「新型コロナ・在日米軍基地での検疫問題」/肉用子牛生産者への支援を/フグ処理者の認定制度全国統一化を

2020年05月22日

松本委員長

次に、穀田恵二君。


穀田委員

日本共産党の穀田恵二です。
初めに、五月十三日の質問に続き、在日米軍基地での新型コロナウイルスの感染拡大問題について聞きます。
私は、十三日の質疑で防衛省の渡辺政務官に対し、在日米軍の施設・区域から日本に入国する米軍関係者について、米軍が行っている新型コロナに関する検疫の実態を明らかにするように求めました。しかし、渡辺政務官の答弁は、自衛隊では米軍と共同で検疫訓練まで行っているにもかかわらず、防衛省としては報告を受けていない、検疫に関しては厚生労働省に聞いてほしいというものでした。
そこで、改めて厚労省の行政文書を調べたところ、厚労省の検疫所では、日米地位協定に基づく米軍側の検疫実施状況と題する文書を年度ごとに保存していることがわかりました。私の資料要求に対して、昨日、厚労省の検疫所業務管理室から三つの文書が提出されました。これです。三沢基地を管轄する仙台検疫所と八戸出張所、岩国基地を管轄する広島検疫所の徳山下松・岩国出張所で保存する文書であります。
文書を見ますと、検疫では、米軍側の検疫実績として、二〇一八年四月から二〇一九年三月までの一年間、航空機とそれから船舶の別に、検疫数、さらに検疫実数、人数を毎月、一覧表にまとめています。
厚労副大臣に聞きますけれども、これらの文書はどういう名目で作成、保存されているのか、明らかにされたい。


橋本副大臣

お答えをいたします。
平成八年の日米合同委員会における人の検疫に関する合意事項といたしまして、アメリカ合衆国のために又は合衆国の管理のもとに公の目的で運航される船舶又は航空機が合衆国に提供された施設及び区域を通じて日本国に入国する場合は、合衆国軍隊の実施する検疫手続の適用を受けると定められております。また、当該合意では、合衆国軍隊の検疫官は、検疫手続を実施し仮検疫済み証を交付したときは、所轄の日本国の検疫所長に通報すると定められております。
御指摘の文書は、日米の合意、今申し上げたものに基づきまして、合衆国軍隊の検疫官より検疫所長に通報された仮検疫済み証に係る実績を記録するため、月ごとに作成し、行政文書として検疫所で保存しているものと認識をしております。


穀田委員

つまり、今お示しした文書ですけれども、これらの文書は、在日米軍の施設・区域から日本に入国する米軍関係者に対し米軍が行った検疫実績について、基地を管轄する検疫所が米軍から受けた通報を月ごとにまとめた文書ということになりますね。
厚労省は、在日米軍関係者の新型コロナの感染実態についてどう言っているか。個別事案の詳細は日米間で調整の上、公表されることになっており、答弁は差し控える、こう一貫して繰り返しているわけですよね。しかし、厚労省の検疫所では、この文書にあるように、毎月の米軍側の検疫実績を年度ごとに保存している。このことからも、基地を管轄する検疫所では、新型コロナに関しても米軍が実施した検疫実績についても把握しているということで理解していいですね。


橋本副大臣

今御質問いただいている資料、お示しをしたものについて申し上げれば、それはその検疫を、先ほど申し上げましたとおり、合衆国軍隊の検疫官が検疫手続を実施し仮検疫済み証を交付したときは私どもの検疫所長に通報するということになっているということに基づいて記録をしたものでございますので、そのように御理解をいただきたいと思います。


穀田委員

前の質問と同じ答えをしていたんじゃ困るんですよ。私が聞いているのは、新型コロナに関しても米軍が実施した検疫実績についても把握してんねやなと聞いているんですよ。


橋本副大臣

検疫というのは、別に新型コロナかどうかにかかわらず、さまざまな感染症等々が我が国の中に上陸をするということを防ぐために行われているものでございまして、そうした、一般的に検疫手続というのは行われているものでございますから、その実績につきまして私どもの方で通報をいただいたものを記録している、その結果を示しているのがその資料であるということでございます。


