TPP11協定に反対 衆院外務委員会

2018年05月16日

中山委員長

 

次に、穀田恵二君。


穀田委員

私、河野大臣そして政務官堀井さんと、今度のTPPの問題と日米関係を中心に議論したい、御質問したいと思います。
ホワイトハウスの副報道官によりますと、トランプ大統領は四月、TPPへの米国復帰を検討するよう、ライトハイザー米通商代表とクドロー国家経済会議委員長に指示したと言われています。
そしてトランプ氏は、思い出しますと、二〇一六年の大統領選挙でTPPを最悪の協定と批判し、就任直後の一七年一月、TPPから永久に離脱するとした大統領令に署名しました。ところが、ことし一月になって、スイスのダボス会議に出席した際に、米国のテレビとのインタビューで、我々にとって明らかに十分によい協定になるならTPPにはオープンだと述べ、再交渉を経て復帰することもあり得るとの考えを示しました。
安倍総理は、五月八日の衆議院本会議で、トランプ大統領から米国がTPPに参加する可能性について言及があったと強調されましたが、その前提は、米国に有利になることを前提としたTPPへの復帰ということではないのか。
全体の問題について、まずお聞きしたいと思います。


河野国務大臣

たびたび答弁申し上げておりますように、アメリカにとりまして、TPPに復帰するということがアメリカ経済並びにアメリカの雇用にとって非常に有益なものになると考えております。だからこそアメリカは、TPP12というものをリーダーシップをとってつくり上げてきたわけでございますので、我々としては、アメリカにそれをもう一度しっかり理解をしていただくということが大切だというふうに思っております。


穀田委員

その問題について言いますと、大体答弁はいつも、有益であるということを理解してもらう、それを説得する、こうくるんですね。
今、河野大臣は、TPPの当初の問題についてのリーダーシップも含めてアメリカのことについて言及されました。しかし、トランプ大統領は、四月十二日のツイッターで、オバマ大統領のものより明らかによい協定になる場合にだけTPPに加わると述べています。したがって、次元といいますかね、どういう線を引いているのかということをよく見なくちゃなりませんし、トランプ氏が検討を指示したというTPPへの復帰は、あくまでも現TPPよりも米国に有利な協定であることが前提だということは、この一連の言動からしてはっきりしていると私は思います。
その上で、TPPはもともと、国境を越えてもうけを追求する多国籍企業を後押しする協定だと私どもは考えています。トランプ氏がTPPに批判的だったのは、アメリカ第一、米国第一の立場からすると得るものがまだ少ないと考えてのことだと私は考えます。TPP復帰を検討した結果、米国の業界の要望も取り入れ、現TPPに盛り込めなかった米国の、より身勝手な要求を突きつけてくるおそれは十分にあるんじゃないでしょうか。その辺はいかがお考えでしょうか。


河野国務大臣

それは、要求を突きつけるというのはどの国もやるわけでございますが、このガラス細工のようなTPP11をなかなか変えるというのは難しいというふうに十一カ国が思っているわけでございます。
トランプ大統領にも、TPPというのが実はアメリカにとって有益なんだということを理解していただくというのが、まず日本政府がやらなければいけないということだと思いますので、それに向けてしっかり働きかけはやってまいりたいと思います。


穀田委員

河野大臣、何回聞いても、大体、要するに、有益だ、有利だ、おたくのところももうかるんやからというような話をいつもしはるねんけれども、そういうことで済むのかなと思うんですよね。
といいますのは、トランプ大統領の指示は、NAFTAの再交渉、それから鉄鋼、アルミニウムの輸入制限、そして知的財産権侵害を理由とした対中国制裁関税の予告など、米国の一方的行動と並行して行われたわけですよね。だから、これらの通商交渉への効果を考慮したと考えるのが私は自然だと思うんですね。相手が何を考えて、どう行動しているかということだと思うんです。
しかも、調べてみますと、ことし二月、米共和党の上院議員二十五名が大統領宛てに出した、TPP交渉復帰を支持、奨励する書簡ではどう言っているかといいますと、加盟国・地域における同盟国との関係強化に寄与し、中国の影響への対抗手段となり、同国が前向きで実質的な経済改革を選択するための圧力を強められる、カナダ、メキシコとの貿易近代化に向けた機会を提供すると、TPPの効果を強調しています。ですから、彼らの考え方が何であるかということをしっかりつかまなくちゃならぬと思うんですね。
そこで、これは常識的な話なので聞いておきますけれども、堀井政務官、TPP11の十一カ国のうち、米国とFTAを締結している国は何カ国ありますか。


