きせる専門店、煙管竹商「谷川清次郎商店」を訪問

2019年05月6日

報告です。「京に生きづく手しごと展」でお目にかかった、京都で最後の一軒となったといわれるきせる専門店 煙管竹商 谷川清次郎商店」を訪問し、店主の谷川清三さんとしばし懇談しました。

 

きせるや 主人

 

「きせる」の表記は「煙筒」、俗には「喜世留」と言われます。喜世留とは、「喜びを、ひととき、世に留める」という意味で、かの杉田玄白が最初につかったとも言われる「当て字」です。庶民に広がった江戸時代、当時、たばこはお茶と同じく「薬草」の一種だったのとのことです。

 

キセルや

 

最初の写真の店主の左奥に写っている、束ねて積まれているのが、「羅宇竹」(らうだけ)という竹管。これがないときせるは成り立ちません。
この羅宇竹の竹管がたばこのニコチンを吸収し、煙が通過する距離が長いほど煙が冷やされて、たばこの「味わい」が良くなるとのことです。

 

キセルや2

 

いまは、ネット販売できせるを求める方も多いようですが、実はニコチンが羅宇竹に溜まってしまうので、よく吸う人で半年、たまに吸う人で1年ほどで竹管を交換しなければならない。したがって、羅宇竹を扱う店でないと「きせる屋」は成り立たないと強調されました。

きせるや 3

 

きせるの両端の金具には、銅、真鍮(しんちゅう)、銅と真鍮をまぜたもの、銀メッキ、銀と数種類あり、錺(かざり)が細かく施されています。また、たばこ入れも鹿皮の細工ものや七宝などしぶい細工が施されたものがあり、茶道とも深い関わりがあるそうです。目立たずそっと飾る工芸に粋を感じ、谷川さんの話にしばし聞き入りました。