「文化財保護」 衆院予算委員会分科会で質問

2018年02月23日

福井主査

これにて日吉雄太君の質疑は終了いたしました。
次に、穀田恵二君。


穀田分科員

日本共産党の穀田恵二です。
きょうは、文化財の問題について質問したいと思います。
まず、文化財保護の目的について確認しておきたいと思います。
文化財保護法は、その目的をどのように規定しているか、まずそこから始めたいと思います。大臣、お答えください。


林国務大臣

文化財保護法、その第一条において、「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする。」、こういうふうに一条で規定をしております。


穀田分科員

要は、文化財が国民的財産であるということを含めておっしゃっているわけですよね。大臣からありましたし、保護法にはそう書いています。その目的の達成のために、これまで、保護すべき文化財の指定、指定文化財の管理、保護、公開、調査、記録の作成など、長年にわたって関係者が努力してきたことに私は改めて敬意を表したいと思います。
そこでお聞きしたいんですが、昨年十二月八日に発表された文化審議会の第一次答申、「文化財の確実な継承に向けたこれからの時代にふさわしい保存と活用の在り方について」では、文化財の保存と活用に関する基本方針として、文化財の保存と活用は、互いに効果を及ぼし合い文化財の継承につなげるべきで、単純な二項対立ではないとしており、これを受けて、新しく今準備されておられる文化財保護法の改正案の説明文によると、「経済の振興の核」としています。
これは、文化財の保存に重点を置いてきた従来の方針と大きく違って、経済振興、すなわちもうかることを基準にする大後退じゃないかと思うんですが、大臣の見解をお示しいただきたい。


林国務大臣 昨年の十二月の文化審議会第一次答申、「文化財の確実な継承に向けたこれからの時代にふさわしい保存と活用の在り方について」においては、冒頭で文化財の保存と活用に関する基本的な考え方を整理しておりまして、「文化財の保存と活用は、共に、文化財の次世代への継承という目的を達成するために必要なものである。」としております。この答申では、「文化財の保存に悪影響を及ぼすような活用はあってはならない。」とも言及をしておりまして、何か保存より活用を重視するということでは一義的にはないというふうに考えております。


