食材偽装表示は命に係わる

2013年11月29日

穀田委員

日本共産党の穀田恵二です。

四人の参考人の方は、貴重な御意見を伺いまして、ありがとうございます。

小林参考人にお聞きします。

帝国ホテルは、CSRレポート二〇一三のコンプライアンスの項で、「「食の安全と信頼委員会」などの組織的な体制を機能させています。」と書いています。

お話を聞いていますと、きょうは、全部個々の問題だということで初めから来ているという感じがしますよね。ですから、日本のホテル協会の会長としてどうなのかという発言がないというのが特徴でしたね。私は、そういう逃げはいいのかなと率直に思います。

といいますのは、ではお聞きしたいんですけれども、帝国ホテルだって、七年前まで、フレッシュジュースと表記しながら、瞬間冷凍した非加熱加工品のストレートジュースを外部から購入し提供したとされている。そういうときに、なぜそのことが続いたのか、なぜそういったことについて発見できなかったのかということが問われると思うんですね。そこを一つ聞きたい。

それから二つ目に、対面という話で先ほど随分おっしゃっていました。牛脂を注入した加工肉なんかの場合をビーフステーキとして提供していたホテルも次々と発覚しています。北海道では、老舗中の老舗も同様の行為をしています。先ほど来、皆さんからお話があったように、アレルギーの問題が重要だということはお話がありました。

そこで、きょうお聞きしていかがですか。つまり、榎氏は、対面で確認では不十分ではないかとおっしゃっていました。それから立石さんは、みずからのJAの関係で、二十幾つのレストランではそのことに心を砕いているとおっしゃっていました。その二つのお話との関係で、あなた方がやっておられるやり方でいいだろうかということを二つ目にお聞きしたい。

三つ目に、立石さんは、きょう、根拠書類を保存することが極めて大事だとおっしゃっていました。日本ホテル協会としてやられるおつもりはあるのか、それとも、少なくとも今帝国ホテルでやっているから心配ないよというのか、その辺をお聞きしたいと思います。


小林参考人

まず、オレンジジュースの件からお答えしたいと思いますが、報道されましたとおり、七年前まで、アメリカでスクイーズされたものを瞬間冷凍したものがパックされたものを購入して提供しておりました。

これは、その時点ではフレッシュと表示してもいいという判断でしていたわけでありますが、その後、仕入れ業者から、どういうわけか、それを加熱したものに商品を変えないか、変えてもらえないかという御要望があったので、それは、私どもの判断としては、加熱していないのでフレッシュだというふうに判断して使っていたわけでありますが、これを加熱したということになりますと、これはフレッシュとは言えないという判断をもって、その場でやめたという報道をさせていただきました。フレッシュオレンジジュースに関しましては、経過的にはそういうことでございます。

あと、アレルゲンの問題に関しましては、先ほど来、いろいろ参考人の方々の御意見も伺っておりますけれども、私どもとしては、今どうやっているかという話もさせていただきました。これは、今後、法規制にかかってくるのかどうか、その辺の流れを見た上で、私どもはそれに従うというふうに申し上げたいと思います。

現在のところは、メニューを伺うときに確認するということで、今までのところは問題なく過ぎているというふうに判断しております。


山本委員長

あと、書類の保存。伝票保存、保存について。


小林参考人

七年間やっております。


山本委員長

では、もう一度、穀田君。


穀田委員

根拠書類を保存したらどうだという立石さんから提起があったけれども、日本ホテル協会としては、つまり、法規制という問題じゃないんですよ、わかりますか。少なくとも、日本と世界に名立たる協会として、自主的にまずそこからぐらいはできるだろう、金もかからないし、そういう伝票を保存することなどできるよねと言っているわけですよね。それはいけるんですね。


小林参考人

検討してまいりたいと思います。


穀田委員

何やら政府みたいな話を聞いて、ちょっとがっくりしちゃった。委員長も笑わざるを得ない。

私は、個々のホテルというのは、本当にそうかと思うんですよね。例えば、二百何ぼあるというホテルの一や二がやっているというなら、それは個々のホテルでしょう。私は、別にきょう詰めるつもりじゃないんです。それは別の機会にやるべきであって、きょうは参考人として来ていただいて、事実をお話しいただいている。

