2021年度政府予算案可決、共産党は反対。藤野議員が反対討論//共産党・立憲で「予算の組み換え」を提案

2021年03月3日

2日、衆院本会議で「2021年度予算案」が、自民党、公明党などの賛成多数で可決し参院に送られました。日本共産党、立憲民主党、国民民主党、維新は反対。共産党から藤野保史議員が反対討論を行いました。

 

 

 

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藤野議員の反対討論は以下の通りです。

 

私は、日本共産党を代表して、二〇二一年度予算案ほか二案に、反対の討論を行います。

新型コロナ対策をすすめる上で、何よりも大切なのは、政治への信頼です。ところが、審議を通じて、菅総理の長男が関わった、総務省の接待疑惑でも、農水省の贈収賄事件でも、「カネで行政が歪められたのではないか」という疑惑は、ますます深まっています。

総務省のワーキンググループは、二〇二〇年一二月、「衛星放送のインフラ利用料の負担軽減」「衛星放送の電波枠の利用」という東北新社側の要求に応える『報告書案』を出しています。問題は、この『報告書案』が出される前に接待が集中していることです。その背景には総理と東北新社との特別の関係があるのではないか。この点も含めた真相の徹底究明が必要です。

農水省では、贈収賄事件の贈賄側の企業との会食に、事務次官が出席していたことが明らかになりました。吉川、西川元農水大臣をはじめ、農水省ぐるみの疑惑の徹底解明が必要です。

河井夫妻による選挙買収事件、カジノ贈収賄事件、森友問題、加計問題、桜を見る会、日本学術会議への人事介入など、政治への信頼を揺るがす重大問題の真相究明が不可欠です。安倍前総理の証人喚問をはじめ、関係者の国会招致、関連資料の提出を強く求めます。

 

本案は、新型コロナ対策として不十分であり、コロナ禍で苦しむ国民に対して、非常に冷たい予算となっています。

医療崩壊を防ぐという点でも、ワクチン接種を円滑に行うという点でも、医療機関の経営への支援が欠かせません。ところが、政府は、医療機関への減収補てんに背を向け続けています。PCR検査についても、感染者数が減ってきた今こそ拡大強化すべきであるにもかかわらず、抜本的な拡充を行おうとしていません。これでは再び感染が拡大し、医療崩壊に追い込まれる悪循環が繰り返されかねません。

菅総理は大企業で働くシフト制の非正規労働者に会い、直接実態を聞きました。ところが、これらの方への休業支援金の適用は、昨年四月から六月に限られるなど、きわめて限定的なものであり、「これでは救われない」という痛切な訴えが寄せられています。

政府は持続化給付金や家賃支援金の申請を二月一五日で打ち切りました。持続化給付金を申請した企業に対しても、「書類の不備」といって切り捨てる姿勢も改めようとしていません。「事業規模に応じた補償を」、という切実な要望にも背を向けたままです。

生活困窮者への支援について、政府は「緊急小口資金の活用を」と繰り返していますが、必要な食料も買えない人に対して、「新たに借金しろ」というのはあまりに冷たい姿勢ではありませんか。その一方で、コロナ禍で最も影響を受けやすい七五歳以上の医療費窓口負担を二倍にする法案を提出するなど、到底認められません。

 

新型コロナを経験して、私たちは、日本社会が抱える数々の脆弱性を痛感しました。

第一に、日本の医療・保健体制が、感染症の拡大に対応できないところまで弱体化していたということです。保健所の数はピーク時の半分に減らされ、感染症病床や専門医も減らされてきました。政府は、この期に及んで、公立・公的病院の再編統合方針を撤回していませんが、言語道断です。本気で国民の命と健康を守る立場に立つのかどうか、政治の根本姿勢が問われています。

第二に、非正規雇用の矛盾も浮き彫りになりました。菅総理は雇用が増えたことが「成果」だと自慢してきましたが、その大部分は不安定な非正規雇用であり、多くの方がコロナ禍で真っ先に職を失い、住む場所まで脅かされています。「実質的失業者」が女性だけで九十万人に達するという調査もあります。この痛苦の経験を踏まえて、こうした不安定雇用に歯止めをかけることが切実に求められていますが、本案にそのための施策は見当たりません。

本案は、軍事費に五兆三四二二億円を計上しています。これは七年連続で過去最高を更新するものであり、来年度の後年度負担は過去最大の五兆五三三〇億円に達します。日本各地で横行する、米軍による我が物顔の低空飛行訓練にモノも言えず、沖縄県民の度重なる意思表示を無視して辺野古新基地建設を強行するなど、断じて許すことはできません。

本案は、消費税の五%への減税に背を向け、富裕層に対する優遇税制を温存しています。この間の株高の恩恵で、富裕層の資産は、昨年二月の十二兆円から二四兆円へと倍増しています。消費税の五%減税に踏み出すとともに、応能負担の原則を徹底すべきです。

わが党は、立憲民主党と共同で、新型コロナの拡大を防止し、国民の命と暮らしを守るための予算の組み替え動議を提案しましたが、今こそ、国民を応援する政治に転換することを強く求めて、討論を終わります。

 

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日本共産党と立憲民主党は、2021年度予算案に対して、以下の「組み替え」動議を提出しました。

 

 

令和三年度一般会計予算、令和三年度特別会計予算及び令和三年度政府関係機関予算につき撤回のうえ編成替えを求めるの動議を、立憲民主党・無所属と日本共産党が共同で提出。

