国民と国会ないがしろに 内閣不信任案の賛成討論に立つ 第192回 臨時国会

2017年01月27日

議長(大島理森君)

日程第一、安倍内閣不信任決議案を議題とし、前会の議事を継続いたします。
討論を継続いたします。穀田恵二君。
〔穀田恵二君登壇〕


穀田恵二君

私は、日本共産党を代表して、安倍内閣不信任決議案に賛成の討論を行います。(拍手)
第一に、今国会における安倍政権の強権的な国会運営は断じて容認できません。
今国会冒頭から政府・与党による強行採決発言が相次ぎ、その言葉どおりに、TPP協定と関連法案、年金カット法案、カジノ解禁推進法案などの強行採決が次々に行われました。いずれも国民生活にかかわる重要法案であり、世論調査では反対が多数であります。多くの国民が不安や疑問を抱き、慎重な審議を求めていたにもかかわらず、何時間審議しても同じだと採決を強行し、国会と国民をないがしろにした安倍政権の責任は極めて重大であります。
そもそも国会審議とは何か。法案の内容、何をどう変えるのか、国民の生活や権利がどうなるのか、法案の全容を国民に明らかにするのが国会審議の責務であります。そのためには、審議内容を国民に明らかにし、資料を公開し、関係者や専門家、学識経験者などの意見を公聴会や参考人質疑を通じて審議に反映し、内容を深めていく努力が不可欠です。幾ら国会で多数議席を占めていても、それは個々の法案について国民から白紙委任を得たものでは決してありません。国民が納得できる徹底審議によって政治を進めるのが議会制民主主義ではありませんか。
ところが、今国会、安倍総理が最優先課題と位置づけたTPPの審議はどうですか。
TPPは関税撤廃を原則としており、農産物重要五項目を守るという国会決議に反し、日本の農林水産業に壊滅的打撃を与え、地域経済、地域社会を壊すものです。また、非関税障壁の撤廃と称して、食の安全や医療、医薬品分野、保険、共済事業など、あらゆる分野で仕組みが変えられ、国民の命と健康、暮らし、雇用が脅かされます。さらに、ISDS条項によって国の主権が侵害されるのであります。
こうした多国籍企業の利益を優先し国民生活を壊すTPPに対する国民の疑問や不安に、政府はまともに応えなかったではありませんか。
米国のトランプ次期大統領がTPP離脱を正式に表明し、TPPの発効が事実上不可能となりました。国民世論が慎重な対応を求めたのは当然です。
にもかかわらず、安倍総理は、会期延長によってTPP承認を押し通し、TPP並みのレベルの高いルールをいつでも締結する用意があるという日本の国家意思を示すと強弁しました。これは、今後の日米二国間協議などの場でアメリカから一層の譲歩を迫られ、国民生活と日本経済に深刻な打撃をもたらすものであり、売国の政治と言わなければなりません。
年金法案は、物価・賃金スライドとマクロ経済スライドの見直しによって際限なく年金が削減される、まさに年金カット法案であります。政府は将来世代の給付確保のためだと言いましたが、現役世代も将来の年金水準は低下し、若い世代ほど削減されるのであります。
ところが、高齢者の生活を圧迫し、若者の将来不安を拡大する年金カット法案は、衆院厚労委員会でわずか十九時間の審議で強行採決しました。参考人質疑を行ったその日に強行採決したことは、国民の声に耳をかさない安倍政権の強権姿勢を示すものにほかなりません。
カジノ解禁推進法案に至っては、延長国会になって審議入りを強行し、衆院内閣委員会で六時間にも満たない審議で採決を強行しました。
カジノ、賭博場を解禁するという刑法原則にかかわるこの法案は、自民、維新による議員立法の形をとりながら、実際には安倍政権の成長戦略に位置づけられていました。つまり、官邸の肝いりで進めながら、政府が責任ある答弁はしないという無責任きわまりないものであります。
国会法や規則、先例に基づく運営ルールさえ踏み破る強行採決は、国会の歴史に重大な汚点を残すものであり、必ずや国民の厳しい審判を受けざるを得ないことを厳しく指摘するものであります。
第二に、立憲主義を破壊し、憲法を無視する暴走政治を進める安倍政権の政治姿勢であります。
安倍政権は、昨年九月十九日、多くの国民の反対の声を押し切って、安保法制、戦争法を強行成立させました。
我が国が攻撃を受けてもいないのに日本が武力行使できるなどという法律は、戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を明記した憲法九条に違反することは明白ではありませんか。にもかかわらず、存立危機事態などと称して、集団的自衛権を容認し海外派兵を可能とすることは到底認められません。
そもそも、歴代政府が国会における論戦で積み重ねてきた、海外派兵はできない、集団的自衛権の行使はできないという政府見解は、一内閣で覆せるものではありません。いかに選挙で多数を得た政府であっても、その権力行使は憲法の範囲内に限られるという立憲主義を破壊する暴挙に広範な国民が声を上げ、憲法の平和主義を踏みにじった違憲立法に反対する運動が大きく発展したのは当然であります。
ところが、この声に耳を傾けるどころか、安倍政権は、安保法制、戦争法の本格的な実施への暴走を開始しました。