穀田委員

米軍の行った検疫実績を年度ごとに保存している以上、新型コロナに関しても米軍がどの程度検疫を行っているのかを把握していることは明白なんですよ。
皆さん、今、厚労省も、それから検疫の問題全般についても、そんなもの、感染症一般について同じだなんて、そんな話、今どき通用すると思ったら大間違いで、もしそんなことを厚生労働副大臣が言うとしたら、そうすると、新型コロナと感染というのは大した違いはないのかとなるじゃないですか。それほど注目している、今、世界が注目していて、毎週外務省だって数字を出していただいて、これはどうなっているんだという話をしているときに、それは別に笑っているか笑っていないかについてとやかく言わぬけれども、やはり感染症としていろいろなことで出るうちの一部だから、それはあるでしょうみたいな話は、それはあきまへんで。
では、そうすると、先ほど述べたように、答弁は、調整の上、公表されることになって、差し支えるという答弁をしているわけですね。だから、米軍の運用を理由に国会や国民に知らせないということは問題だと。しかも、これ、出されている文書は全部黒塗りなんですね。
問題はそれだけじゃないんです。
各検疫所が定める標準文書保存期間基準、これを見ますと、日米協定に基づく米軍側の検疫実績を記した文書の保存期間が三年だったり五年だったり、結局、検疫所によってばらばらに設定されているんですね、それは御存じかと思うんですけれども。更に重大なのは、横田基地を管轄する東京検疫所、嘉手納基地を管轄する那覇検疫所では、この米軍の検疫実績を保存対象にすらしていない。
なぜこのような文書扱いをしているのか、お示しいただきたい。


橋本副大臣

お待たせをして、失礼をいたしました。
この資料についてでございますけれども、なぜつくっているかというのは先ほど申し上げたとおりでございますが、この保存につきましてはそれぞれの検疫所において取り扱われているものでございまして、一個一個の検疫所がなぜそのような扱いをしているかということにつきまして、ちょっと私も今つまびらかに承知をしておりませんけれども、そのような扱いの中で、それぞれの検疫所で判断をされているということだと承知をしております。


穀田委員

それはあきまへんで。そういう答弁をしていたんじゃ話になりません。
つまり、私が言っているのは、それぞれの検疫所で判断している、そんなことはないんですよ。だって、米軍の関係をどうするかと一元的にやっている役所が、それぞれの検疫所で判断している、そんなことがありますかいな。問題は、肝心なところは、横田を管轄する東京検疫所、嘉手納基地を管轄する那覇検疫所、これは米軍側の実績を保存対象にすらしていないということが問題なんですよ。
私はこの間の五月十三日の質疑でも指摘しましたけれども、横田や嘉手納の両基地には、米軍が米本土からのチャーター機などで連日のように飛来している、そして入国している。にもかかわらず、東京検疫所や那覇検疫所では、米軍による検疫の実施状況を行政文書の保存対象にすらせず、存在を隠している。さっき言ったように、それぞれが決めているというんだったら、あるんでしょう。これが日本政府のやることかと。
私が言っているのは、米軍の検疫実態を、何となく話を、それぞれのところでやっているからなんという話でうやむやにするような話じゃないというんですよね。いわば日本の国民の生命と安全にかかわる、そういう問題に関して言えば、物を言うということが私は必要だということを言っているわけです。そういう点だけ指摘しておきたいと思います。
そちらの極めて不十分な実態というのは本当にあからさまになったということなので、それはお互いに共有できたと思うので、きょうはこれでもう、お忙しいでしょうから、結構でございます。お引き取りください。


