政府提出「交通政策基本法案」に、修正案を提出して反対

2013年11月13日

穀田委員

私は、交通政策基本法について質問します。

まず、この法律ができる出発点。もともと、これは交通基本法ということで出発をしてきたのが経過であります。民主、社民両党が二〇〇二年に提出した交通基本法案の趣旨説明では、このように述べています。

「この間の規制改革によって、交通運輸部門の経済的規制はほぼ撤廃され、交通運輸の分野も多くは市場原理にゆだねられることとなりました。しかし、安全の問題、環境への負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーなど、市場原理では解決できない点も多く、規制が緩和された今、それらを包括した新たな指導原理が求められています。その答えが、私たちが提案いたしました本法案であり、中でも本法案を貫く移動に関する権利の規定であります。生存権と自由権の両面から移動に関する権利を明確にすることによって、利用者の立場に立った施策を進める基礎を築くとともに、縦割り行政の弊害をなくし、総合的、計画的に交通政策を推進し、また環境に十分配慮した交通政策を推進すること、これが本法案を策定した目的であります。」ということで、当時、細川さんが提案をなさっています。

つまり、安全の問題、環境への負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーなど、市場原理では解決できない問題を、移動に関する権利を明確にすることによって、利用者の立場に立った交通政策を目指していたということになると思うんですが、この点について、事実としてまず確認しておきたい。


西脇政府参考人

お答えいたします。

交通基本法案につきましては、今委員御指摘のとおり、平成十四年に議員立法として初めて提出されたものだというふうに理解をしております。

それから、法案につきましては、ただいま委員が御指摘のとおり、まず、交通条件に恵まれない地域の住民が日常生活及び社会生活を営むに当たり安全で円滑で快適に移動すること、それから、交通による環境の保全上の支障を防止すること、高齢者、障害者等移動に関し制約を受ける者が日常生活及び社会生活を営むに当たり安全で円滑で快適に移動することなどの観点からの交通に関する施策について盛り込まれた上で、その法案が提案されたというふうに理解をしております。


穀田委員

そこで、それを受けて、二〇一〇年六月、国土交通省が取りまとめた、交通基本法の制定と関連施策の充実に向けた基本的な考え方(案)、これによりますと、移動権について、交通基本法の根幹に据えるべきは移動権であり、全ての人が健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動権を保障されるようにしていくことが交通基本法の原点であるべきとしていたことは事実ですね。

あわせて、移動権の法定化について、現在、政府としてはどのような考えを持っているか、述べていただきます。


西脇政府参考人

お答えいたします。

まず、今委員から御指摘がありました、平成二十二年六月の国土交通省が発表いたしました、交通基本法の制定と関連施策の充実に向けた基本的考え方(案)でございますけれども、その中身につきましては、委員が今引用されましたとおりでございます。

それから、後段の御質問でございます移動権につきましては、その基本的考え方を平成二十二年六月にまとめた後、さらに平成二十二年の後半に、交通政策審議会及び社会資本整備審議会におきましてもろもろの議論が行われましたけれども、その際には、移動権の具体的な内容についての国民の共通認識が得られているとは言えない状況、また、権利として規定するということは、利用者、運輸事業者の間に対立意識を生じさせるおそれがあるのではないか、また、パブリックコメントにおきましても、移動権についてはさらに検討が必要であるというような意見が過半数を占めたことで、審議会としては、移動権の法定化は時期尚早であるというような報告をし、それを受けた形で法案の立案をしたというふうに理解をしております。


穀田委員

まず事実だということと、時期尚早ということを、いろいろな形でまた審議会を設けたら出てきたと。結局それでいこうとなったということですな。しかし、私は、その文書を見ていて、「とりわけ、お年寄りや体の不自由な方々にとって、移動権は極めて重要です。」これは本当に大事な指摘ですよね。

そして、きのうも参考人の陳述が行われましたけれども、多くの方々が今言っておられる日本社会のありようとの関係で、この形はとても大事だということを述べておられるわけですよね。