南スーダンPKOに派兵されている自衛隊に駆けつけ警護などの新任務を付与し、この任務遂行のための武器使用の権限を与えました。内戦が深刻化する南スーダンで自衛隊の任務を拡大するなら、最初の殺し、殺されるケースになりかねない危険があります。さらに重大なことは、南スーダン政府軍によって国連への攻撃が続発していることです。駆けつけ警護を行うなら、自衛隊が政府軍と交戦するという、憲法が禁止した武力行使に陥る危険があります。
自衛隊の新任務付与を直ちにやめ、南スーダンから速やかに撤退し、日本の貢献は非軍事の人道民生支援に切りかえるべきであります。
安倍総理が自民党の憲法改正草案を改憲のベースと位置づけ、改憲への動きを強めていることも重大です。
自民党の改憲草案は、国民に国防義務を課し、九条を変えて国防軍を明記して集団的自衛権の全面行使に踏み切り、九十七条を全文削除するなど、基本的人権の尊重や国民主権という基本的価値を否定するものであり、断固として許されるものではありません。
昨日、沖縄で米軍普天間基地所属のオスプレイが墜落事故を起こしました。多くの県民の反対の声を無視して配備を強行した日米政府の責任は極めて重大です。しかも、住民に被害を与えなかったことは感謝されるべきだという米軍司令官の発言は言語道断ではありませんか。
全てのオスプレイの全面撤去と、新たな配備計画の撤回、米軍北部訓練場におけるオスプレイパッド建設を即刻中止、撤去することを強く求めるものであります。
沖縄に負担軽減の名で新たな基地強化を押しつけることがそもそも間違いなのであります。辺野古新基地建設をやめ、危険な普天間基地は直ちに閉鎖し、無条件撤去することを強く要求するものであります。
第三に、この三年半の安倍政権の経済政策、アベノミクスの行き詰まりと破綻であります。
安倍総理は、世界で一番企業が活躍しやすい国を目指すと宣言し、まず大企業を応援し、大企業がもうけを上げれば、いずれは家計に回ってくると言い続けてきました。しかし、現実は、大企業は三年連続で史上最高の利益を上げましたが、労働者の実質賃金は三年のうちに年額で十七万五千円も減り、家計消費は実質十四カ月連続でマイナスとなっているではありませんか。
このもとで、格差と貧困が一層拡大し、社会と経済の危機を深刻にしています。
労働者の平均賃金は、一九九七年をピークに、年収で何と五十五万六千円も減少し、所得階層で見ても、増加しているのは年収二千万円以上のごく一部の高額所得者などであります。非正規雇用労働者の増大によって、低賃金労働者がふえているのであります。
貧困が広がり、子供の貧困率は一六・三%となり、貧困の連鎖が深刻な社会問題となっています。働きながら生活保護水準以下の収入しかないワーキングプア世帯は、就業世帯の九・七%にも上っているのであります。
ところが、安倍内閣は、格差と貧困に一層の拍車をかけようとしています。今国会で強行した年金削減にとどまらず、社会保障費の自然増削減路線のもと、医療費負担増、介護サービス取り上げ、生活保護切り下げなど、国民生活破壊に次々と手をつけようとしています。
もはや、安倍総理に日本経済のかじ取りを任せるわけにはいかないのであります。
今、求められているのは、格差と貧困を正すための改革です。そのためには、消費税一〇%増税をきっぱり断念し、富裕層と大企業への優遇税制を正し、応分の負担を求める、消費税に頼らない別の道へ転換することであります。経済政策を財界、大企業応援から国民の暮らし優先へと切りかえるべきです。
軍拡や大型開発中心の予算にメスを入れ、社会保障、教育、子育て支援など、格差と貧困の是正につながる予算をふやすことが必要です。
また、残業代ゼロ法案を撤回し、残業時間の法的規制、インターバル規制によって、過労死を生み出す長時間過密労働を解消する、真の働き方改革が必要です。
さらに重大なことは、安倍政権が原発を重要なベースロード電源と位置づけ、将来にわたって推進することを決め、原発再稼働を進めていることです。
東京電力福島第一原発事故から六年近くが経過しても、なお八万六千人もの人々が避難生活を強いられ、政府が進める避難指示解除と賠償の打ち切りが被害者に新たな苦しみを押しつけており、原発再稼働のために福島を切り捨てる政治に対する深い怒りが広がっています。破綻した原発再稼働路線を中止し、原発ゼロの日本に踏み出すことこそ求められています。
最後に、私が訴えたいのは、安倍政権の暴走政治をどうしてストップするかであります。
昨年、安保法制反対に立ち上がった市民の運動は、主権者は私だ、野党は共闘と声を上げ、憲法違反、立憲主義破壊の安倍暴走政治を打倒し、立憲野党の連合政権をつくる動きに発展してきました。
これに応え、野党四党は、五月十九日の党首会談で、戦争法、安保法制の廃止、立憲主義の回復、アベノミクスによる格差と貧困の拡大を是正する、TPP、沖縄問題などで国民の声に耳を傾けない強権政治を変える、憲法改悪を許さないという四点で一致して、参議院選挙において一人区の野党統一候補を実現し、続いて総選挙での野党共闘を加速化させる協議を進めています。
今こそ、立憲主義、民主主義、平和主義を貫く新しい政治、全ての国民の個人の尊厳を擁護する新しい政治を切り開くべきであります。そのために、野党と市民の共闘をさらに大きく発展させ、安倍政権を打倒し、自民党政治を終わらせ、野党連合政権をつくることを強く訴えるものであります。
以上、安倍内閣不信任決議に賛成の討論を終わります。(拍手)