不当表示の立証を行政負担、税金を使って行うのはおかしい

2014年11月10日

穀田委員

日本共産党の穀田恵二です。
きょうは、景品表示法の改正について質問します。
不当表示、これは広範囲に広がっていまして、課徴金制度の導入については、私どもも賛成できると思っています。
ただ、今までも多くの方々が質問なさいましたように、本改正案については、大事な点が大きく言って二つあります。一つは、不当表示の事前抑止に対する実効性はどうなのかということと、もう一つは、本来、徴収された課徴金は被害者に返金されるべきものであるとの立場から、消費者の損害を回復させる仕組みの構築を検討する必要があるんじゃないかという点だと思うんですね。ですから、私はこの立場から質問したいと思っています。
今、算定の基準が随分議論になりました。それらを含めて、真摯なモニタリングという話まであって、モニタリングに真摯があるのかなと思って、真摯という言葉をしきりに使われていますが、そこで、私はそんな話じゃないんじゃないかと思っているんですね。
課徴金の額、百五十万未満で裾切りされていますが、この間の議論の中で、裾切り基準の考え方が、もう一つみんな聞いていてもはっきりしないということがあると思うんですね。
この百五十万円未満は、過去の措置命令事案の売上高の中央値五千万から算定されている。そもそも、ではなぜ中央値なのか、基準とされたのか、その理由を述べてほしいと思います。


有村国務大臣

お答えいたします。
委員の御指摘は大事な課題だと思っております。なぜ中央値、中位層の値を基準としたのかということでございます。
より多くの事案が課徴金の対象となるような水準に基準を低く設定するという考え方もあると思いますが、やはり、消費生活への影響が小さなものまで課徴金を課すという対象になった場合、かなり行政効率がそちらに引っ張られて低下する、抑止の必要性の高い事案に対する法執行の力に支障を来すおそれがあってはいけないということでの線引きをいたしております。
ちなみに、平成二十年に国会に閣議決定を経て提出いたしました課徴金制度の導入のときの景品表示法の改正のときには、この中位層の値というのは一億前後であったかというふうに記憶をしております。
そういう意味では、中位層の値の水準がかなり今回下がったわけですけれども、実際に調べた上での層が、裾切りが五千万、百五十万円未満ということで妥当だという判断をいたしました。


穀田委員

その論理は、中位層だから妥当だということ以外に余りないんですよ。ほんまに中位層が妥当なのかという問題について、それは額が変動するわけだから、少なくとも、今平成二十年度とありましたけれども、そういう意味でいいますと、私は、そういうところに本質や本音があるんじゃなくて、今途中でお話がありましたように、結局のところ、行政コストを基準にしているんじゃないかというのが見てとれるんです。透けて見えるというのはそこなんですよね、まあ、途中でそういう話もおっしゃいましたけれども。
私がこの質問をするに当たって政府に説明を求めますと、一件措置するのに行政コストが百万円ではきかないということでありました。調べますと、現状において、行政の執行体制では五年間四十九件、一年十件程度ならば対応できるということじゃないか。率直に言って、裏から、逆から計算しているんじゃないか。考え方の問題はみんないろいろ言いましたけれども、本質はどこから設計しているのかという問題なんですね。だから、結局はコスト論にある。
ことしの八月二十六日、課徴金制度導入の検討状況を課題として開かれた消費者委員会本会議では、こう言っているわけですね。
もちろん相対的な兼ね合いですけれども、件数で見ると確かにそうかもしれないですけれども、金額でいうと百何十万ですから、それに費やすコストもどうしてもかかってしまうことになると思います、課徴金を取ろうとすると、百万円ではきかないので、こういう発言を政府側はしているんですね。
だから、結局、私は、この考え方が、中央値だとか三%だとかという以前に、逆算をして、百万を超える金がかかるので、そこを算定基準にして物事を考えているんじゃないか、それで割り振ればこうなるでというのがむいた話じゃないかと思うんですね。それは先ほどの大臣の発言の中にもあったわけで、私は、本法案の重大な課題である不当表示の事前抑止に対する実効性、この実効性がどこにあるかを第一に考えるべきではなかったかということを指摘しておきたいと思います。
そこで、全ての違反行為を課徴金の対象とすると、事案に対応し切れず、結果的には実効性が担保できなくなる、こういう話は先ほどもるるしていましたし、今も、何かというとすぐこれを出すんだよね。この基準では、今五割程度しか課徴金が課されない。では、これで制度導入の目的である不当表示に対する抑止力がほんまに担保されるのかということについて、見解を問いたいと思います。