ですから、私は、交通基本法の原点であるとしていたことを変えることは考えられないことだということを言っておかなければなりません。

もう一つ重要な点があります。交通政策において、先ほど述べましたけれども、安全の問題それから環境への負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーなど市場原理では解決できない問題、過疎地の高齢者など移動が制約される方々、航路や空路が生命線の離島の方々など、国民の足としての交通のあり方に交通基本法制定の動機があった、これは誰もが認めることではないかと思うんですね。

ですから、先ほど私は若干言いましたけれども、昨日の参考人の陳述でも強調された点は大体それらのことでありました。いわば人々の移動をどうするかということを中心に交通政策のあり方を議論してきたこと、とりわけ、競争など市場原理では解決できない公共性の高い政策課題だということ、これがもともとの動機だったわけであります。

政府案は、その公共性の高い、市場原理では解決できない人々の移動の問題を中心に立案されているのかどうか、問いたいと思います。


西脇政府参考人

お答えいたします。

幾つかの御指摘がございました。

まず、人の移動ということでございますけれども、政府案の中では第二条で、これは基本的認識のところでございますけれども、国民その他の者の交通に対する基本的な需要の充足ということを基本的認識のまず第一番に置いておりまして、そういう意味では、交通の需要を確保するということが重要と。

その具体的な内容といたしまして、第十六条におきまして、日常生活等に必要不可欠な交通手段を確保すると。その場合には、通院、通学とか例示も入れた上で、日常生活の交通手段を確保するということでございますので、ここにおいて足を確保するという概念を明確にしております。

それから、十七条におきましては、高齢者、障害者、妊産婦それから乳幼児を伴う者という、比較的移動について弱者の方についてもきちっと円滑な移動を確保するということを条文に盛り込んでおりまして、そういう意味では、人の移動を確保するということにつきましては十分に規定を盛り込んだつもりでございます。

それから、もう一点だけ、市場原理の話がございましたけれども、これは、例えば今やっております地域公共交通の維持確保改善事業、これはまさに財政支援を入れながら地域の足を確保しておりますので、そういう意味では、市場原理だけではないというようなところにつきましては、一定の合意とかコンセンサスのもとに施策を組んでいるということでございまして、十分に足を確保するという観点から施策を推進しているつもりでございます。


穀田委員

今お話あった二条、十六条、十七条というのは、交通基本法にも書いているんですよ。別に変わったわけじゃないんです。ですから、その点をわかっているわけですね。だから、簡単に言えば、前のものを引き継いだだけだということを言っておきたいと思うんですね。

だから、問題は、基本法なんだから網羅的に課題を並べればいいということじゃない。ましてや、今お話あったように、市場原理という問題でいえば、当時の文書というのは、市場原理では解決できないということを言っている点を私どもは指摘しているわけですね。

そこで、今回の法案では何が強調されているかということであります。資料として皆さんにお配りをしました。二〇一一年三月提出の交通基本法の概要、右側の方ですね、それから今回の交通政策基本法案の概要をお配りしています。

一目見て印象が違う。法案を比べてもほとんど違いがないように見えるけれども、この概要を見比べると、明らかに強調点が違うことがわかります。念のために黄色いマーカーで線を引いておきました。「国際競争力の強化」が、背景説明でも、法案の計画の部分でも一番目になっているし、文字も目立つ。そこで、右の方を見ていただきますと、二〇一一年三月提出の交通基本法案、これで見ますと、概要にある「国民目線・利用者目線に立った行政への転換」というのもない。

なぜこれほど違うのかということについて、いかがですか。


西脇政府参考人

お答えいたします。

まず、今委員から配付された資料の点につきまして御説明を申し上げます。

確かに、交通政策基本法案の概要説明資料の中には、前回ございました「国民目線・利用者目線に立った行政への転換」ということは明示的には言及しておりませんけれども、その趣旨というものは、今回提案しております法案の中での、先ほど申し上げました生活交通の確保やバリアフリー化、それから、関係者間の密接な連携ということで、国、自治体、事業者、国民等の役割というものもきちっと決めた上で連携するということで、そうしたものに基づいて講じられます国の施策につきましては、まさに国民目線、利用者目線に立った行政への転換というものを具体化しているというふうに考えているところでございまして、そういう意味で、交通政策基本法の中でも、国民生活の豊かさや地域活性化というものの実現を図っていきたいというふうに考えております。