松本委員長

では、どうぞ、橋本厚生労働副大臣は御退席ください。


穀田委員

そこで、今度は茂木大臣に聞きます。
次に、私は、新型コロナウイルスの感染拡大による国産牛肉への影響問題について聞きます。
ことしの一月一日に日米貿易協定が発効しました。そこで、私は、協定の発効により、米国産牛肉がどのくらい輸入しているのか調べてみました。
財務省の貿易統計を見ると、米国産牛肉の輸入量は、一月は二万一千四百二十八トンとなっており、昨年比で一二二%もの輸入増となっています。また、三月末までの三カ月間の米国産牛肉の輸入量は、累計で見ますと五万六千トンを超えています。
日米貿易協定で定めた緊急輸入制限措置、いわゆるセーフガードの発動基準は年間二十四万二千トンですから、三カ月分にすれば六万五百トンとなって、この一月から三月の月間の累計輸入量は、セーフガード発動基準のぎりぎりのところまで目いっぱいに輸入しています。
これに加えて、新型コロナの感染拡大で、和牛の枝肉価格が全国的に低迷し、国内の肥育農家などに重大な影響が出ています。
三月十四日付の地方紙の報道によると、青森県畜産農協連合会の会長が、今回の価格の大幅下落について、繁殖農家のダメージは相当大きいと述べ、安値の要因が重なり大打撃、和牛を含めて肉がだぶついた状況だと指摘した声を紹介しています。
茂木大臣は、こうした深刻な実態が全国各地に広がっていることについてどう思われるか、どう受けとめているか、見解をお示しいただきたいと思います。


茂木国務大臣

全体の経済、さらには農業に対してどういう影響が出ているということでありますけれども、新型コロナに伴います、さまざまな移動制限であったりとかそういう措置がとられる、また、入国制限等によりまして九九・九%の観光客が減少する、こういった中においては、需要というものはある意味蒸発する、こういう段階にあるわけでありまして、それがいいことで言っているわけではありません。それによって、当然それは、牛肉だけではなくて、さまざまな農産品、そして工業製品についても供給過剰が起こる、若しくは、サプライチェーンが寸断されることによってその供給すらも行われない、極めて深刻な状態にあると思っております。
特に、そういった影響というものは、中小零細企業であったりとか農家の皆さんに及んでくる。それに対する手厚い措置をとることによって、事業を継続する、これがまず極めて重要なことであると思っておりますし、さらには、今後、コロナの終息後をにらんだ経済のV字回復に向けて、さまざまな、新しい設備の導入であったりとか生産性を向上していく、こういった取組に対する支援策をそれぞれの予算等でしっかり進めていくことが極めて重要だと思っております。


穀田委員

手厚い措置、継続への支援、そういうことをお話しいただきました。
四月一日の新たな年度に入って、日米貿易協定だけでなくて、TPPや日欧EPAも、牛肉の関税率が二六・六%から二五・八%と更に引き下げています。先ほど述べました財務省の三月の貿易統計によると、牛肉の輸入量は前年比で二一%増、二カ月連続で前年を上回っています。まさに、米国産牛肉だけでなく、輸入牛肉に歯どめがかからない状態となっている現状を、それはそれとして直視する必要があると思います。
こうしたもとで、新型コロナの感染拡大は、肥育農家などに追い打ちをかけています。宮城県の肥育農家は、全く先が見えない、たとえ赤字でも売らざるを得なくなる、牛を売れば売っただけ赤字が累積していると、厳しい経営に悲鳴を上げています。私が住んでいる関西の方でも、食肉業者は、売上げは前年の半分以下になっているというふうに明かしています。
今求められているのは、こうした実情に政府がいかに素早く対応するのかが問われています。肥育農家への支援として、販売価格が生産費を下回った場合に、国と生産者による積立金から差額の九割を補填する牛マルキンがあります。農水省は、生産者の負担金を免除し、国負担の四分の三を支払うこととしていますけれども、肥育農家の切実な思いを受けとめるのであれば、実質免除とする生産者負担の分を差し引かずに、国が責任を持って牛マルキンの九割を全額補填すべきじゃないのかと思っているんですが、農水副大臣の見解をお聞きします。


伊東副大臣

先生今お話しのとおり、牛マルキンは、肥育牛一頭当たりの標準的販売価格が標準的生産費を下回った場合に、その差額の九割を補填する制度であります。お話しのとおり、国が三に対して、生産者一の割合でこれを負担することになっております。
このため、生産者負担金を支払わない場合、制度上、本来はマルキンの支払いは行われないところでありますが、今回、肥育牛農家の資金繰り対策といたしまして、生産者負担金の納付猶予を講ずることといたしまして、生産者負担金を払わなくても、このマルキン発動時には国費分、すなわち交付金の四分の三を交付するとしたところであります。
さらに、四月七日に公表されました緊急経済対策におきまして、肥育牛農家が体質強化に資する取組を行った場合に、出荷頭数一頭につき二万円の交付金を交付するとともに、三月十日の緊急対応策第二弾で措置されました農林漁業セーフティネット資金の貸付け当初五年間実質無利子無担保、この融資枠を大幅に増額をすることとしているところであります。
これらの対策によりまして、肥育牛農家の皆様の不安を払拭し、意欲を持って経営を継続していただけるよう、しっかり支援をしていきたいと思います。


