国会会議録

【第183通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2013年4月26日)



○穀田委員 私はまず、日本航空、JALの不当解雇問題について聞きます。

 私は、航空の安全問題といえば、この間も大畠元大臣から引用いただきましたけれども、絶対安全、安全が大前提の考え方と実践が航空会社の経営にとって必要だと一貫して主張してきました。

 その立場から、日本航空の真の再生というのは安全性と公共性の確保が必要であって、それは政府の責任でもあるということを強調しましたし、特に、利益なくして安全なしというJALの経営責任者であった稲盛氏の安全軽視の経営手法については批判してきたところであります。安全を直接担い、実行するというのが働く人々であり、その意味で、大量の人減らしや整理解雇は航空の安全運航を軽視するものだと考えています。

 稲盛氏は、講演の中で、整理解雇は経理上必要なかったとお話しし、裁判でも証言しましたが、全く必要なかったわけであります。百六十五名もの不当な整理解雇が職場のモチベーション低下を招いて不安全事例にも影響していることを、私は事実をもって指摘してまいりました。

 日本航空は、昨年九月、再上場を果たし、異例の早さで再建したと言われています。十三年三月期は、前年の三月期に比べ若干減っているとはいえ、経常利益は千八百億円近くもあります。再上場前から大もうけしてきたわけであります。その最大の要因が、一万六千人もの大量の人減らしにあります。公的資金を投入し、大もうけしているのに、繰越欠損金による法人税控除など、優遇されてもいる。これは自民党などが含めて批判をしてきたわけであります。

 しかし、それにもかかわらず、百六十五名の不当解雇は撤回しない。ベテランを排除し、モチベーション低下や技術的継承もままならない、そんな中で退職者も相次いだ。その一方、新たな路線開設など事業拡張を進め、新たな採用も始めている。ところが、二〇一〇年の大みそかに強行された整理解雇は、いまだに解決していません。

 昨年、前田元大臣は、私の質問に対して「円満な労使関係という意味で、早く円満な解決をしてほしいと願っております。」と述べました。羽田前大臣も、前田前大臣の御意見は承知させていただいております、私としても同じ気持ちでありますと述べています。

 この問題を早急に解決すべきではないのか、そして解雇を撤回するよう日航に指導すべきではないのか。この点の大臣の見解を伺いたいと思います。

○梶山副大臣 日本航空の整理解雇につきましては、これまでの大臣の御見解は承知をしております。

 私どもといたしましても、円満に解決を図っていただきたいという立場で見守っていくという同じ気持ちを持っております。

○太田国務大臣 私も同じ気持ちで、やはり安全ということからいきますと、何といっても機材と、きょう申し上げた安全への改善措置ということは、もちろん何よりも大事なことでありますが、もう一つ、人ということが大事だというふうに思っておりますし、解雇ということに遭った人の気持ちというのは、私は思いをはせているところで、これに限らず、思います。

 しかし、気持ちを持ちながらも、今、司法の場で争われるということもありますから、その推移を見守りたいというのが私の偽らざるところでございます。

○穀田委員 その気持ちを大切にしていただいて、その解決のために、やはり政治が努力するということが必要だと私は思うんです。

 そこで、昨年八月、私、当委員会で参考人質疑を行いました。その際、参考人が、整理解雇の目的は組合幹部の狙い撃ち、または会社にとって不都合な人たちの狙い撃ちだとの発言もあったくらいなんですね。

 私は、今、大臣の発言を聞いて、機材とともに人とありましたけれども、人すなわち現場で自由に物が言える職場をつくること、それを支える労働組合が大切なことは論をまたないんですね。

 日航での人権侵害で行われている退職強要だとか労働組合のスト権に介入する不当労働行為などにつきましては、労働委員会で指弾されている、この事実もしっかり見ないとだめだと私は思っています。だから、ILOの結社の自由委員会から、日航の整理解雇問題で、日本政府に、労使の協議の場を保障するようにということで、二〇一二年六月十五日に勧告が出されています。勧告が出されたのは、被解雇者に現職の労働組合役員が多数含まれていたことや、真摯な労使協議が行われていなかったなどがあるからであります。

