国会会議録

【第183通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2013年5月14日)




○穀田委員 まず最初に、道路、河川、港湾という、性質も違い、それぞれ法改正中心事項が多岐にわたる三法案を一括して審議することに私は抗議したいと思います。しかし、決定されたからには、まとめて質問せざるを得ません。

 そこで、三法案の共通する防災、老朽化対策については、かねてから私は主張してきましたわけで、積極面として評価したいと思います。

 道路法では、点検の義務づけ、維持管理の政令策定、河川法では、河川管理施設等の維持、修繕の基準の創設、港湾法では、民有港湾施設の維持管理状況、耐震性に関する立入検査を実施する等々、点検、維持管理の位置づけを明確化、明文化はしました。

 問題は、これらのことによって老朽化対策にどのような効果が生まれると想定しているのか、そこをまず最初にお聞きしておきたいと思います。

○太田国務大臣 今の橋であれ、トンネルであれ、河川であれ、港湾であれ、これが老朽化、経年劣化をするということに対応し、そして大地震ということを想定しますと、この対策をしっかりやらなくてはいけないということだと思います。

 そういう意味では、特に、まず調査、点検ということが全てにわたって大事になる。その適確な調査、点検ということが、これによってさらに推進されることになる。

 そしてまた、計画的に修繕を行う予防保全型の管理が促進されることで、長寿命化とライフサイクルコストの縮減を一層図る効果が出てくる。

 そしてまた、基準という点では、考え方、あるいは予防的な維持管理のための定期的な維持管理が必要ということ、点検の後の記録、台帳をつくって、その後の点検の基礎とする。

 そうしたことがこれによって定められ、この老朽化対策に大きく寄与するというのが今回の法案の趣旨であるというふうに思っています。

○穀田委員 お話のように、老朽化対策に力を入れ始めたことは当然だと思うんです。

 問題は、公共事業政策のあり方として、老朽化対策が施策の中心に据えられたのか。新規建設が中心だったこれまでの公共事業施策から本格的な転換が図られたのか。それを検証するためには、これまでの老朽化対策、維持管理に対する取り組みをどう総括したのか、その上に立って、改善すべきを改善し、施策に反映しているかを見る必要があると私は考えます。

 私は、老朽化対策、維持管理の問題については、二〇〇九年の麻生内閣のときにも、予算委員会などで取り上げました。その際、道路橋で見ると、全国の市町村が管理する橋梁のうち八四%が点検されていないことや、橋梁の長寿命化修繕計画も一一%しか策定していないことを指摘しました。

 さらに、二〇一〇年にも、当委員会で、道路橋の長寿命化修繕計画の進捗状況などを質問しました。市町村の長寿命化修繕計画の策定は、二四%まで進んだ程度でありました。

 その後、現在、どれだけの橋梁の点検や、橋梁の長寿命化修繕計画の策定が進んだのか、そして、実際の補修、修繕はどれだけ実施されているのか、簡潔にお答えください。

○前川政府参考人 お答え申し上げます。

 地方公共団体が管理いたします十五メーター以上の橋梁につきまして、委員、過去の数字をお示しいただきましたが、平成二十四年四月の時点で申し上げますと、点検の実施率は、都道府県・政令市で九九%、市区町村では八九%でございます。また、長寿命化修繕計画の策定率は、都道府県・政令市で九八%、市区町村で五一%となっております。

 さらに、長寿命化修繕計画の中で、修繕が必要とされた橋梁の数に対しまして、現時点で修繕を行っている橋梁の割合は、都道府県・政令市で一七%、市区町村に至っては三%にすぎない状況でございます。

○穀田委員 今、報告ありました。老朽化などにより早急な補修が必要となった六万七百四カ所のうち、修繕実施済みは六千四百七十六カ所。特に、今報告があったように、市町村の管理では、修繕実施済みが三%。つまり、八百八十三カ所しかありません。そして、長寿命化修繕計画策定率も、市町村においては約五一%にとどまっています。

 市町村が進まない理由は、簡単に言うと、修繕費用、財源がないこと、それからもう一つは修繕計画を策定する人材等の不足、こういうことで、ずっと大臣も言ってこられました。

 そこで、トンネルはどうか。

 さきの当委員会で私述べましたけれども、国交省が先ごろ実施した自治体へのアンケートで、五八%の市区町村が、笹子トンネルの事故の前までトンネルの点検を一度も行っていなかったことが発表されています。

 トンネルを管理している六百九十二市町村のうち、四百二の市区町村だったわけです。このうち、約半数以上の二百二十八の市区町村が事故後も点検していなかったわけです。点検した市区町村も、定期的な点検を行っていたのは四十一自治体と、全体の六%しかありませんでした。まだまだ取り組みはおくれています。したがって、社会資本の大半を管理する市区町村がこの老朽化対策に取り組むかどうかが鍵となっています。

 私は、先ほど述べた二〇〇九年当時、なかなか市町村の取り組みが進まない要因として、予算の問題、技術力の問題を取り上げました。これがどうなっているか、確認したいと思います。

 そこで、道路法改正でいえば、四十二条二項に基づく維持管理の政令策定についてです。道路法制定以来、六十年以上も、政令で定めるとしながら、制定してきませんでした。

 二〇一〇年三月二十三日、当委員会でこのことを指摘し、私は、維持補修の技術的基準を定めると明記しているが、いまだに政令がないままだ、維持補修、修繕については新設にあるような技術的基準もない、この事態は改善すべきではないのかと提案しました。

 当時の政務官は、橋梁定期点検要領案など個別の基準を例示するのみで、維持管理の政令については、どう言ったかというと、地域主権改革の流れも踏まえながら引き続き検討してまいりたいと答弁しただけでありました。

