求したいと思うんですが、いかがですか。


太田国務大臣

日本航空を二〇一〇年末に整理解雇された客室乗務員及び運航乗務員が解雇の撤回を求めた訴訟について、最高裁判所は、二〇一五年二月四日及び五日にそれぞれの上告を棄却し、整理解雇は有効であるという判決内容は確定したものと承知をしています。
いずれにしましても、今御指摘もありましたが、日本航空の整理解雇につきまして、個別企業における雇用関係に係る問題であることから、日本航空において適切に対処すべきものと考えています。行政として関与することは適切ではないと考えています。


穀田委員

私は違うと思いますね。これは、歴代の大臣は円満な解決を望む。私は訴訟の話をしているんじゃないんです。そういう首を切られた人たちをもとへ戻してはどうか、そういう努力をすべきじゃないかという話をしているんです。訴訟の結果について話をしているんじゃないんです。そういう方々は首を切った人たち自身が戻す必要があるということについて、将来について言及していた問題を述べているわけであります。
今、私は、実際に現場で何が起こっているかということについて少しやりたかったんですが、もう時間も差し迫ってきましたから、一つだけ言っておきたいと思うんですね。
今、社内文書によると、今年度におけるそういうパイロットの自主退職が続いて新しい運航体制さえもままならぬ、だから、地上職の仕事もやめてでもやるというようなことまでやっています。ですから、安全性に極めて重大な問題が出てきているということも私は一言言っておきたいと思うんです。
だから、解雇者を職場に戻さなければ真の再生は終わらないと私は思っています。御巣鷹山の事故三十年のことし、事故後、会社が誓った絶対安全の確立、現場第一主義、労使関係の安定、融和、この誓いに立ち返って、物言う労働者の存在こそ、その保障という立場で私は対処すべきだというふうに思っています。
国交省の八・一〇のペーパーでは、中期計画の期間中、すなわち二〇一六年度まで指導を継続すると書いているわけですね。したがって、関与することは当たり前なんですよ、国民の金が入っているわけですから。そういうことからしましても、その役割を自覚し、JALに社会的責任を果たせと。そして、自主解決のために、また厚労省も含めて、国交省も含めて、そういう働く人たちのそういう声をしっかり聞いて対処すべきだということを述べて終わります。