国会会議録

【第183通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2013年5月8日)



○穀田委員 国土交通省は、四月一日の入札から適用される二〇一三年度公共工事設計労務単価を発表しました。

 全国全職種平均では単純平均値の前年度比プラス一五・一%、鉄筋工でプラス一五・四%、型枠工でプラス一五・六、普通作業員で一六・七、大工一六・一、左官一六・六など、大体一五%から一六%の引き上げを行いました。設計労務単価の公表を開始した一九九七年度以降、初めて二桁の大幅引き上げとなりました。

 そこで、国交省は、この設計労務単価の引き上げが建設労働者の賃金引き上げに反映されるよう、建設業界四団体、さらに官民の発注者宛てに要請書を出しています。大臣も、四月十八日、建設業界団体に対して、賃金の引き上げなどを要請したと報道されています。

 大臣が建設労働者の賃上げを要請した理由、そして建設業界の反応はどうだったのか、このことをまずお聞きします。

○太田国務大臣 御指摘のように、現在の実勢価格をより適切に反映するということで、なかなか労務単価というものが実勢を反映していない、発表するのも年に一回というようなこともあったり、タイムラグもあったりします。できるだけ実勢価格を反映するようにということで、労務単価を上げさせていただきました。それが本当に現場の職人さんを初めとする方々の賃金の上昇になるということがなくてはならないと私は思いまして、それは数度にわたって要請をしたわけでありますけれども、四月十八日の日に建設業界四団体に集まっていただきまして、そのことを要請したところでございます。

 特に、近年の建設投資の急激な減少に伴って企業の経営環境が悪化する、あるいは、賃金などの労働条件が悪化する、必然的に若い入職者が大幅に減少する、技能労働者の高齢化が進んでいるというようなことがありまして、建設業界全体が弱くなってきているということもありましたものですから、労務単価を上げるということが現場にしっかりあらわれるようにということで、またあわせて社会保険への加入の徹底が行われるようにということを含めて、現場に徹底するようにということを要請したわけでございます。

 社会保険への加入の徹底という、その項目が大事だというふうに思っておりまして、その辺は、いわゆるアルバイトのような形で使うということのないように、保険に加入するということも要請したところでございます。

 業界は、これの趣旨に賛同いたしまして、業界挙げて取り組んでいくという強い決意を直接伺いました。また、四団体におきまして、適切な賃金水準の確保に向けた決議を行うということで、日建連と全建は、組織として四月末に決議が行われ、ほかの二団体についても、近日中に決議という形で行うということを伺っているところでございます。

 建設業界内で問題意識が共有されるということが私は一番大事だというふうに思っておりましたが、その点についての問題意識は共有されて、取り組みが確実に前進するということを期待し、要請をしているところでございます。

○穀田委員 大事な点だと思うんですね。

 ただ、私どもは、今、社会保険の未加入問題というのは、もともとそういう金が下におりていないということが問題であって、そこは意見を異にします。

 やはり、設計労務単価の引き上げについて言うならば、先ほど大臣もありましたけれども、これまでのやり方というのは、公共工事のコスト削減を事実上最優先して、九七年からずっと下がっているんですよね。工事の品質や技能の継承に欠かせない技能労働者を養成する、育成するということについて加味してこなかったという問題点があったと思うんです。したがって、それを今回見ていこうということは当然だと思うんですね。

 あわせて、大臣、一番最初にありましたように、本当に現場に、引き上げられた労務単価が建設労働者の賃金の引き上げに正しく反映するよう大臣が建設業界に要請した点は、一定評価できると率直に申し上げたいと思います。

 問題はそこからなんです。

 賃上げの要請をしたら、確かに決議が上がった、賛同してくれた、ではうまくいくか、ここなんですよね。それはお互いに、その点だけでうまくいくとは思っていないということだと思うんですね。どうやって賃上げを実現させるか。賃上げの実現する確実な保証、担保されるか、ここが問題ですよね。

 したがって、大臣は、どうやって要請に応えてもらうつもりか。そして、建設労働者の賃金が引き上がったかどうか、実施状況、また、元請業者や専門工事業者、下請業者等が建設労働者の賃上げを実施した履行確認はするのか。確認して実施していない場合どうするのかなど、どういうふうな対策、仕組みを考えておられるのか、そこについてお聞きしたいと思います。