 結局、今日まで制定されませんでした。なぜ、これまで制定されなかったのか。なのに、なぜ今回制定することになったのか。新規建設のみだった高度経済成長の時代には維持管理という発想も余りなかったというんだろうけれども、二〇〇〇年代には、既にさまざまな形で、老朽化対策、維持管理のあり方が問題視され始めていました。にもかかわらず、制定を先送りしてきたのは、公共事業施策が新規建設を中心に行われてきたあかしであると同時に、その怠慢さは厳しく反省しなければならない事柄だと思うんですが、大臣の見解を伺いたい。

○赤澤大臣政務官 委員御案内のとおり、これまで道路の維持管理については、個別具体の道路の状況や、地形、気候の問題などを細かく考慮することが必要であるため、全国的に一般的な法規範としては定めにくいので、御指摘の政令は制定されなかったということを申し上げてまいりました。

 したがいまして、政令のかわりに、国土交通省としては、点検を含む維持、修繕の標準的な手法として、橋梁定期点検要領案などの周知を図ることによって、道路管理者に適切な維持管理を促し、道路管理において必要な安全性の確保を図ってきたところでございます。

 ただ、こういった状況の中で、道路構造物の老朽化が顕著に進んできた、これは全く穀田委員御指摘のとおりでございまして、これに対応した適切な維持管理を、より徹底して確保することが喫緊の課題ということになっているのが現在でございます。

 一方、国交省などにおいては、これまで行ってきた橋梁やトンネルなどの道路構造物の点検、診断、修繕を通じて、これらの方法などに係る技術的な知見が相当程度蓄積されてきております。

 以上のような状況を踏まえて、これまで制定されていなかった維持、修繕の技術的基準に関する政令について、効率的な修繕を行うための点検の基準も含め定めることとし、従来の基準とあわせ、維持、修繕基準の体系を整えて、各道路管理者による適切な維持管理の一層の促進を図りたいと考えております。

○穀田委員 大臣に答えてほしかったんですが。

 だけれども、私が提起した時代も、その事態については明らかだったんです。その時点で言っている私の事実指摘と今の指摘はほとんど変わらないんですよ。その間に、老朽化という問題についての問題意識が確かに広まったことは事実です。だけれども、そのときから私は指摘をしていたわけで、別に今日まで、あれから何年になりますかね、三、四年になりますけれども、やはり政令を制定しなければならなかったんでしょう。

 だから、その意味では、おっしゃるとおり、より顕著に徹底してというのはわかりますけれども、もう少し反省は要るんじゃないかと率直に言うと思うということですよ。悪いと言っているんじゃないんですよ。だけれども、前から言っているんですから、今になって何か細かく云々かんぬんとかいろいろ言う、その言いわけが要らぬのじゃないかと率直に思います。

 そこで、では予算面ではどうかという問題について少しお聞きしたいと思うんです。

 市区町村は、財政は相変わらず厳しいです。私は、三月の十五日、それから四月三日の当委員会において、笹子トンネルの事故に関して、事故の背景に、中日本高速道路会社が、要補修損傷件数が五年間で五倍と大幅に増加しているにもかかわらず、維持補修費はほとんど横ばいで、維持補修費が事実上抑制されていることを指摘しました。その背景に、道路公団民営化に伴って、改修、更新の費用を三割減とする方針、計画があったこと、その削減計画は当時の自公政権のときで、政治の責任は重いと指摘しました。

 昼間に何か前政権のという話がありましたけれども、そうじゃないんです。自民党政権時代からそういう削減計画があったんです。それを私は指摘しました。

 しかも、この維持管理費の削減方針は高速道路に限りません。市区町村への補助の引き下げにもあらわれました。経過を若干振り返ると、小泉内閣の時代に選択と集中と称して、ダムや高速道路、巨大港湾事業、そして都市再生事業など、新設の大型事業に重点化して予算を集中することが図られました。その一方、地方自治体への補助を初め、維持管理費用が削減のターゲットにされてきました。

 小泉内閣の麻生総務大臣が、「国庫補助負担金毎の見直しの考え方」という中で、公共投資関係費に係る国庫負担金は国家的なプロジェクト等根幹的な事業などに限定することが必要。特に、1市町村に対するもの、2補修、修繕、局部改良等に係るものには原則廃止、縮小するとしたんです。

 ここに問題がある。社会資本の補修・修繕費用は減らせという圧力になったことは間違いありません。

 当時の方針は現在どうなったのか、総務省にお聞きしたい。

○坂本副大臣 委員御指摘の内容は、平成十五年六月に閣議決定されました経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三において、官から民へ、あるいは国から地方への考え方のもと、国と地方の明確な役割分担に基づいた自主、自立の地域社会から成る地方分権型の新しい行政システムを構築していくとの方針に基づいて策定されました国庫補助負担金等整理合理化方針に沿って、当時の総務大臣が経済財政諮問会議に提出したものでございます。

 地方公共団体の維持補修費の決算額は、三位一体の改革による地方交付税の抑制の影響もあり、平成十八年度までは減少傾向にあったということは、これは事実でございます。しかし、その後増加に転じております。

 総務省といたしましても、地方公共団体が管理する道路や橋梁等の社会資本について、適切に維持補修を行うことは重要な課題であると認識しております。地方財政計画における維持補修費も、平成二十五年度以降は増加をしているところでございます。

 総務省といたしまして、今後とも、地方公共団体が適切に社会資本の維持補修を実施できるよう、交付税等も含めて必要な財源措置を行うよう努めてまいりたいと思っております。

○穀田委員 私は、その前の方の話は、文書に書いていますから、知っています。それに基づいて十八年までは減らされたんです。ただ、その後の需要があって、結果としてはふえたということも知っています。

 問題は、こういうやり方自身を、官僚の皆さんは、こういう方針があれば、そのやり方が撤回されていない以上、必ずまた復活してくるということもあるんですね。例の、九千キロにわたる道路のつくり方の問題についても、やめたと言いながら、実際上は、方針上、政策的にも決定法律事項ではやめたと書かなかったからこそ復活したということを、平気で国交省関係の官僚の方は言っておられますからね。そこは厳しくやらなきゃならぬと私は思うし、こういうやり方を反省すべきではないかと言っているわけであります。

