「包括的な経済上の連携に関する日本国とグレートブリテン及び北アイルランド連合王国との間の協定(日英EPA)の承認案」に対する反対討論

2020年11月20日

穀田委員

 私は、日本共産党を代表し、日英包括的経済連携協定に反対の立場から討論を行います。  本協定は、多角的な自由貿易体制の維持強化を成長戦略の基本とする菅内閣が、自由貿易を推進する力強いメッセージを国際社会に発信するとして、EU離脱後の英国と締結する経済連携協定です。  その内容は、コロナ禍で国内需要が逼迫する中、TPP11や日欧EPA、日米貿易協定などの貿易自由化が危機に弱い社会経済をつくり出したことに何らの反省もないまま、多国籍企業の利益を優先し、際限のない市場開放を一層推進するものとなっています。  本協定は、自動車等の工業製品の輸出増と引きかえに、日本の食と農に犠牲を強いるものとなっています。日欧EPAで関税撤廃、削減の対象から除外していた米を始め全ての農産品を協定発効五年後の見直しの対象にした上、パスタなどの麺類やビスケットなどの焼き菓子など、農産品十品目で原産地規則を大幅に緩和するなど、農業経営の切捨て、食料自給率の一層の下落を招くものとなっています。  こうした日欧EPAを超える譲歩は、将来のTPP改定交渉など、今後の新たな貿易協定で、より高い水準の市場開放を迫られる基準となりかねません。  財務省によれば、日欧EPA発効後にEUからの農産品の輸入が急増しています。牛の冷凍肉は前年比一八一%、バターは一三六%、ミルク及びクリームに至っては二〇八%と倍増しています。本協定の締結により、欧州全体から引き続き安い輸入品が大幅に流入すれば、国産品の値崩れなどの事態を招くことは明らかであります。  政府は、日欧EPA発効時の影響試算で、国内生産額が最大一千百億円減少すると試算していましたが、本協定での日英間の独自の影響試算を行っていないことは重大であります。  また、審議を通じて、コロナ禍でこれまでに、食料の輸出制限が世界十九カ国で発生したことが明らかになりました。このことは、グローバル化したサプライチェーンに依存する食料経済の脆弱性を浮き彫りにしています。今、政府に強く求められるのは、国内生産基盤の抜本的強化や食料自給率向上など、内需を拡大し、危機に対応できる強い経済づくりにかじを切ることです。  本協定は、デジタル貿易分野についても、多国籍IT企業の利益を保護するためのルールを定めた日米デジタル貿易協定並みの高いレベルとなっています。今、世界ではデジタルプラットフォーマーの規制強化をどう進めるのかが課題となっている中で、多国籍IT企業の求めるルールづくりを優先することは、世界の流れに逆行するものであります。  以上を指摘し、反対討論といたします。