ダンス規正法(風営法)の問題点を追及

2015年05月27日

井上委員長

次に、穀田恵二君。


穀田委員

日本共産党の穀田恵二です。
二〇一二年、レッツダンスの風営法からダンス規制の撤廃をの署名運動が始まり、私も、同年六月に質問主意書で、風営法で規制の対象となるダンスとは何かを問い、さらに、二〇一三年、風営法からダンス規制を撤廃すべきと予算委員会分科会で質問を行いました。その際に、下村文科大臣は、穀田議員の話は説得力がある、国際社会では社交ダンスが踊れないというのは通用しない、もっとダンスが文化として広まる国でありたいと答弁しました。
また、署名の提出に呼応してダンス文化推進議連が結成されました。ダンス関係者、業界団体、繁華街の地元自治会などから積極的にヒアリングも行い、ダンス議連として改正案もまとめました。その改正案は、風俗営業の中からダンスの文言は削除、深夜遊興の禁止の制約の中でダンス飲食店の枠を設け、クラブなどでダンスが深夜も踊れるようにとしたわけであります。私は、ダンス議連の中で、遊興の定義を限定し、ダンス飲食店とした新たな規制を行わないように主張しました。
一方、政府からは、ダンスだけを例外的に遊興から除くのではなく、新しい特定遊興飲食店という枠のもとで深夜の遊興も認めるという今回の風営法改正案が提出されました。
まず、確認したいと思います。改正案でダンスの文言は全てなくなったのか。


辻政府参考人

お答え申し上げます。
このたびの改正法案は、ダンス自体に着目した規制を改め、客にダンスをさせる営業の一部を風俗営業から除外することなどを内容とするものでございます。
この改正法案により、風営適正化法の条文からダンスという文言は全てなくなることとなります。


穀田委員

今ありましたように、風営法からダンスの文言が削除されることになった。当然のことです。しかし、ダンスを含めた遊興という枠の中で、さらに広く規制しようとする問題があります。ダンスに自由をと求め運動してきた方々からも、懸念の声が出されています。
そこで、まず、ダンス規制がいかに世の中の常識からかけ離れたものであったかについて、少し触れたいと思います。
大阪のクラブ、ヌーンが、二〇一二年四月に、風営法違反で摘発されました。金光正年氏が経営しています。ヌーンは、大阪・梅田の近く、JR京都線のガード下にあり、近隣の住民とのトラブルもなく、長年営業していた、関西での草分けとも言えるクラブです。新しい音楽に出会える場として人気のクラブです。金光さんは、風俗営業を営んでいるわけではないので摘発は不服と主張し、裁判となりました。
このクラブは、何を根拠に風営法違反で摘発されたのか、明らかにされたい。


辻政府参考人

お答え申し上げます。
御指摘の件につきましては、平成二十四年四月、ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業を、許可を受けずに営んだとして、大阪府警が、風営法の三号営業の無許可営業の容疑で検挙したものと承知をいたしております。


穀田委員

クラブ、ヌーンでのダンスが、風営法の対象とするダンスであると、どのような根拠で判断したのか。法廷で、摘発現場にいた七人の警察官が証言しています。また、当日の客も証言に立って、どんな身体動作をしていたか、動作を示しながら証言をしています。
判決文でも例示されています。どんな身体動作だったのか、述べてください。