穀田分科員

私だけが危惧を抱いているわけじゃないんです。
私も大臣が持っておられる答申を持っていますよ。確かに文章はそう書いているんだけれども、先ほど述べたように、この文化財保護法の改正の概要には、ちゃんとそういう中で地域の文化や「経済の振興の核」としてと書いているわけですよね。
それで、単に私が危惧しているだけじゃなくて、メディアも、例えば「読売」の方は、「活用の目的とは何だろうか、収益さえ上げればよいのか」、こう報じています。また、「朝日」は、「思い出すのは、一番のがんは学芸員、観光マインドが全くない。この連中を一掃しないとという山本幸三前地方創生相の暴言であります」、暴言だと書いているんですよ。そして、「学芸員の仕事に対する理解を欠き、先人が守ってきた遺産を、単なる金もうけの道具としてしか捉えない考えが透けて見えた。最近は文化庁も文化で稼ぐをアピールする。だが、目先の利益とは別の価値を大切にし、その意義を説くことこそ、本来の役割ではないか」、こう言っておられるわけです。
こうして見ますと、必ず活用と保存という言い方をされるんだけれども、そっちにシフトしているんじゃないかということを私は言っているんですよね。その際に、そういうふうに見てみると、事実、文化庁の平成三十年度予算の概算要求、第二項目めの「かけがえのない文化財の保存、活用及び継承等」には、「文化財で稼ぐ」という文言がきちんと出ているんですね。やはりそうかと思うんですよ。今探しておられるんでしょうけれども、あるから。
そこで、日本歴史学協会が昨年十月に声明を出して、この方向は、つまり今の第一次答申ですね、「もうかる文化財とそうでない文化財という価値序列を創出しかねず、地域の文化、教育にとって特に重要な文化財であっても、短期的かつ金銭的な利益を生まなければ顧みられることがなくなる恐れがある」、こういうふうに言って、文化財保護法の目的、理念と乖離すると警告している状況があるんですね。そのことを私は踏まえる必要があると思っています。
したがって、文化財保護行政は、やはり自然や文化と歴史の保護の観点を貫くべきであって、もうけ第一などという転換は絶対許されないということを指摘しておきたいと思うんです。
あわせて、大臣、一言言っておきますと、答申では、この文化財行政と権限を、教育委員会文化財保護課から開発行政を主に担う首長部局に移すことも可能としています。これは、教育委員会の果たしてきた歴史的な役割を後退させるものじゃないかと私はこれまた危惧している、ここも厳しく指摘しておきたい。腹におさめておいてください。お互いに、どうなるかということを見ようじゃありませんか。
そこで、私は、文化財保護のための技術者、技能者の育成について質問したいと思います。
私の地元で、日本共産党京都府会議員団は、文化財修復に係るアンケートというのをやっていまして、業者の要望を聞き取っています。それをもとに、三回にわたる文化財修復事業者懇談会・シンポジウムを開催してまいりました。その内容をもとに、ポイントを絞って質問をしたいと思うんです。
まず、文化財を守るための技術者、技能者の育成、若手継承者の育成についてです。
一人前の技術者、職人になるにはおよそ十年の年数がかかる、それは、単に年数ということではなくて、あらゆる現場を経験して初めてさまざまな現場要求に対応できる一人前の技術者、職人になれると、巷間、特に京都では言われています。
今触れたアンケート調査で、「それぞれの仕事で一人前になるには何年かかるか、その養成にはどのような支援が必要か」という問いを私どもは出しているんですね。
それに対して、畳職人は、「畳の仕事がどんどん少なくなっている現状です、伝統的な仕事の量がふえなければ若い人の養成もままならない」と。また、宮大工さんは、「宮大工の仕事には頭脳と肉体労働が表裏一体、不可分、新人の見習期間中は、ほとんど戦力にならないが、賃金は世間並みに支払うので親方の経済的負担が大きい」、「弟子を抱える親方に賃金補助がほしい」と述べています。
そこで、現場では、文化財を守るための伝統工法だとかそれの継承、さらに技術者、技能者の育成のために、本当にいろんな努力が払われています。文化庁としては、若手育成のために課題がどこにあると認識しているのか、簡潔にお答えいただきたいと思います。


中岡政府参考人

先ほど委員御指摘のように、技術、技能を習得するためには、熟練の職人等による一定の年月をかけた指導が必要でございます。
課題といたしましては、そもそも特殊な分野でございますので、後進の指導を行える職人等の数が今非常に少ない、多くないということ、また、日本人の生活様式の変化等によりまして、伝統的な技術、技能を習得いたしましても、それを発揮できる機会が減少しているということなどがあるのではないかと考えております。
今月、文化審議会が取りまとめております答申におきましても、文化財の修理等の文化芸術の担い手につきましては、その育成、確保が求められていることが指摘されているところでございます。


