「UR赤字でない」国交省認める

2012年07月27日

穀田委員

法案について質問します。

本法案は、都市機能の集約化、いわゆるコンパクトシティー化や公共交通機関の利用促進を通じて、住宅、都市、交通の低炭素化や省エネ化を図ろうとするものであるということについて、この点では当然のことであり、私どもは賛成します。

そこで、コンパクトシティー化を進めることで、自動車で郊外へ移動する機会が減ったり、さらに、公共交通機関の利用を促進すれば、全体として自動車利用が減り、地球温暖化防止にもつながる、高齢者などが徒歩圏内で生活できるというメリットも生まれる。問題は、この法律をつくることによってどれだけ実効性が確保できるかということであります。

まちづくりといえば、二〇〇六年につくったまちづくり三法によるコンパクトなまちづくり、歩いて暮らせるまちづくりがあります。今回の法案もコンパクトシティー化などを推進することとなるが、その実現性を確保するには、公共施設や大型施設の郊外立地などを抑制する、こういった点の一定の強制力が必要となると私は考えます。

その点で、まちづくり三法によるコンパクトシティーなどのまちづくりはどうなったのか、今回の法案でどれだけコンパクトシティー化が進むと考えているのか、お答えいただきたいと思います。


羽田国務大臣

都市機能が集約されたコンパクトなまちづくりを進める観点から、平成十八年に、都市計画法等を改正し、大規模集客施設の立地に当たって都市計画手続を経ることとする等の措置を講じたところであります。その結果、都市計画手続を経ることとされたエリアへの立地件数は減少している、こういうふうに考えております。

一方、都市の低炭素化などのまちづくりは、都市計画による土地利用規制だけではなくて、誘導施策とセットで推進することが重要と考えております。

このため、都市計画法等を適正に運用しつつ、民間等の諸活動を低炭素化へと向けるため、その投資活動にインセンティブを付与して誘導していくこととさせていただいております。


穀田委員

いい話をとんとんと二つほど言っていましたけれども、私、まちづくりというと、どうも、長年の自民党政権のもとで無秩序な開発が進む、その結果、郊外へのスプロール化が進むということなんかを目の当たりにしてまいりました。結局、そのため、自民党政権下でも、郊外立地の規制強化、今言ったような中心市街地活性化策など、コンパクトなまちづくりをさらに促進するために、今言った動きを進めてきたわけですね。

私は、現実を見ていて、さしてうまくいっていると思えないんですね。やはりその反省がないのがちょっと気になるなと。要するに、影の部分、負の部分といいますか、そういったことに対するちゃんとした見地がないとやはりうまくいかぬのじゃないかと私は率直に言って思います。

その上で、法案では、集約都市開発事業の対象物を、病院や福祉施設、マンション等、多数の方が利用する建築物として規定していることから、同事業を実施する民間事業者は、結局のところ、大手不動産、それから大手ディベロッパーなどが中心になることが予想されます。そのため、実際の事業実施においては、大規模再開発事業となるケースが考えられる。その点はあり得るのかということが一つ。

それから、これまでも、大規模の開発事業というのは、大手開発業者の言いなりで、住民の意向を軽視するなど、住民参加が徹底されない事例が多くありました。この点の懸念についてはどのような対策を考えておられるのか、お示しいただきたい。


羽田国務大臣

集約都市開発事業は、都市の拠点となる区域に病院、福祉施設、共同住宅などのさまざまな都市機能を集約する目的で、民間事業者が市町村長の認定を受け、多数の者が利用する建築物などを整備する事業であります。

事業の認定に当たっては、整備される建築物の省エネルギー性能や都市機能の集約によるCO2の排出量削減効果などについて判断することとさせていただいております。

したがいまして、事業規模ではなくて省エネルギー及び都市機能の集約という観点に着目して都市の低炭素化を図る事業であることから、大規模開発も排除されるものではないというふうに考えております。


穀田委員

要するに、大規模開発事業を排除するものではないと。

問題は、今言いましたけれども、結局、二つ目の住民参加という問題なんですよね。省の説明でも、結局のところ、規模の大小と違って低炭素かどうかという話に着目するという。これだけと言ったら叱られちゃうけれども、そういうものだけでは進まない問題がある。それは、無秩序な開発が進められてきたこの間の一連の経過があって、現場では相変わらず住民の意思を反映しない実態が見受けられる。ですから、低炭素の誘導も必要だけれども、住民参加がポイントだ、見る角度がもう一つ要るんじゃないかということを私は言っているわけですよ。その点は答えはなかったけれども、そこは強調しておきたいと思います。

