公選法改正ー「地方選挙ビラ解禁法」の質問に立つ

2017年06月7日

竹本委員長

以上で趣旨の説明は終わりました。
本件について発言を求められておりますので、これを許します。穀田恵二君。


穀田委員

日本共産党の穀田恵二です。
いわゆる地方選挙ビラ解禁法について質問します。
我が国の選挙制度や選挙運動、政治活動を規制している公職選挙法は、べからず集と言われるほどであります。
日本国憲法は、国民主権、議会制民主主義の基本理念のもと、主権者たる国民が政治に参加する手段として選挙を位置づけています。また、住民の福祉の増進を図ることを基本とした地方自治においては、選挙によって住民の意思が示されることで、住民の意思に基づき、自治体みずからの意思と責任を持ってその役割を果たしていくことを明記しています。
この選挙が正当に行われるためにも、有権者に、誰が立候補し、どういう公約を出しているのか、候補者情報がきちんと渡ることが必要であります。
現行では、候補者名が入ったビラの頒布やマニフェストの頒布場所もかなり限定され、選挙運動用ビラは、寸法、枚数、頒布場所などが細かく規定されています。さらに、選挙期間中の政党、政治団体の政治活動においても、ビラの頒布の規制が設けられています。
多くの有権者に候補者の政策を知ってもらおうとしても、選挙期間に入ると、候補者氏名が入ったビラは極端に減るというのが日本の選挙なんですね。これでは、有権者が十分に政策を比較できるとは言いがたいと思うんです。
本案は、地方議会議員の選挙において、候補者個人の選挙運動用ビラの頒布を可能とするための法改正だと思います。
地方議員選挙のビラ頒布を解禁する理由は何か、端的にお答えください。


牧委員

今、穀田先生の方からもうその理由をおっしゃっていただいたような感があるんですけれども、おっしゃるとおり、現行では、首長選挙と違って、地方議会の議員の選挙においてはビラの頒布が認められておりません。そういった事情の中で、手軽に有権者に政策等の情報を提供する機会が極めて限定されていると言わざるを得ない。そういう状況を打開するための今回の法改正という位置づけで御理解をいただきたいと思います。
昨年三月三十日には、この倫選特委員会において委員会決議も行われております。そこでは、地方議会議員の選挙におけるビラの頒布解禁について、有権者が候補者の政策等をより知る機会があることは、選挙において有権者が適正な判断を行い、投票行動に生かすことができるなど、参政権の行使にとって重要であることから、速やかに検討を行い、必要な措置を講ずるものとされておりました。
また、全国都道府県議会議長会及び全国市議会議長会からも、このビラの頒布解禁についての強い要望が上がっていたところでございます。
このような状況を踏まえて、各会派において御議論をいただいた結果、共産党も含め、ビラの頒布解禁について、全ての会派で合意に至ったものでございます。


穀田委員

なかなか重要な答弁でして、手軽にということもありましたし、参政権という基本の点もありましたので、今後、きちんと私の方も理解し、留意をしておきたいと思うんです。
そこで、町村議選挙以外の選挙で候補者ビラを認めることになるわけですけれども、候補者ビラは、枚数制限があるわ、それから一枚ずつ証紙は張らなならぬわ、頒布方法も、新聞折り込み、それから選挙事務所内、演説会場内、街頭演説の場所と限られて、多くの有権者に候補者情報が届くとは言いがたい。
この点から見ますと、各種選挙管理委員会が発行する選挙公報は重要なものだと私は考えているんです。選挙公報は、国政選挙と都道府県知事選挙では義務づけられていますが、市区町村長選、都道府県議選、市区町村議選においては、それぞれの自治体が条例を制定することによって行われています。
選挙公報の発行に係る条例の制定について、事実確認を総務省にしたいと思うんです。
一つ、都道府県議選で条例を制定していないのはどこか。二つ、政令市で市長選、市議選で条例を制定していないのはどこか。指定都市を除く市区長選挙、町村長選挙において、条例を制定していない団体数と比率は。四つ、指定都市を除く市区議員選挙、町村議員選挙において、条例を制定していない団体数と比率は幾らか。お答えください。