 さきに触れた当委員会の答弁で、当時の大臣は、当事者間における協議の実施が確保されることを日本政府に要請するといった内容が含まれている、この点は認めたんですけれども、これは日本航空に限らない一般的な指摘というふうに認識をさせていただいていますなどと答弁しています。私は、これはその項目を含めてきちんと指摘をしているのに、とんでもない話だと思っているわけです。

 ことし二月、ILOの本部で、「日本航空問題へのILO勧告の履行に向けて」、民間航空グローバル対話フォーラムというところで決議が採択されています。そこでは、「日本政府が可能な限り迅速に問題を解決するために、直ちに勧告に従い行動を取ることを強く求める」という内容であります。

 相手方の日本航空も、実は、行政から要請があれば適切に対応していくということを労働組合側に答えているんです。だからこそ、先ほど述べた円満解決云々という答弁を、本当に、しかも重い気持ちで心持ちを受けとめるということになりますと、やはり言行を一致させて労使の協議の場を保障すべきではないんですか。どうですか。

○梶山副大臣 御指摘のILO勧告におきましては、整理解雇に係る訴訟等の結果に関する情報提供を求められているものと認識をしております。本件につきましては、厚生労働省とも連携をしながら適切に対応したいと思っております。

 なお、勧告においては、今委員御指摘の、従業員の削減過程において労働組合と労働者の代表が役割を果たせることが重要、そのための当事者間における協議の実施が確保されることを日本政府に要請するといった内容が含まれておりますが、これは、繰り返しになりますけれども、日本航空に限らない一般的な指摘と認識をしております。

 いずれにしましても、日本航空の整理解雇につきましては、現在、司法の場で争われておりますことから、その推移を見守りたいと思っております。

○穀田委員 副大臣、去年と同じ答弁をしているんだけれども、それは四項目あるんです。あなたも引用したとおりなんです。下の方の三項目がそういう話で日本航空の話だ、上の話だけ違う話という、そんなあほなことをよう言えるなと私は思いますね。

 梶山さんはそんなふうに思っていないんだろうけれども、だって、勧告の中身は、そういう問題について、わざわざ日本航空の問題について触れていることの中で言っている話を、そこだけ切り離すなんというのは、それはあきまへんで。自民党の政権の中身も余り、公明党さんが入っておられるわけだけれども、民主党等含めて、その点ではさして変わらへんなということを思いました。

 しかし、次に、ボーイング787問題について聞かなきゃなりません。

 バッテリーの熱暴走が発生するという重大なトラブルを抱えるボーイング787の運航再開という判断が下されようとしていることは見てのとおりです。そもそも、二つの事例が起きて、バッテリーの熱暴走の原因究明と再発防止を検討するために運航停止となったはずであります。熱暴走の原因は明らかになったのかどうか、簡単にお答えください。

○玉木政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカ時間一月七日にボストンで、一月十六日に日本の高松で発生しました787型機のバッテリー損傷事案二件につきましては、アメリカのNTSB、アメリカ国家運輸安全委員会と日本の運輸安全委員会が調査を現在行っております。

 運輸安全委員会の調査及び私どもが聞いておりますNTSBの調査によりますれば、バッテリーの内部のセルが発熱して大きな損傷となった可能性があるものと認められております。しかしながら、現時点では、我々の調査及びNTSBの調査におきましても、これらの事案の原因につきましては、まだ特定されていない状況でございます。

○穀田委員 原因は解明されていないということだ。

 事は重大なんですよ。私は、ボストンの空港でトラブルが発見されたから大事に至らなかったということだと思うんですよね。これがもし太平洋の洋上であったらどうなっていたか、シベリアの上空であったらどうなっていたかということを考えますと、重大な飛行機事故になりかねないことは誰もが容易に想像できるんですよ。