○太田国務大臣 要請をして同意をした、決議もした、その流れが全体的にどう伝わるかということで、まだこれが、契約をし実施するというところの段階というのは、若干おくれるというふうに思いますが、この労務費調査とは別にしまして、現場技能労働者の賃金水準のきめ細かな実態調査を実施したいと思っています。また、各地方整備局に、設計労務単価の引き上げに伴う相談窓口となる専用ダイヤルの設置をしたいというふうに思っております。

 そうした二つ、調査をする、相談窓口をつくるということで、現場にそれが反映するようにということをしっかり監視していきたいというふうに思っているところです。

○穀田委員 先ほど調査という話がありましたけれども、私は、現場、それから事務方にもお聞きしたけれども、その意味で年一回やるという程度の話しかまだされておられませんでした。それから、窓口ということなんですけれども、それはそれなんですね。

 問題は、今私が質問している、どういう対策と仕組みという問題について、やはり応えていないと思うんですね。私はあの文書を見ましたよ。技能労働者への適切な賃金水準の確保という点での要請書を団体に出していますよね。官民、それから地方自治体にも出していますよ。その中身はわかっているんです。問題は、その賃上げの要請にどうやって応えてもらうか。それは、末端の技能労働者などに行くまでに重層的な下請構造があるという問題の中で、直ちに応える保証はあるか。例えば、今始まったばかりだと言いますけれども、現実はさまざまな発注が行われているわけですから、履行について、やはりすぐ後追いをすべきだし、きちんと提示してやることなどなんかを含めて、やることは何ぼでもあるんですね。

 だから、私は、何度も言いますけれども、仕組みが大事じゃないかと。調査というのは今までもやっているんです。窓口というのも、それは新たに窓口は、それは来るけれども、来てもらったらいいというのじゃなくて、やはり主導的にそれが実行されているかどうかということを確かめる必要がある。その意味では、やはり仕掛けと仕組みが必要だと思っているんですが、いかがですか。

○太田国務大臣 年に一回というのは、今までの労務単価の調査ということでお答えを、きっと穀田先生にしたんだと思います。私は、その賃金水準のきめ細かな実態調査を現場技能労働者について実施するということは、これとは別の話で、これからしたいということでございます。

○穀田委員 だから、私は、調査は今までやってきたし、それで上がったことはなかったわけだから、やはり具体的には後追いという形で、随時、しょっちゅうするということも含めて必要だ、それはそうなんですよ。だから、私が言っているように、直ちに応えているかどうかということでいえば、今すぐでもできるはずだ、また、そういうことも含めてやらなあかんでということなんですね。

 問題は、今私が、仕掛け、仕組みということを言っているのは、つまり、末端の職人、技術・技能労働者への適正な賃金の取り決め、その賃金が支払われるような、そういう元請事業者などに法令で義務づける仕組み、すなわち、公共工事調達適正化法など、公契約法の制定や公契約条例の推進支援などが必要だと私は考えています。

 そこで、そもそも設計労務単価の引き上げがなぜ労働者の賃金に正しく反映しないのか、その障壁となっている問題を解明し、取り除く必要があると考えます。そこで、私、幾つか提案したいと思っているわけでございます。

 一つは、重層下請構造であるがゆえの問題、わかりやすく言うと、中抜きの常態化というのがあるんじゃないか。

 例えば、東日本大震災の被災地の廃棄物処理、瓦れき処理事業では、瓦れき処理法案をつくり、予算もつけ、環境省が所管し、大手ゼネコンを中心に受注して処理に当たりました。当時、現地の労働者は一日四千円から六千円の低賃金で働かされ、工務店も元請の大企業の言い値でやらされ、放置すれば公共事業の品質にも影響が出かねないという状況にあった。法案に基づく指針、災害廃棄物の処理に係る契約の内容に関する指針に、実際に処理に当たる労働者の適正な賃金確保が盛り込まれました。このことによって、少しはましになった部分もあります。

 しかし、それでも最近は賃金不払いの相談が相次いでいると河北新報は報道しています。それによりますと、仙台市内の建設会社で約二カ月間瓦れき処理に従事し、会社の宿で寝泊まりした。日当から宿泊費や食費を引いた計十数万円が支給されるはずだったが、もらえなかった。会社は、当初、日当九千円から一万円と約束したが、その後、一日三千円を仮渡しし、残りは二カ月後にまとめて支払うと変えたなどなど、いろいろな事例が地元の新聞にも紹介されています。労働者の賃金が、引き上げどころか、減額、未払いが後を絶たない、途中で消えてしまう、こういうこともあると報道されています。これが現実です。