令和3年3月2日

第一 令和3年度予算の編成替えを求める理由

令和3年度予算は、「新型コロナウイルス感染症」により被害や影響を被った国民生活と社会経済活動を力強く再生へと導く予算に編成し直すことが不可欠である。
政府が進めてきた「Withコロナ(社会経済と感染対策の両立)」では、感染抑止と感染拡大の波が何度となく繰り返され、その結果、社会経済活動の制約は長期にわたり、国民生活や社会経済活動に深刻な影響を与えている。感染防止対策と医療支援、そして生活者・事業者支援を中心的に展開し、感染拡大の波を十分に収束させ、その状態を継続させることで感染を封じ込め、早期に通常に近い生活・経済活動を取り戻す「ZERO コロナ」の道を選択すべきである。
だからこそ、更なる対策として、特別定額給付金を生活困窮者や生活急変者を対象に再度支給するとともに、持続化給付金を改善し、支給要件の緩和と事業規模に応じた支給を実施すべきである。また、支援すべき対象は既に明確で、予備費は以上のような具体的施策に早急に執行されるべきであり、政府提出の5兆円の予備費は1兆円に減額する。
さらに、コロナ対策関連以外では、子育て支援や、持続可能な社会の実現など、先行投資のための予算は増額する一方、必要性に乏しい事業や効率性の低い予算についてはカットし、メリハリの利いた予算編成を行うべきである。
このような考え方に立ち、令和3年度予算について下記のとおり組み替えることを提案する。

第二 編成替えの概要
1.歳出の増(合計36兆円)
(1)新型コロナウイルス感染症の拡大防止、国民の命と暮らしを守るための予算の確保
①病床の確保・医療機関支援(3兆円)
②再燃防止(封じ込め)の徹底(2兆円)
③暮らしを守る(7兆円)
④事業を守る(22兆円)

(2)持続可能な社会の実現、将来に向けた先行投資等に必要な予算の確保(2兆円)

2.歳出の減(合計4兆5,224億円)
・新型コロナウイルス感染症対策予備費の減額(5兆円 →1兆円)
・病床削減・病院統合に伴う財政支援
・マイナンバーカードの普及・利活用の促進
・マイナポイントによる消費活性化の拡充
・普天間飛行場移設事業
・防衛装備品後年度負担の減額(令和2年度3次補正計上相当額)
・イージスシステム搭載艦の検討に係る技術支援役務
・カジノ管理委員会運営費等の削除

3.歳入の増(31兆4,776億円)
4.その他(13兆円)

 

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編成替えの概要を掲載します。

新型コロナウイルス感染症の拡大防止、国民の命と暮らしをまもるための予算の確保として、第一に、病床確保や医療機関支援のため、3兆円を追加計上します。
コロナ患者を受け入れる病床・療養施設を確保するため、国がより積極的な関与を行います。
収入が減った全ての医療機関に対して経済支援を行います。
医療従事者等へ再度、慰労金を支給します。

第二に、感染を徹底的に封じ込めるため、2兆円を追加計上します。
ワクチン接種体制の整備・拡充を図ります。
医療・介護従事者と、希望するエッセンシャルワーカーの方々が定期検査を公費で受けられるよう措置するほか、感染者の周辺をより広く無料で検査します。
安価で迅速大量に検査でける機器の普及を行います。
感染ルートの把握のためのゲノム解析の強化、保健所の体制強化、出入国管理の徹底、コロナ治療薬の創薬支援を行います。

第三に、国民の暮らしを守るため、7兆円を追加計上します。
生活が困窮している方々や、ひとり親など低所得の子育て世帯に対し、給付金を支給します。
ひとり親などの職業訓練給付金の増額を行います。
緊急小口資金・総合支援資金の特例貸付の延長、休業支援金・給付金の6月末までの延長を行います。
失業手当の支給割合の引上げや給付日数の延長を実現します。
学生に対しては、授業料の半額免除や貸与型奨学金の返済免除による支援を行うほか、中小企業への新卒就業者等の給与支援を行います。

第四に、事業を守るため、22兆円を追加計上します。
持続化給付金と家賃支援給付金について、要件を緩和したうえで、再給付を実現します。
休業協力金、一時支援金について、要件を緩和し、事業規模に応じた支援を実施ます。
無利子無担保融資枠の拡大・延長、雇用調整助成金の特例措置の6月までの延長、地域公共交通機関に対する支援、事業者コロナ対策新型補助制度を実施します。

次に、持続可能な社会の実現や、将来に向けた先行投資等に必要な予算を2兆円追加計上します。
具体的には、
保育士・幼稚園教諭、介護・障害者福祉従事者等の処遇改善、
小中学校における給食費無償化の実現、
児童手当特例給付の所得制限の撤回・廃止、
消費者行政の強化、
DV被害者支援等の推進、
自殺対策の推進、
農業者戸別所得補償制度の復活、充実、
住宅省エネ化の推進、
被災者生活再建支援金の引上げ、
動物愛護管理の抜本的強化・推進
のための予算を措置します。

以上の措置の財源は、新型コロナウイルス感染症対策予備費の5兆円のうち4兆円を減額するほか、必要性の乏しい事業や効率性の低い予算の削減及び特例公債の追加により賄います。

その他、財政投融資計画において、無利子無担保融資制度の延長・拡大のため、13兆円を追加します。