国会会議録

【第180通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2012年7月25日)




○穀田委員 きょうは、公共事業と消費税に関連して、少し大臣と意見を交わしたいと思って質疑します。

 消費税増税法案の民主、自民、公明三党の修正合意をめぐって、増税分を大型公共事業の財源とする点に批判の声が上がっています。修正合意の中身を見ると、附則第十八条二項で、「消費税率の引上げに当たっての措置」に関し、「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、」ということを述べて、「成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分する」、これが加えられています。

 まず、この意味について大臣の見解をお聞きしたいと思うんですね。

 この消費税の税率引き上げに当たって、「財政による機動的対応が可能となる」というのは、増税で機動的対応が可能、つまり財源に余裕が生まれるということなんですね。そこで、「資金を重点的に配分する」とする「成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野」というのは公共事業も多く含まれると読めるわけだけれども、そのとおりでよろしいか。

○羽田国務大臣 お尋ねの、税制抜本改革法案附則第十八条第二項の「成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野」のうち、成長戦略については、現在、新成長戦略の加速や日本再生戦略の策定、実行等に取り組んでおりますけれども、これらの分野には国土交通省所管の公共事業等が含まれるというふうに考えます。

○穀田委員 だから、成長戦略のところでは含まれるし、ましてや防災及び減災等についてはさらに含まれるということだから、今大臣がおっしゃったように、公共事業も含まれるということを確認しました。

 財政に余裕が生まれるということについては、修正協議に参加した当事者である自民党提案者が答弁していますし、さらに、宮沢洋一議員は、消費税増税による税収は社会保障関係に充てられるが、そうなると、その他の経費も楽になり、今までできなかった政策ができる、政府は減災や防災などの成長に向けた政策を決断しなくてはならぬ、こう言っているわけですから、両方の意味が確認されていると思うんですね。

 そこで、では、「成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野」というのは具体的に何を指すのかということになりますね。特に、高速道路建設や新幹線の建設、ダム、そして国際戦略港湾など、国土交通省が所管する大型開発事業が含まれるのかどうかお聞きしたい。

○羽田国務大臣 御指摘の税制抜本改革法案附則第十八条第二項は、税制抜本改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、その時々の経済状況を踏まえて、成長戦略や防災、減災分野への資金を重点配分するなど、経済成長に向けた施策を検討することとしたものと理解をしております。

 したがって、具体的に「成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野」にどのような事業が含まれているかについては、このような考えを踏まえ、今後検討されるというふうに考えております。

○穀田委員 今後検討されるではないんですよね。今までずっとやってきている、例えば国土交通省が明らかにしている社会資本整備重点計画の中に、防災だとか減災は盛り込まれておるわけです。ですから、そのことでいいますと、既にそれは自明の理なんですよ。それは入っているというのが普通の解釈なんです。今大臣がおっしゃっているように、そのときに考えるなんという話じゃないんですよ。

 だって、それ自身は、既に自民党はこの問題と関連して国土強靱化計画を法案として出されている。そして公明党も、今、防災・減災ニューディールと称して百兆円やると言っている。大体それで中身は出そろって、案は出ているんです。具体的に何をやるかという問題はありますよ。だけれども、では、経済成長に資する問題として、今まであなた方がずっと言ってきた高速道路建設や、新幹線や、ダムや、国際戦略港湾というのはその中に入るのか、こう聞いているわけだけれども、それは入るのが当たり前なんですよ、理屈からいえば。だから、そのときに考えるなんというような話じゃないということを言っておいて、では、もう少し具体的に聞きましょう。

 道路事業について聞きます。

 その中で、高速道路建設について聞きたいと思うんですね。野田内閣のもとで、この間、凍結とされていた東京外環道、特に関越から東名間のところ、それから新名神の抜本的見直し区間などが復活しているわけですね。

 東京外環道は、有料の高速道路に税金は投入しない、合併施行方式はだめだといって、当時の馬淵大臣が調査費以外は予算をつけなかったわけです。ところが、前田大臣のときになって、合併施行方式でもよい、税金も投入するといって、本格着工の予算も今年度はつけた。