堀井(学)大臣政務官

豪州、ニュージーランド、カナダ、メキシコ……(穀田委員「ニュージーランドは違うでしょう」と呼ぶ)
大変失礼いたしました。通告を受けておりませんので、後ほど調べて回答したいと思います。


穀田委員

普通のことだったので。それは、要するに、さっきも言いましたように、上院議員なんかも含めて、どういうふうにやろうとしているかという、推進勢力全体が何を考えているかということの一つの基本軸というのは二国間協議なんですね。だから、二国間協定を、簡単に言うとFTA、自由貿易協定を締結している国は何カ国かと。大体、数字は六カ国と、普通は言うんですよ。通告していなかったからと言うんだから、それはそれでいいですけれども。
私が知っている、また、みんなも知っているのは、オーストラリア、シンガポール、チリ、ペルーがFTAを締結し、先ほどありましたけれども、カナダ、メキシコとはNAFTAを締結している。これが、世界で言うところのいわば協定ですよね。
そこで、トランプ大統領は、ことし一月のダボス会議の際に、TPP11のうち、オーストラリア、カナダ、シンガポール、チリ、ペルー、メキシコの六カ国との間でそういう議論をしているわけですよね、そういうことを締結していると強調して。結局のところ、二国間交渉を引き続き重視する姿勢を示しているわけです。そこで言っているのが、長年貿易で米国を手痛い目に遭わせてきた日本とも話し合っていると述べているわけですね。
だから、政府は、米国の復帰を働きかける一方で、復帰しない場合でもTPPを実施できる本協定、つまりTPP11の締結を主張してきました。しかし、本協定はTPPの装いを変えただけにすぎず、しかも、米国のTPP復帰の道も用意した協定ということではないんですか。性格ですね、それについてお聞きしたいと思います。


河野国務大臣

このTPP11というのは、TPP12でつくり上げたスタンダードの高いルールを維持しながら、アメリカが復帰ができるように考えてつくったものでございます。


穀田委員

スタンダードの高いというのがいつも、これもまた常套句であります。
御承知のとおり、この協定の文書も六ページほどで、そして、別の協定とはいえ、一部を除いて旧協定の条文をそのまま組み込んであって、簡単に言えば、TPPをよみがえらせるものだということが言えると思うんですね。
そこで、四月の日米首脳会談は、新たな通商協議の枠組み、FFRを立ち上げることを合意しました。
会談で安倍総理は、TPPから離脱したトランプ大統領に、TPPが日米両国にとって最善と考えていると復帰を促しました。しかし、トランプ氏は、TPPには戻りたくないと拒絶された。これほど日米両国首脳の食い違いが、記者会見の場でそういうことが鮮明になったというのは異例のことだと思うんですね。
そこで、昨年二月の日米首脳会談では、麻生副総理とペンス副大統領による日米経済対話が設けられました。これに加えて、四月の首脳会談では、通商問題の担当閣僚による協議を立ち上げることで、結局、米国が具体的な要求を突きつける枠組みができた。
どの国もやるし、しかし変えるのは無理だという話は先ほど大臣がおっしゃって、またそういう答弁が返ってくるのではちょっと困るわけで、結局、新しい枠組みをつくることによって、米国が具体的な要求を突きつける枠組みにまた更に踏み込んだんじゃないのかという、事柄の性格について聞いています。