それと、低炭素住宅という話が先ほどもしきりにありました。しかし、住宅取得が可能な所得以上の住民が結果としては対象になるわけですよね。今、どれほどあるかという問題があります。民間事業者が主導する開発事業であれば、低所得者を対象としないまちづくりになる可能性もある。先ほど規模の話はありました。私は、中身の問題でそういう点に懸念がある。したがって、低家賃の民間賃貸などは存在が困難になるという懸念もある。

したがって、低炭素まちづくり計画においては、低所得者や高齢者、障害者の居住を可能とする施策もきちんと盛り込むべきではないかと思うが、いかがでしょうか。


羽田国務大臣

低炭素まちづくり計画は、まちづくりの主体となる市町村が創意工夫を生かし、地域の実情に応じて策定するものであります。

このために、必要に応じて、公的住宅の省エネ水準を高めることや、公営住宅と保育所や高齢者施設などの合築を進めることなどについても、低炭素まちづくり計画に位置づけることは可能でございます。

このように、住宅セーフティーネット施策とも連携をとりながら都市の低炭素化を図ることは重要と考えさせていただいております。


穀田委員

そう言うと必ず、セーフティーネットと、新しくつけ加えるわけじゃないけれども言うんですが、私は、それだったら、例えば民間の賃貸家主にそれこそ低炭素のリフォーム支援を行うことなどを具体化するという具体的な方策がなければそれはなかなかしんどいでっせということを一言言っておきますし、そういうこともきちんとやるべきだということを提案しておきたいと思います。

次に、URの問題について私も質問します。

やはり、まちづくりということを考えると、結局のところ、住民の住まいということを抜きには考えられない。とりわけ高齢者や低所得者等の住宅の確保については、憲法二十五条の生存権規定や、公営住宅法にこう書いています。「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、」「住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸すること」ということを書いていて、国や地方自治体に義務づけています。

そこで、最近五年間、二〇〇五年から一〇年の公営住宅、UR住宅、公社住宅の管理戸数の推移、応募倍率はどうなっているか、報告いただきたいと思います。


川本政府参考人

お答えを申し上げます。

二〇〇五年と二〇一〇年の二点ということでございます。

まず、公営住宅につきましては、二〇〇五年時点での管理戸数が二百十九万千八百七十五戸、二〇一〇年が二百十七万六百四十九戸、UR賃貸住宅につきましては、二〇〇五年が七十六万七千三百六十二戸、二〇一〇年が七十六万百五十一戸、公社住宅につきましては、二〇〇五年が十八万三千三百二十九戸、二〇一〇年が十七万九千二百九十八戸でございます。

応募倍率につきましては地域ごとにかなり差がございますが、公営住宅につきましては、全国的に見まして、二〇〇五年が九・九倍、二〇一〇年が八・九倍という数字となっております。


穀田委員

今報告がありましたように、最近五年間を見ますと、公営住宅、UR住宅の報告がありましたが、公営は二万一千余り、URが七千二百余、公社は四千戸減ということで、合計三万二千戸が減っているわけですよね。

それで、地域別に見ると、大阪が多くて八千二百戸、兵庫県が五千七百戸、愛知県が二千六百戸というふうにそれぞれ削減されていて、今、応募倍率は、全体はありましたけれども、ちょっと問題なのは、公営住宅の応募倍率が高い大都市で、今言った住宅の戸数が減っている。倍率でいいますと、東京都の二十九・八倍を筆頭に、大阪府は十七・六倍、千葉は十三・五倍、神奈川は十三・二倍など、つまり、高齢化と貧困化が進む中で入居応募が増加しているわけであります。この実態をまず押さえなくちゃならぬ。

そこで、やはり、公営住宅を初め公的賃貸住宅の提供戸数が減っていること自体が私は問題だと考えています。これは国や地方自治体の責任放棄になると私は考えているんですね。

公営住宅を所管する地方自治体が、財政難を理由に新規建設をやめたり供給を抑制したりしている。それに対して国交省が何にも言わない。それどころか、所管するUR、都市再生機構についても、二〇〇七年に、十年間で約八万戸の既存住宅を削減するというUR賃貸住宅ストック再生・再編方針を策定して推進しています。そうなれば、当然これは減るわけですよね。