赤澤副大臣

御指摘のとおり、規模基準を設定することによって、全ての不当表示事案に対して課徴金を課すということにはならないということであります。
しかしながら、不当表示に対する抑止力の強化を考える際には、新たな課徴金納付命令に加えて、従来の措置命令、指導なども含めた全体の執行力が強化されたことにならなければならないと考えております。
そういう意味では、先ほどの事務コストの御指摘の点に戻りますが、課徴金制度の導入に伴う事務量の増大によって、景品表示法についての全体の執行力がかえって落ちるようなことがあってはならないというふうに考えております。このような観点から、今回採用する規模基準の水準は妥当なものと現時点で考えております。
本制度の運用後、仮に違反行為防止の実効性が不十分と認められるような事態があれば、必要に応じ見直しを行うことも含めて検討してまいります。


穀田委員

その論理も変な話で、かえっておくれるようになるというんだったら、おくれないようにするためにはどうしたらいいかということについてどういう論理があるのかということを考えないと、それは違うんですね。現行の体制でこれだけかかってやるとこうなりまっせという話であって、そうすると、全体に抑止力をきかせるためにはどないしたら一番ええかということを考えて、その結果こうだというのはわかるけれども、今のままの話だと、執行力が弱くなってというのは、先ほどみんなも言っているように、では、執行力を高めるための手だてをとればいいということになるわけですよ。だから、その論理は極めて薄弱だということを言わなければならないと思います。
私は、いろいろ話を聞いていて、先ほどもいろいろな話で統計の話が出ましたけれども、過去の執行実績が百四十五件と少な過ぎる。現行法の措置命令の執行に当たっては、個別事業者情報やデータを収集する必要はなかったということはわかっているんです。しかしながら、この課徴金制度は、そもそも二〇〇八年に法改正案が一度出されているわけであります。先ほども大臣おっしゃったから、その辺はお詳しいんでしょう。しかも、それは廃案になったわけですよね。
消費者庁に移管された際に、消費者法体系へと移した上で、違反行為の抑止力強化策を検討することとされたはずなんです。だから、論点や目標とすることは明確にわかっていたはずで、では、これまで消費者庁は何をやってきたのかということを率直に思う方もいらっしゃるんじゃないかと言わざるを得ないんですね。
私は、本委員会の審議に当たって、これまでの措置命令の実績について資料要求しました。これに対して、消費者庁からは、特定の景品表示法違反事件における各事業者の売上額は、当該事件の調査の際に当該事業者から任意に提出を受けたものなので、特定の事件における個別の事業者の売上額を当該事業者の同意なくして開示することは差し控えたいという回答だったんですね、内部情報だからということなんだろうけれども。
では、その内容は問いませんよ。だけれども、逆に言うと、あなた方は持っているという話を先ほど委員が言っていましたけれども、私は、回答しないということ自体も問題だと思うけれども、それ以上に問題なのは、事業者からの情報提供というのはほとんど任意に提出されたものだけだったということなんです。それをあなた方は言っているわけなんですよ。だから、今回議論になっている算定率や裾切りは、任意に提出された事業者からの数字によって導かれたということにならざるを得ないんですね。だから、そこが問題だと私は言うわけですよ。
だから、情報が出されないということと同時に、任意だということになると、そうでない人たちは出していなかったということになるわけです。だから、その辺の問題があるということも私は認識しなければならないということを特に言っておきたいと思うんです。
私は、スピード感を持って課徴金制度の導入を行うべきとは思っていますけれども、施行後の経過を踏まえて、何遍も言っているんだけれども、皆さんもおっしゃっているわけだけれども、機動的に算定率の見直し及び課徴金を賦課するよう裾切り基準を見直すべきと思うけれども、その辺はどうですか、大臣。


有村国務大臣

お答えいたします。
当然ながら、本法の施行後においても、引き続き、課徴金制度を含めた景品表示法の執行状況については、運用状況を把握して、また制度の実効性を評価していかなければならないというスタンスを明確にしたいと存じます。


穀田委員

スタンスを明確にすると。
そこで聞きます。それでは、本法二十九条、報告の徴収及び立入検査等により求める情報について、今後の検証のため、どんな情報を消費者庁に収集しようとしているのか。実効性のある二十九条があるわけですね。だから、どういう情報を収集し、どういう姿勢で取り組んでいくのか、ちょいと大臣に答えてほしいなと思います。