それからもう一つ、国際競争力の位置でございますけれども、順番ということであれば、例えば、先ほど具体的な施策ということで条文を御説明いたしましたけれども、十六条、十七条というのを、生活の足の確保、それから、高齢者、障害者、妊産婦等の円滑な移動というものを一番目、二番目に置いているということについても十分御理解いただきたいというふうに思います。


穀田委員

それはさっき、最後の方はもう言いましたやんか、同じことを引き継いでいるだけやといって。何をよまい言を言っているのかと思うんだけれども。

見たらわかるんです。先ほど、概要やないかというやじも飛んでいるんですけれども、概要というのは、やはり体をなすといいますか、簡単に言うと、何を言いたいかという趣旨を出す基本なんですね。だから、これをいつも持ってくるんですよ。それに基づいて説明するんですよ。だから、そこに体をあらわしているんですよ。それは誰だって知っているんですよ。そこをまず言わなあきまへんで、これが基本でっせといって。

では、言いましょうか。括弧しているところに、一番上に線を引いておきました。「国際競争力の強化」と二行目にありますやんか。そして次に「国際競争力の強化」と書いていますやんか。「例えば」というところに「我が国の国際競争力の強化のための」と書いていますやんか。次に「交通政策基本計画の閣議決定」、一番最初に「国際競争力の強化に必要な施策」と書いていますやんか。誰が見たって、全部国際競争力がキーワードで、これが最大のポイントだなと見るのは当たり前じゃないですか。そんなこともわからぬ議員がおったら、どこの者やと言いたいぐらいだわ。そして、ここの肝心なところでいうと、「国民目線・利用者目線に立った行政」というのだけはどこかに行っている、こういうことですやんか。そこを見なあきまへんで。

それでは、国際競争力ということをこれほど言っているんだから、国際競争力の強化というのはどういう定義か。交通政策分野における国際競争力とその強化とは一体全体何なのか、言っていただけますか。


西脇政府参考人

お答えいたします。

条文で申し上げますと、十九条に、我が国の産業、観光等の国際競争力の強化のためにということで記述しておるところでございまして、例えばでございますけれども、産業の国際競争力といえば、例えば輸出産業におきますれば、日本製品の海外における競争性とか、あとは、観光につきましては、最近のいろいろな取り組みによりまして訪日外国人客なんかは若干ふえておりますけれども、全体に、国際的な地位からいうと低いというようなことで、こういうものが国際競争力の例示として挙げられるというふうに思っておりますけれども、その強化ということになれば、例えば、数そのものをふやすということもあれば、相対的地位を押し上げるというようなことが強化というような意味だというふうに考えております。


穀田委員

わからぬな。

これほど重要な項目でいっぱい書いているのに、その程度しかないのか。驚き、あきれるよね。

十九条というのを引用されました。これは、あなた方国交省が新たに入れて、相当深く書いた文章です。今お聞きすると、産業というところでいうと、海外との比較。産業ということでいって私が聞いているのは、交通政策分野における国際競争力と聞いているんですよ。

産業の競争力というのは、別にどこだって交通政策の分野と関係ないわけで、観光だって、ふえているかふえていないかというような話でいうと、競争力というよりも、日本に魅力があるかどうかということで来るだけの話で、それが他と競争したら、どこで区分けするのか、どこでそれをはかるのか。そんなこと、わかりますか。それは、なるべくええものにこしたことはないけれどもね。

そういうことでいうと、やはり振興や活性化であって、他者で比べる競争力という形では当てはまらない。率直に言って、わからぬな。聞いている人もさっぱりわからぬと思いますよ、私は。

交通政策分野における国際競争力とは何か。もう一遍言ってください。


西脇政府参考人

お答えいたします。

ただいま、条文に基づきまして、産業、観光等でお答えいたしましたけれども、当然、産業の競争力を上げるということでは、例えば港湾を例に挙げますと、私どもの例えば東京港、神戸港等の主要な港湾におきましては、アジアの主要な港湾と比べまして、コンテナの取扱量で大きな差が出ておるということでございますし、また、首都圏の国際空港の旅客や貨物の取扱量においても、アジアのところと非常に厳しい競争にさらされているというようなことでございまして、これは物流という観点、それから人流という観点から、産業と観光等の国際競争力と一体として構成されていると思いますので、交通政策の分野における国際競争力ということであれば、ただいま申し上げたようなものが例示になるのではないかというふうに思っております。


