国会会議録

【第180通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2012年8月21日)




○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 三方の参考人、きょうは貴重な御意見をありがとうございました。

 私は、日航の真の再生というのは安全と公共性の確保が前提だ、しかもその中で、安全を現場で担う労働者の現状についてしっかりした対処をしなくてはならぬという立場から、せっかく来ていただいていますから、特に大西賢会長に聞きます。

 「会社更生手続き中の日本航空は二十八日、十二月三十一日付で実施する雇用契約を一方的に解消する「整理解雇」の対象者が、約百七十人に確定したと発表した。」これは、二〇一〇年十二月二十九日付の新聞報道です。このとき、当時の大西社長は、対象となった御本人、家族に対して、申しわけないという言葉では言い尽くせない気持ちでいっぱいだ、まさに断腸、身が引きちぎられるような思いだと会見で述べました。

 この思いは今も変わっていませんか。

○大西参考人 変わっておりません。

○穀田委員 となると、思いが変わっていないとするならば、再上場という、会社が軌道に乗った今、整理解雇して申しわけないことをした従業員を、苦労をかけたなといたわり、何をおいてもまず会社に戻すのが当然ではありませんか。

○大西参考人 我々、リストラをやり遂げた後に事業計画を再度立て直すという中で、新たに人員計画を立て、新たにまた採用計画を立てている、こういうところでございます。

○穀田委員 余りそれは言い分になりませんよ。

 つまり、断腸の思いで切った、申しわけない、普通そういうふうに言ったら、私ら何ぼも中小企業をいろいろ見てきましたよ、あなた方の大企業とは違うのかもしれぬけれども。人を切って、しかも、労働者に非があるわけじゃない問題で切っているわけじゃないですか。あなた方の都合で、いろいろな失敗をして人を切らざるを得ないようになった。それを断腸の思いだと言うのやったら、その人を戻すのが当たり前やないかというのが国民の普通の思いですよ。それとは全くかけ離れているなという感じがしますな。

 ですから、やはり普通、いろいろな事情でやめてもらった、それで業績がよくなった、そうしたら、まず、帰ってもらって、来てくれというのが人の道なんですよ。それは、経営だって当然の道なんですよ。したがって、私は、整理解雇を直ちに撤回すべきだと思います。

 次に、整理解雇実行後、機長、副操縦士の退職は二〇一一年四月以降どのようになっていますか。

○大西参考人 LCCの台頭もあり、運航乗務員が他社に移っておられるという情報はつかんでおりますけれども、正確な数字というか、何%ぐらいという数字は今持っておりません。

○穀田委員 これは、実は当委員会で私が質問したときに、国交省というのはなかなか出さないんですよ、それはそっちの話だといって。今後、そういうことについてきちんと……。

 国民の税金が投入されている。当時この問題について議論になったときに、官房長官、平野さんでしたが、国民に対する透明性、公開性、これが前提だと言ったんですね。さまざまな現状についての問題点や、何が起こっているかということを必ず公開すると約束したんですよ。それはさっぱりやっていないんだけれどもね。

 そっちが出さへんと言っているからそうなんだけれども、今、数字を持ち合わせていないと言うけれども、客室乗務員の流出状況、それからパイロットの流出状況、それは資料として出していただけるということですな。

○大西参考人 毎度毎度ということはないと思いますけれども、適切なタイミングで出させていただけることがあれば出させていただきたい、このように思います。

○穀田委員 適切だとか、いただければとか、余りそんな条件をつけたらあきまへんで。みんなが税金をつぎ込んでいるんだから、どうなってんねんという話を出さないなどということはあり得ないんですよ。

 そこで、私は、やめていること自体が問題だと。先ほど、LCCの台頭と。違うんですよ。そっちをやめざるを得ない人たちがLCCに行っているだけの話で、LCCに行きたくてやめているんじゃないんですよ。そこを勘違いしたらあきまへんで。

 それから、私、乗員組合などに聞きますと、副操縦士が六十二名、機長が二十六名流出している。子会社のジャルエクスプレスでは乗員の二割に当たる二十八名が退社と聞いています。これまで病気以外で退社した例というのはほとんどないと言われているわけですよね。これは会長も御存じだと思う。

 そして次に、客室乗務員八十四名を整理解雇して、裁判の判決が出た直後に新人採用を発表し、既に五百名を超える方が入社していると。報道ですが、その上、十月には百人以上の採用、来春には二百人の採用予定と言われており、総数おおよそ八百名の客室乗務員が必要となっていると。

