国会会議録

【第183通常国会】

衆議院・予算委員会
(2013年4月9日)



○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 きょうは、政治改革、政治のあり方について議論したいと思います。

 一九九三年、細川政権時代のいわゆる政治改革から二十年になります。このとき決めたことが今日どうなっているか、検証すべき時期に来ています。

 政治改革で決めたことは、政党助成金制度の創設と小選挙区並立制の選挙制度を導入したことです。政党助成金は、赤ちゃんからお年寄りまで国民一人当たり二百五十円の負担、約三百二十億円の税金を毎年政党に助成する仕組みであります。

 総務大臣、政党助成金制度を創設した一九九五年から二〇一二年末まで、累計で幾ら支払われたか、各党にどれくらい配られたか、御報告願います。

○新藤国務大臣 政党助成制度が創設された一九九五年、平成七年分から二〇一二年までの政党交付金の交付総額は、五千六百七十七億円余りであります。

 そして、そのうち、自由民主党に二千五百六十五億円、民主党に千七百十二億円、公明党に四百十九億円、社会民主党に三百三十七億円、みんなの党に三十億円、国民新党に二十六億円、新党改革に四億円、その他で五百七十九億円、こういう状態になっております。

○穀田委員 私たち日本共産党は、思想、信条の自由を侵す憲法違反だとして創設に反対し、廃止を主張してきたので、一円も受け取っていません。

 パネルにしました。五千六百七十七億円という巨額な税金を各党が山分けしてきた。

 当時、リクルート疑獄などで金権腐敗政治の横行に国民的批判が高まり、企業・団体献金を禁止しようというのが国民の要求でした。ところが、政治改革を推進した各党は、企業・団体献金は禁止するかわりに、国民の税金で政党の政治資金を賄う助成金制度をつくり出すということを言い出しました。そして、実際には、企業・団体献金は、政治家個人に禁止はしたが、政党、政党支部には認めるとされ、いまだになくなっていません。

 この政党助成金の導入をめぐって、そもそも政党が税金に依存していいのかという議論が、導入を進めた側からもありました。政党は、憲法に保障された結社の自由であり、政策の上でも自前、お金の上でも自前、自立してこそ成り立つものであります。政党助成金を入れるとしても、税金なのだから過度に依存しないようにしよう、上限を決めようという議論があり、細川総理と河野自民党総裁の合意では、上限は四割とすることになりました。

 その後成立した法律では三分の二を上限とすると書き込まれましたが、政党が税金に依存していいのか、抑制的にしなければならないという議論、九三年当選の安倍総理は御存じですね。

○安倍内閣総理大臣 ちょうど私が当選した平成五年に、今委員の御指摘になった政治改革法案が出たわけでございまして、選挙制度の改革とともに、政治資金規正法の大きな改革が行われまして、我が党でも大きな議論がございました。

 あのときはちょうど我が党の金丸副総裁の問題があった中において、政治を浄化するべきである、つまり、企業・団体献金の比率を減らす中において、税金ではありますが、一人コーヒー一杯ということが言われていたわけでございますが、これを政党を支援するお金として御寄附をいただいた、税金という形で御寄附をいただいて、政党の運営を賄っていこうと。

 ただ、この比率については、過度に国家に依存するべきではないという議論があったのはよく覚えているところでございます。

○穀田委員 今ありましたように、過度に依存してはならないという議論があったことは明らかであります。

 ところが、今どうなっているかということで、各党が総務省に届け出ている報告に基づいて、各党の財政に占める政党助成金の割合をパネルにしました。見てください。皆さんにはお配りしています。

 自民党は、政党助成金がつくられた一九九五年、最初の依存率は五六・七%でした。今日では七二・五%になっています。これは、谷垣大臣が自民党の総裁の時期だが、事実ですね。

○谷垣国務大臣 法務大臣としてはお答えすべきことではないんですが、せっかくの穀田委員のお尋ねですので。

 私も、総務省の平成二十三年度分の政治資金収支報告書の概要というのを見てまいりました。おっしゃるとおり、七二・五%というふうに記載されておりました。

○穀田委員 年を追うごとに助成金への依存度が高まる。税金なしには政党運営が成り立たない状況になっている。七割、八割を占めるのは当たり前になっている。政党とはどうあるべきかが問われています。お金があれば活動する、なければ活動しないなどというものではないはずであります。