穀田委員

やはりわからぬな。

要するに、そこへいくと、交通基本法の生成過程、政策を決定していく過程と随分離れた感じに聞こえると私は思うんですね。

つまり、先ほど言いましたように、安全の問題、環境の負荷の低減、生活交通の維持、バリアフリーなど、移動に関する権利の明確化によって利用者の立場に立った交通政策を目指していたということが、いつの間にか、西脇さんがおっしゃるので言うと、港湾、コンテナということになっていくんだよね。

港湾、コンテナと言ったからといって、安全の問題、もちろん、環境の負荷でいえば、そこを通る自動車が、少しましなものを通したらいいとか、それはありますよ。バリアフリーだって、市場原理で解決できない問題と余り関係ないのですね。つまり、成長戦略全体の競争力ということだったら、それはわからぬことはありませんで。結局そういうことを言っているということに帰着するんじゃないかと、はっきり言って、思いましたね。

だから、何回も私は言っているように、交通政策分野における国際競争力とは何かということがもう一つはっきりせずに、結局行き着くところ、いつの間にか港に行き着いた、こういうことだわな。

そこで、もう少し聞いておきたいと思うんですけれども、国際競争力強化に必要な施策にある「我が国の産業、」今お話ありましたよね、産業。「観光等の国際競争力の強化を図るため、国際海上輸送網及び国際航空輸送網の形成、これらの輸送網の拠点となる港湾及び空港の整備、」とあります。そして、先ほど、そのことを一生懸命、前の方で早速しゃべってはったけれども、具体的にどこを指しますか。


西脇政府参考人

お答えいたします。

先ほど、港湾の例と空港の例を申し上げましたけれども、さらに具体的にお話を申し上げれば、我が国に寄港する国際基幹航路の維持拡大を図るために、国際コンテナ戦略港湾、これは京浜港と阪神港でございますけれども、そこにつきまして、ハード、ソフト一体となった政策展開ということで機能強化を推進しております。

また、首都圏空港、羽田、成田でございますけれども、これは二十六年度中に年間の発着枠が七十五万回化ということでございますので、さらにそれ以降の機能強化についての検討というようなことでございまして、具体の例を挙げれば京浜港、阪神港、羽田、成田になるわけでございますけれども、具体的にといえば、当然これ以外の港湾や空港につきましても、その時々の状況、地域の状況に応じまして、必要な整備というものにつながっていく場合もあり得るというふうに考えておるわけでございます。


穀田委員

なぜこんなことを言っているかというと、結局、戦略港湾だとか中枢港湾といった話を議論したときと同じ話をしているだけだということを気づいた方はいらっしゃると思うんですね。

私は、結局こういう話になってきて、交通政策分野における国際競争力の帰着するところは何かといえば、首都圏空港だとか戦略港湾は外さないということだけを言っている、これだけは確かだということははっきりしたと思うんですね。

そこで、「これらの輸送網と全国的な国内交通網とを結節する機能」とは、具体的に何を想定しているんでしょう。


西脇政府参考人

お答えいたします。

結節する機能ということでございますので、当然、国際の輸送網ということでは海外から人なり物なりが入ってくる、それを国内においてさらに動かしていくということでございますので、例えば国際港湾と工場が高速道路なり道路で結ばれるということになりますと、アジア全体のグローバルサプライチェーンの中でのリードタイムが短縮するというようなことが可能になりますし、また、外国人観光客からよく言われることでございますが、当然、国際空港に到着した人がなるべく早く観光地なり目的地に着きたいというようなことでございますので、それをつなげるとか、そういうような、いわゆる結節しているところというようなことが例としては挙げられるのかなというふうに思っております。


穀田委員

だから、結局のところ、それは、つなげるところというと、まさか空気と空気の間をやっているわけじゃないから、港湾と工場、観光客がどこかへ行きたいと言ったら、結局道路ということになりますわな、想定されるのは。ということでいいと思うんですね。