だから、希望者や対象者がふえているにもかかわらずこういう公的賃貸住宅の供給が減っていること自体が問題だというふうに大臣は思いませんか。


羽田国務大臣

UR賃貸住宅ストック再生・再編方針は、少子高齢化、人口、世帯減少社会の到来といった社会構造の変化や、市場ニーズとのミスマッチによる需要の低下など事業環境の変化に対応しつつ、URの経営の健全性を確保する観点から、地域及び団地ごとの特性に応じて再生、再編を行っていくこととしております。

その中では、入居者の方々の高齢化、低所得化が進んでいるという現状や、住宅セーフティーネットとしての役割を考慮し、居住者の居住の安定の確保に十分配慮しながら事業を進めていきたいというふうに考えております。


穀田委員

先ほど来、最後は居住の安定と言うんだけれども、方針の決定自体が、減らすということを決めていることが問題があるんですよね。

先ほど中塚副大臣からお話ありましたように、このあり方の基本的な方向性については、夏と言うから、まあ、八月中なんでしょう。会長の会見は、八月中には大体そういう方向を出したいと言っているから、そういうふうに見ていいんですね。


中塚副大臣

夏までに結論を得るということになっております。


穀田委員

夏までにと。会長自身は八月中にと言っていますから、そういうことなんでしょう。夏というのはそういうことで理解する。

そこで、三月に、「都市再生機構の在り方の基本的な方向性」という文書の中で、「政策的な対応が必要な分野と、収益改善が期待できる分野を区分」としています。

まずここで聞きたいんですけれども、この「政策的な対応が必要な分野」というのはどういう分野かというのが一つ。

時間がないので、まとめて聞きますから。

二つ目に、「政策的な対応が必要な分野については、これに必要なコストを明確にしつつ、国や地方公共団体等の関係者との役割分担を踏まえ、機構が担うべき内容を整理する」としていますが、では、URの七十六万戸の賃貸住宅についていえばどういうことを指すのか。

三つ目、「実態に即した居住の安定の確保」、これは一貫して言っているわけですけれども、「低所得者や高齢者をはじめとした居住者の居住の安定をどのように図っていくか、その実態を踏まえて丁寧に検討。」としているけれども、その検討内容はどんなふうになっているのかということ。

以上、簡潔にお答えいただきたい。


中塚副大臣

まず、政策的に対応が必要な分野についてでありますけれども、低所得者の方やあるいは高齢者を初めとした皆さん方の居住の安定を図るということでございます。

今、都市再生機構が抱えているいろいろな課題がございます。高齢化、人口減少、それと、多額の債務を今後どのように削減し、返済していくのかといった問題がございます。そのために、今申し上げた機構の役割、政策的に対応が必要な分野もございます。他方、企業的な経営手法を活用した事業運営によって収益が改善できる分野というのもございます。そういった機能を明確にした上で、さっき申し上げた、課題を解決するためにどのような制度と組織が望ましいのかということについて今議論をしているということであります。


穀田委員

組織のあり方論と違って、要するに、あなた方は、低所得者や高齢者を初めとした居住者の居住の安定をどのように図っていくかということを踏まえて、実態を踏まえて丁寧に検討すると言っているわけじゃないですか。その中身がさっぱり聞こえてけえへんわけやね、副大臣の話だと。

だから、私は、本来、公的立場から運営する、住んでいる人たちの、住民の生活に配慮することを、いろいろな形はあったとしても引き継ぐということが基本でなければならないと思っているんですね。

すぐ多額の債務というふうに必ず言うんだけれども、では聞きますけれども、機構は現時点で十四兆円に上る多額の負債を抱えておりと、必ずこう言うんですよね。そして、業務運営の透明性や効率性の向上を図るなど、経営改善の抜本的な取り組みが必要としているわけだけれども、では、現時点で機構は債務超過に陥っているんですか、その一点だけちょっと。


川本政府参考人

お答えを申し上げます。

平成二十三年度末時点での機構の財務ですが、資産が約十四兆七千億円、負債が約十三兆九千億円でございますので、資産が負債を上回っており、債務超過ではございません。

ただ、繰越欠損金が別途二千六百億円あるということと、負債の規模を考えると、金利変動によるリスクを抱えていることは事実だと思っております。


穀田委員

要するに、債務超過に陥っていないということははっきりしているということなんですよ。

もともとこの負債というのは、今すぐ返済することになっていないんですよ。借り入れ契約の内容自身が、長期の返済期限のもとでこつこつ返していけばいいという内容のはずなんです。したがって、私は、多額の負債を理由に賃貸住宅を削減、再編したり、大幅に縮減するという整理合理化計画の根本を直さなければならぬと思っています。