 自立しないで政党と言えるのか。官営政党ともいうべき状況を改めて、政党は国民に依拠して活動する、自立するのが当然ではないか。政党助成金を続けてよいのかが問われていますが、総理はそう思いませんか。

○安倍内閣総理大臣 この政党助成制度は、政治改革について議論を積み重ねた結果、政党の政治活動の経費を国民全体で負担していただくこととしたところでございますが、民主主義の発展に重要な意義を持つ制度であると考えております。

 一方、政党の運営の当否は、最終的には選挙を通じた国民の審判に委ねるべきところであることから、政党がその運営においてどの程度政党交付金に依存するかの選択については、政党の自主性に委ねるのが適当であろう、このように思います。

 政党助成制度のあり方については、政党の政治活動の自由と密接に関連していることから、各党各会派で御議論をいただくことになると思いますが、自由民主党としては、特に、野党時代に企業・団体献金が大変縮小したという経緯もございまして、そういう中において政党助成金の割合がふえてきたということもあるのではないかと思います。

○穀田委員 それは、政党助成金はもらうわ、企業献金はもらうわという、両方もらっているということ自体が問題だということを言わなきゃなりませんよ。問題は、税金漬けの政党でいいのかということが問われているということを改めて言わなければならないと思います。

 政治改革の当事者で、当時の自民党の総裁だった前衆院議長の河野洋平さんは、政党の堕落、政治家の資質の劣化が制度によって起きたと、最近繰り返し指摘しています。政党が堕落しているのは制度が原因だと指摘していることが私は大事だと思います。

 今は引退されていますが、政治改革を進めた中心的人物が異口同音に、これは失敗だったと言っていることがあります。森喜朗元首相は、小選挙区制度は間違いだった、渡部恒三氏は、小選挙区制に賛成したのは政治人生の最大の失敗、加藤紘一元自民党幹事長は、政治の劣化、本物の政治家は育たない制度だ、こう述べています。

 諸先輩の、この小選挙区制が失敗だったと言っている発言は極めて重いと私は感じていますが、これらの指摘を総理はどう思いますか。

○安倍内閣総理大臣 当時、私は、小選挙区制度については強く反対をいたしておりまして、今名前を出された当時の森幹事長から説得をされまして、安倍君、君、反対したらだめだ、当時総裁の河野洋平総裁からも、みんなで決めたことは賛成すべきだ、こういうことでございました。

 しかし、そもそも、選挙制度においては、どちらがいいかというのは議論があるところだろうと思いますし、政治資金の問題についても、税金にどこまで依存していいのかどうかということについても、これは委員の御指摘も全く間違っているわけではないと思います。

 これはやはり政党間で、どこまで依存して、御党の場合は全く依存しておられないという考え方を貫いておられるわけでございますが、その中で、どこまで依存していいかどうか。かつては三分の二を超えないということになっていたんだろうと思うんですが、そうしたことを政党間でやはり真剣に議論していくべきであろうとは私も思うところでございます。

○穀田委員 だから、導入者の反省の声というのは私は重いと思うし、総理大臣が、当時、小選挙区制に反対されておられたということも存じております。その意味では、この小選挙区制度がいかなるものであったかということも検証すべき時期に来ていると思います。

 そこで、現行の選挙制度についてただしたいと思います。

 私たちは、選挙制度というのは、憲法の前文にあるように、「正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」と書いています。ですから、選挙はその土台であって、国民の民意を鏡のごとく議席に反映させる制度であるべきだと私どもは考えています。

 現行の小選挙区制は、三百の選挙区で一位になった政党の候補者が当選する仕組みです。最近の三回の選挙結果をパネルにしてまいりました。見てほしいと思うんですね。

 〇五年の選挙では、小泉内閣の選挙です、自民党が四七・八%の得票で七三・〇%の議席を占めた。二〇〇九年の選挙で、第一党の民主党は、四七・四%の得票率で七三・七の議席を占めた。そして、二〇一二年、昨年の総選挙でその乖離は一層広がりました。すなわち、自民党は、四三・〇%の得票率で議席の七九%を占めるに至りました。

 小選挙区制は、第一党に、四割台の得票率で七から八割台の議席を与える制度である。このことが、当時、安倍さんも、これはまずいんじゃないかと反対された理由ではありませんか。

