国会会議録

【第183通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2013年6月18日)




○穀田委員 前回に続いて、鉄道問題を大臣に一つだけ聞きたいと思います。

 JR岩泉線について聞きます。

 二〇一〇年七月の水害以降、不通になっています。JR東日本は、昨年三月に、復旧断念、廃線を正式発表しています。もし廃線となれば、国鉄再建法に伴う特定地方交通線以外のJR東日本線では初めての廃線となります。

 岩泉線に並行するのは、片側一車線の国道四百五十五号線のみであります。山岳区間の急勾配でカーブが続き、冬場はとても通れる状態ではありません。ところが、国鉄再建法によっても存続させるべき路線をJRは一方的に廃止を明言しています。

 JRの責任を考える上で、国鉄から分割・民営化されたときの経緯を確認しておくことが大切であります。分割・民営化の際には、赤字ローカル線はJRから切り離されました。莫大な借金は国民の税金で穴埋めされ、最終的には二十四兆円にも上りました。こういう手厚い保護のもとで、現在、黒字経営となっているわけです。

 赤字路線で、復旧費用が多額ということがJR岩泉線の廃線の理由のようですが、JR東日本では、この小さな路線、一日三往復の路線を存続させることができないほどの経営危機の状況にあるのか。東日本大震災に便乗したかのような廃止を許してはならないと思いますが、一点だけ大臣の見解をお聞きします。

○太田国務大臣 御指摘の岩泉線につきましては、二十二年七月の土砂災害によって全線で運休中となっているものであります。東日本大震災とは別個の問題でありますし、また、この特定地方交通線というのは、日本国有鉄道経営再建促進特別措置法に基づいて、国鉄が運営の改善のために適切な措置を講じてもなお収支の均衡を確保することが困難なものとして、運輸大臣の承認を受けて、バス輸送への転換や第三セクター化等を図ることとされているという状況にございます。

 この中で、旅客輸送密度四千人未満という基準が定められておりましたが、当該線を利用する旅客量を勘案して必要と認められるバスの走行が可能である代替輸送道路がない路線については、除外されているということでございます。

 そこのところが、ちょっと道路が狭いというような状況で、大型バスには道が狭いというようなことがあったりというようなこともお聞きしているわけでありますけれども、五十七年当時五百人あった旅客が、JR発足時に百八十人、被災直前には四十六人にまで減少するなどということで、事情の変更が生じているというふうに承知をしています。

 そこで、今の御質問ですが、JR東日本においては、国鉄改革の経緯から、鉄道路線を廃止するときには、国鉄改革後の事情の変化等について地元に十分に説明することが求められております。このため、本件についても、JR東日本が、沿線自治体等に対し、必要な説明を進めていると私は承知をしているところでございます。

 地域の鉄道の取り扱いにつきましては、鉄道事業者が地元との間で話し合いをしていただくことが必要であるということはそのとおりでありますので、岩泉線につきましても、JR東日本と地元の間でよく話し合っていただく必要がある。この話し合いについては、これからも話し合う必要があるというふうに私は考えております。

○穀田委員 話し合いの必要があるのは当然なんですね。廃止しようとするときには、自治体などに十分説明することということで、国の指針がある。その前の方の文章はこう書いていまして、「現に営業する路線の適切な維持に努める」ことともあるわけですよね。

 つまり、災害で崩れたことによって復旧がなかなかしんどいという状況を一つてこにして、この際やってしまおう、こういうやり方は、いかにもひどい。地元の住民を挙げて、やはりこれを何とかしようじゃないかということでやっています。

 地元の自治体では、議会の中でも、そういう復旧を希望しているということで、首長がおっしゃっていますし、この七月にも、岩泉線存続強化促進期成同盟総会も開催の予定であります。

 私は、この問題を考えるときに、大臣、先ほど変更があると、変化はあるわけです、事情の変更があるという、事情が変化していることは事実ですよ。でも、地元のことでいいますと、岩手県のこっち側の三陸方面はやっていて、これは岩泉線とまたつながっているわけですよね。結局、そういう一つ一つをやはりJR東日本では潰していこうという気じゃないかとみんなが思っているわけですよね。

 ですから、私は、そういう意味からいっても、国民の移動を、自由という保障をする、その基盤となる国鉄分割・民営化という問題が改めて問われているんじゃないかと思っています。

 今回のJR岩泉線の問題は、赤字を口実にすれば不採算路線を自由に廃線できるという前例をつくりかねない問題なんですね。さらに、先ほど述べましたように、被災地のJR復旧の問題についても、もうけ第一から復旧を先延ばしし、あわよくば廃線ということを許してよいのかという問題だと私は考えます。

 したがって、不採算路線が切り捨てられるということをこういう形でやることは許されない、ましてや、地元の納得、理解なしでこんなことを勝手にやることは許されないということを言っておきたいと思います。

