交通基本法案 参考人質疑。 「移動権の保障を」「交通の安全の確保を」と修正提案。参考人にご意見を伺う。

2012年08月22日

穀田委員

日本共産党の穀田恵二です。

参考人の皆さん、貴重な御意見をきょうは本当にありがとうございました。

私は、委員長の許可を得て、日本共産党としての交通基本法に対する修正案を配付させていただきました。

まず、國定参考人と亘理参考人及び土居参考人にお聞きしたいと思うんです。

お配りした修正案の中に、私どもの考え方、特に、交通基本法の必要性について次のように考えています。

交通は、人や物の交流や活動を支え、国民生活にとって不可欠なものですが、今日の交通を取り巻く社会経済情勢は、人口減少、高齢化の進展や地球環境問題の深刻化、地方の過疎化など大きく変化してきています。

そのもとで、鉄道、バスなどの相次ぐ路線廃止などにより地方公共交通が衰退し、地域交通が衰退して、自家用車を利用できない高齢者等、移動が大きく制限される移動制約者が増大しています。また、これまでのモータリゼーション推進など自動車中心の交通施策によって、交通事故、道路公害の発生などさまざまな弊害も生まれています。さらに、高速ツアーバス事故を初め公共交通機関の事故も相次いでいます。

こうした状況を踏まえて、本法案をより国民生活の安定向上に役立つものとするため、移動権の保障を盛り込み、交通の安全の確保を基本理念の第一に据えるなどの修正案を提案したところです。

第二条として、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営むために必要な移動を保障される権利を有する。」ものとすること等の規定を新設します。これに伴い、この法律が「移動に関する権利を明確にする」ものである旨を目的規定に明記しました。

私たちの提案について、まず御所見を國定参考人と亘理参考人にお願いします。

二〇一一年、交通政策審議会・社会資本整備審議会の交通基本検討小委員会の論点では、移動権の保障に関しての法制論、行政論、社会的実態論なる否定的意見がありますが、第二条に、先ほど来、陳述で交通権保障の条文を入れると論じられた点について、土居先生の見解をお聞きしたいと思います。


國定参考人

今ほど御質問者の御指摘の点についてお答えをさせていただきたいと思います。

私の基本的な立場は、全く今、基本法制そのものが成っていない状況の中にあって、交通基本法案そのものがまず制定されるべきだというふうに考えている人間の一人であります。

その上で、私自身は市長という立場でございますので、行政執行者でございます。そういうようなことを考えたときに、例えば三条市で、中山間地域の中でもかなり離れたところで、本来集落ではないようなところに、ある一軒の家が建てられた。その方が移動権を主張するがゆえに、行政が毎年毎年多大なる負担をしなければいけないというような事態はやはり基本的には避けるべきだ、こういうふうに思っております。そうした公共と個人のバランスというものはやはり慎重に見きわめていくべきではなかろうか、こういうふうに思っております。

そういうことを鑑みますと、まず今回の交通基本法案原案で示されているところが、基礎自治体の私どものスタンスから申し上げますと、少なくとも、今の段階では十分な条文規定になっているのではないかなというふうに率直に考えているところでございます。

これらにつきましては、交通基本法に盛り込まれている理念そのものにつきましては広く賛同する中で、どこまでそこを明文化していくのかということに尽きるというふうに思っておりますので、まさに議員各位の皆様方の慎重なる御審議の中で進められていくべき問題だろうというふうに思っております。


亘理参考人

お答えさせていただきます。

私は、個人の移動する権利を保障することは現実には無理だろうと思っております。したがって、穀田先生の共産党の修正案は、本当に理想的な法律なんですが、実際は難しいだろう。

したがいまして、交通基本法の理念にのっとり、国や地方自治体における、移動、交通に係る政策の基本的な方向性を定めるものとすべきである。その基本的な方向性のもとに展開される総合的な各種の政策を実践していくことによって、個人の移動する権利は合理的な形で実現、保障される、こういう姿にせざるを得ないんじゃないかと考えております。


土居参考人

私の方は、この文案を第二条に入れるべきだという形でさっき既に主張しております。

ただ、おっしゃるように、フランスの場合でもそれは方向づけ法という形で、フランス国内の一つの目標について、漸進的にそれを実現していくんだという形で、多分に、この法律ができてもすぐには変わらないと思いますから、やはり方向づけとしてもこの修正の文を入れるべきだと考えています。

そうでないと、先ほど言いましたように、世界的にも、二十一世紀初めての交通基本法になります。お隣の国の韓国は同じような案をつくっていますけれども、まだできていません。そういう意味で、やはり日本が二十一世紀の新しい社会を切り開くという意味でも、この交通基本法というのを高らかにうたって、それに向かって努力していくということが非常に重要ではないかと思います。

以上です。


穀田委員

ありがとうございました。

私どもは、余り理想というよりも、二〇〇三年には民主党と社民党が共同提案した案なんですね。それから、国交省も二〇一〇年の六月にはこういう案を考えていたんですね。ですから、さほど理想論というよりも、もともと提案していた内容について、政治の流れの中で、ほんのちょっと前に言っていたものを我々がやっているという程度なんですけれども、それはそれで御理解いただきたいと思います。

それから次に、國定参考人、高橋参考人、土居参考人、お三方にお聞きしたいと思います。

私たちの修正案、第三条として、「交通に関する施策の推進は、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するよう、交通の安全の確保が図られることを旨として行われなければならない。」ものとすること、これを基本理念として加えました。亘理参考人も先ほどこの問題については陳述され、よりよきものとしての修正提案の中で出されていましたし、それは合致するんじゃないかと思うんです。