河野国務大臣

自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議という、随分長ったらしい名前の協議でございますが、これは、公正なルールに基づく自由で開かれたインド・太平洋地域の経済発展を実現するために、日米双方の利益となるように日米間の貿易や投資を更に拡大させていこうという目的で行われるものであって、ライトハイザー・アメリカ通商代表と茂木経済再生担当大臣の間で協議を行い、その結果を麻生副総理、ペンス副大統領の日米経済対話に報告をしていくというものでございます。
これは、要するに、日米双方でこのアジア太平洋地域の経済を実現、発展をさせるために、そして、それが日米双方の利益となるように何をやったらいいんだろうかという議論をするものであって、当然、アメリカ側からもいろいろな意見は出ると思いますが、日本側からもいろいろな意見を出し、そこで議論をしていこうというものでございます。


 

穀田委員

二つのそういう枠組みを、形式的にはこういうことになっているというふうに述べたにすぎないと私は思うんですね。
そこで、日米は、七〇年代以降、繊維や鉄鋼、自動車などの貿易交渉を繰り返してきました。トランプ氏が会談で、米国は日本との間に巨額の貿易赤字を抱えている、対日貿易赤字を縮小し、できれば均衡を達成したいと発言し、さらに、米国製自動車を日本に輸出する際の障壁を取り除かなければならないと述べています。
しかし、既に日本の輸入車関税はゼロ、その一方で、米国は輸入日本車に二・五%の関税をかけているではありませんか。そして、米国全体の貿易赤字に占める日本の比率は下がっているのではありませんか。それは、外務省、堀井さん、いかがですか。


河野国務大臣

日本への自動車の輸出関税はゼロでございますし、アメリカは、乗用車で二・五%、トラックで二五%でしたかの関税がいまだ維持されている。しかも、対日貿易赤字は八〇年代と比べると大幅に減り、今、アメリカの貿易赤字の相当部分は対中貿易の赤字という状況になっているわけでございます。


穀田委員

今、河野大臣から状況認識がありましたように、そのとおりなんですね。だから、トランプ大統領が言っているところの、巨額な貿易赤字を抱えている、こういう問題の意識というのは明らかに、一九八〇年代は六割五分近くあった比率。それが今や、お話がこれからもあるんでしょうが、中国に取ってかわられて、全体の比率は、日本の占める比率は下がっているということですよね。
だから、確かに、米国の商務省の米貿易赤字の国別内訳推移を見ますと、日本の比率が断然下がっているということは明らかであり、アメリカも認めているわけです。それをこういうふうに言ってくるわけですからね。そういう点でも、私は、状況認識が違うし、そこをきちんと指摘しなくてはならぬと思うんです。
トランプ政権が、今述べた貿易赤字をやり玉に上げるのは、これは米国第一というものの立場であって、全く筋の通らない主張だと私は考えます。
トランプ氏は共同会見で、米国による鉄鋼、アルミニウムの輸入制限について、新しい合意を米国と日本で模索すると、これまた述べています。安倍総理は五月八日の衆議院本会議の答弁で、トランプ大統領の発言にある新しい合意や交渉材料の意味するところについては私の立場でコメントすることは差し控えたいと答弁していますが、これは、日本への関税除外は協議次第だというふうに理解してよろしゅうございますか。