 新名神はどうか。小泉自公政権の時代に、道路公団民営化の際に、三本も要らないといって抜本的見直し区間として凍結された。それが事もあろうに、コンクリートから人へ、このことを掲げた民主党政権が凍結を解除してしまった。

 私はその理由がよくわからぬわけですね。外環道と新名神、それぞれの凍結解除した理由は何か、お答えいただきたい。

○菊川政府参考人 お答え申し上げます。

 まず東京外環でございます。東京外環の関越―東名でございますけれども、この事業は、首都圏の都心の通過交通を排除する、あるいは防災といったいろいろな効果があるわけでございますが、その事業の必要性を判断いたしまして、平成二十一年の国幹会議の議を経て整備計画を策定いたしましたが、その後、整備手法を検討しておりました。

 今般、地方公共団体、特に東京都になりますが、あるいは有識者委員会、こういったところの御意見も踏まえまして整備手法を確定いたしまして、事業に着手することといたしました。

 それから新名神でございます。新名神の大津ジャンクションから城陽ジャンクション、並びに八幡ジャンクションから高槻ジャンクションの区間でございますけれども、それぞれ平成三年と平成八年に、こちらは国幹審と呼んでおりますが、国幹審の議を経て整備計画が策定されましたが、その後、今御指摘ございましたように、道路公団の民営化の議論の中で、主要な周辺ネットワーク供用後の交通状況などを見て、改めて着工を判断するという方針を国幹会議に報告していたところでございます。

 このため、主要な周辺ネットワークであります第二京阪道路、これが平成二十二年の三月に開通いたしました。この開通後の、現在の名神などの交通状況を確認いたしましたところ、依然として渋滞が緩和していないということ、さらに加えまして地方公共団体あるいは有識者委員会の御意見なども踏まえまして、新名神の必要性が高いという判断をいたしまして事業に着手することといたしました。

○穀田委員 手法の問題とか渋滞問題ということで矮小化してはならぬと思うんですよ。大体、名神なんか当時から渋滞していて、そのときに三本も要らないと言っているんですよ。だから、そういう話に矮小化してはならぬということをもう一度言っておきたいと思うんです。

 決め手になっているのは有識者委員会の考え方なんです。そこで、その取りまとめを受けて、あそこの中に大都市圏環状道路やミッシングリンクは最優先でつなぐとわざわざ書いているんですよ。そこから出発していて、とにかくつながなければ、今やらないとという論法をずばっと出しているのがこの有識者委員会なんですね。だから、これまで、費用と便益を精査してとかいろいろ、括弧つきですが、厳格とか言ってきましたけれども、そんなのは関係なくて、高速道路については計画された路線のとおり最優先でやろうということにしたから予算もつけたし、凍結も解除したと言っているにすぎないんですよ。そこは、はっきりさせなあかんと私は思うんです。

 そこで、大都市圏環状道路というのはどういう路線で、その総事業費は幾らか。これまで幾ら使って、残事業費は幾らあるか。東京圏、それから名古屋圏、大阪圏、それぞれ簡単に説明してください。

○菊川政府参考人 お答え申し上げます。

 三大都市圏の環状道路でございますが、まず首都圏は、首都圏三環状と申しておりますけれども、圏央道、それから東京外環、そして首都高の中央環状線という道路で構成されております。

 名古屋圏でございますけれども、こちらは東海環状道路、そして名古屋二環といった道路で構成されております。

 また近畿圏ですが、こちらは京奈和自動車道、あるいは新名神高速道路の一部、こういったもので近畿圏の環状道路が構成されております。

 また、三大都市圏の環状道路の残事業費と、総事業費もですか。(穀田委員「総事業費と残事業費」と呼ぶ)総事業費はちょっと今手元に……。

 直轄事業の総事業費でお答え申し上げますけれども、三大都市圏、首都圏が約四兆円、名古屋圏が約二兆円、近畿圏が約一兆円でございます。

 残事業としましては、首都圏が約二兆円、それから名古屋圏が約一兆円、近畿圏が約〇・三兆円という数字になっております。

○穀田委員 私どもの計算ではもう少し多いわけだけれども、要するに、それでも総事業費が八兆円、残事業でいうと四兆三千億円。私のところで、整備計画区間で計算すると十二兆九千億円、それから残事業は八兆四千億円、あなた方の資料を精査するとそうなるわけです。