 ですから、中抜きという状態が横行しているのが実態であります。私は、こうした中抜きの常態化を是正するには、まず発注の方法を変えないといけないんじゃないかと。直接工事を実施する事業者への発注をふやす、大手ゼネコン経由とか大手ゼネコン頼みではなくて、地域の建設業、工務店に直接発注する機会をふやすことが必要だと思いますけれども、そのための対策はとっているのか。大臣の所感、所見をお伺いしたいと思います。(発言する者あり)

○金子委員長 静粛にお願いします。

○深澤政府参考人 お答え申し上げます。

 国土交通省の直轄工事におきましては、橋梁の塗装工事あるいは植栽工事など、工事の内容とか現場の状況などを踏まえまして、これまでも、可能なものにつきましては分離発注に努めてきたところでございます。一方、型枠工事、鉄筋工事、コンクリート工事などについては、一連の工事として発注した方が施工管理の観点等から合理的であると考えております。

 また、公共工事の入札契約におきましては、当然のことながら、品質を確保しつつ、一方では効率的な事業執行を通じたコスト縮減も要請されているところであります。したがって、全ての専門工事を分離して発注するということは必ずしも合理的ではありませんが、今後とも、工事の内容や現場の状況等も勘案しながら、適切に対応してまいりたいと考えております。

○穀田委員 そういって起こった事態が先ほどのような事態だということを言っているんですよ。この間の、瓦れき処理の問題をめぐって指針までつくったのは、もともとそういうことが起こっちゃならないからとやったんだけれども、事実は起こっているということを指摘して、仕掛けをきちんとする必要があるのじゃないかということを言っているわけですよ。だから僕は、事務方の答弁は要らないと最初から言っていたのはそういうことなんですよ。

 だから、大臣がそういう事態を、これは少なくとも何回もお互いに現場へ行って、出かけているわけだから、事実はひどいことはお互いに知っているわけですよ。瓦れき処理という一番国がやらなきゃならない問題で、でもそこで低価格、労働者に支払われている賃金がひどいという実態をお互いに認識しているから私は言っているわけですやんか。

 そこで、フランスなどでは、そういう重層下請化が起きていないと言われているわけですね。だから、フランスなんかでいうと、日本のゼネコンのもとで協力会社のような、そういうグループ形成はもともとないわけですよね。発注者が元請を介さずに、一次下請に下請代金の直接払いが実施されているわけであります。だから、フランスだけがうまくいっていないなんていうことはないんですよ。

 だから、別に私は全部やれなんて言っているんじゃなくて、直接発注する機会をふやすことが必要だと思うけれどもどうかという話をしているわけですよね。だから、とんでもないんですよ、ああいうことを言わせるとね。だから、私は、そういう意味でいいますと、きちんとそのことをやる必要があると。

 そこで、建設業界の重層下請構造というのは、現場の労働者の賃金引き上げにたどり着く前に中抜きの仕組みが存在するという問題なんですね。周知のように、重層下請構造、つまり、例えば第一次から第五次までと言われるところ、六次とか七次とかいろいろありますよね、これは大臣もよく御存じのとおりです。だから、おのおのの利益をその次数ごとに乗せれば、末端では賃金が上がらないことになるわけですね。

 だから、これを念頭に置いて、労務単価の引き上げが確実に労働者の賃金の引き上げにつながる仕組みとして、まず最初に末端の職人、技能労働者の適正な賃金の額を取り決め、その取り決められた賃金額が支払われるよう元請事業者などに法令で義務づける制度が必要になるわけであります。同時に、直接賃金水準が確保されるならば、そのような中抜きを可能にしている重層下請構造も形成が困難になるという両面があると私は思います。

 だから、あれほど法定福利費を強調されるんだったら、それと同様に、必要な経費として適切な賃金額を決め、支払わせる仕組みが必要ではないかと思うんですが、大臣、いかがですか。

○佐々木政府参考人 失礼します。まず、私の方から答弁させていただきます。(発言する者あり)

○金子委員長 御静粛にお願いします。

○佐々木政府参考人 ただいま先生おっしゃいましたとおり、まず何よりも、技能労働者の方々に適切な水準の賃金が確実に支払われるためには、元下関係の適正化というのが重要だというふうに考えております。

 このため、従来から国土交通省におきましては、駆け込みホットラインという通報窓口を設けたり、あるいは定期的に元下間の実態調査を行っておりまして、これに基づきまして指導、立入検査等を各地方整備局において実施するということで、不正な取引に厳正に対応しているところでございます。そういったことを今回の労務単価についてはさらに強化しようということで、先ほど大臣が申し上げましたようなことをしようと思っているわけでございます。