穀田分科員

何かというと様式の変化といつも言うんだけれども、それを決まり言葉みたいに言っていたらだめですよ。それにどうあらがっていくのかということを、方向を示さなんだら、そんなことを言われた日には、やっている人たちはどうしようもないよ。文化庁までそんなことを言い出していたら、誰が助けてくれるんだと私は思いまっせ。
そこで、私は、若い職人さんを育成する、今担い手の問題がありましたけれども、最低限二つ大事なことがあるんじゃないかと思っているんです。
一つは、親方はもとより、若い職人の生計が成り立つだけの賃金保障。
二つ目には、経験を蓄積できるだけの仕事の確保、そして受注機会の保障ということが私は必要だと思うんですよね。それがあれば、さっきありましたように、生活様式がどう変化しようと、ええものはええ、それから、そういう工法が大事だとか、そのよさをはっきりさせればできるんですよ。それなのに諦めはっては困るんですよ。
そこで、私は、この賃金保障と受注機会の拡大にとって大きな弊害となっているのが文化財修復における大手企業の一括発注じゃないかと思うんですね。
大臣、聞いてほしいんだけれども、例えば姫路城の屋根瓦の修理工事はどうだったか。
この工事は鹿島建設を中心とするJVに一括発注されたんですが、屋根瓦はおよそ八万枚、一枚一枚の、テレビでもごらんになったと思うんですけれども、瓦の調査を行って、種類や寸法、使用箇所、取付け位置、保存状態、そして屋根の形状まで実測し、詳細に記録する。文化財工事では、使えるものはできるだけ再利用するのが原則だから、解体した瓦は、汚れを落とすために研磨、水洗いし、反りやゆがみ、割れなどの状態を確認し、選別する。姫路城の場合、八割が再利用され、約一万六千枚の瓦が新たに作製されたと聞きました。
専門家の見積りで、この工事には少なくとも三億二千万円かかる。ところが、鹿島は一億五千万で下請に工事を丸投げした。兵庫県の業者が落札したが、結局工事ができなかった。そこで、奈良県生駒市の業者が、一億五千万で受けて、赤字覚悟で、職人の意地をかけてやり上げたと聞いた。
この事実を掌握してありますか。


中岡政府参考人

文化庁におきましては、国宝姫路城大天守の管理団体でございます姫路市が、平成二十一年から二十六年度にかけまして実施した保存修理事業に対しまして補助を行っております。
この補助事業の実績報告書におきましては、工事請負契約書の写しの提出を求めておりますので、工事に要した総額については把握はしておりますけれども、元請業者と下請業者との契約額については承知をいたしておりません。


穀田分科員

そういうことだからだめなんですよ。下請がやって、実際に働いている人たちの、先ほどの生活様式なんて関係ないんですよ。仕事しとんのやから、仕事をしている人たちがどういう給料をもろうているか、この人たちが大丈夫かと聞けばしまいですやんか。しかも、こんなこと、世の中は全部知っているんですよ。知らないのはあなただけで、知っていればもう話しているわけだけれども。あなたも知っているわけでしょう、こういうひどいことをやっているというのは。ひどいのかどうか、あれなんだけれども。
日本初ですよ、その世界文化遺産の修理が、ホームページを見たら出ていますやんか、赤字覚悟で、業者の意地で仕事をするというようなことで支えられてええのかと。現行の制度下でも、受注した大手企業、ゼネコンに対して、下請単価を保障するように厳重に指導、点検し、大企業の社会的責任を果たさせるように求めるべきではないですか。そのことがやはり若い人たちの育成につながるということから見なくちゃならぬと私は思います。ですから、そんな通り一遍の話をしちゃだめですよ。
そこで、それやったらもうちょっと聞きましょう。
素屋根のような大規模仮設工事と一般的工事をジョイントしたゼネコン一括発注になると、下請の業者はたたかれて、単価の切下げが工期の短縮を引き起こして、親方は若手職人に技術を教える時間さえない、こうした事態が常態化する。これでは到底生計が成り立つ仕事と言えないし、親方は若い後継者の育成などできない。だから、そういう意味でいうと、先ほどの事実は知らないか知っているかは別として、こういうやり方の一括発注が弊害をつくっていると思わないか。どうですか。


中岡政府参考人

補助事業の遂行に当たりましては、補助金の適正かつ効率的な使用が求められております。
また、補助金という性質上、その使用手続の透明化を確保することが重要であることから、補助事業者が地方公共団体以外の者である場合には、地元地方公共団体の会計規則などの定めに準拠して実施するよう指導しております。
さらに、極端な安価での契約になりませんように、最低制限価格制度が設けられている場合にはそれを導入するよう指導しており、一括発注が必ずしも下請業者の負担に結びつくものとは考えておりません。