 当時、〇九年の麻生総理の時代に、鳩山邦夫総務大臣は、市町村道の維持補修が単独事業とされたことが大きい、三位一体改革で地方交付税の減額が余りに急激だったために、市町村という弱い方に一番しわ寄せが行ったと、地方公共団体の社会資本維持管理費が三位一体改革のもとで削減されたことを認めたほどなんですね。

 ですから、そのぐらいこの問題というのは極めて重要だったということを私はあえて言っておきたいと思います。その辺は大臣はおわかりかと思います。

 そこで、老朽化対策を進める上で、社会資本の維持更新費にどれだけかかるのか、その試算が極めて重要だということを何回も私はこの委員会で指摘してまいりました。

 国交大臣は、質疑の中で、国交省が〇九年度の国土交通白書で示した更新費百九十兆について、「百九十兆というのがひとり歩きするのは、基本的にざっくり言いますと、五十年で全部壊れるから、全部つくり直すということの合計が百九十兆というようなことに近い数字である」、こう述べました。そして、もっとメンテナンス技術を向上させれば、山が低くなってくるという答弁でありました。メンテナンス技術が向上、それによる維持更新も進めば、更新費はもっと下がるだろうと思います。

 しかし、そもそも老朽化の、先ほど大臣も何度も私との議論の中で言っておられるように、はっきり言って、点検も調査もまだこれからだと。となると、一体どれだけ更新費がかかるのかということについては、もっと精密に精査すべきだと考えています。

 そこで、道路、河川、公園、空港や港湾、下水道などそれぞれ精査しているのかということと、また、どのくらい地方自治体が維持更新費の試算をしているのか、お答えいただきたいと思います。

○西脇政府参考人 お答えいたします。

 まず、維持管理、更新費の将来推計につきましては、現在、審議会の御意見を賜りながら、道路、河川など各施設の建設年度や、これまでの維持管理の取り組み実績などをもとに、情報の整理、分析を進めているところでございまして、引き続き、検討をしっかりと進めてまいりたいというふうに思っております。

 また、どの程度の地方公共団体が将来推計を行っているのかというものにつきましては、審議会が実施しておりますアンケート結果によりますと、費用の推計を実施していると回答した団体が都道府県・政令市で約三三%、その他市区町村で約一一%、推計は実施していないものの、必要な費用の見通しを大まかに想定していると回答した団体が都道府県・政令市で約二六%、その他市区町村では約二〇%という現状になっております。

○穀田委員 一つ言わないことがあるんですが、その中で推計していないというのが全体として八八・一%あるということ、それを言ってくれなくちゃ困るんですよ。いい方の話ばかりせぬと、肝心かなめの問題は、推計をしていないというところが八八・一%あるということなんですよ。

 だから、地方自治体では非常に深刻なんですよ。インフラマネジメントだとか公共施設マネジメントなど、計画を立てて、老朽化対策に取り組みを始めているところもあります。

 例えば、東京の府中市は、市が管理する道路、公園、下水道などの維持管理費が、今後四十年間のコストについて年平均八十億七千万円、学校や図書館など、施設の維持更新コストは年平均六十一億円、近年の一・四倍から一・七倍になると試算をしています。国立市は、公共施設の一九八一年以前に建てられた建物の割合を示す老朽化率が八〇・九%と高く、今後十年間に維持更新費が百九十八億円かかり、七割が不足する。さいたま市は、今後四十年間で百五十五億円の財源が不足する、こういうふうに報告しています。私が若干調べたところでもこれほどある。だから、維持更新費について試算して老朽化対策を始めているわけですよね。

 総務省は、道路関係費などの歳出内訳で老朽化対策としての経費を把握するようにすべきではないのか、社会資本の維持更新費の把握など、国としての支援を強めるべきではないかと思うんですが、いかがですか。

○黒田政府参考人 総務省といたしましても、地方公共団体が管理する道路、公共施設等の社会インフラの維持管理費用にあわせまして、更新費用を把握することは課題であると認識しております。

 しかしながら、ただいまの国土交通省からの御答弁のとおり、費用の推計を行っている団体はまだ少数割合にとどまっているということも事実でございます。

 したがいまして、総務省といたしましては、このような状況を踏まえまして、台帳の整備などを通じました公共施設の老朽化の状況の把握や、効果的、効率的な維持管理、更新のあり方を検討するよう地方公共団体に要請しますとともに、検討の参考となります情報提供等を行っている状況でございます。

 今後とも、このような取り組みを進めながら、各年度において必要な維持更新費用につきましては、その実態に応じまして、適切な地方財政措置を講じてまいることとしております。

○穀田委員 大臣、聞いてほしいんだけれども、今やっていると言っているんだけれども、そんなのは、二年前からホームページ上に維持更新費用のソフトを公開している程度なんですよ。促進に努めているというのが、実態は言っていないんだけれども、それがやっている仕事なんですね。それを何ぼ利用しているかというと、たった百十一自治体なんですね。だから、およそ数字をつかむ事態になっていない。

 だから、大臣がいつもおっしゃるように、データをデータベース化する必要があるとか、いろいろなことを言いますよね。肝心の老朽化対策を重点化するためには、やはり国、自治体の維持更新費の把握がまず必要なんですよ。それに基づいて具体的計画を立ててこそ、私は事業を実施することができると。何も無理を言っているんじゃないんですよ。最低のところまでやろうじゃないかと一貫して私は提起しているということは、もう御承知いただけると思います。

 うなずいているので、次に行きます。

 前回の質疑で、高速道路会社の話なんですけれども、「有料道路分の事業費につきましては、税負担とはなりませんが、お時間をいただければ、整理した上で御報告をさせていただきたい」と答弁がありました。

 整理しましたか。有料道路分の事業中の総事業費、いわゆる新規のための費用及び残事業費は幾らになるのか、お答えいただきたいと思います。

○前川政府参考人 NEXCO並びに首都高速会社、阪神高速の新設、改築事業についての総事業費、残事業費について整理をさせていただきました。

 全体の合計でいきますと、事業中区間の総事業費が約十兆円でございます。そのうち、既に投資した額を除きまして、平成二十五年度以降の残事業費が、半分の五兆円という数字でございます。