では、次にもう一つ。「地域の活力の向上に必要な施策」にある、「地域における企業の立地」や「物資の流通の促進に資する国内交通網及び輸送に関する拠点の形成」とあります。「資する国内交通網」とは何か、それに関する拠点とは何を意味しているのか、お答えください。


西脇政府参考人

お答えいたします。

今委員の御指摘がございました、地域内及び地域間の交流、物資の流通に資するということで、これは国際的なものよりも、さらに地域によってかなり事情がございますので、幅広いものがあると思いますけれども、例えばで申し上げますと、住民の方が日常生活を営むに当たって必要な例えば路線バスとか地域鉄道とか、あと、物資ということであれば宅配便のネットワークとか、いろいろな国内輸送網の例はあると思いますし、また、複数の都府県をまたがるような幹線道路とか地域外からの貨物を取り扱うような港湾等、だから、地域の中、それから地域間、両方のネットワークということでこの規定になったわけでございまして、その中の特に拠点ということになりますと、ターミナルを形成する駅でございますとか港湾とか空港等が例示として挙げられるかなというふうに思っております。


穀田委員

国交省がイメージしている交通政策分野における国際競争力というのは、大体見えてきたといいますか、結局のところ、空港の強化、港の強化、そして道路をつくっていく、それをつなぐ何らかのターミナル、こうなるということがはっきりしたと言っていいと思うんですね、そっちが言っているのやから。

そこで、大規模災害発生時の対応についても聞いておきたいと思うんです。

「相互に代替性のある交通手段の確保、」とあります。東京外環道や新名神などの建設理由に、大規模災害時に既存の高速道路が通行できなくなった場合の代替高速道路という説明が現地でもされてきました。

今、トリプル、三重の建設が進む大都市環状道路も、代替性のある交通手段という位置づけか。また、東海道新幹線の代替としてのリニア中央新幹線が位置づけられていますが、このリニアも代替性のある交通手段となるのか、お聞きしておきたい。

念のために、鉄道局長については、リニアも入っているかどうかだけ答えてくださいね。長いから、いつも。


西脇政府参考人

私の方からまとめてお答えをさせていただきます。

切迫性が指摘されております巨大災害に対処するため、我が国の国土が脆弱であることを認識いたしまして、危機意識を持って、交通ネットワークのリダンダンシーの確保などの防災・減災対策を進めていかなきゃいけないというふうに思っております。

今御指摘の、大都市圏の環状道路につきましては、都心に集中する通過交通を分散する共通の機能を有しておりますけれども、それぞれの道路につきましては、受け持っております交通の質で異なる役割があるというふうに考えております。

例えば、首都圏について申せば、中央環状線については都心内のふくそうする交通を緩和する、外環道については放射状道路を相互に連絡する役割、圏央道につきましては物流を含めた都市圏全体の機能を向上させる役割ということがございまして、以上のように、大都市圏の環状道路は、それぞれ異なる役割を持ちながらも、事故や災害時などのいざというときには互いに補完し合う代替性を有しているネットワークであるというふうに認識しております。

次に、リニア中央新幹線につきましては、整備計画の決定に当たり、平成二十二年三月から二十三年の五月にかけて開催されました交通政策審議会の中央新幹線小委員会におきまして、有識者の皆様に幅広く御議論いただきまして、リニア中央新幹線整備の意義等を取りまとめた同小委員会の答申におきましては、中央新幹線の整備は、中央新幹線及び東海道新幹線による大動脈の二重系化をもたらし、東海地震など東海道新幹線の走行地域に存在する災害リスクへの備えとなるとされておりまして、このような施策を通じまして、巨大災害への備えを万全なものとしていきたいというふうに考えておるわけでございます。


穀田委員

もう、ちょっと結論だけ言ってくれればええねんけれども、結局長くなったやん。リニアも入っているということだと思うんですね。

結局、国際競争力の強化として、国際戦略港湾、大都市圏環状道路、それから空港、港湾へのアクセス道路など、大型開発事業が明確に想定できる規定だということがはっきりしたということですね。