辻政府参考人

お答え申し上げます。
大阪地方裁判所の判決文、平成二十六年四月二十五日宣告でございますけれども、これでは客の店内での動作につきまして、次のとおり言及されております、少し長くなりますけれども。
フロアでは、男女双方を含む約二十人程度の客が立ったまま音楽に合わせて体を動かすなどしていた。具体的には、その場でジャンプしたり、音楽のリズムに合わせて左右にステップを踏んだり、ステップに合わせて手を左右に動かしたり、頭をうなずくように上下に動かしたり、膝を上下に曲げ伸ばししたり、左右の足を踏みかえたり、両足のかかとを上げ下げしたりするなどしていた。中には、ボックスステップを踏み、地面に手をつけた体勢から足を出したり、腰をひねったりして踊る者もいた。もっとも、客同士で体を触れ合わせるようなダンスをしている者はいなかった。
フロアにいた客は、ステージ側よりもDJブース側により多く集まっており、客同士の距離は、近いところでは約三十センチメートル程度であったが、客同士の体が接触しているような状態になかった。
フロアにいた客は、上記のとおり音楽に合わせて体を動かすなどしていたほか、椅子に座って音楽を聞いている者もいた。また、バーカウンター等のフロア……(穀田委員「長いな」と呼ぶ)では、こんな程度で、済みません。というような内容でございました。(穀田委員「高裁は」と呼ぶ)
続いて、大阪高裁の判決文、平成二十七年一月二十一日宣告でございますが、これでは次のとおり言及されております。
男女合計約二十人の客が音楽に合わせて踊っていたが、客同士で体を接触して踊る様子は見られず、平成二十三年三月二十六日及び平成二十四年三月三十日に警察官が本件店舗の営業を確認した際にも、そのようなダンスが行われている様子は見られなかったといったような内容でございます。
済みません、長くなって申しわけありませんでした。


穀田委員

だから、これが何が問題なのかということが、誰が考えたかて、あるわけですよ。しかも、これは警察官の証言で、今、三月二十六日及び三十日に、本件の店舗の営業を確認したと、内偵まで行って、やっているわけですよね。
だから、そのようなダンスが行われている様子は見られなかったというところまで言っているということが大事なんですね。だから、およそ何の違反なんだということなわけですよ。
そこで、大阪地裁、大阪高裁は、三号営業、風営法の対象とするダンスとはどう判断したのか、そして、ヌーンではダンスはどうだったのかということについて、簡潔に述べてください。


辻政府参考人

お答え申し上げます。
まず、大阪地方裁判所の判決文でございますけれども、許可の対象とされる三号営業とは、形式的に「ナイトクラブその他設備を設けて」といったような風営法の文言に該当することはもちろんのこと、その具体的な営業の態様から、歓楽的、享楽的な雰囲気を過度に醸成し、わいせつな行為の発生を招くなどの性風俗秩序の乱れにつながるおそれが、単に抽象的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められる営業を指すと解するのが相当と言っております。
続いて、大阪高等裁判所の判決文ですが、ここでは、立法当時から想定されていた、男女が組になり、かつ、身体を接触して踊るのが通常の形態とされているダンスをさせる営業は、それ自体の社交性の強さからして、飲食をすることと相まって、具体的な営業の態様次第では、男女間の享楽的な雰囲気を過度に醸成するおそれのある営業類型であると。
これと異なり、男女が組になり、かつ、身体を接触して踊ることを通常の形態とするダンス以外のダンスについては、これを客にさせる営業によって男女間の享楽的雰囲気を過度に醸成するようなことはないといったような趣旨でございます。


穀田委員

だから、簡単に言うと、性風俗秩序を害するおそれがある類型とはおよそ言えないということが裁判では出ているわけですよ。そういう実態を、地裁、高裁と二回も連続しているのに、またこれを不服だとして上げるそっちの態度が本当にいかがわしいと言わなきゃならぬわけだけれども。
証言によると、警察官は、事前に、何が風営法の対象のダンスに当たるかについて、大阪府警察本部生活安全課から資料を取り寄せたと。その表には、ダンスに当たるかどうかが示されていて、ステップを踏めば丸、ダンスだ、ステップの幅は一メートル程度だ、腰をくねらせるのはどうか、三角だ、リズムに乗って軽い上下運動はダンスではないと。こんなことまで議論してやっているわけですやんか。
なぜこういう問題が出てきているかということで、それぞれが別々の判断基準を法廷で述べたことが極めて問題なんですね。
いずれにしても、単なる身体運動であって、男女間の享楽的雰囲気とは無縁だということは、誰が見ても、警察官が見てもそう思わざるを得なかったわけですよ、これは。そして、性風俗秩序を害するとして風営法で規制しなければならないようなダンスだとはおよそ思えないし、そうでないことは明らかだ。
私は、さきに述べた質問主意書で、風営法で規制されるダンスとはどんなダンスかということを問いました。そうしたら、男女間の享楽的雰囲気を過度に醸成するダンス、こういう回答があった。ところが、現場ではどういう判断をしているか。体を動かせばダンスだと解釈をして拡大解釈をする。しかも、先ほど述べたように、捜査の過程では内偵を行い、当日も何人もの警察官が現場を見ているのに、これは風営法の対象のダンスではない、男女間の享楽的雰囲気を過度に醸成するダンスではないと誰一人疑問に思わないのか、言えなかったのか、こういうのが一番の問題だと思うんですね。
大臣、そこで、こういう判決についてどう思わはりますか。