○穀田委員 この間のときには、今言いましたように、修繕の費用というのは八兆円とありましたよね。それは、うなずいておりますから、そうです。これは、今ありましたけれども、新規の事業とは違って、要るわけですよね。八兆円というのは日常修繕の費用なんですよ。大規模修繕や更新費用については入っていないんじゃないのか。

 では、聞きますが、実際に道路会社が試算した大規模修繕、更新費用は幾らになりますか。

○前川政府参考人 お答えいたします。

 大規模修繕、大規模更新等の老朽化対策に必要な費用については、各高速道路会社が有識者委員会を設置して検討を行っておりまして、NEXCO三社で五・四兆円、首都高速で七千九百億円から九千百億円、阪神高速で六千二百億円、合計で約七兆円弱が必要であるという試算が出されております。

○穀田委員 三社が管理する高速道路は、合計で約八千七百キロメートルに達しています。そのうち四割が、開通後三十年以上経過しています。二〇五〇年には三社の道路全体の八割が開通後五十年以上になり、計画的な老朽化対策が急務となっています。

 二〇〇五年の道路公団民営化を決めたときの計画では、旧公団時代に抱えた約四十兆円の借金を五〇年までに全額返済し、その後は道路を無料開放することになっています。ところが、これには、大規模な改修を行う費用は盛り込まれていない、道路補修程度の予算しかないと言われています。旧道路公団時代も含め、本格的に老朽化対策を見込んだことはなかったということらしいんですね。実際に、大規模修繕、更新費用は道路保有・返済機構との協定には含まれているのかどうか、お答えいただきたいと思うんです、一言だけ。

 その上で、では、どうするかという問題にこれはかかってくるわけですよね。私は、有料道路分の事業費を根本的に削減すれば、計画どおり賄えると。北海道新聞は、「問題は財源だ。」ということをその社説で述べていて、そして、「設計段階などにある建設予定路線の妥当性を再吟味し、一部を凍結して浮いた費用を充てることも検討すべきではないか。」ここまで述べています。私のこの間一貫した主張と同じだと思うんですが、この際、そういう方向を選択すべきじゃないか。

 この二つ、お答えいただければ幸いです。

○前川政府参考人 最初の、大規模修繕、大規模更新が保有機構との協定に含まれているかということについてお答え申し上げます。

 現在の協定には含まれておりません。

○太田国務大臣 全体的な試算をしていくということは極めて重要だというふうに思います。そこをどういうふうに、償還ということも含めてそれから後どのようにしていくかということは、まさに私も大事なことだというふうに強く思っておりまして、今、国土幹線道路部会で、三月までということだったんですが、おくれておりますが、おくれているというのは、それだけ慎重に、また非常に広範にわたるということで計算をしているということでありますけれども、そこを幹線部会で幅広く検討していただいて、これからどういうふうに本格的な償還の財源、そしてまた、その後の維持更新についてどうするかというのは、その答申を受けて判断をしていくということにしたいと思っているところです。

○穀田委員 私、答申を受ける前に、実際には新聞紙上などでは先延ばしする方針を固めたということまで報道されているから、心配して言っているんですよ。

 今大臣からありましたように、試算も含めてきっちりやらぬと大変なことになるということですわね。しかも、今局長からお話あったように、この協定の中にはもともとないんですよね。だから、そういうことに立って、ではどうするかといったときに、やはり白紙から議論しないと、とにかくつくり続ければいいとかという話では済まない問題があるんですね。

 その当時の責任は責任ではっきりさせるということと、同時に、予断を持ってやらずに、やはり私が述べたことなんかも選択肢の一つとして入れてやらないとだめだと思うんですね。

 北海道新聞の社説は、その後段で次のように書いているんです。「今後の高速道路建設は、国と都道府県が建設費を負担する新直轄方式が中心となる。 政府・自民党は国土強靱化を掲げ新規建設に力を入れる構えだ。だが、路線が増えれば更新・維持費用もかさむ。国際社会からも批判を浴びる財政難を忘れてはならない。」こうも述べています。

 ですから、繰り返しますけれども、私は、高速道路に限らず、ダムや新幹線、港湾などの新規の開発事業は抑制し、防災、老朽化対策としての維持更新事業へ公共事業政策全体を大きく転換すべきだということを改めて要求しておきたいと思います。

 次に、今度は違う話をします。

 地下街等の水防問題について次に述べます。

 都市型の集中豪雨で、地下街等での水害も大きな問題となっています。地下では地表の天候が把握しにくく、また停電で真っ暗になることも考慮しなければなりません。そして、地上の洪水が大きな水圧を伴って押し寄せることで、この間犠牲となられた方も多いわけです。

 二〇〇五年の水防法改正で、全国千三百四十二の自治体で浸水想定区域が指定されました。洪水ハザードマップの公表が義務化されましたが、公表は九五%、六十八の自治体が公表されていません。また、その浸水想定区域内にある八百七十三カ所の地下街等では避難確保計画が義務づけられました。しかし、作成を義務づけられた避難確保計画が実際に作成されているのは、ことしの三月三十一日現在で四百八十七カ所です。五五・八%、約半数で避難確保計画が未作成です。

 今回、その八百七十三カ所の地下街に自衛水防団の設置を義務づける法改正が提案されています。避難確保の計画すらできていないのに、自衛水防団を法律で義務づけただけで進むんだろうか、なぜ計画ができないのかなどの問題点について、現場での声に耳を傾け、丁寧に援助しなければ、絵に描いた餅となりはしないか、私はそう危惧するんですけれども、大臣、その辺、いかがですか。