大規模災害の対応でも、今お話あったように、結局のところ、東京外環道の環状道路建設やリニア中央新幹線建設など、これらの大型開発も排除されないということがわかったということですね。

そこで、大臣に聞いておきたいんですけれども、大型開発事業は、これまでも交通政策として、基本法がなくてもさんざんやってきているんですね。いわば産業政策として、やれ一万四千キロメートルの高速道路の計画だ、スーパー中枢港湾だ、国際コンテナ戦略港湾だ、それから関西空港、中部空港、羽田空港のさらなる拡張、整備新幹線の延長、リニアと、これまでも、交通基本法がなくても、全総計画など国土計画でも位置づけられ、どんどんやってきたわけです。

なぜ、あえてこれら具体的に想定できるものを交通の基本法に入れる必要があるのか。入れることによってさらなるお墨つきを与え、大型開発事業推進の根拠にするつもりなのか。私はそう考えざるを得ないんですけれども、大臣の見解をお聞きします。


太田国務大臣

三十年代から全総があり、そして田園都市構想があったり、あるいは国土軸があったりということで、国土をどういうふうにしていくかということについてのグランドデザインには随分変遷があったと思いますが、私は率直に、二十一世紀に入ってから高齢化が大変進んでいる、人口は減少である。人口減少社会、少子高齢社会、そして今、盛んに国際競争力ということを言われる、国際競争力の強化は私は必要だというふうに思います。そして、特に災害への備え、巨大地震がある、日本列島は東と西が分断をされているということがある。

それらのことについて、もう一度国づくりをどうするか、交通をどうするか、そして地方の、まさに穀田先生がおっしゃって、最初からこの思想の中にございますように、全国どこに住んでいたとしても、また障害者や高齢者であったとしても、全ての人に基本的な交通需要が満たされるべきであるということは、人口減少社会になってくる、そして過疎になってくるということからいきますと、極めて重要なことだということを全て込めて、今回の、こうあるべしということを交通政策基本法案として提出させていただいたということでありまして、何も大規模開発事業を目的になどということは、私は考えておりません。


穀田委員

大臣がそうおっしゃる気持ちはわかるんですけれども、この概要を見ても、全部、中心は国際競争力とあるんですね。これは誰が見てもそうだということはおわかりいただける。その内容を問うてみたら、空だ、港だ、道路だ、こう来ているじゃないかということを言っているわけですよね。その論理的帰結の問題を言っているだけなんです。

そこで、では政策的背景はどうかと見ると、安倍内閣が閣議決定をしたいわゆる骨太方針で見ますと、「二十一世紀型の社会資本整備に向けて」という中に、「国は、国際競争力を強化するインフラ」として、首都圏空港、国際コンテナ戦略港湾、三大都市圏環状道路等を明記している。

また、「国土強靱化、防災・減災の取組」の中においては、大都市圏環状道路の整備や、代替性確保のための、先ほどあった道路ネットワークの整備も推進を例示しているんですね。

今国会で審議される予定になっています、自公が提出した国土強靱化基本法も、防災・減災の名のもとに、国際競争力の向上に資する強靱な国づくり、重要な機能の代替性の確保などを明記していて、結局、大型開発を推進するものとなる。

本法案の国際競争力の強化の条文には、こうした施策が実行可能となるようにする規定の意味も先ほど明らかになった。したがって、私は、国土強靱化政策の交通分野版にもなり得るものと言わざるを得ません。

一方、もちろん本法案には、交通施設等の老朽化対策も明記されています。私は何回も、これを先にやるべきだと言ってきたことは大臣もよく御承知です。新規の大型開発事業を続けるんじゃなくて、今やらなければならないのは、既存のインフラの老朽化対策を施策の中心に置くことだということを何回も言ってきたことは、もう御案内のことと思います。

最後に、安全問題についても少し聞いておきたいと思うんですね。

昨年の高速ツアーバス事故、そして最近では、事故、トラブルが絶えないJR北海道の問題。交通手段の一つ、高速道路でも笹子トンネル事故が昨年起こった。B787型機のトラブルを初め、空の安全も看過できない事態が頻発している。これらはまさに、交通政策が真っ先に安全確保を掲げるべきことを示しているんじゃないでしょうか。昨日の参考人の陳述で、安全を書き込まなければならないほど深刻な事態が生まれているという指摘もありました。