赤澤副大臣

今の御指摘の二十九条でありますけれども、少なくとも、先生御案内のことかと思いますが、まず定性的には、今までは現行の九条で、六条の措置命令をするために不当表示かどうかの判断に必要なものだけをとっていた。その中には売上額とかは含まれていない。今度は、課徴金納付命令をするのに必要なということになりますので、売上高を含めて、関連する、必要と思われる報告を徴収できるようになる、そういう情報をきちっととって、執行に適正を期してまいりたいということでございます。


穀田委員

今の点はきちっと確認して、今後の経過を見ていく上での重要な指標にしていきたいと思うんです。
もう一つ、行政による立証問題について聞きたいと思うんです。
当初、注意義務の立証については、課徴金制度の実効性を担保するため、執行の負担や課徴金制度の機動性への影響を勘案しつつ、他方で、不当表示は違反事業者みずからの事由であることから立証は過大な負担となるものでないとして、違反事業者側で立証することとされていたわけですけれども、これは事実ですね。再び確認したいと思うんです。


菅久政府参考人

お答え申し上げます。
御指摘のとおり、当初の案では、そういった考えのもとにそのような案を提示しておりました。


穀田委員

当初はそういう案だった。きょうも、それからこの間の大臣も、本委員会で、不利益処分を科す際は行政が立証責任を負うとされている原則にのっとったと答弁された。きょうも、審議官もしきりに法の一般原則を述べています。
今再び確認したように、課徴金制度導入に当たっての、簡単に言うと答申、あれを見ますと、課徴金を賦課する要件としての主観的要素の要否については、不当表示の抑制という制度の目的に照らして、違反行為者に課徴金を賦課すべきであると考えられる程度の主観的要素が必要であるとの基本的認識に立ちつつ、不当表示がされた場合においては原則として課徴金を賦課することとし、違反行為者から、不当表示を意図的に行ったものでなく、かつ、一定の注意義務を尽くしたことについて合理的な反証がなされた場合を例外的に対象外とすれば足りる、ここまで言っているわけですね。
消費者委員会のことしの八月の会議では、課徴金制度検討室長も次のように述べているんですね。
主観的要素についてはということで、みずから証明していただいた方が、むしろ合理的かつ素早くできるのではないか、そこについても消費者庁がやっていれば、より処理がおくれてしまうので、むしろそういったことについて、みずから反証していただくという部分を明記したいと考えておりますとまで言っているんですね。
あなた方はしきりにスピード感の話をします。そうすると、こういう原則にのっとったと言うけれども、では、当時、役所の人たちはどんな議論をしていたんだ、それまでの議論は何だったのか、原則にのっとっていない方向を政府は主張していたのかということになるわけです。そんなことが役所で許されるとはとても私は思いませんけれども、だから、違う要素が働いているんじゃないかと思うんですね。
つまり、みずから反証していただく部分を明記したいと考えています、ここまで言っているんですよ。それは、大臣、どない思わはりますか。


菅久政府参考人

お答え申し上げます。
ただいま御指摘いただきましたとおり、当初は、相当な注意につきましては事業者側の事情であるということで、事業者側から主張をしていただくというのも案としてあるかなということで、そういうものを提示させていただきました。
ただ、その後、さまざまな御議論、御意見がございまして、特に、違反を行っていない事業者から見ると、何かそういうことがあった場合にみずから相当の注意の立証をしなきゃいけないということで、逆に萎縮をするのではないか、そういうお話もございました。
そこで、最終的には、現在の案、つまり原則に戻った、行政庁が立証するという案に戻ったわけでございます。
ただ、実務上で考えますと、この相当な注意をしたかどうかというのが問題になりますのは、事業者側から一定の主張があった場合でございます。事業者側から一定の主張、つまり、こういう注意をしたという主張があった場合に、それをある意味では消費者庁側が覆すことができるかどうかということでございますので、一般の事業者に対する萎縮をなくし、ただ、実務上はさほど大きな違いはないだろうということでこういう規定に最終的にはしたというふうに考えております。