穀田分科員

じゃ、大臣に聞きますけれども、今言いましたように、少なくとも三億二千万かかるのを一億五千万でやるのが安価なやり方と思われませんか。そういう話が出ていたら、ほんまかと聞くのが筋じゃないですか。日本で初めて世界遺産に選ばれたもので、しかも、いわば技術の結集が求められている、こういうときに丸投げしたらこうなっている、これで若い職人が育つのかという角度で物を言っているわけですやんか。それを一般論の原則をとうとうと述べたって、それはみんな、姫路城にかかわっている人たちがこれで納得すると思いますか。
ほんまに文化財を大事にしているんやったら、もうちょっと突っ込んだ話をするのが当たり前じゃないかと私は思うんですが、大臣、いかがか。


林国務大臣

一般的なルールについては今文化庁が説明したとおりだと思いますが、委員から御指摘のあったように、姫路城というものは世界に冠たる文化財でございますので、どういう状況であったかというのはしっかりと注視をしてまいりたいと思います。


穀田分科員

注視をしていただき、もう少し洗っていただければ、私はよくわかると思います。そのことがまた、地域経済をどう振興するのか、文化の今後の発展にどう寄与するのかという長い目で見たら、私はよくわかっていただけると思うので。
そこで、私は提案したいんですけれども、ある意味では、そういう意味で国宝だとか文化財、建造物、そういう立派なもの、こういう補修工事の場合、今ありましたように、当然、会計規則でやるわけですけれども、大手企業への一括発注じゃなくて、分野、工事、種類ごとに分離分割発注を基本とするよう制度改善をすべきじゃないか。そのために、都道府県等は、経験と技術を持つ事業者をあらかじめ名簿登録しておいて、丁寧な分離分割発注を行うことによって、工賃を保障し、若手育成をできるようにすべきではないでしょうか。


中岡政府参考人

委員から御提案がございました分離分割発注でございますけれども、大規模な保存修理工事の場合には、分割発注いたしますと、現場管理や工程管理を一元的に行うことが困難となり、契約事務の複雑化、煩雑化とか、工期の長期化、工事経費の増額にもつながる可能性がございます。
このため、分割発注につきましては、工事内容や規模などを十分に勘案した上で導入を検討すべきものと考えております。


穀田分科員

工期などというのは逆なんですって。今、単価を下げることによって、それでこれだけしかやらぬから工期が短くなるんですよ。
現場へ行ってごらんなさい。そんなのは、分割発注したからふえているんじゃないんですよ。大手が一括発注を受けて、それで、これだけしかやらないから金をこれだけやると。そうしたら、長い期間できへんから工期が狭まるんですよ。そんなことも知らぬの、あなた。そんなのは、現場に行ったら、職人に聞いたら一言でわかりますよ、そんなこと。だから私は、デメリットばかり言ったけれども、メリットがあるんですよ、これは。
現実に、例えば、京都府の教育委員会文化財保護課は、やはり修復事業にかかわる専門技術者や宮大工を直接雇用して、日ごろから競争入札参加資格者名簿を作成し、国宝、重文の修復については、行政が文化財所有者から直接受託し、工事を屋根工事、塗装工事、金具工事など種別に分割して発注しているわけです。そのことによって管理ができへん、そんなことはないですよ。ちゃんとできているんですって。だから、そういう意味でいいますと、原則、約九割が京都の府内の地元業者に発注されるという効果もできるわけですね。
ですから、私、質問を四個も取り下げたけれども、もうちょっと、デメリットの話をちょこちょこっとするんじゃなくて、こういうメリットもありますというぐらいのことを考えてくれな、聞いている方はみんな驚きまっせ、そんなこと言うておったら。あきまへんで、それでは。
そこで、私は、じゃ、もう一つ聞くけれども、安定した仕事の確保の見通しと申請実務、それこそ実務が煩わしいというんでしょう、さっき言うてはったやんか。そういうものを、煩わしさを解消することからいえば、工事の複数年契約を奨励、指導すべきだと思うんですが、それはいかがですか。