 ボーイング787型の飛行機は、先ほどありましたように世界で五十機、うち二十四機を日本が保有している。ところが、製造したアメリカではたった六機しか保有していないんですね。

 運航再開許可ということは、日本が安全のテストパイロットの役を担わされるということに客観的になるんですね。

 絶対に安全、日本は安全ということと安心ということを両方一〇〇%満たさなければだめだ、これは大臣の言明なんですね。原因がはっきりしていないのに、なぜ安全、安心が一〇〇%満たされたのか、お話ししてください。

○太田国務大臣 先ほど御報告したとおり、ボーイング社は、百項目の想定される原因を全て洗い出しまして、それを絞り込んで八十項目ということにした。その八十項目というのを四つの分類ということで分けた。そこには、原因の分析という内容が四つの分析にはあるわけです。電極ナットの締めつけ状態の劣化と……(穀田委員「大臣、少し短く」と呼ぶ)短く、済みません。

 そうしたことの上に、是正措置として、先ほどから申し上げております三段階、三重のそうした安全措置をとって、何重もの防御措置が講じられるという航空機の、特に今回はそれを重ねて、バッテリーのふぐあいに対して三重の措置を加えるという形にさせていただいたところでございますものですから、きょうアメリカで、そうしたことで再開ということになるという耐空性改善命令が発するということは、一緒に調査をし、一緒にやって調べてきましたから、この是正措置によって万全の再発防止が図られるもの、このように考えております。

○穀田委員 いや、原因もはっきりしないのに、再発防止というのはあり得ないんですよ。それだけは一言言っておきます。

 改善措置を一生懸命とったということについてはわかりますよ。だけれども、再発防止できるという根拠はないんですよ。それは八十項目やったというだけであって、原因がはっきりしないが、熱暴走が起きても封じ込めるから大丈夫だと言っているにすぎないんです。

 だから、安全は技術上の問題であって、安心というのは、わざわざ大臣が安心という言葉を使われたんですよ。大体、三重と言うけれども、原発は五重と言っていたんですよ。ああいうふうに三重だ、五重だなんて言っていて、安心ができるはずはないと私は言っておきたいと思います。

 先ほど大臣もおっしゃっていましたけれども、安心というのは不安がないということなんですね、簡単に言うと。ところが、客室乗務員の方々のお話を聞いていると、787の問題について言えば、外国から乗ってこられる方も含めて、やはり怖いよねと言っておられる、こういう声があるわけでして、私はちょっと違うと思うんですね。

 しかも、リチウムイオンバッテリーというのは、熱暴走が起きる可能性があることは広く知られているんです。

 報道によると、二十三日に行われたアメリカの運輸安全委員会、NTSBのボーイングをめぐる公聴会で、ハースマン委員長は、一月に発生したような最悪の事態を想定した条件で試験は行わなかったと指摘していると言われています。

 だから、設計、製造の段階で問題があったのではないかという不安が払拭できないんじゃないんですか、いかがですか。

○田村政府参考人 米国連邦航空局、FAAは、ボーイング787型機の認証審査の際に、バッテリーセルにくぎを刺して短絡させる等の過酷な試験を実施して、その結果、他のバッテリーセルへの熱が伝播しないということを確認したところでございます。したがって、設計の段階においては、今回のような事案が発生するということは想定しておりませんでした。

 しかし、今般のバッテリー事案の発生を受け、是正措置においては、バッテリーセルの過熱の発生に対する対策に加えまして、バッテリーセルに過熱が発生した場合に、他のバッテリーセルへの熱の伝播への対策等々、三重の防護策を講じることとしたところでございます。

○穀田委員 あなたの話は、三重のことをやっているということを何回も繰り返しているだけなんですよ。質問は、当時の設計段階で問題があったんじゃないかと。そうしたら、何だ、くぎだの針だのというようなことを想定していなかったというような話で、全然、問題の本質をきちんと捉えなあきまへんで、あなた。