 なお、今先生からお話のありました、いわゆる公契約法というものだと思いますけれども、元請に対しまして法的に一定額の賃金の支払いを義務づけることにつきましては、労働者に対する賃金の支払いにつきましては労使間で自主的に決めていくということが我が国では原則でございますので、そういうことで対応すべきかと認識しているところでございます。

○穀田委員 そういう話の後半はまだしていないんですって。法定福利費と同様に必要な経費として適切な賃金額を決める、そういう仕組みをやってもいいじゃないかという話をしているだけなんですよ。

 おっしゃるようにホットラインとかなんとかいって今までいろいろやってきて、それが何の機能もせずに、一番大事な復興にかかわる瓦れき処理だってこういう事態が起こっているという話をしているわけじゃないですか。そういうものの中にある困難性を見て、何とかしなきゃならぬという立場で物を言っているんですよ。

 もう一つ、行ってみましょう。ダンピング受注の問題です。

 国交省も、労働者の賃金低下の原因にダンピング受注を挙げ、その排除を求めています。先ほど指摘した要請書の文書によれば、「近年のダンピング受注により下請企業へのしわ寄せが、技能労働者の賃金水準の低下や社会保険等への未加入といった処遇悪化を招き、これが若年労働者の確保に大きな支障となっている事態を改善するためにも、発注者から元請企業、下請企業を通じて技能労働者に至るまで持続可能性を確保できる資金が適切に支払われることが重要である。」こう述べているんですね。さらに、「このため、工事の品質確保に必要な費用を適切に見込んだ価格による契約締結を徹底し、ダンピング受注を排除する」として、「工事の施工に通常必要と認められる原価に満たない金額での契約を締結してはならない」と建設業法についても指摘しているんですね。

 だから、この「工事の品質確保に必要な費用を適切に見込んだ価格」「工事の施工に通常必要と認められる原価に満たない金額」、これに言うところの「必要な費用」「必要と認められる原価」には労務単価を基準とした労働者の適正な賃金が入っていると思うんですが、どうですか。

 そもそも、ダンピングの中心は賃金を含む人件費なんですよ。その賃金を適正に保障するならば、むちゃな低価格での受注はあり得ない。つまり、適正な賃金を保障することを義務づければ、ダンピングの受注は排除できるのではないのですか。そういう点からも、大臣の意見をお聞きしたいと思います。

○深澤政府参考人 委員御指摘のように、建設会社から技能労働者に適切な水準の賃金が支払われるということにつきましては、これは非常に重要なことだと思っております。そのために、発注者、受注者、専門工事業者など、関係者が情報を共有して取り組むことが重要であります。

 このため、国土交通省の直轄工事で使用する公共工事設計労務単価については、型枠工、鉄筋工など五十一職種にわたり、また、県単位で詳細に公表するとともに、当該単価を使用して厳密に積算していることにつきましても積算基準として公表しております。また、設計労務単価の改定に際しましては、地方公共団体の発注者と建設業団体の受注者双方に、単価の具体的な数値を周知しているところであります。

 さらに、先ほどお話がありましたが、四月十八日には、大臣から直接、建設業団体に対し、適切な賃金支払い等について業界を挙げた理解と適切な対応を要請したところであります。今後とも、技能労働者へ適切な賃金の支払いが実行されるよう、さまざまな機会を通して働きかけてまいりたいと思います。

○穀田委員 答弁というのは、聞いたことに答えてくれなくちゃ。だから僕は、大臣と言っているわけですやんか。それを、あなたが言っておられるのは、要請文書の中に書いている話をしているだけなんですよ。その中にあるダンピングの問題を指摘しているわけですよ。

 だから、欧米ではそういうダンピング受注というのはないんですよ。それはやはり、EUでもそうなんですけれども、雇用保護、労働条件の遵守について調査するということを加えている。それから、アメリカでもデービス・ベーコン法という公契約法があって、建設労働組合の要求する賃金を参考にしている。こういうことがあるから、きちんとできている。だから私は、今言っているのは、賃金を保障することがダンピングを阻止する上でも極めて大事だと言っているわけなんですよ。