○足立政府参考人 御指摘のとおり、浸水想定区域内に地下街がたくさん存在しておりまして、先ほど御指摘のような計画の作成状況になっているということでございます。

 それらについては、しっかり我々もバックアップして、計画の作成ができるように自治体を支援していきたいというふうに考えてございます。

○穀田委員 これは、この間もやってきていて、この程度までしか進んでいない。深刻さがちょっと感じられないという気がするよね、はっきり言って。

 私は、幾つかの地下街を見て、意見を聞いてまいりました。ですから、きょうはもう、浸水防止対策、避難確保、水防団員の安全確保のための若干の具体的提案をしていきたいと思っています。

 一つは、関係者の話では、地上から雨水などが流れ落ちてくる階段においては、避難がほぼ不可能と言われています。消防署の職員の訓練でも、膝の高さで上れないとのことでした。そこで、地上への通路が多数ある地下街では、安全な通路への正確な誘導が鍵になります。その際、当然、放送施設が大きな役割を担います。変電施設が地下にあって浸水時には停電し、使えないことも考えなければなりません。

 京都市の、ある地下街の避難誘導計画では、メガホンを六台使ってやるとなっています。ここのところは、三十九カ所ぐらい出口があるんですね。六台のハンドマイクなんです。その上で、避難誘導計画の中には、将来課題として、非常用電源回路を別ルートで配備することが理想だと。それから、浸水センサーも将来課題としています。国は電池式の拡声機でよいとしているわけですけれども、バックアップ電源の配備や正確な状況把握のための浸水センサーなどの整備に積極的に補助をすべきと思いますが、いかがですか。

○太田国務大臣 地下街というのは、水の流れが閉鎖空間である上に速くて、そこはほかのところの防災とはちょっとスピードが違うと私は思います。去年の十月二十九日にサンディが襲来をして、結局ニューヨークの地下街が相当やられたということの知見というのをもう一遍吟味しなくちゃいけないというふうに思っておりますけれども、日本において、この地下街というものをどういうふうに水害から守っていくかということを本格的にやらなくてはいけない。もう一遍、翼を広くしてやろうというふうに私は思っているんです。

 具体的なきょうの御提案の、バックアップ電源や浸水センサー等の設備の整備がほとんどないということについては、これは促進が非常に大事なので、促進できるようにということで進めてまいりたい、このように考えています。

○穀田委員 結構だと思います。

 事務方が答えると、大体、防災・安全交付金の話が出てくるはずだったんですけれども、やはり政治家はそうでなきゃなりませんよね。やはり促進するということなんですよ。あれこれ金の話じゃなくて、まず政治的立場、政治的推進、そのことが大事だと私は改めて思いました。ですから、何も私、あれこれけちをつけているんじゃなくて、これをやろうということを言っているわけです。

 次に、地下施設からの避難誘導のための国のサポートについてであります。

 同じ地下施設でも、地下駐車場などでは、施設に比べ人員が少なくて、誘導班を組織すると言うけれども、手が足りないのではという不安があります。しかも、駐車場というのは、自動車で避難したいという方もおられる。それで、水没させたくないという気持ちもあるドライバーに対して、人命の観点から、短時間での徒歩での避難誘導が求められるわけだけれども、一人一人に応対するという意味でも、施設に比べて人員の少ない施設では課題がある。

 また、介護施設などでは、要介護者に比べて職員の人員が少なくて、支援を求められる。ある施設では、警報の出そうなときは宿直の職員をふやすんだそうです。また、地域の避難所とするかわりに避難を手助けしてもらう協定を結んでいるということもおっしゃっていました。いずれにしても、関係職員の少ないところで、避難誘導への支援を考えるべきだと思うんです。

 特に聞いたのは、火災訓練はあるけれども、水防訓練はなじみがなくて、どうすればよいかという声も寄せられました。私は、帰宅困難者対策の際にもここで問題提起しました。この避難確保計画にも障害者の避難誘導の訓練を盛り込む必要があると考えています。

 国土交通省や政令市などの計画作成を支援するための手引書などは示しているわけですが、それによると、災害時要援護者への介助と叙述しているだけなんですね。横浜市では、災害時要援護者を見かけた場合には迅速に避難誘導と書いている。名古屋市では、高齢者や身体障害者等には周りに協力を求め、手をとって避難する、若干具体的ですけれども、この程度なんですよ。これでは大変なことになると私は率直に言って思っています。

 したがって、このような現場の悩みや不安に耳を傾けて、先進事例なども紹介し、不安解消に努めるべきだと思いますし、具体的には、障害者も含めた避難計画となるよう指導を強化すべきではありませんか。

○松下大臣政務官 委員御指摘のとおり、地下街等におけます避難の際、身体障害者や高齢者等に対して特に配慮することが重要だと認識しております。

 地下街等につきましては、平成十七年の水防法改正におきまして、避難確保計画を作成することとされてございます。先進的な取り組みとして、京都駅ビル専門店街ザ・キューブ、そして梅田地下街等がございますが、身体障害者などに対する特別の配慮が規定されてございます。御案内のとおりでございます。

 国土交通省といたしましても、このようなモデル的な事例を広く情報提供する等によりまして、今後とも、身体障害者等への配慮が一層進められていくよう努めてまいりたいと考えております。

 また、今回の改正によりまして、これまでの避難確保計画の作成に加えて、浸水防止計画の作成や避難等の訓練の実施も義務づけることとしております。要は、実践的な訓練を通じて、障害者等への配慮について実効性があること、効果があることということを肝に銘じて取り組んでまいりたいと思います。

 以上です。

○穀田委員 私は何度もこの問題を言っているんですけれども、本当に一人一人の方の身になって考えていただかないと、電気は切れるわ、水は上がるわ、それこそ大臣もおっしゃったように、狭い空間だ、スピードは速いというときに、ほんまにこれで対応できるのかということは、机上の話では絶対ないんですね。だから、最悪の場合を想定してやるということについて、本当にこれは手を打たなきゃならぬということを心してほしいと思います。これもうなずいていらっしゃるので、やってほしいと思います。