穀田委員

その内容は、もう既に明らかにされているわけです。
私どもの田村貴昭議員が十二日に質問したときに、江藤農水大臣は、さっき言った四分の四を払うべきだとの指摘は胸にとどめさせていただきたいと答弁しているんですよね。
たとえ今言った措置がさまざまとられたとしても、生産費の基準価格が低過ぎて、実際の補填には不十分だとの声が上がっているのが現実なんですね。だから、そこはやはりよく踏まえてやらなくちゃならぬと思います。
もう一つ、子牛の問題も深刻です。
報道にもありますけれども、奄美大島の大島地区の五月子牛の競り市で、平均価格が五十一万円台まで下落したとあります。これは、前回の三月競りと比べて十一万五千円安、前年の同月比では二十万五千円安と、大幅に下落しています。既に各地でこのような事態が生まれています。
岩手県江刺地域は、水沢、江刺、胆江ですね、その地域では、子牛生産者から、とても利益が出ない状況であって、二、三カ月もこの状態が続けば先行きの見通しが立たないという声が上がっています。
子牛生産の安定化を図るために、肉用子牛の価格が低落し、保証基準価格を下回った場合、生産者に対して生産者補給金を交付する肉用子牛生産者補給金制度があります。現在の保証基準価格は黒毛の和種で五十四万一千円だけれども、これとかつかつになっている現状があります。
もともと農水省は、子牛一頭当たりの生産費は六十五万九百六十九円としています。今述べた江刺、胆江地方では、生産者からは、保証基準価格を生産費まで引き上げてほしいとの要望が上がっています。こうした要望に応えるべき時期ではありませんか。


伊東副大臣

五月の全国の主要市場五十市場におきます黒毛和種の子牛の価格は、きのうまでの平均で六十万八千円でありまして、前年同月と比べまして二三・二%の大幅な低下となっているところであります。
今先生御指摘のように、肉用子牛の再生産を確保するため、この繁殖農家に対しましては、子牛価格が保証基準価格、黒毛和種で五十四万一千円でありますが、これを下回った場合、その差額の十割、全額を国が補填する肉用子牛生産者補給金制度を措置しているところであります。
こうした中にありまして、繁殖農家の生産意欲を維持し、生産基盤の弱体化を防ぐためにどのような対策が考えられるか、先生御指摘のとおり、農水省としても真剣に検討をしてまいりたい、このように考えております。


穀田委員

真剣に検討をしていただいて、胸にとめるとか真剣に検討するとかじゃなくて、実行が今求められている。窮状は、すぐ、平均したら六十万だと言うんだけれども、五十万を割っているところがあるわけですよね、五十万になっているところはいっぱいあるわけですよ。
そこで、資料に、皆さんのところにお渡ししましたけれども、国会決議の尊重という点からも私は当然だと思うんですね。
この二〇一九年十二月五日衆議院農水委員会の決議では、肉用子牛生産者補給金の保証基準価格は、中小、家族経営を含む酪農家の意欲喚起を考慮して決定するよう要望しています。保証基準価格を生産費までに引き上げることや、牛マルキンの九割を国が全額保証するなど、大打撃を受けている生産者が、今、副大臣がお話あったように、まさに意欲を持ってできるように、政府の責任で、私は支援を更に強めるべきだということを指摘しておきたいと思います。
副大臣もお忙しいでしょうから、これで結構でございます。