だから、個々ではない。きょうの新聞を見ますと、主要ホテル四割で行われている。主要ホテルでつくる日本ホテル協会、二百四十七ホテルに限ると、偽装していたホテルは約四割にもなる、偽装が広く常態化していたことが浮き彫りになった、こう書いている。

四割が個々とは、そういう話では、この問題について抜本的な、本当に力を入れたやり方になるだろうかと私は思います。

しかも、先ほど、組織的な体制を機能させていますということを誇るのであれば、それはやはりそういうことについて率先してやることが必要だ。だから、法規制にかかってくるがではないんです。命にかかわることについて先進的な事例があるじゃないかということを学ぶことが必要かなと思います。

これは意見です。どうせ、個々の意見ですからお聞きしますというようなことを言われたりなんかして、あれですから。

実は、北海道新聞が、この問題のホテル側の一連の会見を聞いていて、こう言っているんですね。「会見を聞いて驚くのは、不正根絶への真摯な姿勢がほとんど感じられないことだ。」と指摘しています。これはやはり重く受けとめるべきだろうなと私は思います。

次に、榎参考人と根岸哲参考人に聞きます。

事業者の自主的なコンプライアンスの取り組みが重要だと思います。しかし、この問題の事態というのは、結局のところ、消費者軽視で企業の利益優先の考え方があるのではないか、この点をお二人にお聞きしたいと思うんです。

私は、先ほど誰かが言っていましたけれども、大学の話を先生がされていましたけれども、根岸参考人の大学におけるゼミ研究の発表では、「食の安全・安心 消費者は安全と安心を求めている」というテーマでやっておられまして、不祥事を起こした企業に共通する原因として、まず一つ目は、利益の追求をする余り、安全、安心に対する意識が低下したとゼミ発表されています。

このことも本当に、私は、なかなか鋭い指摘を学生の方々はされているなということを改めて思ったのですが、そのことを踏まえて御意見を賜れればと思います。


根岸参考人

ホテルのケースでは、新聞の報道によりますと、一番最初にそういう問題が生じたホテルでは、第三者調査委員会というのを開催するということであります。それで、自主的な改善というのは、別にこれをやったから完全かどうかは別ですけれども、やはり外部の目の人が調査をして、一体どういうところに原因があったかということをしっかり調べる、そして、今後の発生の防止につなげるということが非常に重要だと思います。

私自身は、表示というのは、同じことを繰り返して申しわけありませんが、消費者の目線に立ったって、何でもかんでも正確にやればいいという問題ではないので、やはり重要な点をわかりやすくやるということが非常に重要でありまして、したがって、かなりの部分は業界等の自主規制に委ねられるものだと思います。

そこで、非常に重要なことでありますけれども、今、あるホテルでは、そのような調査委員会が開催されているということであります。やはりそれを他のホテルの方々も参考にしていただきたいと私は思います。

それは、第三者委員会の報告書というのは、普通はよく公開されますので、私は景表法ももちろんある程度専門にしておりますけれども、独禁法というのを専門にいたしておりまして、例えばカルテル、談合があると、やはりその企業が再発防止ということで、弁護士の方あるいは前に検察官であった方等々が、我々も入って第三者委員会を開いて、そして十分調査して、今後の、何でそれが起こったかということを外部の目でしっかり調査していただくということが必要だと思います。そのような調査が行われるということですから、それを私は期待しております。

ですから、多分、私にはわかりませんけれども、それをホテル全体の一つのモデルとして参考に使っていただければ、非常に有効ではないかというふうに考えております。


榎参考人

私は、もう既に意見陳述で述べましたけれども、この問題は個々の事業体の問題ではないというふうに当初から申し上げています。

つまり、ホテル業界全体に、あるいは旅館業も含めて、あるいはレストランも含めてですけれども、本当に構造的な問題がそこにあるんだろう。したがって、業界団体のリーダーシップというのは、これは要る、改善をするために要る。また、消費者団体として、私ども、いろいろな業界団体と、例えば生命保険の約款に関してなどの問題を考えるときに、業界団体と交渉してきました。やはり今それぞれの業界団体がリーダーシップをとって、そして一定の、消費者との対談をしながら、よりよい方向に進めていく、そういう方向にあると思います。