穀田委員

最後の二つ、さほど変わりがないんだったら、それこそあなた方は、仕事が大変だの、百万円以上のコストがかかるからなかなかでけへんと言っておるんでしょう。相手にさせたらよろしいがな。こんなもの理屈にならへんやないの、そんなこと。何で変わったかて、さっぱりはっきり、違反しない人たちが萎縮する、しますかいな。違反してへん人たちはそんな気してへんねん。違反しているものが抑止力を伴うわけで、それをあなたの責任でやりなさいと。スピードは速いわ、そっちの方がええわと言っているのに、今さら同じような話やと。同じような話やったら、自分のところは金がないさかいに、人もいてへんさかいにと言うのやったら、それはさせたらよろしいがな。何を言うてんねやな。余り言うとあれだけれども、そう思う。誰かてそう思うと思うけれどもな。
結局、これは何で変わったかというと、二〇一四年四月十五日、日本経団連は、この景表法に対する意見の中で、「原則どおり不利益処分を課す行政の側が負うべきである。」と提言しているんだよね。だから、何で変わったかというと、パブリックコメントで、その他含めていろいろ変わったといって、パブリックコメントで変わっている大きな部分はこれなんですよね。一番大きい意見はここなんですよ。だから、ここで変わったんかいなと思うということは、誰かて、ああ、そうやねんなというふうに思いますわな。
事業者はみずからの立証について困難な場合もありと今お話ありましたけれども、しかし、本来、表示は根拠を持ってしかるべきであることから、不当表示の立証を行政負担、税金を使って行うのはおかしくないか、それは消費者被害に係る負担を国民が立てかえているのと同じとちゃうのか、こういうことになってくると思うから、私は、もともとの案のところに今からでも戻したらできるんと違うかと思うねんけれども、今後とも、私はそのことについては追及していきたいと思っています。
そこでもう一つ、実効性の問題からしますと、次は、国と都道府県との役割分担について少し聞きたいと思うんです。
百八十六回国会では、都道府県に対して、従来の行政指導である指示権限にかえて、消費者庁と同様の行政処分が行える措置命令権限が付されました。地方の執行体制が強化されたわけであります。
他方、これまでの都道府県における執行実績には、随分地域間格差が見られたわけですね。その後、消費者庁から都道府県の執行強化に向けた後押しによって指示の実績等はどう変わったのかということが一つ。
もう一つ、昨年の食材の偽装表示以降、消費者庁の取り組み、その取り組みを踏まえた地方担当職員の増員、相談窓口設置等の動向や職員の意識改革、全国の事業者の意識改革についてはどうなっているのか、ちょっと簡単に、簡潔にお述べください。


菅久政府参考人

お答え申し上げます。
まず、都道府県における執行状況でございますが、平成二十六年度におきましては、都道府県が景品表示法に基づく指示を行った事案、これは今までのところはございません。昨年度は六十四件、二十四年度は二十九件ということでございます。
また、これまでの消費者庁の取り組みでございますが、偽装表示発生以降でございますが、一つは、昨年の十二月にホテル事業者に対しまして措置命令を行い、公表しております。また、ことしの三月には、メニュー、料理などの食品表示についてのガイドラインを公表しております。また、前国会には、もう御承知のとおりでございますが、景品表示法の改正法案を提出し、十二月一日から施行ということでございますし、最近でも、ことし十月には木曽路に対しまして措置命令を行うほか、この国会でも新たな課徴金制度導入の法案というのを御検討いただいているところでございます。
また、都道府県における担当職員でございますけれども、これは平成二十五年四月一日現在、二百七十三人と承知しております。その後、やや増加が見込まれておりますが、具体的な数字は今検討中ということでございます。
さらに、意識でございますが、消費者庁の職員は、我田引水ではございますが、従来から、消費者利益の擁護、それから増進を目指すという意識のもとで不当表示の是正に積極的に取り組んできております。このことは今後も変わるものではございません。
また、本年三月に、メニュー、料理のガイドライン、これを公表して以降、事業者団体などからは多くの講師派遣要請が寄せられてきております。また、今月中旬以降に開催を予定しております改正景品表示法についての当庁主催の説明会でございますが、これにおきましても、既に一部の会場は満席となっております。表示の適正化に向けた意識の高まりが見受けられるのではないかというふうに考えております。