○安倍内閣総理大臣 私も、その論点で反対もいたしておりました。

 それと、当時は、例えば自由民主党においては、現職優先という形にしていくという話だったんですが、それであると、極めて閉鎖的になっていくだろうと。中選挙区制度でありますと、自由民主党の場合は、出たい人は基本的にみんな出るんですね。その中で公認する人もいるんですが、そこで勝った人が最終的に公認になる。非公認の人も、勝てば公認。そういう中でお互いに切磋琢磨していくということになるんです。しかし一方、小選挙区で現職優先になれば、これは新陳代謝が極めて悪くなるという大きな問題があるのではないかということも指摘して、私は反対したんです。

 どの政党に任せるかということと同時に、やはり誰に任せるかということも重要な要素であろうと考えたわけでございますし、同時にまた、当時の、共産党を初め少数意見の方も、五人区であれば一名は当選するという中において、死に票が非常に少ないということも論点であったというふうに記憶をいたしております。

○穀田委員 だから、これはそういう制度の側面があったということはお認めになったということになると思うんですね。

 得票率と議席に乖離がある。第一党が得票率以上に議席を獲得する。そのことは、今総理のお話にありましたけれども、裏返しで言えば、二位以下の候補者に寄せられた票は、過半数を超えていても議席には結びつかず、切り捨てられる制度でもある。つまり、議席に結びつかず切り捨てられる得票、すなわち死に票がたくさん出る。

 総務省の提出の資料によって、パネルにしてみました。昨年の総選挙での全国集計で、投票数の五三%が死に票。三百の小選挙区のうち、死に票が過半数を超える選挙区は何と百八十八選挙区になります。さらに、六割の選挙区で死票が多数になっている、こういう事実ですから、極めて重大と言わなければなりませんし、七割が死に票になるところもある。

 だから、当時、いろいろ議論はありましたけれども、民意を切り捨てて民意の集約などという意見もありました。しかし、まさに民意を切り捨てて民意の集約などと言えるかということが明らかだと思うんです。

 そこで、得票と議席の乖離が大きい、死に票がたくさん出る、小選挙区制が民意をゆがめるという根本問題についてどう考えるのか、公明党の前代表であった太田大臣に聞きたい。

○太田国務大臣 死に票ということでいえば、それは純粋小選挙区制、そしてまた小選挙区部分については死に票が多いということは事実だと思います。

 したがって、現行の制度は、そういうこともありまして、小選挙区比例代表並立制ということで、一番最初に提起されたのは二百五十と二百五十ということから始まって、三百と二百になり、そして百八十というふうに、比例部分が削られてくる。

 民意の集約ということと民意の反映ということのバランスの上で現在の選挙制度はできておりますが、死に票ということについて言えば、小選挙区部分については当然、死に票は多いということは言えると思います。

○穀田委員 死に票が多いということは、簡単に言えば、民意の多数が切り捨てられている、すなわち民意がゆがめられているということだと思うんですね。だから当時も、皆さん、多くの方々が御意見を持っておられて、これはあかんのと違うかという意見があったわけであります。

 ですから、私は、この機会に小選挙区制というものを廃止すべきじゃないのかというふうに思うんですが、総理大臣、いかがですか。

○安倍内閣総理大臣 抜本改革の中で、実態として、これは成案を得る上においては過半数以上の賛成を得なければならないという中において、さまざまな議論がなされております。

 自由民主党の中においても、中選挙区制度、大体三人を基本とした中選挙区制度を主張する人たちもいるわけでございますが、そういう中におきまして、今回、三十議席を削減する中において、いわば民意の集約が過度になることを是正する新たな制度として今提出をしようとしている法案があるわけでございまして、自由民主党としては、それが今の段階では現実的な成立し得るベストの案だ、このように考えているところでございます。

○穀田委員 選挙制度の話をしますと、必ず、今お話があったように、私は今言いましたように、民意をゆがめるということについて正すべきじゃないか、こう言いますと、民意の集約と民意の反映という話をして、そして必ず今度は、その話がきっちりどういう論理があるのかということが詰まっていかないままに、定数削減、今、三十削減する提案を出しているんだという話がありましたよね。