松本委員長

では、伊東農林水産副大臣、どうぞ。


穀田委員

次に、議題となっている、国際獣疫事務局に関し質問します。
国際獣疫事務局が一九九七年に発行した、米国の食中毒における魚介類の役割と題する文書があります。これを見ますと、自然毒を有する魚介類の一つとしてフグの毒性が紹介されており、フグの毒性による中毒の発生件数は日本が最多、一番多いと指摘しています。致死率も五〇%と記され、患者は年間二百人に及ぶ。今はそんなふうにはないですけれども。
日本では、直近の五年間でも、フグの食中毒は依然として後を絶たず、平均二十一件あります。フグの毒、テトロドトキシンは、青酸カリの約千倍の毒力があって、毒力が強い場合は、肝臓十グラム以下で死に至ることがあると報告されています。
もともと、フグは、種類によって毒のある箇所、すなわち食用可能な部位がまちまちで、取扱いが困難です。その上、厄介なことに、ここ数年、今までにない品種というべき交雑種フグが数多く出現していると聞きます。
交雑種フグの出現状況はどうなっているのか。その原因や地域別の特徴など、この数年内の変化の問題について簡潔にお示しいただきたいと農水省にお願いします。


黒萩政府参考人

お答えいたします。
近年、各地において、さまざまなフグ類各種の交雑の発見が報告されております。地域別には、東日本の太平洋沿岸域におけるショウサイフグとゴマフグ、瀬戸内海におけるナシフグとコモンフグ、日本海におけるトラフグとマフグ、九州沿岸域におけるシロサバフグとドクサバフグ、こういったフグ類各種の交雑事例が報告されているところでございます。
交雑の原因についてでございますが、近年の海水温の上昇や海流の変化により、フグ類各種の分布域に変化が生じ、交雑が起こりやすい状況になっているといったことが指摘されております。
農水省としましては、引き続き、フグ類の交雑の実態把握に努めてまいりたい、このように思っております。


穀田委員

交雑種のフグの出現というのは新しい問題なんですね。さらに、東京湾などでは、毒性がわからないスジモヨウフグというのも確認されているんですね。この交雑種フグについては、毒がどのように形成されるのか、どの部位に毒があるのか、そのメカニズムが未解明と言われています。
そこで、今度は料理の方にちょっと話が行くんですけれども、フグ料理といえば、その旬というのは大体冬から三月、四月までだけれども、現在のコロナ禍の中で、書き入れどきのこの時期に、経営的に大きな打撃となっています。フグ関係業者への経営支援と、フグを安心して食べられるよう環境整備を行うこと、また、食の安全確保というステータスの上に、フグ食を国際的に普及することも重要な課題となっていると思っています。
私は、二〇一〇年に厚労省に対してフグ処理免許の国家試験化を要望するなど、この問題を取り上げてまいりました。世に、フグは食いたし命は惜ししと言われているんですけれども、厚労省は、昭和五十八年、厚労省環境衛生局長通知、フグの衛生管理についてを出して、十六種のフグ科、先ほどいろいろありましたけれども、ハリセンボン科四種、ハコフグ科一種とナシフグについてのみ食用可能と認めています。確かに死亡件数の減少はしたけれども、これは医療の発展のおかげなんですね。
京都府ふぐ組合が行ったアンケート、京都料理展示大会に参加した食に興味を持つ方のアンケートなんですけれども、千六百六十五人のアンケート調査なんですが、これによると、フグの肝臓について、食べるのは危険と答えた方が四六%。多数の人が、場合によっては食べてもよいと思っておられる。素人が釣ったフグも含めて、まずフグの肝臓には毒があるから食べてはいけない、フグを釣って食べてはいけないという認識が国民の中に浸透していないということを示しているんじゃないか。
水産庁は、この問題の周知徹底をどのように図っているか、一言、お願いします。


黒萩政府参考人

お答えいたします。
一般の方が自分の釣ったフグであるとか譲り受けたフグをみずから調理することにより、フグによる食中毒事例が発生しているということは承知しております。
こういった状況を踏まえまして、農水省といたしましては、ホームページにおいてフグによる食中毒に注意するよう釣り人に呼びかけ、さらには、食中毒事例が発生した場合におきましては、釣り関係団体へ随時情報提供を行っております。さらには、釣り人向けのイベント等の機会を捉えて注意喚起を行う、こういった取組を実施してきたところです。
引き続き、厚生労働省などの関係省庁とも連携し、食中毒を防ぐための注意喚起を実施してまいりたいと考えております。