穀田委員

指示の実績という点ではまだないということがはっきりした。
二〇一四年度予算において、食品表示等に係る行政の監視指導体制の強化等のために、地方消費者行政活性化基金を大幅増額し、当初予算で三十億円、さらに、来年度の予算概算要求では五十億円を要求されている。この基金が、都道府県の専任職員の増員や、消費者庁等による都道府県担当者への今研修の話もありましたけれども、さらなる執行強化に向けた新たな取り組みが必要だと考えています。
そこで、連携の問題について一つ言っておきたいと思うんですけれども、課徴金納付命令を執行する消費者庁と、措置命令のみの都道府県との関係について、連携が極めて大事だと思うんですね。国は課徴金手続を行うけれども、消費者庁は、都道府県における情報収集から調査と、連携することで、効率よく、迅速に対応できると考えるわけであります。
問題はいろいろあるわけですけれども、私は、都道府県単独で措置命令する案件というのは課徴金の対象外の小さな案件ということとしても、都道府県においては、小さな案件かどうかの判断も含め、その線引きが曖昧な案件も予想される、都道府県によっては、厳正に対応するがゆえに、全ての案件を消費者庁に相談、連絡することもあり得ると考えます。
そこで、懸念されることは、都道府県によっては、全ての案件をとりあえず消費者庁に連絡すれば、消費者庁からの指示だけの分を調査して、調査後の問題は消費者庁がやってくれると考えるかもしれない、つまり、国で総括してやってくれるのならということで、都道府県では摘発、執行に係るインセンティブがそがれることになるんじゃないかと懸念するんですね。消費者庁がやった方が効率がいいということになれば、景品表示法を改正して、地方の執行権限を拡充した意味がなくなる。ですから、さらなる地域間格差が生まれやしないかと私は思うんですね。
だから、私は、前向きな話をしているんですけれども、消費者庁が司令塔となって、関係省庁と都道府県が、形式的な役割分担ではなくて、地域間格差が生じないように密接に連携をとり合って、相互に厳正な執行を行っていかなければならないと考えますけれども、迅速な対応に向けての、課徴金制度導入までの間、都道府県との連携強化のために具体的にどのような準備を行うつもりか、お答えいただきたいと思います。


菅久政府参考人

お答え申し上げます。
委員御指摘のとおりでございまして、都道府県と消費者庁、それから公正取引委員会の間で密接に連携をして執行していく必要があると考えております。
具体的には、現在でも執行ネットワークということで情報の共有を行って、お互いにどの当局が調査をするのが適当かということを相談しながら行っております。
今回の十二月一日からの改正景品表示法の施行に向けまして、都道府県との間での相談、またはその研修なども行ってきておりますが、課徴金制度導入になりますと、御指摘のように、都道府県が例えば調査をしている案件につきまして、課徴金の対象となりそうだということになりますと、そこでは消費者庁に連絡をいただくというふうなことも考えていかなければいけないというふうに思っております。
そういう意味で、今後、この改正法が成立いたしましたら、その施行までの間に一層、研修、それからお互いの情報公開の仕組みというのを整えていくことによって、適切な執行ができるようにしていきたいと考えております。


穀田委員

最後に、この制度の設計において、二〇〇八年、法改正が廃案となった経過を踏まえて、消費者委員会答申も、消費者庁当初案も、消費者の被害回復を促進する仕組みとして、事業者による自主的な対応による課徴金の控除制度を設計し、その仕組みとして、返金と、返金が困難な事業者のための寄附制度を再検討すべきということをしていたはずなんですね。
その辺についての見解だけちょっと、大事なことなものですから、私は一言回答願いたいと思うんです。


有村国務大臣

お答えいたします。
委員から御指摘のあったように、当初は、自主返金をし切れなかった分は国民生活センターに寄附を行うということで、一般消費者に不当な利益を還元したとみなして課徴金の納付を命じないことという議論がなされていたことは事実でございます。
しかしながら、パブリックコメントや与党における審議などで出された御意見を踏まえて、所定の要件が満たされた場合は課徴金を賦課するということで、そもそもの不当表示規制の抑止力を高めるという本制度の趣旨を徹底すること、また、寄附というのは被害を受けられた消費者の直接の被害回復にはならないということで、今回導入しないことは妥当であるという判断をいたしました。私自身もそのような判断をいたしております。
そして、そもそもは、今回、寄附制度にかえて、被害を受けられた消費者に対する自主返金を促すということを法の趣旨というふうにしておりますので、自主返金をしていただいた方には減額制度を導入することは適切なものだというふうに考え、法案提出に至っております。


穀田委員

私は、返金が困難な場合の事業者から消費者の被害回復の手だてがなくなったことは、消費者にとっても信用回復を目指す事業者にとっても後退する結果になったんじゃないかと考えます。
今ありましたように、直接被害を受けた人にとってどうなのかということを視点に考えた場合には、そういうさまざまなやり方を考えなくちゃならないし、自主的返金ができなかった分の金額は課徴金として国庫に納付されることから、結局のところ、一部の消費者は泣き寝入りしたままという実態は変わらぬわけですね。だから、本当にそこを考えるというのだったら、いろいろな制度をきちっとやっておかなあかん。
ですから、こういう意味も含めて、さまざまな検討が今後必要だということを述べて、終わります。