 次に、私は、国交大臣が先ほど述べた要請を建設業界にしているわけですけれども、とすれば、これを実質的なものにするために、国交省が音頭をとって政労使の協議会を立ち上げ、元請業者と下請の工事専門事業者などの事業団体、それと技術・技能労働者を組織する労働組合が対等に交渉し、賃金引き上げ等に関する話し合いの場を設けるべきではないか。先ほど事務方からありましたように、労使間双方で決めるということと合っているわけだから、そういう場を設定してやるというのは、ある意味では必要なことじゃありませんか、大臣。

○太田国務大臣 これは、労使が自主的に賃金は決定するということが原則であろうというふうに思います。

 ただし、賃金等の労働条件というのは、労働基準法等の関係法令に反しない限りということが大事だというふうに思っていますが、まずは、労働問題の当事者である労使が十分に議論をすることが私は重要なことだというふうに考えているところです。

○穀田委員 それは大臣、現場をお互いに見ている者として、それでは済まぬのじゃないですか。

 例えば、労働者と言うけれども、あなた方、例えば厚労省なんかが言っているのは、産業別にそれぞれ賃金を決めてくれたら、産業別労働組合がいて、それに対応する産業の企業関係があったらばできる、こう言っているわけです。つまり、今の建設業の実態は、単に労働者というふうな実態だけじゃなくて、一人親方がたくさん存在する。そういうものを全体として包括してやろうと思えば、政治が介入をし、事業者も含めた、そういう方々の代表だとか含めて、話し合いをつくる場を設定するというイニシアチブが必要だということを私は述べているわけです。そういう現実について知っていながら、その程度じゃ困りますわな。

 最後に、ではもう一つだけ言っておきましょう。グローバル化に対応した仕組みの必要性についても少し言っておきたいと思うんです。

 今政府が進めようとしているTPP参加、私ども、これは反対しています。これは、建設業そのものに重大な影響をもたらすことが懸念されています。大臣は、地域の建設業を守る立場からいろいろな発言をしていますが、入札要件として、地元への貢献度などが総合評価方式として実施されている事例がたくさんあります。ところが、TPPでは、これらが非関税障壁として規制の対象となると懸念されています。つまり、入札参加資格として地域要件をつけて地域の建設業を守ることができなくなる可能性がある。ですから、その点は大臣、それでいいとお考えですか。

○太田国務大臣 TPP交渉におきましては、政府機関の調達基準額の引き下げ、これが議論の対象となる可能性があるということだと思います。

 現在はWTO案件で十九億四千万円、これが下がるという、そうした可能性が、議論の対象となる可能性がある。もし下げられるというようなことになった場合に、入札参加資格として、御指摘のように地域要件というのを付与するように今までなっているわけですが、これを付与することのできる工事が減少するということになりかねない。

 そうしたことで、私は、地域の建設企業の受注機会の減少につながらないように、地域の建設産業の健全な発展ということを念頭に置いて対処していきたい、こう思っています。

○穀田委員 これは、残念ながら、安倍首相がお話しになっているように、守るべきものは守るというような話と大して変わらないんですよ。守れないんですよ、それでは。下がる、そして、その要件は非関税障壁として言われる可能性があるから私は言っているんですよ。

 そこで、私が最後に提案しておきたいのは、TPPでは、貿易と投資の奨励のために労働規制を緩和することは不適切であるということで、現行の四カ国の協定で規定されています。つまり、公契約法を制定することになれば、労働者の賃金水準の確保を入札要件とすることは非関税障壁として規制の対象にならないんですね。だから、地域産業を守る上でも、私は、公共工事調達適正化法など、公契約法の制定を進めるべきだと。この面からも私は対抗するためには必要だ。

 もちろん我々は、この参加交渉に反対ですよ。だけれども、現実にそういうことを守ろうと思えば、さまざまな要件を付与したらそれでやられるということじゃなくて、法律として制定をすればきちんと守ることができる。ILOの九十四号のそういう勧告にも、それから八十四勧告にもある。そういったことをしっかりやればできるということも含めて、提起しておきたいと思っています。

 私は、時間が来ましたから、今のそういう深刻な実態というのをお互いに共有している、その点はいいと思うんです。問題は、それを打開する肝心かなめの問題は、労働者の末端における賃金が上がるかどうか、これをお互いに、それは責任を持とうじゃありませんか。

 しかし我々は、その仕組みも必要だ、そういうものをしっかり見張る仕掛けがなければ、それは、やはり幾ら言っても、窓口をつくった、調査をしたというだけではだめなんです。法令化をする必要がある、このことを改めて主張して、質問を終わります。