穀田委員

やはり、中毒が起きているわけだから、もうちょっと頑張ってくれな、ホームページをやっています、いつも何か言うとすぐ、ホームページでやっていますと。それでいいのやったら苦労せぬわけでね。人の命がかかわっているんだから、どこを改善したらいいかとか、もうちょっと考えてほしいなと率直に思います。
安全に食べようと思うと、二つのことを確実に行う必要があります。一つは、フグを処理する者が、食用可能な二十二種類のフグを確実に見分けることができる。危険な交雑種フグは見分けて排除できるかどうか。もう一つは、食用可能なフグについても、フグの種類によって個々に違う毒の部位を確実に識別し、除去する処理能力が求められます。
ところが、フグ処理者の免状は、都道府県が取扱資格を設定し、都道府県ごとに許認可を与えている。都道府県ごとに、現実としてはばらばらに認可を与えている、これは事実ですね。


浅沼政府参考人

お答えいたします。
フグ処理者の認定制度につきましては、先ほど議員御指摘のとおり、昭和五十八年に厚生労働省が示したガイドラインを踏まえ、都道府県等によって条例で定められたものと認識しております。
フグ処理者に起因する食中毒自体は近年少なくなっておりますけれども、フグ処理者の認定要件が都道府県等により異なるということが、都道府県間等でのフグ処理者の受入れの障壁になっていたというふうに承知しております。
この状況を踏まえまして、厚生労働省では、平成三十年の食品衛生法改正を受けまして、フグ処理者を食品衛生法施行規則に位置づけるとともに、フグ処理者の認定に必要な知識及び技術等の全国的な平準化を図る検討会を開催し、昨年十月に、フグ処理者の認定基準を策定し、都道府県に通知いたしたところでございます。
厚生労働省といたしましては、この新たな認定基準に適合するよう、都道府県等に対しまして、既存のフグ処理に関する条例等の改正を要請しているところでございまして、フグ処理の認定基準の全国の平準化を図ってまいりたいと考えております。


穀田委員

平準化に向けて努力していることはいいことだと思います。さらに、五月一日にガイドラインを出されているということも私は承知しております。
問題は、条例等の見直しを確実に実行させ、安全対策を万全に履行しようと思えば、厚生労働省がほんまに力を注がなければならない。フグを扱うというのは、当然、漁師、漁協、そして市場、調理する人に至る全ての工程で安全性を確保、完結させるためには、相当な覚悟が要ると私は思っているんです。
京都ふぐ組合の方々に話を聞きますと、かつて京都では、試験による基準の統一化とその徹底のために、ふぐ組合の役員が京都府北部の久美浜や間人などの漁協にも出向き、二十四時間の講習や実技を教えたと言われています。相手は魚の専門家としての自負もあり、何で今さらあんたたちの話を聞かなあかんのやというようなやりとりもあったそうですが、事は人の命にかかわるとの思いで、きちんとフグを処理できる知識と技能を講習し、地域ごとに中心となる人物を育てたと聞きます。
また、私は、先ほどお話しだった厚労省の検討会の議事録を読みましたけれども、市場で処理された身欠き、フグの身欠きは流通するものだから、フグの調理人にそこまでのことを求めるのはいかがなものかとの意見も出ています。しかし、市場で処理された身欠きの中に、毒を持つマフグの皮の部分が入っていたとか、食べられる白子、精巣の部分と、食べられない真子、卵巣の部分、これがまじっていたりすることがあったという料理人のお話を私は聞きました。
仮に危険部位がまじっていても、最終的にはフグを提供する調理人がしっかりとしておれば、客には提供されない。だから、文字どおり基準を統一して徹底することが必要だと。こうしたところまで、つまり、全ての工程に至るまで本当に徹底する覚悟と責任体制をとって取り組もうとしているのか、その決意をお聞きしたいと思います。


小島大臣政務官

お答えをいたします。
先ほど話がありましたように、五月の一日付でガイドラインとして通知をしておりますけれども、それに続きまして、フグの安全性の確保に当たりましては、水揚げや魚介類市場において、漁業者に市場関係者が有害なフグ及び種類が不明なフグを確実に排除するとともに、飲食店等のフグ処理施設においては、フグの鑑定及び有毒部位の確定、除去が必要と考えております。このため、水産庁に漁業者の指導について要請し、また市場関係者に対しましては、フグの鑑定に係る専門的な知識を有する者の市場への配置を求めております。
さらに、フグ処理は、フグの種類の識別に関する知識及び有毒部位を除去する技術等を有するフグ処理者みずからが行うこと、また、その立会いのもとに行わせることに限定をいたしております。
このように、厚生労働省といたしましては、フグの安全性確保のため、漁獲、流通、処理の各段階において対策を講じまして、引き続き水産庁とも連携しつつ対応してまいりたいと考えております。