 そこで私は、定数問題について議論を進めたいと思うんです。

 私は、定数という問題について議論する場合、議員とは何ぞや、それから議員の役割とは何ぞやということについて考えなければならぬと思うんですね。

 議員の仕事というのは国民の声を届けることであって、憲法にあるように政府の暴走をチェックするということにあるわけで、とにかく少なければいいというわけじゃないんです。絶対これはないんです。

 そして、日本の衆議院議員の定数は、世界的にも、それから歴史的にも、決して多くないということなんです。

 これをパネルにしてみました。大体何人の声を代表しているのか、議員一人当たりの人口はどのくらいかを基準にして比較しました。見たらわかりますように、先進国の主なところは、大体十万人を基準に一人の議員を選ぶ。アメリカは、合衆国で、連邦制であるので全然参考にならぬわけですけれども。

 歴史的に見たらどうか。これは一番端っこに書きましたように、一九二五年、普通選挙制度が始まったときは、人口十二万八千人に一人として四百六十六人の議員定数を決め、出発しました。以来、人口は当時の倍になっておるのに、現在では人口二十六万七千人に一人の議員となっている。

 だから、日本の議員数はむしろ少ない方だと思うけれども、いかが思いますか。

○安倍内閣総理大臣 先ほど、我が党の今村議員からも、今村議員は我が党でも保守派に属する議員でありますが、今村議員からも同じ指摘がございました。ということは、かなりこれは幅広くそういう疑問を持っておられる方がおられるんだろうと思います。

 また、行政府の長である私が、議員が御指摘のように、議員の削減の話をするというのは、本来、私も抵抗を感じているわけでございます。いわば行政府の長としては、それをチェックする皆さんの数を減らすということについて、それは積極的にどんどん減らした方がいいということを言うべきではない、私はそう感じているわけでございますが、他方、消費税を導入するという中において、国会議員は身を削るべきだという考えの中から、我々は昨年、三十人削減という道を野党として選んだわけでございまして、この案でお願いをしたい。

 しかし、確かに今委員御指摘のように、OECDの中においても、最も国民の一人当たりの議員の数としては少ないというのは事実でございますし、民意の反映としてどれぐらいの数がいいのかどうかというのは冷静な議論も必要だろう、このように思います。

○穀田委員 今私が比べたこれはG7ですけれども、8と言ってもいいんですが、OECDの中でも一番低いんですよね。それは総理もおっしゃった。

 そこで、今お話ありましたけれども、行政府の長として、どちらかといえば抑制的でなきゃならないということですわな、考え方は。しかし、自民党の選挙制度改革の方針では、三十人の比例代表を削減して、議員定数を四百四十五にするとしているわけですね。これは、自民党の方針が説明しているように、総定数四百四十五は、人口が現在の半分以下であった大正八年、一九一九年当時の総定数四百六十四も下回るものなのです。つまり、百年も前の定数に戻すということなわけでして、議員定数を減らす根拠は全くないと言わなければなりません。

 そこで、先ほど、総理大臣は三党合意の話をされていましたよね。結局のところ、みずからの身を切ることによってという話を、多分消費税との関係でなすったと思うんです。当時の三党合意というのはまさにそのことだと思います。

 しかし、この問題というのは、本当に全く国民に対する裏切り的行為だと私は思うんです。というのは、消費税の大増税という公約違反、そして民意を全く無視した政治を押しつけるためにやった話でありまして、私は逆だと思うんですね。

 ですから、自民党、公明党の合意で、逆に、先ほど大臣がおっしゃっていましたように、現行選挙制度の持つ、これは太田さんも言っておられました、小選挙区制の行き過ぎた民意の集約機能を是正し、より民意の反映を重視した制度に見直さなければならないとしています。ところが、民意を反映する制度とかつて推進した方々が、政治改革の際にその民意を反映する部分として言っていた比例代表を削るというのは、全く論外と言わなければならないと思っています。

 私どもは、今、選挙制度を本当に変えて、小選挙区制度を改めて、そして全国十一ブロックの比例代表制に改革するということが大事だと。総定数四百八十議席を維持し、全ての定数を現行の比例十一ブロックの人口で比例配分する。こうすれば、ブロック間の格差も最大一・〇三になり、民意を正確に議席に反映し、投票価値の平等の点でも解決できる。

 こういうことを実現するために私どもは頑張りたい。そのことを述べて、質問を終わります。