河野国務大臣

日本の鉄鋼生産量は恐らく一億五百万トンをちょっと超えているぐらいなのではないかと思いますが、そのうち、アメリカへ輸出されている鉄鋼の量というのは百七十一万トン、二%未満でございます。
そういう中で、このアメリカへ輸出されている鉄鋼のほとんどは、自動車製品、あるいはシェールガス、シェールオイルのパイプ、あるいは鉄道のレールといった、大変高い品質で、アメリカ製の鉄鋼では置きかえられないものが大部分でございます。今現在、二五%の関税をかけられても、アメリカの市場の中では、日本製の鉄鋼製品というのは価格競争力を維持できております。
恐らく、この関税をかけるよと言われたときに、ちょっと数字がうろ覚えで申しわけございませんが、アメリカ国内でトン当たり七百十ドル程度だった鋼板、中国市場で六百五十ドルぐらいだったと思います。今現在、トン当たりの中国での価格は六百五十ドル近辺を維持しているのに加えると、アメリカでのトン当たりの価格というのは大幅に上がってきております。これは、アメリカの自動車産業あるいはシェール産業といった、日本製品を置きかえられないもの、産業からしてみれば、単純にコストが上がり、アメリカの産業に対して大きな向かい風になっているという現実があるんだろうというふうに思います。
そうしたことを私どもはアメリカにきちんと伝えると同時に、だからいいということではなくて、このアメリカの一方的な措置というのは、WTO、戦後、この国際経済を発展させてきた自由貿易体制の基礎になっているWTOを基礎とする体制に対してかなり悪影響を及ぼすというところが、日本としては受け入れがたいということをアメリカにも伝えているところであります。
一方、EUあるいは韓国は、この適用除外を求めるために数値目標、数値割当てというようなものとバーターにされる、てこにされるということがございますので、日本としてはそういうWTOルールに違反をするような措置は受け入れないということを明確にして、しかし、日本製の鉄鋼、アルミに対して関税をかけるということは、ひいてはアメリカの産業、アメリカの経済に対して悪影響を与えるものであるということを伝えているわけでございます。
ですから、先ほどから委員おっしゃるように、TPPに復帰をするということは、アメリカの経済にとって、アメリカの雇用にとって、アメリカとしてベストの選択なんだということをしっかりとアメリカに伝えることによって、トランプ大統領にもそれを理解していただく。
トランプ大統領に、日本の鉄鋼に二五%の関税をかけるのはアメリカ・ファーストに実はなっていないんだ、同様に、TPPにアメリカが復帰することがむしろアメリカ・ファーストにつながるんだということを日本としては粘り強く働きかけをする、そしてアメリカが復帰したTPP12になるというのが、アジア太平洋の地域的にも、アメリカにとっても、日本にとってもいいことなんだということを粘り強く働きかけをしていきたいというふうに思っております。


穀田委員

そこは、私、論点がちょっと違うといいますか。つまり、米国第一ということが、それは日本が提供する新しいTPP11も含めてそうなりますよという話を、簡単に言えばわからせようということですわな、簡単に言えば。
私はそれではないと思うんですね。TPPが持っている負の側面、少なくとも、日本の国民の経済やさまざまな分野に与える影響について、これをまず我々は考えて物事を処理しなくちゃならぬという立場から物を言っていますからね。そういう意味で、さらに、米国が言っているそういう新たな、オバマ時代よりも比べても更にとか、そして、今述べている鉄鋼の関係にしましても、それを交渉材料に使っているということの状況をしっかり見ながらやらないとだめなんじゃないかということであります。
米側が日本に求めているのは、自動車市場の障壁の撤廃や、とりわけ、さらに、農産物市場のさらなる開放、そして米国製武器の直接購入の拡大など、もっとリアルにきているんですね。農産物に関しては、クドロー国家経済会議委員長が、日本に幾つかの市場開放を求めていきたい、特に農業分野だと、米国のメディアに語っています。
トランプ政権は、十一月に中間選挙を控え、農民の支持をつなぎとめようと、日本に米国産農産物の輸入拡大を迫っています。起点となるのは、TPP交渉で日本が米国に譲った線であります。これはさきの、さきとは、まあ、TPPのいわば国会で議論の行われたところの中心問題の一つでもありました。
それで、今後の日米協議では、TPP以上に、日本国民の利益と日本の経済主権に反する取決めが話し合われることになるんじゃないか、それが我々の視点であります。そういう疑問を私は持たざるを得ない。
そこについて、いかがお考えでしょうか。


河野国務大臣

アメリカの農業者は、今、アメリカの政権に対してTPPに早期に復帰するように求めている。つまり、TPPに復帰することがアメリカの農業にとって非常に大きなメリットをもたらすということを、アメリカの農業界はよく理解をしてくださっているということなんだろうと思います。ですから、さまざまな二国間交渉をやっても物事は動きませんけれども、TPPに入れば同じメリットをアメリカは享受することができるようになる、それはもう業界の方はよくわかっているわけですから。
アメリカのさまざまな産業界と一緒になって、やはりトランプ大統領にTPP復帰のメリットをしっかりと理解していただくということをやらなければならないというふうに思っております。
トランプ大統領はいろいろなことをおっしゃっておりますけれども、それは、なかなかできないものを一生懸命おっしゃるよりは、できることをすっとやった方がメリットがあるということを、恐らくいつかの段階で気づかれるんだろうというふうに期待をしているところでございます。