 次に、本来先週質問するはずだったんですが、延びましたが、住宅のセーフティーネットの問題について、特に聞きたいと思います。

 アベノミクスということで取り沙汰されていますけれども、これを見る一つの指標として、住宅の問題、すなわち、住民の居住の安定が確保されているかどうかというのを、アベノミクスが国民生活にどんな影響を及ぼしているかということで見る必要があると思います。

 特に、住宅セーフティーネット法もつくり、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子供を育成する家庭、外国人、ホームレス等の住宅の確保に特に配慮を要する者、これは住宅確保要配慮者といいますが、への住宅確保は、住生活基本計画にも明記されていることであります。

 その中で、憲法も保障する、健康で文化的な住生活を営む基盤として必要不可欠な住宅の面積に関する水準として、最低居住面積水準が定められております。これは極めて大事なことであります。住宅確保要配慮者世帯を推計する際にも、著しい低年収未満かつ最低居住面積水準未満の世帯などのように、収入だけでなくて居住面積が根拠、基本になっています。

 まず、居住面積の最低水準はどう規定されているか、それから、住生活基本計画では最低居住面積水準未満の住宅を解消する目標を掲げているが、その取り組みや進捗状況はどうなっているのか、お答えいただきたいと思います。

○井上政府参考人 お答え申し上げます。

 住生活基本法第十五条におきまして、御指摘のように、住生活基本計画に定める事項として、いわゆる最低居住水準というのが定められてございます。

 これにつきましては、単身者の場合でお答えさせていただきますけれども、住宅面積二十五平米、これが最低居住面積だというふうに規定をされておるところでございます。

 一つお断りをしておかなければいけませんが、注書きのところに、単身学生、単身赴任者等であって比較的短期間の居住を前提とした面積が確保されている場合には除外だと書いていまして、確保されているかどうかは別問題でございますけれども、実務上は、実は、住宅・土地統計調査におきましても、寄宿舎、それに類するものにつきましては面積の調査をこれまでしていないということで、事実上除外ということになってございます。これはお断りしておかなければいけないと思います。

 その上で、平成二十年の統計調査で、最低居住水準の未満率が四・三%、計画上はこれにつきまして早期に解消することというふうにされております。

 以上でございます。

○穀田委員 答弁がありましたように、単身者であっても二十五平米が最低基準だということは明らかであります。公営住宅はもちろん、民間賃貸住宅でもこの最低基準をクリアすべきであることは当然であります。

 そこで、きょうは、明らかに最低水準を下回る賃貸住宅が出回っている問題について質問します。

 毎日新聞が五月下旬から報道している脱法ハウスについてであります。

 それによると、東京都中野区や練馬区、千代田区、墨田区などで賃貸されている部屋の面積は、わずか一・六畳、一・七畳、面積では二・五から二・六平米しかありません。東京都の条例では、居住は七平米、四・三畳以上としているけれども、その三分の一であります。

 中野区の施設は、木造二階建て、床面積二百五十平米に三十七の個室が設けてあります。練馬区の施設は、鉄骨三階建て事務所・店舗用ビルで、二階に五十八室もあります。しかし、どこも窓がない、あっても塞がれている、部屋を仕切る壁は薄く、せき払いや寝返り、鼻をかむ音が聞こえるし、上の天井との間があいたままになっている、トイレ、キッチンは共同だけれども、浴室はなく、シャワー、ランドリーは有料だと言われています。

 大臣に聞きますが、こういう最低居住面積水準をも大きく下回る賃貸住宅で、居住者が住生活基本計画で言うところの健康で文化的な住生活を営むことができると思いますか。

○太田国務大臣 報道されている事例を見ますと、御指摘のとおりの平米数であったりということだと思います。これで健康で文化的な生活を営めるかということからいえば、これは難しいのではないかという印象を正直持ちます。

○穀田委員 誰が考えてもこんなことは無理なんですよね。

 ところが、事業者というのは、倉庫だとかレンタルオフィスだと言って、利用契約であり、借家契約、賃貸契約ではないと主張しているようですが、実は、管理人まで置いているという現実があるんですね。現にそこに寝起きし、中には住民登録をしていることなどが明らかであって、誰が見ても、また多くの方々も証言しているわけですけれども、明らかに居住している。実際に、中野区や墨田区の施設では、東京消防庁が共同住宅と認定して指導もしている。避難誘導灯の設置などを要請し、事業者も一定改善したと言われています。

 こういう倉庫、レンタルルームを装いながら住居として劣悪な部屋を賃貸している事業が出てきている現実です。入居者も、派遣切りに遭った労働者や、年金暮らしの高齢者、生活保護の受給者もいるようであります。

