国会会議録

【第180通常国会】

衆議院・予算委員会
(2012年3月1日)



○穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 きょうのテーマである政策検証に入る前に、総理に、そもそも国会と国会議員の役割とは何であるかという問題についてお聞きしたいと思います。

 日本国憲法は、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存する」と宣言しています。その主権者国民の代表をしているのが国会議員であり、政府を暴走させないようにする、それが国民の代表で構成する議会の最大の役割と私は考えます。

 我が党の佐々木憲昭議員が、本会議において、同様の趣旨の質問を総理に行いました。総理は、国会議員が、国民から選ばれ、国民の声を代弁して議会活動を行うことは、御指摘のとおりと考えますと答弁されましたが、これは確認してよろしいですね。

○野田内閣総理大臣 穀田委員御指摘のとおりで、そう答えました。

○穀田委員 そこで、国民の代表たる議員をどう選ぶのかという問題です。

 選挙制度は議会制民主主義の土台にかかわることでありまして、選挙制度はどの党が有利とか不利とかということではありません。民意をいかに反映させるかが大事であります。総理は、各党にはそれぞれ意見があると答弁しております。そのとおりで、立法府にある各党が、いかに民意を反映させるべきか真摯に議論すべきものであります。現在の国会の議席において多数を占めているからといって、多数党が自分の考えを押しつける、こういうやり方があってはならないと思います。同時に、立法府が議論して決めるべきことであって、ましてや、与野党協議会において議論しているさなかに政府が口を出すようなことがあってはなりません。

 総理は、この間、一定の陳謝を行っています。二月二十三日の予算委員会で、政府としては、選挙制度に係る各党協議会における議論の重要性を十分認識し、より慎重な態度で臨んでまいりますと答弁されました。各党の協議を尊重するということでよろしゅうございますね。

○野田内閣総理大臣 これも、私どもが社会保障と税の一体改革の大綱をつくったときに、定数削減の話を入れていることで、この委員会から御指摘をいただきました。

 それを踏まえまして、穀田さんおっしゃるとおり、政府としては、選挙制度に係る各党協議会における議論の重要性を十分認識し、今後の閣議決定においては、より慎重な態度で臨みますと表明をさせていただきました。

○穀田委員 その答弁は、簡単に言うと、尊重するということですわな。各党協議会の議論を尊重し、やっていくということだと思います。

 そこで、国会はどんな議論をしているかということなんですけれども、衆議院選挙制度に関する各党協議会が昨年の十月につくられました。きょうも含めて、以来、十四回議論を重ねています。この機会に、国民の皆さんにも総理にも、どんな議論を各党協議会がしているのかについて知ってほしいと思っています。

 十八年前、政治改革と称して、現行の小選挙区比例並立制がつくられました。そのもとで五回の総選挙が行われました。この結果、余りにも弊害が大きい、この制度を続けてよいのかという問題を多くの党が提起していることが最大の焦点であります。導入以来十八年にして、選挙制度そのものの改革が広く議論されるようになった。これは初めてのことであって、極めて重要なことだと思います。

 実は、自民党も、現行制度は大政党に有利な制度と述べて、民主党以外の全ての政党の間で、現行選挙制度が民意を議席に正確に反映せず、ゆがめている、得票率と議席占有率が乖離している、このことが共通認識になっています。

 現行の小選挙区制は、パネルに示しましたが、第一党が四割台の得票で七割の議席を得る。この二回の総選挙の結果をパネルにしてみました。小選挙区選挙の〇九年の選挙で、第一党の民主党は四七・四%の得票で七三・七%の議席を占め、そして政権交代しました。その前の〇五年の選挙では、小泉内閣の郵政選挙でしたが、自民党が四七・八%の得票で七三・〇%の議席を占めました。

 小選挙区制が、第一党に四割台の得票で七割台の議席を与える制度である、このことは総理も認識していますね。

○野田内閣総理大臣 それは御指摘のとおりだと思います。したがって、政権交代等のダイナミックな動きが出てきたというふうに私は理解をしています。

○穀田委員 総理は、後で言いますが、民意の集中の話をしたいんだと思うんですけれども、今、私は、これほど得票と議席の乖離がある、これが各党協議会で問題になって、この制度は続けていいのか、ちょっとおかしいのと違うかということが、大体、自民党と民主党を除けばそういう認識になっているということを改めて強調したいと思うんです。

 そこで、今、ダイナミックな政権交代という話で、特に、総理はたびたび、民意の集中ということに言及されておられます。私は、民意の集中の結果、どういう政治が行われたのかということについて問いたいと思うんです。