穀田委員

それははかない期待になるだろうと思います。
今、お話があったように、アメリカの農業界というのは、このままでいけば、ニュージーランドやオーストラリアを始めさまざまな大きな農業国に日本の市場が大きく食い荒らされる、それに後で行けばなかなか難しい、だから早く参入せよと。それは当たり前の話ですよ。
問題は、それを受ける側の日本の農業がどうなるか。そういう、経済主権、日本国民の利益がどうなるかという視点がないということがはっきりしたと私は思います。
そこで、二国間という話が出ましたから。
クドロー委員長というのは、首脳会談の直前、どこかの時点で日本とFTAを結ぶことを望むと、日米FTAを目指す姿勢を明らかにしています。トランプ大統領は安倍総理との共同記者会見で、二国間協議の方がいいと明言しています。関税だけでなくて経済ルール全体にわたって取り決めるFTA交渉は、米国が日本に際限のない譲歩を迫る場となることは明白ではないでしょうか。その点、いかがですか。


河野国務大臣

米国は二国間ディールとトランプ大統領がおっしゃっているのは承知をしておりますが、我々は、TPPが両国にとって最善だと思っておりますので、そうしたことをしっかりとアメリカに認識していただけるように、このFFRという場を利用していきたいと思っております。


穀田委員

だから、私は明確に、際限のない譲歩を迫る場となるという可能性が強いということを言っているわけであります。
そこで、いつもそういう、通商代表の問題や、今、話合いの場ということを必ず強調されるわけですけれども、ライトハイザー通商代表はことしの一月のワシントン米商工会議所での講演で、日本との経済関係について、いつかはFTAを結びたいと思うと語っています。
こうした流れを見ても、二国間協議は、米側が狙うFTAに一段と踏み込むものではないかと私は考えます。日本の経済主権も食料主権も踏みにじられ、自動車にとどまらず、牛肉や米を含む農産物など、TPP以上の要求を突きつけられることになるんじゃないかと率直に危惧するんですが、いかがですか。


河野国務大臣

繰り返すようで恐縮でございますけれども、アメリカは二国間ディールがいいと考え、我々はTPPがいいと考えているわけでございまして、別に、このFFRは、FTA交渉をやる場でもなければ予備交渉をやる場でもございません。アジア太平洋にしっかりとした貿易・投資のルールをつくって、日米双方にとってメリットのあるようなことを考えていこうという場でございますから、ライトハイザー通商代表と茂木大臣の間で、当初はさまざまな自説を述べるということがあるかもしれませんけれども、その後はしっかりと、何がお互いにとってベストなのかという議論をする場になるんだろうというふうに思っております。
ただ、いずれにいたしましても、そこでさまざまな議論をいたしますけれども、アメリカの経済にとって、さまざまなアメリカの産業にとって、TPPに復帰すれば、これはもうさまざまなメリットをその場で受けることができるわけでございますから、これはアメリカの産業界の中でも理解が広まりつつあるわけで、大統領にも認識していただけるようにしっかり努力してまいりたいと思います。


穀田委員

前半の答弁は、本会議でも総理大臣が行っているところであります。
我々が危惧しているのは、やはり日本の経済主権、食料主権の話であって、相手がもうかる、日本がもうかる、日本がもうかるとは日本の国民が別にもうかるわけじゃないんですよ。そこははっきりしておきたいと思うんです。なぜ私たちがこういう問題を気にしているかといいますと、一連の歴史的経過を振り返ってみると、譲歩、譲歩の繰り返しではなかったのかということを私どもは認識しているからです。
そこで、USTRがことし三月に公表した二〇一八年の外国貿易障壁報告書の概要を見ると、二十二項目にわたって政策が列記されています。
最初の項目の貿易関係の概観にはどのようなことが記されているか、紹介してほしいと思います。