宮地政府参考人

お答え申し上げます。
都道府県知事選挙以外の地方選挙におきましては、条例で定めるところによりまして、選挙公報を発行することができることとされております。
総務省では、選挙公報の発行に係る条例制定状況につきまして、毎年調査をしているところでございまして、最新の平成二十八年十二月三十一日現在の状況では、まず、都道府県議会議員選挙について、条例を制定していない団体は、新潟県、福井県、山梨県、岐阜県、山口県の五県となっております。
指定都市の市長選挙につきましては、全ての団体で条例を制定しておりまして、指定都市の議会議員選挙につきましては、北九州市、広島市の二市が条例を制定しておりません。
指定都市を除く市区長選挙におきまして、条例を制定していない団体は七百九十四団体中八十二団体でございまして、その比率は約一〇%でございます。
指定都市を除く市区議会の議員選挙におきまして、条例を制定していない団体は七百九十四団体中八十三団体でございまして、その比率は約一〇%となっております。
町村の方でございます。
町村長選挙におきまして、条例を制定していない団体は九百二十七団体中五百十団体でございまして、比率は約五五%となっております。
最後に、町村議会議員選挙におきまして、条例を制定していない団体は九百二十七団体中五百十二団体でございまして、その比率は約五五%でございます。


穀田委員

今報告があったように、町村長選や町村議選での選挙公報発行は極端に少ない。県議選や、おおむね人口七十万人以上の指定都市の市議選でも選挙公報を発行していない自治体がある。広島、北九州ということですよね。
実際はどうなっているかというと、都道府県によってもかなりばらつきがあるんですね。例えば、和歌山県の自治体で見ると、選挙公報を発行しているのは県議選と和歌山市長選、和歌山市議選だけ、他の市町村は公報を発行していません。ない方は先ほどあったんですけれども、では、全ての市町村でやっているというのは、富山県、鳥取県、佐賀県であります。これは首長も議員もですよね。
十八歳選挙権が施行され、総務省並びに文部科学省がつくった高校生向け副教材の中でも、「候補者や政党の情報はこう集める!」と題して、そこの中には選挙公報が挙げられています。
明るい選挙推進協会の二〇一六年参議院選全国調査によれば、有権者が直接見たり聞いたりしたものは、掲示場に張られた候補者のポスター、これが四六・七%、候補者の政見放送、経歴放送、これは四四・八%、選挙公報は三八・六%と、三番目に高いんですね。さらに、その中で役立ったものはという問いに対して、候補者の政見放送、さっき言ったものですね、二〇・〇、選挙公報一八・〇、政見放送一五・九と、二番目に高いんですよ。だから、選挙公報は、有権者にとって接触しやすく、役立つ情報源だということがわかる。
しかも、遠隔地でも、不在者投票を行う場合も、候補者情報を得るには選挙公報のみとなる場合もあります。
私たちは、東日本大震災の際に、居住地から遠く離れて避難を余儀なくされている方々に候補者情報を届ける、そのために選挙公報を郵送する、公報を選管ホームページに掲載するということを提案しました。
実際に、福島県内では、選挙公報発行を始めた自治体もあるし、選挙公報は選管ホームページの掲載が行われ、二〇一二年総選挙から全ての選管で行われるようになりました。
そこで、実際、東日本大震災後、福島県内で選挙公報発行に至った理由、総務省はどのような支援をしたのか、この際、述べてほしいと思います。