 このボーイングは、787型機は、先ほども他の議員からありましたけれども、コストが安いというのが売りなんだそうです。軽量化による低燃費、飛行間の整備、点検が不要。だから、整備士の要らない飛行機というふれ込みなんだそうです。

 現場での実態はどうか。初期トラブルは767型機などと変わらないといつも当局は言うんですよね。ところが、787型機はコンピューター関係のトラブルが多発し、原因不明が多いと報告されているそうです。また、電源入力の場合も、他の飛行機は一時間前でよいけれども、787型機は三時間前に行うのが通例とされていると。全部動かすのに物すごくかかるのですね、時間が。

 飛行間点検に至っては、点検は不必要とされているわけですよね。だから、通常の場合、整備した整備士がパイロットに手渡す航空機搭載用飛行日誌にリリースサインを記入するんだそうです。ところが、確認整備士としてのサインは、当然、これは必要ないわけですから、しない。だから、用紙の中に、手渡しましたよと、物を引き渡したとの確認を行うというようなことまでやっているんだそうです。

 結局、整備不要どころか、従来よりも念入りに点検せざるを得ない実態が報告されています。こういう実態、掌握していますか。あわせて、こういう飛行機なので、これを機会に、私は、型式証明を書面で審査しているから安全だという意味で、結局、製造の国それからメーカー、そういったところ任せにするんじゃなくて、実地検査に至るまで国が責任を持って独自にチェックする制度にすべきじゃないのか。

 この二つ、答えてください。

○田村政府参考人 最初の方の御質問でございますけれども、航空会社は、航空機メーカーのマニュアルに準拠して整備プログラムを設定することが基本となっております。

 ボーイング787型機につきましては、航空機メーカーのマニュアルにおいて飛行間点検が設定されておりませんために、各社の整備プログラムにおいても飛行間点検は設定されておりません。この点について航空会社に問い合わせたところでは、787型機について、整備作業としての飛行間点検は行われていないとの報告を受けております。

 なお、飛行間において、燃料補給量の確認などの作業を、整備部門の職員が実施する場合があるということも聞いております。

 それから、次の御質問でございますけれども、国際民間航空条約等による国際的な枠組みにおきましては、製造国政府であるFAAが、まず第一義的に、設計の技術基準への適合性について詳細に審査をし、型式証明を行うことが義務づけられているところでございます。

 国交省は、ボーイング787型機については、運航国政府として、FAAによる審査の計画と結果の確認等により認証をしているところでございます。

 以上でございます。

○穀田委員 あのマニュアルにはそう書いているんですよ。だから、表面上は行っていないと言うに決まっているんですよ。では、現場へ行って、やっているかやっていないかと聞いたらわかるんですよ。私は、現場からやっていると聞いているんですよ。

 だから、こういう話も含めて、わかりますやろ、大臣。一言だけ言っておくと、こういう問題を含めて、現場の方々の声をしっかり聞かないと、局の局長の話だけを聞いていたら、えらいことになる。だって、事実、今お話ししたように、飛行間整備はやっているんですよ。やっていないと言うんだったら、やっていないという証拠を見せたらどうだと私は思いますけれどもね。現場はやっていると言っているんですよ。

 それは、マニュアルどおりにやらないとまずいから、やっていないと。さっき言いましたように、サインの仕方も別にしているという話をしているじゃないですか。そういう現実を見なきゃならぬと私は思っています。

 そのように、最後、もう一つ質問したかったんだけれども、要するに、こういう問題というのは、例えば八十項目の問題も、大臣がおっしゃっていますよね、八十項目と。これを航空関係者に全部見せましたか。見せていないんですよ。だから、何が行われる、どんな論議がやられているかというのは、現場の人たちはさっぱり知らないという事態なんです。

 現場でやっている方々が航空の安全を一番つかさどっている、そういう立場からいうと、そういう情報公開と型式問題を含めて、日本で独自に行うべきだということを述べて、終わります。