穀田委員

そのとおりなんですけれども、現実に進行している内容はなかなか大変だということをよく見ていただかないと、こうなっています、通知しました、ガイドライン出しました、水産庁も協力しましたというような話でいくのやったら苦労はせえへんわけですよ。これは人の命にかかわっていることやから、私、割としつこく言っているわけですね。
といいますのは、近年、先ほど述べたように、フグの漁獲量がふえている北海道や青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島の各県では、フグのブランド化に取り組んでいる自治体もあると聞くけれども、現時点では、その処理者の免許は講習会だけで取得できるんですね。
しかし、例えば、私の住んでいる京都では大変厳しい内容で、知識を問う学科試験、実際に処理能力があるかどうかを見きわめる実技試験の両方を課しています。受験者の三分の二は料理学校の卒業生だけれども、二十四時間の座学、最低五回はフグをさばいた経験を経て、当日の試験では、毒を持つ九つの内臓、これは皆さんに資料で提供していますけれども、これをきちんと取り除き、九つのところをきちっとはめなあかんのやね、これ、でやっている。これは、万が一、毒のある内臓が取り残されることがないようにするためであります。
厚労省は、二〇二一年をめどに全都道府県が統一基準で認定試験を行うようにするとのことですけれども、本当にこれは京都などと同様に全国統一基準となるような担保があるのか。通知やガイドラインを見ましても、そういう試験を行うとか、こう言っているんだけれども、実際は立会いする人間がそれほどいるのかという問題があるんですよね。立会いのもとに試験をやると書いているんですよ。だから、そういうことについて確保できるのかという問題点も含めて、そう簡単じゃないよと相当腹を固めてやらなフグに負けるでということは思うんですが、いかがですか。


小島大臣政務官

お答えをいたします。
全く先生のおっしゃるとおり、よく理解できます。新しいフグ処理者の認定制度では、フグの種類の識別に関する知識や有毒部位を除去する技術等に関する試験を行うことといたしております。現行のフグ処理者の認定制度では講習会の受講により認定している都道府県等においては、実技試験の試験監督者の養成を始め、試験実施の体制整備が課題であると認識をいたしておるところでございます。
これからは都道府県において新しい認定制度の施行に向けて準備いただくものと考えておりますが、厚生労働省といたしましては、令和三年度を目途に都道府県等の試験実施体制について把握することといたしております。参考となるような好事例につきましてもしっかりと紹介をしてまいりたい、このように考えております。


穀田委員

通知し、ガイドラインを出し、そして情報も提供してもらうと、各都道府県から、そういう段取りになっていることはつかんでいますけれども、当面、各都道府県でやってみて、やはり問題点が克服されない場合は、将来、全国統一試験、つまり国家試験化も視野に入れる必要があるんじゃないかと私は考えています。
最後、一言だけ言っておきますと、新しい環境変化のもとで常に最新の知識を持つことがフグ処理者に求められていると私は考えます。だから、免許を運転免許のように五年更新にするなど、制度上の改善が必要ではないかと考えます。問題提起だけにしておきたいと思います。
フグを食べるということは、先人たちが毒と格闘し、長年の経験を積み重ねてつくり上げた日本の食文化の最高傑作の一つであります。フグの取扱制度と免許を全国統一基準で確立し、最高峰の食の安全確保の体制を確立してこそ、フグ食を世界にアピールし、普及することができると思います。
食材や食品が全国的に流通する時代またグローバルな時代状況の中で、地域によってフグの食中毒のリスク格差が存在することなどあってはならないと思います。国の責任において確かな安全証明を行ってこそ、先ほど外務大臣がおっしゃっていましたポストコロナの後のV字回復、私はV字というのはいかがかとは思いますけれども、フグ関連業界の一層の発展につながる。したがって、フグ処理免許の全国統一、国家試験の制度化も視野に入れた取組の強化を求めて、質問を終わります。