 そこで、きょう資料を配付しました。皆さんには白黒で配付したので、ちょっとなかなかわかりにくいかもしれませんが、東京外環道というのは資料の一の一、これは一兆二千八百二十億円。それから資料一の三、新名神の抜本的見直し区間、これは六千八百億円。現在事業中の箇所だけでなく予定路線を含めて、今後、約十兆円の規模の財源が必要になる、これが大都市圏環状計画の事業です。予定路線は加えなくてもこれだけの費用がかかって、さらにプラスアルファがある。それだけでも相当な莫大な額になるということははっきりしている。これは局長もうなずいているから、そのとおりなんです。

 それ以外で、次に国土のミッシングリンクの解消、これは資料二でお渡ししました。この事業ではどうか。これは、もともと、ミッシングリンクの解消となる事業というのは一万四千キロをつくる計画の高規格幹線道路だと認識して間違いありませんね。この点を確認したい。

 そして、この高規格幹線道路というのは、高速自動車国道一万一千五百二十キロメートルと一般国道自動車専用道路約二千四百八十キロメートル、合わせて一万四千キロの事業計画だけれども、進捗状況はどうなっているのか。一一年度末までの供用延長キロ数、残キロ数とその事業費は幾らか。資料はもらっているんですが、これも簡潔に言ってください。

○菊川政府参考人 お答え申し上げます。

 高規格幹線道路一万四千キロ、今お話がありましたように、高速自動車国道、それから一般国道自動車専用道路、こういったもので構成されております。全体計画は一万四千キロでございますが、ことしの四月末時点で一万二百十八キロが供用いたしております。率にいたしますと、約七割という状態でございます。

 また、高規格幹線道路の今の整備状況でございますけれども、供用中は先ほど申し上げましたように一万二百十八キロでございますが、事業中が今二千六百キロございます。この事業中箇所二千六百キロにおきます二〇一二年度以降の直轄分の残事業は約八兆円という数字になっております。

○穀田委員 要するに、今残っているのでいうと八兆円かかるということですね。

 そこで、今、高規格幹線道路、すなわち一万四千キロメートルの事業計画と、それからもう一つありますよね、地域高規格道路計画。これはいつごろつくられましたか。

○菊川政府参考人 お答えいたします。

 ちょっと正確には記憶しておりませんけれども、高規格幹線道路は昭和六十三年前後だったと思います。それから地域高規格道路、今、計画路線ということで指定しておりますけれども、それは平成十年前後であったというふうに記憶いたしております。

○穀田委員 これは道路の問題だし、基本問題なので、四全総、五全総という流れの中で、五全総というのは、日本のグランドデザインということの中でできたということですよね。うなずいておられるので、そうだと。

 これは、いずれも約二十年前、バブル期に、当時アメリカのそういう要望に基づいて、六百三十兆円の公共投資基本計画が大もとにあって決められた路線網なんですね。その後、九〇年代後半から二〇〇〇年まで公共事業を景気対策として、予算を湯水のごとくつぎ込んできた。その中で国民的な批判を受け、反省の上に、小泉構造改革のもとで若干、無駄な事業は削るとして予算も削られ始めた。ところが、二〇〇八年には政府の発表した道路中期計画に、小泉総理が白紙だと言った事業計画が復活して盛り込まれた。こういう経過なんですよ。

 このことを捉まえて、民主党の岡田克也議員は小泉総理との質疑で、当時決まっていた九千三百四十二キロメートルの整備計画以外は中止、一万四千キロメートルの白紙、これを当時首相は主張していたのに、復活するのかと厳しく批判したんですね。

 ところが、また再度暗転して、民主党政権になって、コンクリートから人へと公共事業の抑制を進めたにもかかわらず、実はこの高速道路網の計画は残されたままだったんですね。計画はなくならなかったんです。道路だけではありません。新幹線整備網も、七〇年代に計画されたものがいまだにそのまま残っている。ダム事業も同じなんですね。こういう計画の見直しをしないままで、際限のない大型開発事業がいつの間にか復活している。それ自身が大問題だ。

 そして、それに加えて消費税増税のように、増税で余裕ができると、今度は消費税を財源に、成長戦略、防災、減災に資する分野という名前で大型事業を復活させるということではないのか。