 客室乗務員が大量に必要であるならば、もともと労働者に非があってやめさせているわけじゃないんですよ。今度の経営破綻というのは労働者に責任があるわけじゃないんですよ。その非のない人たちに整理解雇が強行された。八十四名の被解雇者を戻すのが先決ではないかと私は思うんですね。

 そこで、あなたは年末の会見でこうも言っているんですよね。当社のために汗水流して働いた社員だということもあり、人員規模の適正化のためとはいえ、やむを得ず切った、こう言っているんですね。よろしいか。汗水流して働いた社員だということもあって、人員規模の適正化のためとはいえ、やむを得ずやったという事情の説明なんですよ。

 だとすると、人員が不足したら、適正化のためでなくて事態が変化したんだから、道義的にもまずそこから戻すのが当たり前だと思いませんか。

○大西参考人 現在でも我々のスタンスは全く変わっておりません。整理解雇の対象になって今係争中の皆様に対して、我々が当時感じている部分については、先ほどお答えしたとおりに、全く変わってございません。

 ただ、我々は、当時、この人員計画を事業規模の縮小の中で見直す、できるだけその事業計画にマッチした人員計画、人員構成にしていくという考えは今も変わっておりません。そういう意味で、ここ二年、採用を凍結しておりましたけれども、今後新たな日本航空を背負っていく、そういう人材を現在採用させていただいている、こういう状況でございます。

○穀田委員 そんなことはないですよ。だって、四十歳の方も切っているんだから。十数年働けるわけだから、今後何ぼでも支えることはできますよ。そんなのは理屈が全く成り立たへん。大臣かてそう思いますやろ。まあ、聞いていて笑っておったけれども、そういうことですよ。そんなばかなことを言ってはあきまへんで、ほんまに。誰がそんなことを納得するか。

 それで、先ほども、前回の私の質疑の際も問題にしたんですが、日航の債務超過が解消されたのが二〇一〇年の十二月なんですね。三千五百億円を支援機構が出したから当然の話だ。しかも、営業利益は、更生決定後から九月までに千七百億円に上るということが確実だった。一万六千人の人員削減も達成していた。だから、先ほど、内心びくびくしていたとおっしゃいますけれども、客観的に見れば誰が見たって、それは、当事者が心配せぬというのはないでしょう。周りから見れば、会社が二次破綻するとか潰れるとかという認識はあろうはずがないんですよ。

 その実態を知っていたから、稲盛氏は、二〇一一年二月八日の日本記者クラブの講演で、整理解雇の百六十人を残すことが経営上不可能かといえば、そうでない、そのことは皆さんもおわかりになると思います、私もそう思いますと彼は言っているんですよね。

 大西会長、あなたも同じ認識だったのですか。

○大西参考人 当時、我々、更生計画のもとで、この更生計画を達しながらさらに再生につないでいく、こういう観点から、まず、さまざまな方とお約束しているこの更生計画を達成することが第一、このように考えて運営をしておりました。

○穀田委員 全然聞いていることに答えられへんね。

 ところで、整理解雇した百六十五人の人件費は年間幾らですか。

○大西参考人 済みません、手元に数字がございません。今、ちょっとお時間をいただければ、概数はお出しできるかと思います。

○穀田委員 裁判の中でもはっきりしていますやんか。十四億七千万円ですよ。そのぐらいのこと、人の首を切っていて、何人分の給料が何ぼだって、裁判でも問題になっているのに、そのことぐらい知らないで、あなた、そういう切った方々の、身が引きちぎられる思いだとか断腸だと本当に言うんだったら、少しぐらい覚えておいたらどうですか。

 そこで、二〇一〇年度の営業費用は一兆千七百三十億円で、被解雇者の人件費の占める割合はわずか〇・一三%。二〇一一年度は、営業費用九千九百九十九億円で、たったの〇・一五%。その意味で、稲盛さんが言っておられるように、経営上整理解雇の必要性など全くないということは明らかであります。

 そこで、今度は小野展克参考人に一つ聞きます。

 参考人は雑誌で、「JAL「整理解雇」の裏側」という小論を記しています。G2というんでしょうか、その文章の中に書いていまして、それは次のように述べています。

 「話し合えば、分かり合えるだろう。なんとかならないのか」稲盛の表情には、「行き場のないいら立ちと深い疲れが滲んでいた。」「それは無理です。相手は確信犯です。信念でやっている人たちを話し合いで説得しようとしても不可能です」「企業再生支援機構の幹部は、稲盛にずばりと切り込んだ。」このような文章を書いておられます。

