参院・法務委員長解任決議賛成討論

2018年12月7日

 

7日、開かれた参議院本会議で、6日夕刻に提出された「横山信一法務委員長解任決議案」の趣旨説明・討論が行われ、自民・公明・維新などの反対多数で否決されました。

日本共産党は、法務委員長の解任決議案に対する賛成討論を山添拓議員が行いました。

 

山添議員の賛成討論は以下の通りです。

日本共産党を代表して、横山信一法務委員長解任決議案に賛成の討論を行います。

賛成する最大の理由は、安倍政権が、入管法等改定案を何が何でも押し通そうとするもと、法務委員長が、法案の会期内成立をねらう政府の意をくみ、政府の都合を最優先に押し進め、さらには審議の土台にかかわる問題をも放置して、政府・与党の言いなりに職権行使を行ってきたからです。世論調査でも6割から8割の国民が今国会で法案を成立させる必要はないと答えています。外国人労働者の受入れのありようは、来日する外国人の生活と尊厳にかかわることはもちろん、日本社会と日本人の労働条件にも大きな影響を及ぼす問題であるからにはかなりません。にもかかわらず、来年4月の施行ありきで政府が乱暴にことを運ぼうとしていることに多くの国民が懸念を抱き、怒りが広がっています。

国民の不安の声に応え、審議を尽くすのが国会の役割です。ところが法務委員長は、衆議院でわずかな期日で法案が強行採決されることを前提に、参議院でも審議を急ごうと最初から強権的な委員会運営を繰り返しました。与野党が審議に合意しうる給与法案の委員会まで職権開催し、入管法等改定案の付託に備え、本会議での代表質問が終わるや否や、翌日の一般質疑と委員会での審議入りをまたもや職権で強行に決めました。是が非でも会期内の成立をと企む政府・与党のために、ひたすら職権発動を重ねてきたことは、およそ中立公正であるべき委員長としての職責に反し、その責任はきわめて重いというべきです。

昨日、自民党の福岡筆頭理事は、「機は熟した」と述べ採決を提案し、公明党の伊藤理事もこれに賛同、法案に賛成する会派を含め野党が一致して徹底審議を求めるなか、法務委員長は職権で法案の採決を宣言しました。与党理事といい委員長といい、委員会でいったい何を聞いていたのですか。機が熟すどころか、徹底審議の必要性はますます高まっているのが現状ではありませんか。

入管管理局が行った技能実習生の失踪者調査について政府は、最低賃金以下を理由とする者は22人だったと説明し、「意欲が低く、より高い賃金を求めて失踪する者が多い」「一部の問題であり全体は適正」という認識に立ってきました。法案を提出した政府が一貫して持ち続けてきた認識であり、安倍総理が「9割はうまくいっている」と繰り返し述べるのも、この認識を共有してきたからにはかなりません。ところが、野党議員が書き写した聴取票の分析では、最賃未満は1939人、実に67%に上ります。政府が示してきた22人という数字は、国会を欺くものであったと言わなければなりません。また、調査対象者の10%が月80時間を超える長時間労働を強いられてきたことも明らかになりました。背後には、最賃以下の違法な賃金も、過労死ラインの超長時間労働も、問題であることを認識する機会すらないまま、泣き寝入りする技能実習生が大勢いることが容易に想像されます。失踪者の聴取票が示す実態は、一部ではなく氷山の一角に過ぎません。法案審議の土台が崩れています。

結果を突きつけられた山下大臣は慌てて、「重く受け止める」とか「改めて調査し来年3月末までに公表する」などと述べますが、いまさら取り繕うのはあまりにも見苦しい。政府が技能実習生の実態をねつ造して描いてきたことは、いよいよ鮮明ではありませんか。

2014年以来の聴取票をすべて開示し、過酷な労働実態をことごとく明らかにすることは、審議の出発点です。悪質な監理団体やブローカーが実習生を搾取し、低賃金、長時間労働に縛り付けるという構造的な問題に背を向け、技能実習と地続きの特定技能政で外国人労働者を使い捨てにするなど、到底許されません。

技能実習と新しい「特定技能」とは別物だと、総理も山下大臣も繰り返し述べます。しかし、技能実習2号、3号修了者が無試験で「特定技能」に移行できるとする法案は、二つの制度が一連一体であることを語っています。参考人質疑で斉藤善久神戸大学大学院准教授は、「つらいことや理不尽なことも多い技能実習で辞めもせず、失踪もせず働き抜き、なお日本で働こうというおとなしくて我慢強い人間を優先的に受け入れる、さらに5年働かせてやるから実習生になれ、辞めるな、逃げるなということだ」と痛烈に批判しましたが、政府に「外国人材の活用」を求め提言してきた日本経団連など財界の本音も、ここにこそあるのではありませんか。

技能実習と地続きの制度を抱える問題は、「特定技能」の先取りといえる「外国人建設就労者受入事業」でも明らかです。技能実習修了者を、国土交通省が認定した特定監理団体・企業に限定して最大3年延長して受け入れるこの特例制度では昨年、受入れ企業の4割で賃金支払いの違法が確認されました。ところが国交省によれば、本来受入れ企業をチェックするはずの特定監理団体が見抜いた不正は事業開始以来1件もないといいます。技能実習から特例制度に移行する際、本国の業者に20万円の手数料を要求された事例まであり、国が関与している仕組みの下でさえブローカーが介在し暗躍してします。山下大臣が「全体として適正」という制度で、現実には違法や不正がまかり通っているのです。

法案が定める「特定技能」は、さらに危険です。非営利で許可制の監理団体が受入れを行う技能実習に対し、「特定技能」で予定される登録支援機関は届け出で足り、営利企業も排除されません。民間人材ビジネスが介在し、経費や家賃としてピンハネをする搾取の構造をお膳立てするだけではないかという斉藤准教授の指摘も、否定することはできないではありませんか。

新たな在留資格により外国人労働者を受け容れる分野は、業所管省庁が要望を受け人材不足か否かを判断し、分野別運用不方針を定めるといいます。政府が受入れを見込む14業種を所管する厚労、国交、農水、さらには文教など関連する委員会で野党が求めてきた法案の連合審査は、審議の土台です。ところが与党は頑なに拒み、法務委員長は連合審査を行わないまま質疑を褶曲し、採決に進もうとしています。徹底審議とはほぼ遠い姿勢と言わなければなりません。ましてや、技能実習生について歪んだ認識を改めようともせず、ボロボロの法案をなりふり構わず押し通そうとする安倍政権に、自由裁量ですべてお任せできるはずがないではありませんか。

技能実習生が恋愛も妊娠も禁止され、発覚すれば中絶か帰国を迫られるという事例が報じられています。シャープ亀山工場では、生産拡大のために送り込まれた2900人もの外国人労働者が雇い止めにされました。外国人労働者を人間扱いせず、雇用の調整弁として都合のよく用いてきた事実が厳然として存在し、法案はそれを是正するどころか助長し、拡大しようとするものです。移住者と連帯する全国ネットワークの高谷幸参考人が指摘したように、様々な形で外国にルーツを持つ人々がすでにここにおり、ともに社会を支えています。国籍や人種、文化の違いを超えた共生社会を築くために、一人ひとりが人間として暮らせるための権利と尊厳を保障する政治こそが求められています。

土台から崩れた法案は、徹底審議で断固廃案にすべきです。審議の前提となる資料も提出せず、野党に実態を暴露されれば見苦しい言い逃れ。国会を蔑ろにし、数の力で採決すればよいと考え議会制民主主義を徘徊する政治には、国民が必ず審判を下すであろうことを申し上げ、解任決議案に賛成の討論とします。