山谷国務大臣

御指摘の件につきましては、大阪高裁が最高裁に上告中と承知しておりますので……(穀田委員「大阪」と呼ぶ)大阪高裁が最高裁に上告中と承知しておりますので、コメントは控えたいと思います。


穀田委員

係争中だからというのはわかるんだけれども、ちょっと、もう一遍答弁し直した方がいいんじゃない。


山谷国務大臣

大阪高検が最高裁に上告中であります。


穀田委員

だから二回聞いたわけですけれども、僕は高裁がするというのは初めて聞いたなと思って。まあ、いいですけれども。
だから、係争中だからといって、こういった問題の指摘の中身からして、いかにでたらめかということが誰でもわかるわけですよね。先ほど答弁の中で、国民の声を聞いてとたしか山谷大臣はおっしゃいましたけれども、やはり国民の声というのを聞いてみてどうなのかということを、係争中ではあったとしても、こういうものがいかにでたらめかということは、私は言うべき筋じゃないかなと思うんですよね。
これは、現場の警察官の恣意的判断の問題だけではありません。
私は、風営法の対象は接待としてのペアダンスであって、シングルダンスは対象でないんじゃないかという質問を二〇一三年にしました。基本的にはそうだが、タップダンスなども対象としてきたというふうに答えて、警察庁による、シングルダンスも対象だとする恣意的判断が今回の事態を招いていると私は考えます。
問題は、それが裁判を通して断罪された。だから、警察にはダンス文化を語る資格はなく、何が性風俗秩序を乱すのかの見識もない。そこが国民の常識とかけ離れているということを私は言いたいと思っています。
さて、大阪、京都、東京でたくさんのクラブが摘発されました。
自分たちは性風俗秩序を乱すような風俗営業ではない、そもそもクラブは、格好いい、クールな文化だ、金光さんはそうおっしゃっています。ところが、取り調べで、法律にはダンス、飲食と書いてある、だから風俗営業だ、その無許可営業だといって、十日間も二十日間も勾留され、連日の尋問で精神的にも経済的にも追い詰められたと。そして、多くの経営者はダンスをさせていたと認めて罰金を払わされた。その多くがクラブ経営者としての夢を奪われました。
ダンス文化にどれほどの打撃を与えてきたか。ワールド、バタフライ、ブラックボックス、トライアングル、ヌーン、ジュール、グランカフェなど、京都、大阪で摘発され、クラブ経営をできなくなった多くの方々から私は話を聞きました。
幾ら、風俗営業ではない、クラブは文化だと言っても、取り調べの人は誰も聞いてくれなかった、結局認めるしかなかった、毎日冷たい弁当を食べていて、子供の顔が浮かんで、外に出られるんだったら何でもいいという気持ちになったなど、無念のそういう思いを語っていただきました。
法律を拡大解釈して権力を振るい、ダンス文化を萎縮させ、真面目な経営者から事業を奪った。大変な職権濫用だったと私は考えます。結局、その人たちも風俗営業は行っていなかったのに、ダンスの恣意的判断で彼らへ重大な被害を与えた。
この点については、大臣、いかがですか。どう思いますか。


