京都市会議員団「民泊新法」で要望書提出、交渉

2017年09月12日

 

11日、日本共産党京都市会議員団が上京し、いわゆる「民泊新法」=「住宅宿泊事業法に係わる要望書」を国土交通省と厚生労働省に提出し、申し入れました。

 

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要請行動には、京都から、ちさか拓晃衆院京都2区予定候補、くらた共子京都市議団民泊問題プロジェクト責任者をはじめ、井上けんじ、加藤あい、西野さち子、やまね智史、平井良人、山本陽子各市会議員が出席、国会からは倉林明子、山添拓両参院議員と私が出席しました。

 

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交渉は、極めて充実した内容になりました。

国土交通省、厚労省の両省は政省令を具体化する作業に入っており、民泊に関する京都の深刻な実態が浮き彫りに出来たことです。さらに、自治体が決める条例によって、一定の規制が可能であること、マンションにおける管理規約と「民泊禁止」意思決定問題、京都などの木造密集地における防火対策強化の必要性が明確になったことなど議論が深まりました。

両省庁からも「深刻な実態が分かった」との感想が述べられました。

 

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以下、要望書全文です。

 

住宅宿泊事業法に係わる要望書

2017年9月11日

日本共産党京都市会議員団

団長   山中 渡

近年、京都市では簡易宿所が急増し、この5年で360施設(2012)から1766施設(2017.7)へ5倍に増えています。一方で、旅館業の許可を取得していない違法「民泊」が横行し、その取り締まりは急務となっています。昨年5月、京都市が行った「民泊実態調査」では、調査対象2702件のうち所在地が確認できた施設は1260件、旅館業法上の許可施設は189件でわずか7%という深刻な実態が明らかになりました。現在、京都市は民間業者に調査を委託し、情報を集めていますが、2016年度の推計で110万人が違法「民泊」に宿泊し、さらに違法「民泊」が激増しているもとで、対策が追いついていません。

そのような中、住民にとって違法「民泊」で生活の安全が脅かされているのみならず、旅館業の許可を得ている簡易宿所でも「帳場といっても段ボールでかたちだけになっている」「対面でのカギの受け渡しがされていない」など、生活環境を害される事態が生じています。

京都では、宿泊者が住宅密集地の中にある「民泊」を訪れるために、夜中でもキャリーバックをひいて細街路に足を踏み入れることで「夜、眠れない」との苦情があります。また、事業系ゴミとして処理されなければならないゴミが放置されていたり、害虫の発生など衛生上の問題も生じています。

とりわけ、旧市街地の木造住宅密集地域では、住民が互いに生活音を抑えるなど、気を遣いあって暮らしていますが、連棟家屋での「民泊」にいたっては、入れ替わる宿泊客が夜中まで大声で騒ぎ、隣人が注意しようにも言葉が通じず、

事業者に連絡もとれない状況の中で、隣家の住人が健康を害する事態となっています。また、路地奥の「民泊」については、ひとたび火事がおこれば、宿泊者はもとより周辺住民の命も守れないという防災上の重大な問題があり、住民からは「木の文化で暮らすことへの配慮をしてほしい」と不安が強まっています。ある地域では、路地に並ぶ8軒の家屋のうち7軒が「民泊」となり、住民からは「地域を守れない」「住み続けられない」という声が上がっています。

また、事業主及び、従業員不在で行われている宿泊業の問題として、犯罪や感染症が発生した際の対応が遅れることが想定されることも重大です。こうした問題があるにもかかわらず、周辺住民への説明や住民合意のないままに建設や営業が行われ、トラブルのもととなっています。

マンションなどの集合住宅では管理規約で「民泊」を制限することが求められていますが、法令上可能な宿泊業を規約で本当に制限できるのか、さらには、「そもそも規約の改定が法施行前に間に合わなければ「民泊」を規制できないのでは」と困惑が広がっています。

以上、「民泊」をめぐる様々な問題・課題が指摘されている中で、先般、国会において制定された住宅宿泊事業法は、いま現在野放しになっている違法「民泊」を合法化するためのものです。旅館業法上、ホテル旅館の営業が認められていない住居専用地域での営業を認めるものであり、「住宅での宿泊業」が解禁されることになります。本法の対象が「住宅」であることから、一般に、住居専用地域でも設置運営が可能と言われていますが、「住宅」とは言っても「宿泊料を受けて…人を宿泊させる事業」であって、旅館業法上の事業と何ら違いは無いと言えます。家主不在型で管理業者が管理している投資的な物件は、旅館業の許可を受けて事業を行うのが筋であり、住居専用地域では設置不可とすべきと考えます。

法が宿泊業の促進に偏るあまり、住民の安全や住環境を守る事を怠れば、住民がそこに住み続けられない、地域が守れないということになってしまいます。

よって、国におかれては上記の課題に対応する規制を行えるよう、以下の点を検討していただき、政省令の規定をはじめ、法の運用に取り入れていただく事を強く要望するものです。

 

1,違法「民泊」の実態把握と取り締まりの抜本的強化をはかること。

業務停止命令(16条)や罰則規定(6章)等も設けられているが、行政上の義務履行の確保について、国・自治体において、その体制の充実等、具体化すること。

 

2、住宅宿泊事業法を最低基準法として位置付け、住民の生活環境を守る立場から、各自治体の条例における「上乗せ」「横出し」等の規定を制約せず、自治体の条例制定権を最大限尊重すること。

 

3、営業日数について、「180日を超えない」とは、例えば1泊2日の場合は2日、2泊3日の場合は3日等と数えて計算することを前提に、自治体で独自に決める日数に干渉せず尊重すること(2条)。施行後、市長の「必要があると認めるとき」「違反したとき」との判断に干渉・制約せず、裁量を幅広く保障すること(15条~17条)。

 

4、届出書に記載すべき事項(3条)や衛生確保措置(5条)、安全確保措置(6条)、周辺地域の生活環境への悪影響の防止措置(9条)等については、省令に自治体が求める事項を明記し、その裁量を幅広く保障すること。特に安全確保措置については、消防関連法令の遵守を徹底し、防火には万全を期すべしと説明すべきことを明確にすること。特に説明しても守られない場合には、宿泊・利用を拒否し得ることも、説明すべき事項として定めること。

 

5、家主不在となっても委託しなくてもいい場合は、同一敷地での離れ等本拠住宅と届出住宅が一体的な場合のみにするなど、「除く」場合を限定し例外とすること。家主不在の場合、管理業者の24時間常駐を義務付けること(11条)。標識については、最低限、住所・氏名・電話番号を明記し、委託の場合は管理業者についても同様の項目を併記すること(13条)。

 

6、18条の「必要であると認められる「区域」や「期間」の設定について」、自治体の条例制定権を最大限尊重し、干渉・制約しないこと。特に「区域」については、住宅密集地や路地奥、住居専用地域等の禁止等、「政令で定める基準の範囲」は自治体の裁量を最大限尊重した基準とすること。

 

7、分譲・賃貸マンションやアパートなどの集合住宅について

京都市長は、2016年8月31日の定例記者会見で「住居専用地域において、マンションの一室を民泊にすることは認めない」と明言している。条例で「マンション民泊は認めない」と書き込めば禁止できるのか。分譲マンションについては、管理組合規約や総会決議等で、「民泊は認める」という決定がなければ民泊は認められないという認識でいいのか。また、部屋毎に各所有者が賃貸している不在家主型投資マンションについては、全面禁止とすべきである。

 

8、無届け営業など違法宿泊施設の仲介等、悪徳仲介業者については登録・更新を拒否するなど、断固たる措置をとること(49条)。

以上