ところが、本法案は、交通安全対策基本法を並行的に捉え、交通の大前提に置くべき安全確保が基本理念に明記されていません。そのため、基本理念に基づく国等の責務、交通の施策から安全確保が抜け落ち、交通安全対策基本法に委ねる形になっています。これでは、交通における安全確保の位置づけが曖昧にされるおそれがあります。

そこで、伺いたい。本法案では、なぜ基本法案に盛り込まれていないのか。なぜ、国、事業者等の責務として明記されていないのか。


土井大臣政務官

安全の確保は、国民等の生命、身体及び財産の保護を図る上で重要な役割を果たすものとして、何事にも優先をされる課題であるというふうに承知をいたしております。

従来から、交通安全対策基本法や、道路運送法、鉄道事業法、海上運送法、航空法などの既存の関係法律に基づいて実施され、安全確保に関する具体的な規定が整備されているというふうに承知をいたしております。このため、交通政策基本法案の目的そのものや基本理念には、交通安全の確保について規定しなかったところでございます。

一方、交通政策基本法案に盛り込んでいる交通施策の中にも、事業基盤の強化、人材の育成、施設の老朽化に配慮した交通手段の整備、大規模災害への対応など、交通安全の確保と密接に関連する施策が多数含まれているところでもございます。

こうしたことに鑑み、交通政策基本法案においては、交通安全対策基本法と相まって、交通に関する施策を総合的かつ計画的に推進するということとした上で、交通に関する施策の推進に当たっては、交通の安全の確保に関する施策との十分な連携が確保されなければならないと規定したところでもございます。


穀田委員

入ってへんということだけは確かで、それで、ほかの法律に入っているからというようなことは、余り言いわけにならぬのですわ。というのは、基本法なんだから、ほかの法律よりも大事な法律だという位置づけなわけでしょう。その基本法という位置づけの中に入れるというのが大事なんですね。

あわせて私は言っておきたいんですけれども、交通運輸事業というのは、運転者などの運行従事者がいて初めて成り立つ事業であります。運行従事者の肉体的、精神的な状態、技術力が安全運行に直結します。だからこそ、安全を確保するためには、運行従事者の賃金、労働条件を適正にする必要があります。交通運輸の現場では労働者の賃金、労働条件の適正化こそ安全確保の必要条件であるということを盛り込むべきではないでしょうか。


西脇政府参考人

委員御指摘のとおり、運輸事業に従事する交通関係労働者の処遇の改善ということは、交通機能の確保向上それから交通安全を確保する上で非常に重要な課題だというふうに認識しておりまして、本法案によりましても、国は運輸事業等の健全な発展を図るために事業基盤の強化とか人材の育成などの必要な施策を講ずるということで、その中には労働環境の改善も含まれるというふうに考えておりまして、いずれにしても、交通サービスの担い手であります交通関係労働者が安全、安心な環境のもとで働けますよう、労働環境の整備に努めてまいりたいというふうに考えております。


穀田委員

それでは不十分だということで、私、今拝見しました附帯決議の中にも、わざわざ労働条件の環境まで書かざるを得ないわけですよね。私は、ほかは余りひどいものだから賛成をしませんけれども、しかも、交通安全基本法にわざわざ、車両等の安全な運転を図るためには運転者等の労働条件の適正化等が必要であり、国として必要な措置を講ずること、こう規定しているんですよ。だから、その意味では、交通安全基本法に書いている中身としても、本来、基本法という位置づけであれば、こういったものをつけ加える、本質的にそのことが一番大事だよということを加える必要がある、そのことを私は言っているんですね。

ですから、当たり前に、この法案について言えば、これはつけ加えるべきだったということを主張して、委員長が目でも合図していますから、時間ですので終わります。


梶山委員長

これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

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梶山委員長

この際、本案に対し、穀田恵二君から、日本共産党提案による修正案が提出されております。

提出者より趣旨の説明を求めます。穀田恵二君。

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交通政策基本法案に対する修正案

〔本号末尾に掲載〕

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穀田委員

ただいま議題となりました交通政策基本法案に対する修正案につきまして、その趣旨及び概要を御説明申し上げます。

交通は、人や物の交流や活動を支え、国民生活にとって不可欠なものですが、今日の交通を取り巻く社会経済情勢は、人口減少、高齢化の進展や地球環境問題の深刻化、地方の過疎化など大きく変化してきています。