 この十二日に院内で開催されたハウジングプアの集会で、居住者からの証言がありました。千代田区に行って相談した、区の職員が一緒に行って、宿泊所みたいに紹介し、部屋を確認の上、立ち会いのもと、契約書にサインした、こういうことを言っておられます。区の職員も、居住用の物件として扱っていたと、環境が極めて悪いことは把握している。また、ある女性は、事業者に何を最初に言われたか。布団はそちらで用意してくださいねと言われたと述べ、明らかに居住を当然の前提としてのことだったと証言しておられます。

 新たな形態だけれども、いわゆる貧困ビジネスの一種ではないかとの懸念の声も上がっています。住居であれば建築基準法違反となる窓がないことなど、まだ是正されていません。事業者は、ネットカフェなどを展開する事業者が各地に店舗を広げる形式で営業しており、拡大しています。一刻の猶予もできません。直ちに、実態調査、把握し、法令違反等を是正すべきではないかと私は考える。

 これは急を要していますから、いつまでにこれをやり切るのか、大臣に答弁を求めます。

○太田国務大臣 私も、この件は、早く実態調査をして、建築基準法に違反するものについては是正を徹底して、建築物の安全確保をしていかなくてはいけないというふうに思っています。

 建物の外観だけでは違反かどうかの判断が難しくて、まずは、実態調査をするということが大事だというふうに思っておりまして、六月十日に情報受付窓口を設置いたしました。

 この六月十日に、都道府県に対しまして通知をして、都道府県等においても情報受付窓口を設けること、そして、情報提供のあった物件については、特定行政庁において消防部局等と連携し調査すること、そして、建築基準法令に違反する物件が確認された場合には、特定行政庁において是正指導を行うことを要請し、通知をさせていただきました。

 危険な状態の建築物を放置しておくということは、もとより許されるものではありません。建築基準法違反の建築物については、是正を徹底し、建築物の安全確保を図ってまいりたいと思います。

○穀田委員 通知を行って取り組みを開始したのは、当然いいことだと思います。問題は、期限を切ってやらなければ事態がどんどん悪くなるという意味で、指摘しておきたいと思うんです。

 ただ、六月四日に、住まいの貧困に取り組むネットワークや、国民の住まいを守る全国連絡会、それから全国追い出し屋対策会議、この三者が、「一部の「シェアハウス」に見られる不安全な「脱法ハウス」の緊急対応策に関する申し入れ」を行っているんですね。これは六月四日なんです。それを受けてようやく動き出したということなんだろうと思うんですけれども、そういう方々が努力をされておられるということについても述べておきたいと思うんです。

 そこで、黙過できないトラブルが起こっていること、これを提起したいと思います。

 消防法違反が指摘された中野区の施設を運営しているネットカフェ大手マンボーが、千代田区の類似施設を突然閉鎖するとして、利用者に立ち退きを迫る事態が発生しています。五月二十四日に、突然、六月三十日に閉鎖するという張り紙を出しています。七月一日から解体工事の予定ということが理由らしいです。

 八十室ある利用者の多くが困惑しており、実際には普通のアパート契約と変わらない、それを急に出ていけと言われても、転居資金もないし、時間的猶予が欲しいと困っていると、私どもにも相談があります。

 事業者は、部屋を貸す際の利用規約にこのように書いています。「当社が即時解約が妥当だと判断した場合、解約できる」、このように記載していることを盾にとっているようですけれども、実態として、賃貸契約ならば借地借家法が適用されるし、私的な強制排除は許されないはずであります。

 このようなやり方は認められないと思うけれども、問題は、急を要するわけだから、立ち退きだとか閉鎖をやめさせるべきじゃないか、このことについてお聞きします。

○井上政府参考人 お答え申し上げます。

 多くの方が居住しており、寄宿舎、基準法上はこういう用途になりますけれども、これに該当する可能性が高いにもかかわらず、貸しオフィスとか倉庫とかと称し、契約上もそういうことになっているケースもあるように伺っておりますけれども、事実上は建築基準法の防火基準等に違反をしている、こういう物件について、まずは実態をちゃんとつかまなければいけないと思います。

 と申しますのは、個々の案件で契約書がどう書かれているか、これは契約書の記載にかかわらず、実は居住の実態があって一定期間お住まいになれば、居住用の借家権が発生する場合も当然あるんだと思います。これは契約書の書きぶりにかかわらずでございます。

 ということでございますけれども、実は、こういう話につきましては、役所の方であらかじめ型をはめて、これはこうだということを決めていくのは非常に困難でございます。今回、特にいろいろな形のものがあると思いますので、一般論で言えば、まずは個別に司法の場で判断されるということになろうかと思いますけれども、あわせて、しっかり実情把握に努めてまいり、必要な対策があれば打っていけるようにやっていきたいというふうに思っております。

