14日、外務委員会・RCEP協定をただす。共産党を除く多数で可決。

2021年04月16日

 

14日に開かれた外務委員会では、地域的な包括的経済連携協定(RCEP)について質問しました。

この協定は、ASEAN10カ国、オーストラリア、ニュージーランドなど計15カ国が参加する経済連携協定で、日本にとっては、本協定を通じて、中国、韓国と締結する初めてのEPAとなります。さらに参加する15カ国は、すでにTPP11に参加している国が計7か国あります。

ところが政府は、本協定の審議にあたり、RCEP協定とTPPの内容を比較・検証できる概要・資料などは全く示していません。そこで、冒頭、私は、茂木敏充外務相に対し、「その理由は何か」と質しました。

 

 

茂木大臣は「いずれの協定も膨大な分量にわたり、一覧できるような対比表を作成することは困難。両方に関わる国、参加国が多いことからも多次元の比較が必要になる。個別具体的な照会があれば、対応したい」と答弁。

私は、審議をお願いしているのは政府であり、そのような姿勢は傲慢と言わざるを得ないと述べ、協定が協定文、付属書、約束表などから成っているが、オーストラリアやニュージーランドではRCEP参加国のすべての約束表まで政府のウエッブサイトで公開されていると批判しました。

 

 

さらに、協定の目的の中心である「互恵性」についてただしました。「RCEP署名国の間に制度や経済発展状況に大きな格差がある」と指摘し、協定の目的に規定された「現代的」「包括的」「質の高い」「互恵的」という4つの特徴のうち、「互恵関係の構築は現実的に困難ではないのか」と質問。

 

 

茂木大臣は「互いにメリットをもたらすもの」とし、「それぞれの国が同じように満足でき、同じように不満が残る中で、全体的にはバランスが取れたものになっている」などと答弁。

私は、「ASEAN諸国の貿易収支が軒並み悪化するとした世界銀行と国連貿易開発会議(UNCTAD)の試算を示し、東アジアの互恵的な協定となり得るか検証が必要だ」と主張しました。

 

 

次に、協定発効が国内産業にどんな影響を及ぼすのかについてただしました
新型コロナの世界的な感染拡大は、国内需給を逼迫させ、グローバル化したサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしたことを、まず指摘。

 

 

その上で、経済産業省が中国などに依存してきた製造業の国内回帰を推進する一方で、ASEAN諸国などへの生産拠点の多元化を促していることから、その事業の概要について質問。

 

 

長坂康正・経済産業副大臣は「新型コロナウイルス感染症の影響が拡大する中で、海外での生産拠点の集中度が高い製品の供給が不足するなど、サプライチェーンが途絶するリスクが顕在化した」と述べ、「サプライチェーン対策のため、国内投資促進事業費補助金として、特定の国に依存する製品・部素材、国民が健康な生活を営む上で重要な製品等について、国内に生産拠点を整備する場合はその設備投資等を支援する」と答えました。

 

 

さらに私は、「生産拠点を国内に回帰させる動きを動かすというが、空洞化がどの程度抑えることできるのか」と追及。

長坂経産副大臣は「生産集中度が高いため、国内の生産拠点整備が進むことにより、生産拠点の集中度は低減していくものと考えている」と、述べるだけでした。

 

 

最後に、「新型コロナの感染拡大に伴う国内需給のひっ迫は、グローバル化したサプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにした。TPP11や日欧EPA、日米貿易協定など貿易自由化一辺倒、外需頼みの政策が危機に弱い社会経済を作り出したことは明らかだ」と指摘。「そのことに何も反省のないまま、RCEPで一層の市場開放を推進することは許されない」と批判しました。

 

 

 

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質疑の終了後、反対討論を行いました。要旨は下段に掲載。

 

 

反対討論では、「必要なのは、経済主権や食糧主権を尊重する方向での見直しであり、国内生産基盤の抜本的強化、食料自給率の向上など内需を拡大し、危機に対応できる強い経済に舵を切ることだ」と主張しました。

 

 

地域的な包括的経済連携協定(RCEP)に対する反対討論

私は、日本共産党を代表して、地域的な包括的経済連携協定(RCEP)に反対の立場から討論を行います。

本協定は、2013年5月の交渉開始から7年半に渡り、国民生活に一体どんな影響があるのかを国会や国民に一切知らせないまま交渉、署名されたものです。農林水産品への影響についても、「国内農業に特段の影響はない」と、試算すら行っていません。
しかし、本協定には、発効5年後に協定全体を見直す規定が盛り込まれています。また、参加国のうち、オーストラリアやニュージーランドなどとは、既にTPPが発効済みであり、本協定にかかわらずTPPの関税率や輸入枠が適用されます。このことは、わが国の輸入関税措置を際限なく撤廃していくものです。
本協定が発効されれば、冷凍惣菜や乾燥野菜などで、中国から安い輸入品が流入し、国内農業に深刻な影響を及ぼすおそれがあります。皮革や繊維製品にしても、国内の生産者は、安価な輸入品の攻勢にさらされることになります。

政府はこれまで、ASEAN諸国と経済連携協定を結び、多国籍企業の海外進出のための環境整備を行ってきました。本協定を通じて日本は、新たに中国、韓国とEPAを締結することになります。このことは、日本企業のASEAN諸国への海外進出を一層推進するとともに、中国などに生産拠点を移す動きを加速させ、地域経済の衰退など国内産業の空洞化をさらに強めるものとなるのは明らかです。

国連貿易開発会議(UNCTAD)は、本協定が発効された場合、参加国の中で最も輸出が伸びるのは日本であり、中国や韓国も輸出増となる一方、ASEAN参加国の貿易収支は発効前に比べて軒並み悪化すると試算しています。このことからも、本協定が、東アジアの互恵的な協定となり得るのか検証が必要です。

菅総理は本協定の署名式で、「コロナ禍で世界経済が低迷し、内向き志向も見られる中でも自由貿易の推進がより一層重要だ」と強調しました。しかし、新型コロナの感染拡大に伴う国内需給の逼迫は、グローバル化したサプライチェーンに依存する食料自給などの脆弱性を浮き彫りにしました。TPP11や日欧EPA、日米貿易協定など、貿易自由化一辺倒、外需頼みの政策が危機に弱い社会経済をつくり出したことに何の反省もないまま、多国籍企業の利益を最優先に、本協定で一層の市場開放を推進することは断じて許されません。

いま求められているのは、経済主権や食料主権を尊重する方向での見直しであり、国内生産基盤の抜本的強化や食料自給率の向上など内需を拡大し、危機に対応できる強い経済づくりに舵を切ることです。

以上を指摘して反対討論とします。

 

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討論のあと、採決が行われ、自民党、公明党などの与党をはじめ、共産党を除く各党の賛成多数で地域的な包括的経済連携協定(RCEP)の承認案は可決しました。

手前中央で座っているのが私です。