 〇五年の総選挙で、小泉政権は、先ほど述べましたが、郵政選挙を行い、自民、公明の与党で三分の二の議席を獲得しました。そして、やったことは、自衛隊の海外派兵や、構造改革の名のもとに社会保障が削られました。国民はそんなことまで同意を与えていません。ところが、強行採決と、参議院で否決されたものを衆議院議席の三分の二の多数を使って再可決を連発しました。あたかも白紙委任を受けたかのように、多数の力で押し通す政治が横行したことは、皆さんも御記憶に新しいところだと思います。

 国民の批判で政権交代が起きました。ところが、民主党政権は、マニフェストで掲げた公約を次々と覆す。参議院選挙で敗北し、ねじれ国会となると、今度は国民不在の妥協を繰り返し、さまざまな協議を密室で行ったということが、これまたこの国会の中でも明らかになりました。結局のところ、民意を集約した虚構の多数政権による強引な政治、多数のおごり、このことが国民の民意を反映しない政治をつくって、国民の政治不信をつくり出していると私は考えます。

 この制度をつくった当事者からも反省の弁が述べられています。細川総理は小選挙区に偏り過ぎたと言い、河野前衆議院議長は、政党の堕落、政治家の資質の劣化が制度によって起きた、こう指摘をしています。総理はこの指摘をどう思われますか。

○野田内閣総理大臣 九三年同期当選の穀田さんでございますので、政治改革四法の議論は、今、御指摘も踏まえてまたよみがえってきたんですけれども、今、小選挙区比例代表並立制の弊害のお話を中心にされていますけれども、やはりどの制度もプラスマイナスいずれもあると思うんです。その前のあのころの議論は、中選挙区制は、政権選択とか政党選択、政策選択ではなくて、サービスの競争みたいになってしまって、国事に奔走する政治家よりも雑事に奔走する政治家がふえてしまっている等々の反省の中から、今の選挙制度が生まれたと思います。

 かといって、おっしゃるとおり、どの制度もプラスマイナスある中で、それをどう評価するかだと思いますけれども、今、かつて万年筆を交わして政治改革のサインをした二人から厳しいそういう御意見が出ていることは残念だとは思います。

 私は、それでもなお、選挙制度だけの問題かという問題があるんです。今、政治家の劣化のお話をされました。これは選挙制度のものかどうか、本当にそれだけかどうかはよく検証しなければなりません。何でもやはり選挙制度のせいにしてしまうと、ちょっと議論を狭いものにしてしまいますので、今御指摘の議論の中には、選挙制度と関係ないものも入っていたような気がしましたので、率直に感想を申し上げさせていただきました。

○穀田委員 いや、私が言っているのは、お二人が、当事者がそう言っているということをまず指摘したわけですね。プラスの面、マイナスの面があると言いますけれども、選挙制度が本当の意味で国民の民意を反映しているかという問題が本来の基準でなければならないと私は思います。

 そこで、総理大臣は、九三年の政治改革にかかわったことをお話しされました。私も一緒に当選した者の一人として、では、それでどうだったかということについて、一言言っておきたいと思うんですね。

 十八年前ですよね。それは、細川内閣が提案した小選挙区比例並立制が、衆議院は通りましたが参議院では否決された。そして、衆参両院の両院協議会が調わず、廃案にされました。そして、残念なことに、それこそ私は残念なことに、当時、土井議長があっせんで、細川総理と自民党河野総裁の間でいわゆる総理・総裁協議といいますか合意というのが行われて、一夜にして国会の正式の結論をひっくり返し、今の制度を誕生させました。そもそも制度の誕生自身に大きな問題があったということは言わなければなりません。しかし、そのことを経て、今のお二人が失敗だと反省していることが重要だと思います。

 そこで、私は全てを選挙制度だなどということは言っておりません。今お話があったように政権交代がダイナミックにできたと言いますけれども、当時、八〇年代から既に自民党は四〇%台の得票率に後退していました。ですから、当時、それこそ票の格差を是正していれば、それこそ区割りの問題も含めてきちんとしておれば、政権交代は可能だったのであります。ですから、何か小選挙区制ができたことによって政権交代が行われたのではなく、九三年自身に政権交代が行われた事実がそれを示していると私は思います。

 今、超党派で、衆議院選挙制度の抜本改革をめざす議員連盟がつくられ、百五十名を超える議員が参加をしています。代表世話人の民主党の渡部恒三氏は、一九六九年以来国会議員を務めてきて今ほど政治が混迷した状態はない、原因は選挙制度、小選挙区制は間違いだったと述べています。また、自民党の加藤紘一氏は、政治が活力を失い日本全体が沈下している、最大の原因は小選挙区制だと言い切っています。

 そこで、今我々は何をなすべきか。そこで一番最初に私が言った、選挙制度はどうあるべきかということになります。

 どの世論調査を見ても、選挙制度を抜本的に変えるべきだという国民の声が多数に上っています。この機を逃してはいけないと私は思っています。今必要なのは、現行の小選挙区制に固執するのではなくて、民意を反映するよりよい選挙制度の改革の議論こそ急ぐべきだと考えます。