宮地政府参考人

お答え申し上げます。
東日本大震災後に、被災市町村におきましては、避難した住民の方々の居所把握に苦労したところでございまして、その上で、いかに選挙人に対して候補者情報を提供するかといったことが課題となっておりました。
特に、県外避難者が多数いるという被災状況に鑑みますと、選挙公報が、選挙人が候補者の情報を入手するための有効な手段の一つと考えられますことから、総務省では、任意の発行となる都道府県知事選挙以外の地方選挙につきましても、関係の市町村選挙管理委員会に対しまして、選挙公報の発行のための条例制定や、当該選挙公報のホームページの掲載について検討するよう要請を行ったところでございます。
各選挙管理委員会では、これらの要請や趣旨等も踏まえまして、選挙公報の発行に向けて新たに条例を制定したものと考えております。
なお、総務省では、被災地が災害対応中ということもありまして、既に選挙公報を発行している福島県内の団体の条例や規程をもとにひな形を作成し、お示しをするなど、福島県選管とも連携をしながら発行に向けて支援を行っています。
ただ、一般的には、知事選挙以外の地方選挙に関する選挙公報の発行につきましては、各団体が条例の定めるところにより採用できる制度となっておりますので、各地方公共団体の議会において議論して、判断をしていただくべきものと考えております。


穀田委員

だから、通知を出していろいろ支援したと。後ろの方の、自治体ごとに判断する、それはそのとおりなので、そんなことを一々言ってもらわぬでもわかっています。
問題は、こういうことを通じて、極めて重要な手段だということが、どう考えても、これは結構意味があるなということがおわかりいただけたと思うんですね。
今回の法案は候補者が発行する選挙運動用のビラでありますけれども、有権者に候補者情報が伝わるという点、公費負担という点を見ても、選挙公報の活用はもっと行うべきだと私は考えます。選挙公報の活用が必要だと思うんですけれども、その辺、いかがでしょうか。


浦野委員

地方議会議員の選挙における選挙公報の発行に係る条例の制定状況については、先ほど総務省から答弁されたとおりです。
御指摘のとおり、選挙公報は、有権者が各選挙において投票先を判断するに当たり非常に有効な役割を果たすものであると承知していますが、その発行については、条例の定めるところにより採用できる制度となっていることから、各地方公共団体の議会において適切に議論し、御判断いただきたいと考えております。


穀田委員

最後はいつもそういうふうに言うけれども、問題は、これは有効だということをはっきり確認して前へ進まなあかんということを私は言っているわけですよ。
そこで、法案についてもう少し質問しますけれども、当初提案されていた民進党案では全ての選挙での選挙運動用ビラが解禁となっていましたけれども、自公両党による修正によって、条例による公費負担を盛り込みましたけれども、町村議選は解禁しないこととし、次回統一地方選からの施行となった。
なぜ町村議選のビラの頒布を解禁しなかったのか、その理由をお答えいただきたいと思います。


岩屋委員

ビラの頒布の解禁は条例による公営とセットで行うことが適切だというのが本法案の考え方でございます。
先生も御承知のように、町村議選におきましては、供託金が不要とされていることもありまして、現行法においても選挙運動用自動車やポスターの作成について公営の対象とはなっておりません。そのような中でビラの作成費用について公営の対象とすることは、現行法の公営制度全体の整合性に影響があるというふうに考えました。
また、全国町村議長会からもビラ頒布の解禁については要望が上がっておりませんで、むしろ選挙運動用自動車やポスターの作成について公営の対象にしてほしいという要望が上がっております。
そのために、町村議選につきましては、今回はビラ頒布解禁の対象としないこととし、公営制度や供託金のあり方を含めて総合的に検討していくべき課題だと考えているところです。


穀田委員

そう言うと、必ず公営制度をセットで来るんですよね。でも、ビラの頒布と公費負担をセットとして考えることは理にかなわないと私は思うんですね。
そもそも、ビラ頒布が規制されている理由は、公費負担をしなくてもいいようにという理由ではないんです。その理由やったらリンクするのはわかりまっせ。だけれども、本案の理由に、候補者の政策などを有権者が知る機会を拡充するためにとしておきながら、町村議選においては有権者が知る機会を拡充しなくてもよいということになるじゃないか、そういうことかと。
町村議選では公費負担がないと理由づけていますけれども、では、現行では、通常のはがきの交付については町村議選も含めて公費負担となっているんですね。
だから、その意味では、供託金をリンクさせ、公営制度を判断した理由は何なのかということを改めて問いたいと思います。