中岡政府参考人

委員の方から、複数年契約の御提案をいただいたところでございます。
この文化財の補助事業の工事契約に関しましては、確かに、京都府、滋賀県、奈良県におきましては、工事内容により複数年契約を導入しておるということは承知しております。
しかしながら、国からの補助金でございますけれども、単年度ごとの交付をしてございまして、複数年の交付を確約はできないということでございまして、次年度以降の工事費の支払いに支障が生じる可能性がございます。慎重な判断も必要となると考えております。


穀田分科員

可能性があるということは否定しないです。だけれども、現実は、きちんと大体は出している。
あかんかったという例はほとんどないということも言ってくれな。すぐ、そういうあかん話ばかりして。こういうこともあるんですが、こうなんですって現実は、そこを言ってくれな。私は、それを知っておるねんから、そういうことはやるべきだというふうに思います。
もう一つ、やはり伝統技術の継承への補助の拡充、事業者の社会的評価の向上について、これは大臣に答えてほしいんです。
やはり京都の職人集団が培ってきた技術というのは、千二百年の歴史と伝統、技が分業構造のもとでしっかりと引き継がれてきています。建築技術、錺金具、左官、瓦、建築板金等々、在来工法建築や仏像、それから各種工芸品などの修復には、この匠の技が不可欠であります。
ところが、文化財保護を支える選定保存技術保持者、保存団体について、個人についての一定の補助と、団体については三十二団体に約二億九千万円が補助されていますけれども、一つ一つの団体への補助は定額のまま据え置かれています。
私は、この際、業界や関係団体の意見をよく聞き、保存団体の伝承者養成の努力への正当な評価を行い、補助枠の拡大と一つ一つの団体への補助金の引上げを行うべきと考えますが、いかがでしょうか。


林国務大臣

文化庁においては、文化財の保護のために欠くことのできない文化財の修理技術やそれに用いられる材料、また道具の製作技術、今先生から御指摘があったところでございますが、文化財保護法に基づいて選定保存技術として選定し、その保持者や保存団体が行う伝承者の養成、技術の向上等に要する経費について補助を行っております。
これらの保持者、保存団体に対しては、文化庁の文化財調査官が毎年訪問するなどして実情検分や意見交換、こういうものを行っているところでございます。そこでいただいた御要望や御意見などについては、職人の技術の継承、発展に向けた文化庁の事業に可能な限り反映するなど、適切な支援に努めてまいりたいと思っております。


穀田分科員

私は、現場で行われている努力に対して、一人、個人の方でいいますと、伝統の技術保持者、これは亡くなられたら新しくやるのは、それはそのとおりなんですけれども、やはり今、もう一度それらの裾野を広く評価するという必要があるんじゃないかということを言っているわけであります。
それで、あと、今大臣から原材料とありましたので、原材料の問題について聞きたいと思うんです。文化財修理に欠かせない漆なんです。
文化庁は、ことし四月一日から、国宝、重文の修復には、原則として国産漆の使用を求めています。
漆は、古くから、漆器の塗料や京仏壇等に代表される金箔押しの接着剤として活用されて、伝統的建造物の修復には欠かせない原材料であります。
現状は、安い中国産の漆に押され、国産漆では日本の岩手県の浄法寺が中心で、国内需要の数%でしかありません。国産材をふやす以外にない。
産地を見ると、私の地元京都では、福知山市夜久野町は、かつて漆の一大産地であって、明治時代には漆掻き職人が五百人もおられたが、今や数名なんですね。それでも、現地では植栽に取り組んで、京都府緑化センターにおいて品種の改良の研究がなされていると聞いています。
原則、国産漆の使用を求めるならば、国として本格的な支援を行うべきだと思うんですが、いかがでしょうか。