これによって、私どもは、国等の責務についても、交通の安全の確保を大前提にすることになります。ですから、交通の安全の確保ということについて、先ほど、高齢者の方々への施策を三条市において実行されることによって因果関係はどうかという話がありましたけれども、高齢者の被害が少なくなっているというお話がありました。私は、そういう関係からも、これについて國定さんにお答えいただきたい。これが一つです。

それから私どもの修正案では、事業者の責務についても、その業務を適切に行うことの例示として、交通の安全を図ることを明記しました。

なお、これは御承知のとおり、先ほど来、交通基本法と交通安全基本法というのが二つの両輪としてあるというふうな話もありましたが、交通安全基本法には、車両等の安全な運転を図るためには運転者等の労働条件の適正化等が重要であり、国として必要な措置を講ずることを規定しています。私は、交通運輸にかかわって安全を担う労働者の、働く条件が極めて大事だという立場に立っています。

そして修正の第三点目は、地方路線の廃止や、公共交通機関の事故の原因、背景にあった規制緩和等、市場競争原理から脱却するために、公共交通の安全や公共性と相対立する「国際競争力の強化」を削除し、「振興」と改めることとしました。

高橋さんは事業者でもありますし、行き過ぎた緩和の見直しということを論じておられますし、きょうも自由競争万能ではなくということも述べられ、バス運転手の所得についても言及されました。その点、私どもの考え方についての感想と御意見をお聞かせ願いたい。

土居さんは、きょうも陳述の中で、運輸事業の労働者の労働諸条件の維持確保は極めて重要と述べられました。また、「自治体による生活交通再生の評価と課題」、これは調査室からいただいた資料ですが、その論文などでも規制緩和や安全問題を論じておられます。

そういった立場から御意見をお三方に承りたいと思います。


國定参考人

交通の安全の確保につきましては、これは恐らく、誰も異論を唱えるところではないというふうに思っております。やはり交通施策を推進していくに当たっては、交通の安全の確保というものは大変重要なところだろうというふうに思っております。

三条市におきましても、御高齢の方々が自転車に乗りながら随分車道を、それこそ欧州で言うところの一番優先順位の高いような状態の中で、ばっこしているという状態でございますけれども、そういうようなところがあって、全体として果たして本当に交通の安全の確保につながっているのかどうかということについては、やはり私どもとしてもしっかりと見届けていかなければいけないというふうに思っております。

交通基本法案そのものの中でどのような規定がなされるのかというところにつきまして、私自身は全く知見を有しておりませんけれども、交通の安全の確保の重要性というものは私どもとしてはしっかり認識しているところでございますし、この交通基本法の中でも触れられておりますような形でまずはしっかりと取り組みがなされていく、まず、その道しるべを立てていくということが大事なのかなというふうに思っております。


高橋参考人

先ほどお話がありましたように、ドライバーの待遇が、大変今所得が低くなっているというお話をさせていただきましたけれども、規制緩和があった時点で、高速バス、貸し切りバス、これらの事業者、それから車両も含めて大幅にふえたわけです。当然そこで発生するのが、やはり単価にはね返って、仕事がとれるようにするには安く受けなきゃならないということもあります。そんなことでどんどんコストが下がっていったわけですね。ということで採算性が悪くなるために、そういったところを抑制しながら事業者としては進めていかなきゃいけないというのが現実でございます。

そういう中で、もう一つ心配な点は、ドライバーが大変高齢化しております。資料によりましても、六十五歳以上の第二種免許を持っている方が四〇%を超えているというような現状でございます。それに合わせて受験生が減っております。資格を取ろうという人が今大幅に減っております。対前年でも七%近く減っているというふうに聞いております。この五年間でも、たしか八万人近い方が資格をなくしているといいますか、有資格者が減っているというような状況。これがこのまま進みますと、それぞれの路線の維持というのが大変難しくなってくるというような状況にございます。

私どもの仕事は、安全が第一ということを主眼にしてやっております。そういう中で、そういった責任を負うドライバーの所得がこういう状況では甚だうまくないのではないかというふうに感じておりますので、安全に対してはいろいろな手法を用いながら、ドライバーをバックアップしながら事業者としてもやっていく所存ではございますけれども、そのような観点からも何か改善策、うまい手がないかということで、今模索しているところではございますけれども、その辺も、御指導のほど、どうぞよろしくお願いしたいと思っております。


土居参考人

規制緩和で、そういう意味では参入規制とか経済的規制の緩和が非常に進んだわけですけれども、それと同じように、社会的な規制といいますか、安全に対する規制の緩和も進んできたような感じがします、さまざまな事故、高速道路の事故とかを見ますと。

そういう意味で、やはり本来に返って、参入審査の強化とか、公正取引といいますか、下請関係的な取引の関係で物すごくピンはねが行われているとかいったことも知られてきました。事故対応の未整備への監査の強化、さまざまなことが必要ですけれども、これまで、やはり社会的規制というのが一定後退してきたわけですから、今回、この交通基本法の中で、そういった安全に対する具体的な施策もぜひ盛り込んでいただきたいと思います。

以上です。


穀田委員

ありがとうございました。

きょうは各党の御意見を聞く機会もつくることができましたし、国民の生活が第一も、公明も、安全の方はどうも一致できることがありましたし、参考人の方々もそういう御意見でしたから、これは必ず実らせていきたいと思うということを述べまして、感謝の言葉とさせていただきます。おおきに。