○穀田委員 実態はもう言っているし、そんなのは聞けばすぐわかるんですよ。司法の判断なんて待っている余裕はないんですよ。相手は六月三十日までに出ろと言っているわけやから、六月三十日までに手を打たなきゃならぬと言っているんですよ。

 実際に、例えばそういう指導をしますわね。そうしたら、コストがかかるから、それは出ていけと言うに決まっているんですよ。窓をつくったり、いろいろやったりする金はないから、そんな金かけるんやったら出てくれ、こうなるわけです。

 だから、今、それを阻止しなくちゃならぬということなんですよ。行き先がないわけですよね。受け皿がないとだめだ。では、結局どこが受けるのか。まずは司法などと言っている暇はないんですよ、自治体しかない。

 ですから、この際、行く先を決めるための相談、そして適切な住環境のアパート等への移転など、追い出される方にセーフティーネットを用意し、援助をしっかり行うということについて私は求めたいと思いますが、どうですか。

○井上政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、実態は明らかだというお話がございましたけれども、契約書にどう書かれているか、そして居住の実態がどうか。これは、同じ貸しルームでも、同じビルでも、いろいろなケースがあると思います。これは役所が手を出して、結果的にそれが実態と合わないということになれば、逆に、出した方がおかしいということになりますので、これはあくまでも、司法上どうなるかということについてはしっかり見きわめる必要があるというふうに考えております。

 その上で、建築部局だけの対応では足りないことは事実だと思いますので、実は昨日、東京都と、問題になっている四区、それから、とりあえず消防部局、建築部局に集まっていただきまして、打ち合わせをさせていただきました。

 この延長線上で、御指摘のような生活福祉部局とか就労関係部局、こういうところの区の中でのネットワークも大事になってまいると思いますので、次は、そういう観点も含めて、何ができるのか、しっかり他省庁とも連携してやってまいりたいというふうに思っております。

○穀田委員 後半の方はええのやけれども、実態をと言うんだけれども、千代田区に行ったらすぐわかるんですよ。そんな大仰な話と違うんですよね。大体、千代田区の職員が一緒に行って、見ていて、契約して、サインしているところまでやっておるのやから、その人に聞いたらしまいなんやて。そんな悠長なことを言って、追い出されたらどないしますねん。人を路頭に迷わせるなということを言っているんですよ。

 だから、まず言うとしたら、いろいろあるけれども、路頭に迷わせませんと言うのが大事なんですよ。それが役所であり、国家と違うのかということを私は言いたいと思います。

 問題は、しかも、一つ敷衍して言っておくと、これらの事業者が、先ほども言ったように、倉庫だとかレンタルルームなどと言いながら、ホームページなどの入居募集ではシェアハウス等として募集、勧誘しているわけですよね。

 そもそも、このシェアハウスとは何か。一般的な賃貸住宅や寄宿舎とは違った新たな形態なのだろうと思われます。

 東京都は、住生活基本計画で、「居住者が共同利用できるダイニングやリビング、浴室などを設けることにより、賃貸住宅居住者間のコミュニティ増進を図ろうとする取組が見られます。賃貸住宅における共用部分のあり方などについて検討します。あわせて、ルームシェアやホームシェアなどの新たな住まい方に関し、トラブル防止の観点から、ルールづくりについて検討し、取り組みます。」と明記しているんですね。

 日本シェアハウス・ゲストハウス連盟の専務理事は、定義も曖昧で、何をシェアハウスとするかは言った者勝ちの状態、多くは真面目にやっているが、モラルや遵法意識に欠ける業者が少なからず出てきているのも事実だ、業界として統一的な安全基準をつくることも考えるべき時期に来ていると話しています。

 シェアハウスに関して、東京都でも検討するとしているのだから、国としても、モラルや遵法意識に欠ける業者に対する規制、取り締まりを含めたルールづくりを検討、実施すべきではないか、このことを質問します。

○金子委員長 井上住宅局長、持ち時間が終わっておりますので、簡潔に答弁をお願いします。

○井上政府参考人 お答え申し上げます。

 もともと、このシェアハウスというのは、知り合い同士で一緒に住むルームシェアということから始まって、いわゆるシェアハウス、ゲストハウス、これは業者さんが間に入って部屋貸しをするというものに広がっていったんだと思います。

 私どもも、通常、シェアハウスというと、そういうものを想定したところでございますけれども、今回報じられている物件等は、それとは似て非なるものかなというふうに思っております。

 結果的にどういうことが今できるというふうにまで申し上げられませんけれども、しっかり調べた上で、御指摘のようなことも十分踏まえながら、やれることが何かということを見定めて、対応してまいりたいというふうに思っております。

○穀田委員 終わります。