そういう意味では、個々の問題は個々の問題で徹底的に究明をしていただきながら、やはり業界団体全体としてぜひリーダーシップをとっていただきたいというふうに消費者団体としては思う次第でございます。


穀田委員

利益優先の話をちょっと聞きたかったんですが、それはそれとして、いいです、もう時間もありませんから。

それでは、立石参考人に聞きたいんですけれども、私は、この間の事態を見ていて、消費者庁というのは一体何していたんやということを少し聞きたいと思うんですね。

二〇〇〇年ころから食品偽装という問題はありまして、〇七年には不二家とか、名前を出して失礼ですけれども、赤福とか、それから石屋製菓とか、食品メーカー等による食品の偽装が社会問題になりました。そういう中で、ある意味でこういうものを契機に、従来からの、先ほど陳述がありましたように、一元化を図るということでの創設がされたわけですよね。

ですから、私は、頂戴したいろいろな資料、調査室からもいただきましたけれども、同じ期間に消費者庁は何度か外食産業のメニュー表示のあり方を議論し、ガイドラインを作成しているんですよね。同じく総菜・弁当の情報提供ガイドラインも作成しているんですよね。なぜこれらが有効に作用しなかったのか。どうも消費者庁が国民の期待に応えられていないという感じが率直にするんですよね。

原因はどこにあると思われますか、立石さん。


立石参考人

まさに、本来、消費者基本計画に書かれている司令塔の役割を果たしているかという点であります。

これはもう長い歴史的経過の中で、JAS法の昭和二十五年から始まって、さまざまなルールを農林水産省を中心に決めてこられた、厚生労働省を中心に食品衛生法のルールを決められたという、この長い枠の中で身動きがとれないというのが私の正直な印象です。

ですから、規制をかけること、本来、問題が起きて初めて、我が国は、先ほどの米トレーサビリティー法だとか、BSEの問題で牛トレーサビリティー法ができたわけですけれども、やはりああいう大きな問題が起きて初めて動くわけですけれども、小さい問題というのかどうかわかりませんが、さまざまな問題が起きたときに、本当にこれは規制が必要なのかどうかとかいうときに、どこを見てやるかなんですね。事業者団体の方ばかり見てやってきている今までの仕組みがどうしても前に進まない。

ですから、この間、私がやってきたさまざまな議論は、全て対立の構造をわざとつくっているんじゃないかと思われるような中身で決められてきている。そうすると、決定的に新しいことができない、こういう構図になっているんじゃないかというふうに感じております。


穀田委員

では、最後ですので、まとめて、立石参考人、榎両参考人に、景表法の体制強化と実効性あるものにするためにどないしたらいいかということについて聞きたいと思うんです。

先ほど榎さんが、食品表示法の執行に当たっては体制整備が前提だということで言っていました。

私は、一つは、消費者庁の監視執行体制だけではなくて、行政との連携、地方公共団体や保健所だとか生活センターなど、横断的な連携が必要だと思っているんですが、どうなっているかということが一つ。

それから二つ目に、皆さんからも意見が出ていましたけれども、景表法で各都道府県知事に措置命令の権限を付与することをやはり消費者庁も含めて検討すべきだと私は思うんですけれども、同時に、そうはいったって、都道府県によって監視執行体制に格差がある、その際の課題は何か。例えば、食品衛生監視員などを見ていますと、専従しているというのは全国でたった千二百七十九人にしかすぎないんですよね。こんなんでできるわけがないと思っています。

三つ目に、先ほど、外食メニューについてもいろいろな意見がありました。私は、JAS法の食品基準の適用範囲の拡大、食品、食材ですね、トレーサビリティーの必要性は明白だと思うんですね。他方、トレーサビリティーによる規制について、中小企業等も含めた業者側にとっての負担などの課題は何かということについてお聞きしたい。