そこでもう一つ、収益改善が期待できる分野は、賃貸住宅経営に限っていえば、高額家賃の住宅を指すと考えていいのか。そうすると、家賃が十五万円を超えるような高額家賃住宅は民間に売却あるいは民営化し、低所得者、高齢者が多く住む賃貸住宅についてはその実態に即して公営住宅にするということも一つの方法であるわけだけれども、そのようなことも視野に入れているということなのか。その点についてはどうなんですか。


中塚副大臣

まず、先ほども御答弁しましたが、大前提として、居住の安定ということは最優先留意事項であります。その上で、高額賃貸物件等について先生からのお尋ねですけれども、まさに今、そのための手法はどういったものがあるかということを検討しておるわけであります。

私自身、調査会に出席をいたしておりますが、それこそ、これから企業的な手法で収益がたくさん期待できるようなところについては、それは、家賃が幾ら以上とか以下とかいうのはこれからいろいろ議論はしていかなきゃいかぬと思うんですけれども、そういった部分については企業的な手法を導入してはいかがかと。

そして、先ほどお尋ねのありました政策的対応の必要な部分については、これは今までどおりしっかりとやっていかなきゃいかぬだろう。

そういった議論が行われているということだけ申し上げておきます。


穀田委員

それでは余り方向性がはっきりしないんですよね。

私は、ここの問題の根本に、確かに口を開けば居住の安定を最優先とは言うんですけれども、では、閣議決定であるところのそういう分割・再編、スリム化、会社化という方針があって、中塚副大臣は必ずそれが大前提だと言うんだけれども、その方針の前提になっている方向性については閣議決定なんですよ、そうはいっても。だから、閣議決定の中にある分割・再編、スリム化、そして再編方針での減らしていくという根本がやはり今問題になっているということをあえて言わせていただきたいと思います。

それで、公団自治協が要望書を提出しています。超党派の国会議員も、きょうも要請するし、この間も要請しています。

内容は、一、UR賃貸は、特殊会社化するのではなく、今後とも政府が直接関与する公共住宅として継続してください。二、UR賃貸は住宅セーフティーネット法で位置づけられており、都市機構法附帯決議などこれまでの国会決議を十分踏まえて、居住者の居住の安定策を講じてください。三、公共住宅の役割を明確にするとともに、民間、公共住宅の別なく最低限度の居住保障に関する住宅政策を確立してください。こういう要望が出されている。

私は、これは、今お話がありましたけれども、ごく当たり前のことを言っていると。そして、居住の安定が最優先ということであれば、こういう声に応える必要があるんじゃないかと思うんですが、大臣の見解をお聞きしたい。


羽田国務大臣

先ほどとお答えは一緒になってしまうわけでありますけれども、要請をいただいていることは承知しております。

UR賃貸住宅は、住宅セーフティーネット法において、住宅セーフティーネットの一翼を担う公的賃貸住宅として位置づけられており、その役割を果たしていくことが必要であると考えております。

その上で、本年一月に閣議決定された独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針においても、居住者の居住の安定の維持等の必要性を踏まえることが定められていることから、国土交通省といたしましても、内閣府に対して、居住者の居住の安定の確保の必要性を十分踏まえるように求めているところであります。


穀田委員

何度も言いますように、居住の安定というのは最低限の話なんですよ。それは、誰だって今住んでいるところについて安定するのは当たり前なんですよ。

その点では、先ほどもお話がありましたけれども、現実にどんな事態が起こっているか。低所得者がふえている、そして高年齢化が進んでいる。こういうもとで、本当にこの方針をつくるとすれば、わざわざ今大臣は、住宅セーフティーネット法で位置づけられている話もしたわけですよ。この位置づけられている内容をちゃんと実行してください、こう言っているわけなんです。何も違う話をしようというんじゃないんですよ。そこで位置づけられているんやないのと。しかも、やはり特殊会社化するとすれば、そういう方向性のいわば土台を突き崩すことになる。だから、やめておけとみんな言っているわけじゃないですか。

しかも、そのことについて根拠となっている債務が多いという話も、それは別に債務超過じゃないじゃないか、もともと金を借りるときも、順番に返していったらいいという約束があったじゃないかと。

そういう諸般の事情から見ておかしいじゃないかと言っているわけです。最後に一言。


羽田国務大臣

言われている趣旨はよく理解したというふうに思います。


穀田委員

終わります。