交通運輸の規制緩和政策のもとで、鉄道、バスなど相次ぐ路線廃止など地域公共交通が衰退し、自家用車を利用できない高齢者等、移動が大きく制限される移動制約者が増大しています。

また、これまでのモータリゼーションの推進など自動車中心の交通施策により、交通事故、道路公害の発生などさまざまな弊害も生まれています。さらに、高速ツアーバス事故を初め、公共交通機関の事故も相次いでいます。

こうした状況を踏まえ、本法案を、国民の立場に立って、市場原理では解決できない公共性の高い政策課題に対応し、国民生活の安定向上に役立つものとするため、移動権の保障を盛り込み、基本理念の第一に交通の安全の確保を据え、さらに、「国際競争力の強化」を削除するなどの修正案を提案します。

以下、本修正案の概要につきまして御説明申し上げます。

第一に、交通政策基本法の名称を交通基本法に戻します。

第二に、移動に関する権利を明確化します。

第二条として、「全て国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動を保障される権利を有する。」等の規定を新設します。これに伴い、この法律が移動に関する権利を明確にするものである旨を目的規定に明記します。

第三に、交通の安全の確保に関する規定を第一番目の基本理念として明記します。

第三条として、「交通に関する施策の推進は、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するよう、交通の安全の確保が図られることを旨として行われなければならない。」を加えます。これによって、国等の責務についても、交通の安全の確保を大前提とすることになります。

あわせて、事業者等の責務についても、その業務を適切に行うことの例示として、交通の安全の確保を図ることを明記することとします。

なお、車両等の安全な運転を図るためには、運転者等の労働条件の適正化等が重要であり、国として必要な措置を講ずることを規定する交通安全基本法の実効性を求めます。

第四に、「産業、観光等の国際競争力の強化」を「産業、観光等の振興」に改めます。

地方路線の廃止や公共交通機関の事故の要因、背景にあった規制緩和等市場競争原理から脱却するため、公共交通の安全や公共性と相対立する「国際競争力の強化」を削除し、「振興」に改めることとします。

また、関連する規定を削除します。

以上が、修正案の提案理由及びその概要であります。

何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。


梶山委員長

これにて趣旨の説明は終わりました。

―――――――――――――


梶山委員長

これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。

討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。


穀田委員

日本共産党を代表して、交通政策基本法案に反対、修正案に賛成の討論を行います。

交通は、人や物の交流や活動を支え、国民生活にとって不可欠なものです。

交通をめぐっては、人口減少、高齢化や地方の過疎化などの進展、交通運輸分野の規制緩和政策の推進などにより、鉄道、バスの路線廃止が相次ぐなど地域公共交通が衰退し、高齢者を初めとした移動制約者が増大しています。

これまでのモータリゼーションの推進など、自動車、道路中心の交通施策による弊害も生まれ、高速ツアーバス事故を初め、公共交通機関の事故も相次いでいます。

こうしたもとで、交通に関連して、安全問題や生活交通の維持、バリアフリーなど、市場原理では解決できない公共性の高い政策課題に対応するためにも、移動権の保障を盛り込んだ基本法が求められてきました。

しかし、政府提出の法案には、移動権の保障が規定されていません。そのため、地域公共交通の衰退や、移動が制限される移動制約者の拡大に歯どめをかける施策の進展を妨げることになりかねません。ですから、私どもが先ほど述べた修正案を提出したゆえんであります。

また、バスや鉄道などの事故、トラブルが多発するもとで、閣法には、交通の大前提に置くべき安全の確保が基本理念などに明記されていません。

さらに、国際競争力の強化として、国際戦略港湾、大都市圏環状道路などが明確に想定できる規定を盛り込むなど、大型開発事業の促進の根拠として使われるものとなっており、政府提出の交通政策基本法には賛成できないことは明らかです。

以上、討論といたします。