最後に、まとめてですから、私は、この食品偽装の蔓延という事態の背景に、自給率低下の問題があるんじゃないかということを考えています。表示規制がありながら、広範囲に偽装表示がされていた。偽装表示を行う動機は、私は先ほど主張しましたけれども、やはり、もうけにあるわけですよね。

そうしますと、輸入農水産物と国産農水産物とには内外の価格差があって、輸入農水産物を国内産として表示すれば、確実に利益が得られる。もう一つ背景にあるのが、食料自給率の低下だと思うんですね。国産農水産物を確保することが難しくなって、欠品を避けるために輸入に手を出すということになるんじゃないかということなので、食料自給率やTPPとの関係について、広い立場からの御意見を最後にお伺いしたい。少し、たくさん言いましたけれども、よろしく。


立石参考人

まず、景表法では非常に限界があるというふうに、私は、もちろんあった方がいいんですけれども、やはり裁量権の幅が広いということを先ほど先生もおっしゃられたとおり、私ども事業者としても感じるのは、都府県の格差ですね。ですから、考え方も少し違います。そういったところが本当に平等なバランスのとれた施策ができるのかというのは少しあります。

それから、自給率の関係で申し上げますと、まさにここは重要なポイントだと思っています。選びたくとも選べないというところですね。

よく私はニンニクの話をするんですけれども、青森のニンニクと中国のニンニクが今並べて売られていますが、値段は全然圧倒的に中国産が安いわけです。品質ももう、同じ品種を持っていかれて栽培指導までされていますから、そう変わらないかもしれません。だけれども、選んでいただける消費者がいるということで青森のニンニクは成り立っているわけです。

ですから、実は、加工食品はそういったことがないわけですね。選びたくとも選べない、書かれていないわけですから。それがまさに、でも国産だというふうに誤認を与えているものがさらに多くなる。こういったところが、まさに食料自給率というところで考えると、ここのところにメスを入れない限り、要は、日本の消費者、高いという、このコストの高い食品、我々の国内産でつくるものについて選んでいただける消費者がいなければ日本の農業は成り立たないということをまず強く私の方からは最後にお願いしたいと思っています。


榎参考人

時間がありませんので、いわゆる地方自治体が、当然、消費者庁と一緒になって、この問題、食の問題は命にかかわる問題ですから、真っ先にやはり対応しなきゃいけないと思うんです。そのときに、この分野では、各都道府県あるいは市町村の消費生活センターが前面に出てこなければいけないというふうに思っています。

しかし、御承知のように、消費生活センターの職員さんというのは、いわゆる専任の職員さんがどんどん、そうでなくても減らされてきているわけですね。定時職員さんでお昼休みもまともにとれないような、あるいは、お昼休みをとるときは相談業務の電話はストップして、それを国民生活センターの方で代替している、そういう実情もある。

どんどんその点は切り捨てられてきていますので、ここをまず、例えば消費生活センターの人の問題、同時に、こういった職員に関する専門的な学習、研修もしていかなければいけません。それから、保健所の方とも協力しなきゃいけません。それから、けさの新聞で出ていましたけれども、いわゆる食品Gメンさん、農林水産省の職員さんとも共同で、まさにそれは省庁の枠を超えた形で対応しなければいけませんので、その点は大いに検討していただく必要があろうかと思います。

我が国の農林水産業は、本来はポテンシャルが実はあるんです。ポテンシャルがあるんです。農地にしても、まだまだ耕せる、食料をつくれる、世界に誇れる優秀な食料品をつくれるキャパシティーがあるにもかかわらずつくれない、こういう現状もあります。それから、若い人たちが農業や漁業に大学を卒業してすぐつきたいといっても、まだそれがすぐ実現できない、そういう法的な問題も実はそのバックにはあるわけでございます。

本当に、先ほど申し上げましたように、私は、トータルとしては世界各国のいろいろな食品が入ってきて豊かになった反面、足元の、それを提供してくれるべき日本の農林漁業がますます弱体化していること、これは、表示の問題と同時に、そこをどうするんだということも考えないと、この問題は解決していかないというふうに思っております。よろしくお願いします。


穀田委員

ありがとうございました。