山谷国務大臣

ダンス文化の振興とナイトライフの充実というのは、国民のニーズでもございます。
ただ、個々の状況がありますので、適切に判断をしていきたいと思います。


穀田委員

どうも国民の声を聞いている感情の話とはとても思えませんし、反省が全くないということだけは確かですな。
そこで、法改正では、クラブは風俗営業の三号営業ではなくなる。しかも、もともと三号営業の対象ではなかったんですね。ところが、改正案で、ダンスは、もっと広い遊興という枠の中で今まで同様許可制として規制を受けることになります。本来、許可制の対象ではないダンスと遊興を新たに許可制の対象とするものであります。
ダンスをめぐる現場の恣意的判断のでたらめぶりをヌーン裁判が明らかにしました。そのことが遊興でも同様に起こるのではないかと懸念しておられる方がたくさんいらっしゃるわけですよね。
今までは、深夜遊興の禁止は遵守事項でありました。今回、許可制の特定遊興飲食店という新しいカテゴリーが生まれることになる。そうなると、深夜酒類提供飲食店が、警察による恣意的な解釈で、これは遊興だ、無許可営業だと、風営法の目的を離れて摘発される懸念がある。
なぜ深夜遊興が禁止されなければならないのか、簡単にお答えください。


辻政府参考人

お答え申し上げます。
深夜飲食店営業は、深夜という風俗上の問題が発生しやすい時間帯に多くの酔客を相手とする営業でございます。こうした営業におきまして、仮に営業者側が積極的に働きかけて客に遊興をさせた場合には、歓楽的雰囲気が過度なものとなり、風俗関連事犯や酔客の迷惑行為等の問題が発生するおそれがございます。
これを防止するために、飲食店営業におきまして、深夜に客に遊興をさせることが禁止されているものでございます。


穀田委員

酔客を相手にしてと言っていますけれども、これも調べて言ってほしいんだよね。大体、クラブで飲んでいる率とそれからカラオケで飲んでいる率というのは明らかに違うんですよ。クラブで飲んでいるといってもほとんど少ないという実態もあるのに、何かすぐ酔客といえば話がいいかと思って、そんな、ごまかしたらあきまへんで。
それで、性風俗の乱れにつながらないとされたクラブのダンスも深夜になると遊興に含まれる、だから、善良の風俗を害するということになるわけでしょう。
私はそこで言いたいんだけれども、遊興とは何か。おもしろく遊ぶこと、特に、料理屋や待合などで酒を飲んだりして遊ぶこと、また、遊び興じること、特に、酒色に興じることと辞書にあるんですね。まさに、接待行為と一体となった二号で言う遊興。酒色とあるように、男女間の享楽的雰囲気を伴ったものであります。深夜遊興は、接待を伴わないものであります。そこで、これはダンスだと言った同じ警察が、今度は、これが遊興だと判断するということになるわけですね。
だから、そこで聞きたいと思うんですけれども、もし仮に法改正案が通った場合に、特定遊興飲食店の許可を受けずに深夜飲食店が遊興をさせた場合はどうなりますか。


辻政府参考人

それは許可を受けなかった場合には、無許可営業ということになります。(穀田委員「二年、懲役のことも言ってよ」と呼ぶ)それにつきましては、許可制度の担保手段として、二年以下の懲役の罰則がついてございます。


穀田委員

ちょっと質問を飛ばすとすぐ混乱するという悪い癖があるね。二年以下の懲役と二百万円以下の罰金、そっちを言ってくれなきゃ。そのことも忘れているようではどないすんねんな。これまでは行政指導だったわけでしょう。それが二年以下の懲役と二百万以下の罰金となる。
では、具体的に聞きましょう。パブでワールドカップを見て客が盛り上がる、そのとき、店主が、みんなで日本を応援しようと声をかけて盛り上げたとしたら、店の積極的行為として遊興になるのか。簡単に。


辻政府参考人

一般的には、スポーツバーは、営業者側はテレビ等でスポーツの映像を流すのみでございまして、客がみずから映像を楽しむものと理解しております。たまさか、そのお店の方が声をかけられたということでもって遊興の営業をしたというふうには考えておりません。