 私は、どうもここに本質があるような気がします。整理解雇の目的は、組合幹部の狙い撃ち、または会社にとって不都合な人たちの狙い撃ちということがそこにあったのではないかということがこの文章を見ますと推察されるんですが、見解を問いたいと思います。

○小野参考人 先生御指摘のとおり、私、ネット上でそういったような文章を書きました。私、信頼できるニュースソースから聞いてそれを書きましたので、確かに先生の御認識のようなことではないかというふうに思っております。

○穀田委員 ですから、先ほど一番最初に私が言いましたように、当時社長である大西さんの話とは違って、実際はそういうことについて、新しい計画であろうが何であろうが、人員計画について変更があろうがなかろうが、たくさんの人の首を切っているという現状があって、その人たちに対して申しわけないという気持ちがあるんだったら、まずそこから雇ったって別に問題はないんですよ。しかも、その給与たるや、先ほど述べたように、営業費用の〇・一三%、〇・一五%というわずかなものだということからしましても、私はいかがなものかと思うんです。

 問題は、その人員削減、整理解雇によって職場の気力、モチベーションの低下が起こり、安全文化に影響が出ているんじゃないかと思うんですが、いかがですか。

○大西参考人 現在、私は、代表取締役会長であるとともに、航空法で定めるところの安全統括管理者をやらせていただいています。当然ながら、安全に最後というものはございません。毎日毎日安全を積み重ねていく、これが我々の全てだ、このように思っております。日常をできるだけ把握しながら安全の層を厚くする、これが私の使命だ、このように思っています。

 以上でございます。

○穀田委員 安全の層を厚くするというのは、日航に対する、柳田さんなどを初めとしたさまざまな外部からの意見の中にも書かれているものであります。

 そして、今お話あった安全統括管理者、これは航空法の百三条に書かれていることなので、その辺はよく御存じなんだろうと思うので、少し聞きます。

 「国土交通大臣は、安全統括管理者がその職務を怠つた場合であつて、」ということで、その責任を問えることが書いてあるのは御承知ですね。(大西参考人「知っております」と呼ぶ)

 そうすると、日航の職場では、植木社長が、二年間離職率がふえている、特に若い人がやめていると聞いているという、慰留を呼びかけるビデオメッセージが流されています。それは御承知かと思います。

 先ほど現会長は、安全の層を厚くしてなどと言っておられますが、稲盛氏は日経ビジネスの中で、利益なくして安全なしということを述べて、経営哲学として社内に徹底しています。こうした考え方で、コスト削減のために、例えば台風の中を突っ切るとか、骨折していた機長が操縦したなど、信じられないケースが生まれているのではないか。そういったことを誘導しているんじゃないかということについて、いかがお考えですか。

○大西参考人 安全に関するスタンスについて、我々はこれまでいささかも変えたつもりはございませんし、それこそ、安全の層をより厚くするということが必要だ、このように思って日々取り組んでいるところでございます。

○穀田委員 申しわけないんですけれども、こういう一連の問題について、私どもはこの国土交通委員会で、日本航空の安全問題や日本航空の再生のあり方の問題、先ほど皆さんからありました問題なども議論してまいりました。ですから、そういう議論については、ここに来るに当たって最低限ごらんになってきたかと思うんですね。

 私は、安全の層が薄くなっているという告発をしてきたんですよ。しかも、あなた方の、稲盛さんのそういう哲学のもとで、例えば先ほどフィロソフィーの話がありました。そこの中にあるようなところでいいますと、安全という文字が企業の理念から消えているという問題だとか、さらには、御巣鷹山の最大の教訓は何だったかというと、絶対安全という立場を明らかにしてきたことからいえば、明らかに後退しているという話を私は何度もしているんですよ。

 例えば、会長名で「特別安全キャンペーンの実施にあたり」というのを出していますよね。その中に、この二週間ほどの間に、イレギュラー運航や、運航、整備、客室、貨物の各領域においてヒューマンエラーによるふぐあい事例が発生しているということで、取り組まざるを得なかった内容を載せています。だから、人減らしをやった結果、こういう事態が本当に安全を脅かすようになるということが問題になっていると私は思っているんです。

 しかも、二〇一一年、大畠大臣は、当時の日航社長を国交省に呼び、人員削減で本来の保安業務に支障が出ていないかを確認するように求め、絶対安全という原点を忘れないようにしてほしいというふうに要請したことを覚えておいでですか。そのことはそのとおりやられていると自負されますか。