中岡政府参考人

委員御指摘のように、平成二十七年の二月の通知で、原則として国産漆を使用するということをお願いしておるわけでございますけれども、そのためには原材料が必要不可欠になるわけでございます。
特に、供給の逼迫している、先ほど御指摘の漆などの植物性資材の安定的な確保を図るために、文化庁におきましては、その産地をふるさと文化財の森として設定をしておりまして、夜久野の丹波漆につきましては、平成二十年にふるさと文化財の森に設定しているところでございます。
このふるさと文化財の森設定の所有者等を対象にいたしまして、資材採取等の研修、あるいは普及啓発活動の実施、ふるさと文化財の森管理業務支援事業を実施しているところでございます。
今後とも、関係機関とも連携をしながら、修理用資材の安定的な確保や普及啓発を促進してまいりたいと考えております。


穀田分科員

私は、やはり病害虫のリスク対策だとか植栽及び漆生産の技術支援などをやって抜本的に強めなければ、国産材の使用を唱えていながら、やるというのは無理なんだよ。価格は中国の方が安くて、しかし、実際は品質は抜群なわけですよ、使ってみたらすぐわかるという代物ですからね。私は、業者の意見をしっかり聞いてやってほしいと思うんです。
今、植物材のお話が出ましたから、私はもう一つ、別の方の、鉱物性資材のことについて一言言っておくんですけれども、深草土があります。これは、古くから建物の壁や瓦屋根のふき土、土間のたたきなど、良質な原材料として、京都でも二条城を始めとする寺社仏閣などさまざまな文化財建造物に使用されて、日本でピカ一の土と言われています。
文化庁指定の文化財壁技術保存会、つまり左官ですな、それから伝統瓦技術保存会など、関係者から材料確保と採掘の要望が出されていると思うけれども、文化庁の事業は、現時点で、檜皮や漆など、先ほどありましたよね、植物性の資材の確保に向けた事業が主となっている。
植物性資材とともに、深草土など鉱物性資材の確保を支援して、文化財修復の良質な資材が将来にわたって安定して供給されるようにすべきだと思うんですが、大臣の所見をお伺いしたい。


林国務大臣

我が国の貴重な文化財を確実に後世へ伝えていくためには、先ほどの漆のような植物性資材のみではなくて、今御指摘のあった鉱物性資材の重要性、これも同様に大事なことである、こういうふうに思っております。
植物性資材とは異なって再生できない鉱物性資材でございますので、どのような取組が可能か、今後検討してまいりたいと思っております。


穀田分科員

長らく要請しているものでして、そろそろそういうものに踏み切ってほしいと思うんです。
時間もそろそろ来ていますからあれですが、最後に、私は先ほど、一番最初に文化財の、文化審議会の第一次答申の話をしましたよね。そこにこう書いているんです。「文化財を守る技術者、技能者や原材料の確保などに係る現行制度の見直しと今後着手すべき施策」というのが一つ。二つ目に、「文化財修理に関して、職人等の資質を担保する仕組みなど修理事業の質の維持向上と人材育成の質の施策」など、重要な課題とされつつ、これらが「中長期的観点から検討すべき課題」とされています。
今、私がずっと質問してきた内容はこのことなんですね。現行制度の見直しを、特に技術者、技能者、原材料の確保、これと、文化財修理に関しての資質を担保する仕組み、そして修理事業の質の向上、人材育成、こういった問題が、単に中長期というだけじゃなくて、私は喫緊の課題と考えるんです。ですから、その点で、今手を打たなければならないということを私は強調したいと思うんですね。だから、審議会の第一次答申の中長期じゃなくて、喫緊の課題として捉まえてやっていただきたい。
その件を最後にお伺いして、終わります。


林国務大臣

中長期というのは、今やらなくていいということではもちろんないとは思いますけれども、きょう大分具体的なお話もいただきましたので、しっかりと、すぐにできることはすぐにやるという精神でもって取り組んでまいりたいと思います。


穀田分科員

終わります。