穀田委員

だから、これも不思議なもので、たまさかとわざわざ言うんですよ。たまたまかけなかった、では、しょっちゅうかけておったらあかんということなわけやね。ということなんですよ。こういうごまかしをしたらだめですよ。
それで、カラオケを客が自発的に歌うのは遊興じゃないけれども、店主やママがサービスで歌えば遊興となるのか。結論を言ってください。


辻政府参考

再三答弁させていただいておりますとおり、遊興とは、営業者が客に積極的に働きかけて遊び興じさせることということで解釈をいたしておりますので、ただいま先生からございましたものが、客に積極的に働きかけているということであれば、それに当たるというふうに思います。


穀田委員

そこなんですよ。積極的に働きかければと。先ほど来、ずっと朝からの答弁を聞いていても、何が違反なんだと聞かれたら、今の時点で正確に、先ほど歌舞伎の話も出ましたよ。そうしたら、違反なのか違反でないのかというと、その時点で判断するみたいな話をして、国会でもはっきり答弁ができないのに、どないして下は、下と言うと叱られちゃう、訂正します、現場では判断すんのやということになりますやんか。
しかも、今ありましたように、今どう言ったかというと、店の積極的行為となると、それは誰が判断するんですか。私は積極的にやったわけじゃない、みんなから言われてつられてやった、それをしょっちゅうやっていたということになると、だめなんでしょう。


辻政府参考人

取り締まりについての個々のケースにつきましては、やはり実際の証拠関係みたいなことがございますので、なかなかここでちょっと一概にお答えするのは困難かと思います。


穀田委員

証拠関係が出て、さっきのダンスのときだって、その警察官は法廷で証言していて、それがないのにもかかわらず、やるようなことをやっているんでしょう。
だから、客観的にそういう基準を示せないということで、どないして皆さん、これを今後申請しますねんな。だから、客がカラオケを歌ってよいのに、店の人が歌えば無許可営業で二年以下の懲役、二百万円以下の罰金という直罰です。これも、大臣がおっしゃるように、国民の声からいうとどうもかけ離れているなと思うんですね。
だから、店側の積極的な行為を基準としていますけれども、規制の目的からすれば、性風俗の乱れにつながる遊興を基準として、限定して規定すべきなんですよ。そして、それらは風俗営業として規制すべきなんですよ。それ以外の遊興については、深夜であるという条件があるにしても、直罰を伴う許可制にする必要はないと言わなければなりません。
遊興として例示されているのは、興行を見せる行為、生演奏などを聞かせる行為、喉自慢大会など競技色のあるものなどです。接待のある二号営業の遊興とは全く異質なものであります。わざわざ風営法で原則禁止にしなければならないほど性風俗秩序を乱すものなのか。どのような危険性を想定しているのか、お答えいただきたい。


辻政府参考人

お答え申し上げます。
深夜におきまして、お酒を飲んだ状態で、そしてその客に対して営業者が積極的に働きかけを行いました場合には、風俗上の問題が生じるおそれがある、歓楽的雰囲気、享楽的雰囲気が過度になりまして、風俗上の問題が発生する、生じるおそれがある、こういうことでございます。