 それから三つ目に、水防団員の安全確保についてもちょっと指摘したいと思うんです。

 東日本大震災ではたくさんの公務員が殉職されましたが、その中で、消防職員は二十七人、警察官三十人、消防・水防団員二百五十四人。うち、水防活動中の水防団員の殉職は百九十六人と桁違いに多いんですね。

 この犠牲を教訓として、津波から水防団員の安全確保など、水防法が改正されましたけれども、どう書いているかというと、水防活動従事者の安全確保に考慮したものでなければならない、こう書いているだけで、極めて一般的なんですね。この法改正で自治体の長や水防団長の責任は重くなりましたけれども、それで事足りるのかと私は懸念を持ちます。

 今後、地下街での水防活動において、計画を作成し、訓練を行って自覚が高まれば、一層逆に、当然、使命感を持って奮闘される。とても皆さん、献身的にやられるわけですよね。その意味で、水防団員や自衛水防団員の安全確保へ、せめて最低限、ライフジャケットの着用や班ごとの防災無線の携帯を援助する必要があるんじゃないかと思っています。

 もう一つ、退避指示を的確に行える責任者の配置、あるいは消防職員との緊密な連携など、こういうものをやらないとなかなか、先ほどありました、短時間で、スピードを持ってやろうと思うと、これらのことが必要じゃないかと思うんですが、いかがですか。

○足立政府参考人 先ほど委員から御指摘のありました水防法の改正に合わせまして、都道府県が作成する水防計画において、津波や洪水に対する留意事項、それから水防活動時の無線通信機器の携行、ライフジャケットの着用、こうしたことを明記して記述すること等を通知してございまして、これを受けまして、ほぼ全ての都道府県におきまして、水防従事者の安全配慮が水防計画に現在明記されてございます。

 それから、消防団と水防団の関係についてお話がございましたけれども、多くの地域では消防団が水防団を兼ねてございまして、また、水防団が独自に設けられている木曽川だとか淀川、こういったところでも、水防法によりまして、水防団と消防機関が、水防に関しては水防管理者の所轄のもとに行動することとされておりまして、現場においては極めて緊密な連携が図られているというふうに考えてございます。

○穀田委員 書いただけではあかんです。私が言っているのは、きちんと援助する必要があるんじゃないかと言っているんですよね。

 書いているからと、また防災・安全交付金で請求したらよろしい、そうはならないんですよ。問題は、そういうことが現実に全ての水防団員のところに配付されたかということを確認する必要があるということを言っているんですよ。そこをやってくれなきゃあきまへんで。それはよろしくお願いしたいと思っています。

 次に、もう一つの法律であります港湾法改正についても質問したいと思います。

 港湾法改正の柱の一つである港の防災・減災対策強化について聞きます。

 まず、港湾施設の老朽化対策についてです。

 東日本大震災の際、鹿島や石巻で液状化等によって民間所有の護岸が壊れ、船舶の入出港が困難となりました。東京湾には多数の民間コンビナートがあり、老朽化が進行していますが、東日本大震災の際の液状化並びに護岸等の港湾施設への影響や被害状況について、どのように把握しておられますか。

○山縣政府参考人 お答えいたします。

 東日本大震災におきましては、鹿島港のコンビナートなどにおきまして、液状化により護岸や敷地が沈下するなどの被害がございました。

 一方、東京湾でございますけれども、このコンビナートにおきましては、昨年五月に国土交通省が中心となりまして設置しました、関係省庁が参画いたしますコンビナート港湾における地震・津波対策検討会議において確認したところ、液状化による大きな被害が出たとの報告は上がってきておりません。

 なお、千葉の市原市で製油所の火災が発生しておりますけれども、これは強震動によりタンクの支えが折れて配管を損傷したことによる火災でございまして、液状化とは関係はないというふうに伺ってございます。

 以上です。

○穀田委員 民間所有施設の状況についてはどうですか。

○山縣政府参考人 先ほど申しましたコンビナートの施設、特に護岸のところは民間の施設でございまして、それを含めて先ほど報告させていただいた次第でございます。

○穀田委員 例えば、あなた方が検討を依頼した、関東整備局などが依頼している、そういう有識者会議などの座長をやっている方などは、衛星なんかで見ますと、少なくとも東京湾の後背地、護岸だけじゃなくて後背地の方で見れば、地下のところでの液状化状況が見られるという報告を出しています。

 問題は、私が言っているのは、護岸だけじゃなくて後背地もあるわけだから、それはつかんでいるのかということを言っているんです。

○山縣政府参考人 失礼いたしました。

 敷地の話でございますけれども、敷地につきましては、大きな液状化の被害はなかったというふうに聞いてございます。したがって、若干の液状化はあったという報告は聞いてございます。

○穀田委員 民間所有施設なんですよ、私が気にしているのは。

 今局長がおっしゃっているのは、護岸とその後ろ、ちょっとだけなんです。もっと後ろはいろいろな被害が起きている可能性があるということを指摘していて、あなた方が依頼したりしている浜田さんという早稲田大学の教授は、その中まで入れなかったから実情がつかめていないということをわざわざ言っているわけですよね。

 確かに今回は大きな被害に至らなかったとしても、東京湾岸というのは埋立地なんですよ。多くの液状化がこの間発生している。例えば、川崎市でも、東扇島では約四千平方メートルにわたって液状化が見られ、道路や公園で亀裂が発生、護岸が約二十センチメートル海側にせり出したと報告されています。

 そして、今後、首都圏で非常に強い地震が発生した場合に耐えられるのか。今回の地震による液状化や側方流動、水平に移動するあれですよね、そういうのが新しく起きているという、その全容を把握していく必要が私はあると思います。

 そこで、これまで民間のコンビナート内の施設について、どれだけ老朽化が進行し、どのような危険があるのか、報告を求めたり調べることさえできなかった。国として港湾地域の安全を守る責任を果たしてこなかったと言わなければなりません。今回の改正は、この反省を踏まえて、民有地に立入検査できるようにするわけです。対象となるのはどのような施設か、どのような場合に勧告、命令を行うのか、お答えいただきたい。