堀井(学)大臣政務官

先ほど失礼いたしました。
先ほどの六カ国でありますが……(穀田委員「もうそれはいいです。僕、言いましたから」と呼ぶ)大変失礼しました。
米国の貿易収支でありますけれども、先ほどの質疑であります。中国、四六・三%、そして日本は八・六%、ちなみに、メキシコは九・四、ドイツは八・〇、カナダは二・九となっております。
ただいまの質問でございます。
さきの日米首脳会談では、経済については、日米両国がリードして、インド・太平洋地域に自由で公正なマーケットをつくり上げていくことが確認され、自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議を開始することで合意されたところであります。
議論の詳細については、外交上のやりとりであり、お答えは差し控えたいと思います。
以上であります。


 

穀田委員

時間を浪費して、前の話はするわ違うことは答えるでは、ちょっとあかんのちゃう、それでは。
私が言っているのは、報告書はありませんかと。それの第一項目、貿易関係の概観を述べてくれと言っているわけだから。


堀井(学)大臣政務官

昨年九月に施行した新たな……(穀田委員「時間をとめてよ、ここで」と呼ぶ)


 

中山委員長

答弁者はしっかり答弁をしてください。


堀井(学)大臣政務官

大変失礼いたしました。
米国の日本との物品貿易の赤字は、二〇一七年、六百八十八億ドルで、二〇一六年からは〇・一%の増加……(穀田委員「委員長、それはさっきもう終わりました。今言っているのは、報告書について述べろと言っているんです」と呼ぶ)


中山委員長

まず、答弁を言ってください。


堀井(学)大臣政務官

はい。
国境における障壁及び、日本市場における米国製品やサービスを参入させそのプレゼンスを拡大するに当たっての障壁を含め、米国輸出に係る幅広い障壁を除去することを求めていくため、米国政府は、日本政府と引き続き緊密に連携していくこととなります。
また、原料原産地表示制度についてでありますが、日本の国内産品が輸入原料を使用して生産される場合、日本の生産者は、原産地表示の負担を最小限に抑える方法として、米国を含む複数国からの食材を使用することを避ける可能性があるため、米国の輸出食材に悪影響を及ぼす潜在性があります。また、日本の食品加工会社が、原料が海外から調達されている場合、誤表示の可能性も残しております。
以上であります。


穀田委員

最初に、一、貿易関係の概観と言ってくれればいいんですよ。そして、中身を言っていただきたい。
二番目の話はまだ聞いていなかったんですけれども、二番目もお話があったので、両方聞くということが多分伝わったんでしょう。
私は、まさに身勝手な要求じゃないかと思うんですね。この中身が、よく見たらわかりますように、こういう形で相手は要求している。
一九八〇年代末には日米構造協議が持たれる、それから二〇〇一年には対日経済指針が出されて、成長のための日米経済パートナーシップを立ち上げて、そこで年次改革要望書がまとめられる。その結果、それを実行せざるを得ないということになっている。だから、USTRの元官僚も、年次改革要望書は二国間交渉の一つの理想型でしょう、文書に掲載することで、日本が米国の意向を酌み取り、国内調整をして貿易障壁を取り除いてくれるのですからということで、アエラに、二〇〇五年四月十八日号で述べているほどなんですね。
ですから、極めてこれは、何というんですか、そう簡単じゃなくて、日米間におけるそういうやり方をよくつかんでおかないと、あかん。
今、せっかくですから、二番目が原料原産地表示制度でありますね。ここには、今お話があった、日本の生産者はということで、原産地表示の負担を最小限に抑える方法として、米国を含む複数国からの食材を使用することを避ける可能性があるため、米国の輸出食材に悪影響を及ぼす潜在性がある、また、日本の食品加工会社が、原料が海外から調達されている場合の誤表示の可能性も残している、これは今お読みになったところですよね。これはまさに新しい概念という形でなってきていまして、こういった方向性について、では、せっかく堀井さん、お話がありましたから、このような米国の認識を日本政府は是とするのか、この今述べた内容は。