穀田委員

今のお話でも、前の話を二つばかり言った後で、最後に、おそれがあると来ますやんか。おそれって誰が判断すんのや。そんなことで、では、我々一人一人が、営業しようと思う方々がどないしてそれを判断しますねんな。そんなもの、おそれがあるとやられたら、何でもやられちゃいますやんか。そういう問題だということが、この審議ではっきりしたと思うんですね。
私は、本当に規制が必要な営業形態が生まれれば、必要に応じて規制したらいい。しかし、現在遊興として例示されているものにグレーゾーンと言えるものがあるか。性風俗を乱すとして許可制としなければならない、抽象的にとどまらず、現実的な危険はないということじゃないかと思うんですね。
ヌーン裁判の判決は、地裁、高裁ともどう言っているか。法で営業を規制する際は、法の目的の趣旨から離れ、過度に、広範に規制してはならないと厳しく戒めているんですよね。だから、今お話ししたように、過度に、広範に規制してはならない、趣旨から離れる、この三つのことを言っているんですよ。今局長の答弁で言いましたのは、おそれがあるとまで話をしているわけだから、いかにそれが広範囲になるかということは目に見えていると思いますね。
だから、遊興のうち今までダンスだけが無許可営業の対象だったが、これからは、夜に何かしようと思ったら、一々警察の判断を仰がなければならなくなる。深夜の性風俗の乱れを防止するという目的からして、本来規制の必要のないものまで対象が広がり過ぎているし、罰則は極めて厳しいと言わなければならない。つまり、過度で、広範だということだと思うんですね。しかも、本来の法規制の趣旨から離れて、権力を濫用しないという保証はどこにもない。
ダンスに自由をとの運動で、せっかく時代おくれの風営法の規制を撤廃できたかに見えて、警察は、ダンスだけじゃなくて、ライブからイベントまで、新たな警察の直罰の対象にしようとしているということが、今回の法改正案の中心だと思うんですね。
今見てきたように、深夜遊興に対する規制の目的が不明確であって、対象が一層広がり、罰則も厳しくなる。権力の濫用に対する反省もなく、権力の濫用を防止する保証もない。これを世間では何と言うか。焼け太りと言うんです。結局、ヌーン事件のような誤った摘発をさらに広範囲に引き起こすことになる。風営法の改悪と言わざるを得ないと私は思います。
このことを指摘して、終わります。


井上委員長

これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

 

    ―――――――――――――
井上委員長

これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。池内さおり君。


池内委員

私は、日本共産党を代表して、風営法改正案に対して反対の討論を行います。
反対する理由は、曖昧で、極めて広範な行為を含み得る遊興を対象として、風俗営業の規制を準用する規制権限を警察に与える特定遊興飲食店営業の新設は、深夜に営業する事業者に対して、警察による恣意的かつ広範な介入、権力の濫用を招くおそれがあるからです。
今回の法改正の発端となったのは、警察が恣意的な解釈でダンスクラブを次々と摘発してダンス文化を萎縮させ、真面目な経営者を苦境に追い込んだことでした。関係者だけでなく、広範な国民から厳しい批判の声が上がり、風営法からダンス規制の削除を求める署名がうずたかく積み上がったのは当然のことでした。
警察が風営法のダンス規定を根拠に無許可営業として摘発したダンスクラブ、ヌーンの裁判で、裁判所は、地裁、高裁と二度にわたり、警察の恣意的な解釈を断罪し、無罪を言い渡しました。この裁判の中で、警察が風営法の規定をいかに濫用するか、その姿がまざまざと、そしてはっきりと示されました。
警察の権力濫用の根拠となったダンス規定が、今回の改正でその一部が削除されたことは、署名運動の大きな勝利です。ところが、警察は、それを埋め合わせるかのように、今回、特定遊興飲食店営業として、新たに遊興を対象とする許可、規制権限を考え出してきました。
遊興は、ダンスを含むだけでなく、さらに広範かつ曖昧な概念です。深夜には、ライブハウスやカラオケ、さまざまな事業やイベントが行われていますが、それを風俗営業並みの規制の対象とする根拠も明らかではありません。そして、そのどれが特定遊興として新たな規制の対象になるのか。警察の判断に委ねられています。そして、無許可営業と判断された場合、ダンス営業を摘発したのと同じ、罰金二百万円以下、懲役二年の直罰の対象となります。この権限が濫用されないという保証はどこにもありません。これは、改正ではなく、改悪そのものです。
ダンスの自由を求めて、ダンスクラブ、ダンス教室、あるいは大学のサークルなど、多くの関係者が署名集めに奔走しました。その署名運動を逆手にとって、みずからの権限を拡大する今回の改悪のやり方も、主権者の意思をねじ曲げるものと言わなければなりません。
このことを最後に厳しく指摘して、反対の討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)


井上委員長

これにて討論は終局いたしました。