○大西参考人 大畠大臣から調査を指示されまして、我々は当時、日本航空の安全の状態がどういう状況にあるかということをレポートさせていただきました。その際に、我々として、安全運航を堅持できていく、このようにお答えをさせていただき、ただ、安全は、先ほども申しましたけれども、そのとき、そのとき、そのとき、これをしっかり確認していくということが必要だと思っています。そういう意味で、日々モニタリングはしていく、このように思っています。

 四月に安全キャンペーンをやらせていただきました。それから、今、夏期安全キャンペーンということで引き続きやらせていただいております。安全については常に意識を高く持つということが非常に大切です。折々に触れ、安全についてしっかりと我々としては担保をしていきたい、このように考えております。

○穀田委員 それでは聞きますが、管財人が、幹部社員を目の前にして、京セラのように一兆円の内部留保をしてから安全について物を言えといったことを教育しているのを御承知ですか。

○大西参考人 私も、そのビデオ、DVDでございますが、見ました。全体を通してコンテクストとして見ると、安全を軽視しているというような発言とは決してとれない、このように思っております。

○穀田委員 では、小野参考人に同様のことについてお聞きします。

 私はこの問題について指摘をしたわけですが、実は先ほど、大畠大臣が指導を行ったという話をしました。当時の国交省の立入検査では、各職員の労務内容の変化に起因すると考えられるトラブルも発生しているという指摘もしているんですよね。つまり、今の労務対策がこの事態をつくっているという国交省の立入検査の報告なんですね。すなわち、人員削減による労務環境の悪化で安全が脅かされているという実態を認めて、それで指摘をしたわけです。

 その上で、今、私が言ったのは、幹部職員を集めて、京セラのように一兆円ぐらい内部留保をするようになってから安全に対して物を言えと。それは片言隻語と言わんばかりの話でしたけれども、私もDVDを見ましたよ。しかし、そういう言葉は厳然としてあるんですよ。すなわち、もうかってから物を言えと、安全というのは。そういうことについて、小野さん、どう思いますか。

○小野参考人 もちろん、エアラインの経営においては、安全というのが最大限重視されなければいけないというふうに私も認識しております。

 ただ、DVDについては、私は見ていないものですから、ちょっと軽々に何か物は言えないと思いますので、これでお答えにさせていただきます。

○穀田委員 では、羽田大臣に一点お聞きします。

 ILOの結社の自由委員会から、日航の整理解雇問題で勧告が出されています。日本政府に対して、労働組合代表の役割の重要性を指摘していること、これが一つ。二つ目に、当事者間で十分かつ率直な協議を行うことの重要性、これを指摘しています。その上に立って、日本政府に協議を確実に保障することを求めています。

 大臣は、私の質問に対して、前田大臣の発言がありましたよね。やはり労使の「両者において円満に、とにかく会社において解決を図っていただきたいという立場で見守っていきたいし、指導もしていきたい、」この答弁を私は引きました。

 これに対して羽田大臣は、同じ気持ちだと答弁されました。であるならば、事態解決に向けた協議の場の設定に努力すべきではないでしょうか。見解を伺いたいと思います。

○羽田国務大臣 御指摘のILO勧告においては、整理解雇に係る提訴等の結果に関する情報提供を求められているというふうに認識をしており、本件については、厚生労働省とも連携しながら、適切に対応したいというふうに考えております。

 なお、勧告において、従業員の削減過程において、労働組合と労働者の代表が役割を果たせるように、当事者間における協議の実施が確保されることを日本政府に要請するといった内容が含まれておりますが、これは日本航空に限らない一般的な指摘というふうに認識をさせていただいております。

 いずれにせよ、日本航空の整理解雇については、現在、司法の場で争われていることから、その推移を見守りたい、こういうふうに考えております。

○穀田委員 それぞれ、一般的なというんじゃなくて、日本航空の問題について語っていることは事実なんです。そういうことはいろいろな場面で言っていることも事実です。

 だけれども、今私が述べているのは、大臣自身がそういう解決に向けての努力をする必要があるんじゃないかと。それは、ILOの勧告の中身について言えば、一般論であるかどうであるかは別として、日本航空の問題について書いておることは事実なんですよ。

 ですから、そういうのに従ってそういう手だてを打つべきであるということを主張して、参考人の皆さんに感謝を申し上げ、終わります。