 その辺の、政治的な角度での問題の提起についてどう受けとめられるか、大臣にお聞きしたいんです。

○羽田国務大臣 税制抜本改革法案附則第十八条第二項においても「財政による機動的対応が可能となる中で、」とされており、まずは財政の機動性を可能にする必要があり、そのために、予算全体の重点化、効率化により、真に必要な施策のプライオリティーを高める等の取り組みを行う必要があります。

 地震、また台風、豪雨等が多発する我が国においては、国民の安全、安心を守ることは重要な政策課題であります。また、経済成長著しい近隣諸国との厳しい国際競争にさらされている我が国においては、経済を支える都市、産業の国際競争力を強化することが不可欠であります。

 これらの諸課題に適切に対応するために必要な社会資本整備を進めるに当たっては、これまで以上に選択と集中を強化するとともに、コスト縮減等を通じた徹底的な効率化を図り、大きな投資効果を発揮するよう努めていきたいというふうに考えているところであります。

○穀田委員 私は、二つばかり問題があると思うんです。

 今までの経過というのは、二十年前に計画した内容をそっくりそのままとは言わないけれども、ほぼ同じ形で、四全総、五全総と決めた、日本のグランドデザイン、まあ五全総と言ってもいいと思うんですが、これが復活している。

 当時、民主党は、自民党もそうですよ。自民党の時代だって、これはちょっとやり過ぎだなといって抑えた。それで抑えたのが復活したときに、民主党がそれを厳しく批判して、二十年前に決めたことをまだやるのかと。しかも、二十年前に何で決めたか。地図を見て鉛筆をなめなめ、ここはどうだろう、ここはどうだろうと決めた。そういういいかげんな決め方だったということが、本まで出ているぐらいなんです。それが全て今復活しているという事態になっているんですよ。

 しかも、理屈は、真に必要なと必ず言うんです。そして、もう一つ言うのは選択と集中、二つ目はこれなんです。真に必要なと言って、これはどういう理屈かというと、地方自治体が要求していると言って、今まで費用対効果だとかいうことについて言っていたことをすぐ取り下げて言う。ですから、全く難儀な話だなと私は思うんですね。

 しかも、今、財政難だと言っているんですよ、そして増税だと。こうなりますと、何をか言わんやだと私は思うんですね。国民に財政難だということを理屈にして増税を押しつけて、今度は選択と集中でばらまきをやろうというのは全く許せぬと思うんですね。しかも、大臣は、機動的なという話を必ず出すときに、動かす際の理屈をいろいろ言っているけれども、その文言はやはり違いますよ。

 私どもは、衆議院の特別委員会で共産党の佐々木憲昭議員が、増税分十三・五兆円のうち七兆円は社会保障に使われず、財政赤字の穴埋めや大企業減税に回されるということを指摘して、消費税増税分の全額を社会保障財源化するという言い分はまやかしだ、こう指摘したんですね。岡田副総理は、赤字国債分などに置きかわると。要するに、消費税増税して今まで使っていた分が余る、こういう形のやり方をしようというわけですよ。

 私は、今回の附則で、公共事業に最優先で使うということはより鮮明になったと言わなければならないと思うんですね。消費税増税で新規の大型公共事業の財源とすることは二重に国民を欺くものだと思います。

 私は三月一日の予算委員会で、資料三の新規事業の計画を出しました。そしてそのときに、ダムで三兆八千三百億円、高速道路は三十三兆一千五百億円、整備新幹線は四兆四百億円、国際コンテナ戦略港湾に五千億円、合計四十一兆五千二百億円の莫大な額に上ることを明らかにしました。

 確かに防災などのインフラは必要です。しかし、増税で歯どめなきばらまき、大型開発事業の大盤振る舞いは許されないんですよ。最優先すべきは、やはり国民の命、安全、暮らしに必要な事業は何かということを吟味することが必要なんですね。それは、新規事業を抑制し、私がこのときにも提起しましたように老朽化対策を強化し、維持管理、補修対策が必要なんだと。それは現在の事業費でも可能なんですね。

 私は、消費税増税はストップし、そして公共事業の政策については抜本的転換が必要だということを改めて主張して、きょうは終わります。