○山縣政府参考人 お答えいたします。

 現在のところ、民間事業者が管理する港湾施設の現状を把握する制度がないということでございまして、先ほどの議論にございます液状化による被害の詳細までは把握していないというのが実態でございます。

 このため、今回の港湾法の改正におきまして、民間事業者が管理する港湾施設につきまして、港湾管理者が報告徴収あるいは立入検査ができる制度というものを盛り込んだわけでございます。

 この港湾管理者が行う立入検査の対象とする港湾施設でございますけれども、地震や津波によりまして被災した場合に、船舶の交通に影響を及ぼすおそれの大きい岸壁や護岸などを想定しているところでございます。

○穀田委員 だから、やはりやっていないんじゃないですか。やれていないんですよ。最初にそれを言ってくれなくちゃあかんわけで、さっきそう答えてくれればいいのに。

 だから、現状より一歩前進であることは確かです。今ありましたが、立入調査の対象となるのは航路沿いの護岸に限られる。これではやはり不十分だと私は思うんです。

 新潟地震以前に造成された東京湾それから大阪湾及び伊勢湾などの埋立地の護岸や地盤は、多くの場合、液状化そして側方流動の対策が実施されていない。ですから私は、埋立地では地盤が液状化し、側方流動することで護岸が破壊され、大きな被害が生じると指摘されている文書も読んでいます。

 阪神大震災の際に、神戸のタンクヤードで、護岸並びに埋立地全体が三メーターから四メーター海方向に移動し、配管が壊れ、大量のLPガスが漏れ出しました。幸い爆発炎上には至りませんでしたが、付近の住民が大量避難しました。

 先ほど少し触れましたけれども、正確に言えば、国土交通省関東地方整備局の有識者委員会が二〇〇九年三月にまとめた、臨海部の地震被災影響検討委員会報告書では、東京湾臨海部の埋立地で側方流動により護岸が九メーター以上水平に変位し、護岸が壊滅的被害を受けると試算しています。タンク破損による油の流出、海上火災、長期にわたる船舶航行の規制が起こると指摘しています。

 したがって、護岸だけじゃなくて背後の地盤の液状化対策を含めてチェックすべきではないのか。側方流動で護岸が壊れ、大規模な油流出が起これば、緊急支援物資の輸送もできなくなるではありませんか。その点、大臣、いかがでしょうか。

○太田国務大臣 まさにそこだと思いますね。

 国土交通省と消防庁と経済産業省と、海岸、護岸があって、その後のところがそれぞれ違うということと、民間がそこに入っていて護岸のところにある、ここのところが一体となってやっていかなくてはいけないということにプラスして、そこに液状化という現象が埋立地を初めとして存在する。これらを全部包み込んで、この港湾の安全対策、耐震化を図っていかなくてはならないということを私は本当に思っています。

 そこのところの省庁と、それから対象にする液状化とかそういうことについて、港湾ごとに来る地震波、そして津波の状況が違うということもありまして、ここは港湾という、京浜なら京浜、東京湾、伊勢湾、そして大阪湾、こういうところに従って、その周辺のところをどう強化していくかということを総合的にやっていかなくちゃいけない。

 おっしゃるとおり、今回の法律では、民間のところにまで入るというところまでやったりしています。その多くのところの液状化というところまではなかなか対象にしていないんですが、私の意識としては、そこまで含めて対策を打つということがあって初めていけるのではないかというふうに思っています。

 浜田先生のおっしゃっているようなことは、私はそのとおりだというふうに思っておりまして、そういう意味では、今度は、体制のみならず、地震ということの技術的な知見というものが、液状化に対する知見も含めて、今すごく必要な段階に来ているという認識をしております。

○穀田委員 では、具体的に一つだけ提案しておきましょう。

 今お話があった、総合的に関係諸機関を含めてやらなくてはならぬということは、私は同意見です。

 そこで、先ほど大臣も触れておられた浜田教授は、関係省庁、消防庁もありますけれども、そういうところを含めて、中央防災会議、東京湾岸の一都二県、土木学会、建築学会や日本地震学会、日本学術会議などが協力して、大都市圏臨海部の地震・防災性向上に関する協議会、こういうものを設定してはどうかということを述べておられます。

 私は、この点では国土交通省がイニシアチブをとる以外にないと思うんですよね、これだけ各省庁にまたがっているわけですから。その点だけ一点、いかがですか。

○太田国務大臣 国交省が中心となってここはやって、科学的な、地震対策の技術的な知見ということも含めて、耐震強化ということに乗り出していかなくてはいけないというふうに思っています。

○穀田委員 では次に、港湾法改正のもう一つの柱、産業競争力強化のため、石炭等のばら積みの貨物の輸入拠点の形成に関する規定の追加の問題であります。

 国交省は、二〇一〇年に、穀物、鉄鉱石、石炭の輸入拠点となる国際バルク戦略港湾の募集を行って、二〇一一年五月に十港を選定しました。それぞれ、最大級のバルク船が入港できるように、水深マイナス十七メートルから二十三メートルの岸壁や航路の整備、荷役の機械や関連施設の高機能化などを行う計画であります。

 これまで、約二年弱、どれだけの整備事業を行ってきたのか、今後の整備事業費は一体幾らかかるのか、税金を幾ら投入するつもりか、お答えをいただきたいと思います。

○山縣政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、このバルクの戦略港湾につきましては、二十三年の五月に選定したという経緯がございます。しかしながら、二十三年の三月に東日本大震災が発生いたしまして、この国際バルク戦略港湾の選定が当初よりおくれたということや、あるいは復旧復興、防災対策等を優先していることなどによりまして、国際バルク戦略港湾におきまして、二十四年度予算では新規事業に着手しておりません。

 一方、二十五年ですけれども、福島県に位置します小名浜港におきまして、同港を拠点とする東日本地域への石炭の安定的かつ安価な輸送の実現を目的とした事業につきまして、新規事業採択時評価の手続を現在進めているところでございます。