岩屋委員

ビラの頒布解禁と公営制度をセットで考えた理由は何かというお尋ねでございます。
そもそも、選挙公営は、資金力のある候補者が有利になることがないように、候補者間の選挙運動の機会均等を図るという趣旨に基づくものであると思います。
このような考え方のもとで、都道府県知事と市長の選挙におけるビラにつきましては、現行法のもとで、条例による公営の対象となっています。また、地方議会の声も、公営の対象となるならばビラの頒布を解禁することに賛成という声が多いと承知をしております。それらを踏まえて、今回は、条例による公営の対象とすることとセットで、ビラの頒布解禁を行おうとするものでございます。
一方、先生御指摘のように、町村議選におきましては、例えば、選挙運動用のはがきの郵送料につきましては公営、これは義務公営ですね。それから、選挙公報の発行については、条例で公営とすることができるということですから、任意公営ですね。さらに、今申し上げたように、自動車やポスターについては公営の対象外ということで、ちょっと制度的にばらばらな状況にあるわけでございます。
したがいまして、供託金が不要とされている町村議選において、ビラの作成について公営制度を導入するということにつきましては、現行法の公営制度全体との整合性を踏まえて、さらに議論を深めていく必要があると考えた次第でございます。


穀田委員

私、よう聞いていると、余り理屈にならぬなということをはっきり言って思いますよ。
大体、みんなそう思うてはってやってんのやからね。そうなってくると、では、金がないと出られへんからというようなことを言っているけれども、供託金自身が、そういうことでいいますと高いわけで、供託金制度どないなってんのやという話になりますやんか、それやと。
だから、ここの問題がある、要するに、国際的に見ても高い供託金制度があって、事実上、自由な立候補を制約する極めて非民主的なことだと、私たちは一貫して抜本的見直しを求めてきました。
このところ、町村議のなり手が不足しているということも深刻化していて、無投票がふえるとか、金を持っている人でなければ選挙に出られないということなどの要因ということもあって、どうなのかということを検証していかなければならない時期に来ていると私は思うんです。
そこで、やはり、余り理屈にならぬ話をせんと、町村議選での選挙運動用のビラの解禁は検討するかということについて一言。


岩屋委員

その点につきましては、町村議選におきましても、候補者の政策等を有権者が知る機会を拡充することの重要性は言うまでもないことでございますので、先ほど申し上げましたように、公営制度や供託金のあり方などを、他の制度との整合性も含めて、町村議会の声も聞きながら、総合的な見地から検討を進めてまいりたいというふうに思います。


穀田委員

私は、国民が主権者としてみずからの代表を選び、政治に積極的に参加していくために、選挙制度や選挙運動の規制を見直すことは、民主主義の発展のために不可欠だと思います。町村議選は解禁されなかったものの、本案により有権者が候補者の政策を知る機会が拡充されることとなって、私は賛成します。
国民、有権者が主体的に選挙、政治にかかわりやすくするために、根本的には、ここが大事なんですね、複雑な現行法を抜本的に変える必要がある。国民の基本的権利である選挙運動の自由。私が一番最初に述べた、べからず集ともいうべきこの公職選挙法。みんな知っているんですよ。大体、外国を見たらわかりますね。トランプとか何とかいって、選挙期間中にばんばん持ってますやんか。しかし、日本ではできへんというのは、あれはどないなっとんのやろうなと誰かて思ってまっせ。
ですから、そういうことを含めて、選挙運動の自由ということ自体が民主主義の成熟にかかわるという立場から、我々は今後も追求していきたいと思っています。
終わります。


竹本委員長

これにて発言は終了いたしました。