堀井(学)大臣政務官

昨年九月に施行した新たな原料原産地表示制度は、消費者庁で所掌しているものでありますが、加工食品の重量割合上位一位の原材料について、その原産地の、原則、国別重量順で表示する制度がありますが、複数国の産地のものを使用していて国別重量順表示が困難な場合には、過去の実績等に基づき表示を行う、又は表示や大くくり表示を認めていると承知をいたしております。
米国は、USTR外国貿易障壁報告書の中でこの新たな原料原産地表示制度について、米国産の食材調達状況に悪影響を及ぼす懸念があることなどに言及していると承知をいたしております。
しかし、この新たな原料原産地表示制度については、消費者の自主的かつ合理的な選択に資するための制度であり、表示を実際に行う事業者の実行可能性にも配慮して、有識者等の意見も踏まえてできたものであり、我が国としては、今後も機会を捉えて、米国側の懸念を払拭すべく、消費者庁においてしっかりと新たな表示の意味などについて説明が行われるものと承知をいたしております。


穀田委員

消費者庁の話にしているねんけれども、そういうやり方で来ていることについて、いろいろ分けて防御していくみたいな言い方をしているねんけれども、そういう考え方を是としているのかということの、そこの本質を聞いているんですよ。


河野国務大臣

済みません、ちょっと質問の御趣旨がよくわからないんですけれども。
これは別にアメリカだけが求めているわけでなくて、日本も当然アメリカに対して、こういうことをおかしいとかこういうことをやれとかということは言っているわけでございます。
その結果、例えば、今スーパーに行けば、豆腐なんかに、これは遺伝子組み換えはしていませんという表示がありますけれども、あれはもともとアメリカが猛反対をしていましたけれども、日本の消費者にちゃんとした情報を与えるための科学的根拠のある表示をやることがどこがおかしいのかといって、それはアメリカも認めて、ああいう表示がきちんとできるようになっているわけでございますから。それはこの表示の問題一つをとっても、日本は日本の主張をし、アメリカはアメリカの主張をし、お互いそれを考えて、消費者の利益になることはやる、国益に反することはやらない、そういうことをやってきたわけでございます。


穀田委員

しかし、そういう経過を通じてこれは随分争い事があった。消費者問題特別委員会で、私、この問題もやってきましたよ。いかに大変だったかということについては、圧力の問題も暴露してきたところであります。
問題は、新しい概念でそういう形でやってきているのを是とするのかということについて、やはり、明確な態度が示されないということだと私は思います。
私は、最後に、米国抜きのTPP、本協定は日本が国際的に約束した市場開放や規制緩和の到達点であって、米国との二国間協議は、この到達点に立って、より大幅な譲歩を求める米国にとっては新たな出発点になるんじゃないか、その枠組みの、問題の性格の理解についてお聞きしたいと思います。


河野国務大臣

繰り返しで恐縮でございますが、このTPP12は、アジア太平洋地域に経済の質の高いルールをつくるだけでなく、地域の平和と安定にも寄与する戦略的な意義があるということで日米で一生懸命やってきたものでございまして、日本としては、アメリカがこのTPPに復帰をするのが、地域にとってもアメリカにとってもベストだというふうに考えておりますので、今度の場は、そうした日本の思いをアメリカにしっかりと伝えていく場として使用させていただきたいというふうに考えているところでございます。


穀田委員

それは、私、はっきり言って、もちろんトランプ氏とのかかわりで、先ほど大臣は、いろいろなことを言う人だ、最後はこういうことを理解してもらうと言っていますけれども、そういうふうにはなかなかならぬということは一つ言っておきたいと思います。
米国にとっては個別交渉というのは、多国間交渉と比べて、言っていますよ、短時間で処理が可能であって安全保障などの政治問題との抱き合わせがしやすいということだということをはっきり、彼らは戦略的な位置づけを述べています。したがって、貿易の政治問題化が進んでいくだろうということははっきりしていると思います。
私は、TPP交渉で譲歩した線をスタートとして日米FTA交渉で際限のない譲歩を迫られることが強く危惧される上に、米国大企業の身勝手な要求の受皿となる可能性がある、危険性があると。
今求められているのは、私は改めて言いますけれども、先ほど、アメリカにとっても利益になる、日本にとっても利益になるという、肝心なところの、じゃ、日本国民にとっての利益、日本国民の主権や経済主権、こういうことになると言を左右にして大体語らないというこの間の経過があります。私は、何といっても、各国の食料主権それから経済主権を尊重した平等互恵の経済関係を発展させる道に進む、こういう大道に立って立ち向かっていくことが必要だということを述べて、終わります。