 それから、全体の事業費という話がございました。

 この国際バルク戦略港湾の選定時に各港からの提案がございましたけれども、選定された十港での今後の事業量は、民間企業が負担する設備投資を合わせまして、二〇二〇年までに約四千億強と見込まれてございます。

 なお、当該事業量ですけれども、各港からの提案額を単純に合算したものでございまして、今後の貨物需要の見通しや民間の企業活動の動向、事業の優先度などを踏まえまして精査する必要があると考えてございます。

 以上です。

○穀田委員 事前にお聞きすると、約四千億円という話は聞きました。大体、民間が半分ぐらい、国の税金が半分ぐらいだろうということでありまして、結局、公共事業が最低でもざっと二千億円かかるということなんですね。さらに、民間が行う事業にも税金の支援ができるということになりますし、それから、十港以外についても、連携港湾に大型船が入港できるように整備する。こうなりますと、税金投入は二千億円では済まないというのが、誰の目にも、それはすぐ計算できる。

 そこで、昨年の日本航海学会で、我が国のドライバルク港湾における政策効果の検証に関する研究、これが発表されているんですね。

 それによれば、木更津港では大水深化のために千五百万立米のしゅんせつを計画しており、約六百億円かかると言われています。これは単純計算で、今までしゅんせつに一立米何ぼかかったかというもので掛け算したら、これだけなんですね。大型、大深度の航路の整備費用を負担するのは国と自治体であります。一方、物流コストはどのぐらい削減効果があるかということについて言えば、約十億円から十二億円と試算されているんだそうです。そうすると、多額の税金を投入して十分な効果が得られるのか、冷静に検討しなければならない。

 それだけの費用をかけて整備し、この港を利用するのはどういった企業なのか、簡単にお答えください。

○山縣政府参考人 お答えいたします。

 国際バルク戦略港湾の取り組みを通じまして、物流コスト低減の便益を直接受ける具体的な企業といたしましては、三つの品目があるわけですけれども、石炭につきましては、石炭火力発電所を有する電気業あるいは自家発電設備を有する化学工業など、それから鉄鉱石につきましては、製鉄所を有する鉄鋼業、それからトウモロコシにつきましては、畜産飼料を生産する飼料製造業やコーンスターチなどを生産する食料品製造業などが挙げられます。

 以上です。

○穀田委員 そこで、今お話があった、利用する主な荷主ということになりますので、資料を配付しました。国際バルク戦略港湾を利用する主な荷主ということであります。

 結局、恩恵を受けるというのは製鉄会社や電力会社など大企業、港湾と航路整備に巨額の税金が投入されることは確実、この二つだけははっきりしている。ところが、大企業を応援して、国民に還元される保証があるのか。

 例えば、物流コスト低減という話を見てみますと、輸送にかかる費用は低減するということは確かに書いているんです。ところが、物流のコストの削減が本当に確かかというと、今でもそうですけれども、円安、円高に振れますね。そうすると、コストそれ自身は乱高下しますから、そんなに簡単に、定量的に、これだけもうかる、効果が得られるというのは余りないんですね。推計したらこれだけだというので、先ほど述べた研究には大体十億円から十二億円と試算されている現実があるわけです。したがって、こういう形で大企業を応援しても、国民に還元される保証は何もないと言わなければなりません。

 大体、今後いつまでも大量の穀物や石炭を海外から輸入し続けるのかということも真面目に考えなければならない。今行うべきは、食料並びにエネルギー政策を転換して、計画的に自給率の向上を進めることが私は大事なことじゃないかなと思うんですけれども、その辺の御意見を、最後、大臣に。

○太田国務大臣 国際バルク戦略港湾で物流コストを引き下げる、世界の港湾ということも、ハブ港湾が逃げている、水深が非常に低い、一旦持ってきても、それを陸揚げするというのが大変困難であるというようなことがありますから、石炭、鉄鉱石、トウモロコシ、こうしたことがこれからどれだけ入ってくるのかというようなことは、また別の次元のお話だと思います。それはエネルギー全体の問題だと思います。

 ただ、現在置かれている日本の港湾が、水深が非常に浅くて、一旦そこでばらけてというようなことで、なかなか世界に伍するというわけにはいかないということで、そこで、同じ石炭量、鉱石量が入ってきても、最初から小分けしていくというよりも、水深のあるところに一旦入れて、そしてコストを下げて、それが全国に広がっていくということは私は有意義なことだというふうに思います。

 ですから、特定の大手企業のみが恩恵を受けるというようなことよりも、日本全体としてそういうことは必要であるという観点に立って、この国際バルク戦略港湾を十指定し、それを強化しようというのが、これまでのこの数年間の要請に従っての流れだというふうに私は思っています。

○穀田委員 港の水深の問題は、バルク港湾だけでなくて、国際戦略港湾、その前はスーパー中枢港湾と言って、何回も何回もやって、それで百何港を指定し、今度は何ぼ指定しとやって、どれだけ税金をかけてきたか。その反省は全くないということの証明みたいなものだと私は思うんですよね。

 確かに、量をたくさん積んできたら、それは若干低減されるということについては誰も否定していないんですよ。ただ、問題は、それが国民的な削減効果に当たるのかということについては、それほど効果があるとは思えないという学者の意見もあるということを私は言っているんですね。

 ですから、最後に私は、はっきり言うと、国際バルク戦略港湾の整備に、先ほど、私と局長の話でいうと大体四千億ぐらいだろうと言うんだけれども、私の試算で、もっとかかるだろうとしているわけですね。したがって、幾ら税金を投入するのかさえ国民に明らかになっていない。

 今述べた、大量輸送でコストが安くなるというけれども、本当に国民の利益になるのか。多額の税金を投入して、結局、穀物メジャーや資源メジャー、輸入商社を初めとした大企業の利益を確保して、大企業に都合のよい港づくりにつながるおそれが大きいと言わざるを得ない。

 だから、こうした国際バルク戦略港湾政策を推進するための本改正案には賛成できないと政策の見直しを求めて、きょうはこの程度にして、質問を終わります。