 選挙制度を変えるというのはそれほど難しいことではありません。何せ日本の選挙制度史上、小選挙区制は過去に二度廃止されています。先ほど総理は、各党協議会、立法府の役割についても言及されましたし、その反省の弁を、行政府としてのあり方の問題を含めて述べられました。私どもは、この各党協議で改革の実現を何としても図らなければならないと考えています。

 そこで、いわば虚構の多数といいますか、そういうもとで行われている政治の、きょうの議題でありますマニフェストに関連して、次は聞きたいと思います。

 この間、私は、ずっと国土交通委員会に所属してきまして、公共事業の問題についてただしてまいりました。公共事業で何が問題になってきたかということです。これは、あり方の問題です。それは、採算性を度外視して、この狭い国土に九十八もの空港をつくる、それから高速自動車道、それからダムをつくって、土建国家と言われるほど、右肩上がりのバブル時代の計画をどんな状況になろうともやり続ける、これでよいのかということが問われました。

 民主党は、この問題を捉えて、一旦計画すればとまらない、それから、このような公共事業のあり方はおかしいと。国民の声もそうでした。こういう中で、民主党のマニフェストは、コンクリートから人へとして、そのマニフェストの中で、時代に合わない国の大型直轄事業は全面的に見直すということを書かれていました。これが公約の中心ですね。

○前田国務大臣 穀田委員にお答えいたします。

 平成二十一年のマニフェストでは、公共事業については、一・三兆円削減するというふうに約束しておったわけでございますが、二十四年度予算までに二・五兆円を上回る削減を達成しております。

 一方、東日本震災がありました。その反省に立って、人命第一、災害には上限がないという、これは社会資本整備審議会が出していただいた教訓でありますが、そういったことを踏まえて、国民生活の安全、安心を確保することはもとより、持続可能で、活力ある国土づくり、地域づくりをするために真に必要な社会資本整備を着実に推進していく必要があります。

 もちろん、選択と集中、コスト縮減、そういったこと、あるいは第三者による事前評価等を実施して、真に必要な社会資本を戦略的に整備してまいります。

○穀田委員 国土交通大臣の所信表明を聞いているんじゃないんですよ。マニフェストでは全面的に見直すと言っていたよねと。そうでしょう、総理。

○野田内閣総理大臣 コンクリートから人への理念のもとに、全面的に見直すということでございました。

○穀田委員 では、マニフェストに掲げた、今お話があった、時代に合わない大型事業は全面的に見直す、これはどうなったかということについて議論しましょう。

 中止を明言した八ツ場ダムは、建設の継続を決めました。東京の高速道路で、一メーター約一億円もかかる外環道は、凍結していたが、本格工事を着工しました。白紙と言っていた整備新幹線の未整備区間の新規着工にゴーサインを出しました。

 これでは、国民に約束した全面見直しなど、全くないじゃありませんか。どこが、全面見直ししたんですか。

○前田国務大臣 先ほど申し上げたように、真に必要だという点で絞っておるわけでございまして、特に昨年のあの大震災を踏まえると、やはり多重防御、外郭環状道路にしても、この東京首都圏で環状道路が高速道路でまだ通っていないわけです。そういったものをつながないと、いざ災害のときに、特に直下型等が言われているときに、そういうものはやはり選択をして、早期につながなければならないという結論を有識者会議で出していただいた。

 それに基づいて今その方向を出そうとしているところですが、基本的には、無駄な公共事業は削減するということでやっておるところでございます。

○穀田委員 要するに、見直したじゃなくて、有識者会議で結論が出たのはこういう中身だったと言っているにすぎないじゃないですか。

 何を変わったんだ。やめると。見直しをするというのはやめるということじゃないですか。しかも、中止を明言して、あのときはどう言ったか。この問題は、八ツ場ダムや川辺川ダムというのはそういう見本なんだというところまで言った。つまりそれは、さまざまなやり方について中止をするということをみんなの前で言ったということじゃないですか。何を言っているんですか。

 そこで、では、実際の現実はどうかということなんですね。全面見直しどころか、これから先まだまだ続く、大型の新規事業が続くではありませんか。

 ダムの建設は三兆八千三百億円、高速道路は三十三兆一千五百億円、整備新幹線は四兆四百億円、国際コンテナ戦略港湾に五千億円、これを合計しますと、何と四十一兆五千二百億円にもなります。莫大な新規投資額が計画されている。

 これは政府の政策でありまして、つくり続ける計画ですよね。間違いありませんね、大臣。

○前田国務大臣 穀田委員、そこに、この資料を出していただいているようですが、いろいろな仮定があると思うんですね。

 しかし、民主党政権になって、事業というものについては厳密な検証を施し、そして、採択されたものについてのみつけておりまして、この先どういうような計画で、例えば高速道路の三十三兆と載っておりますが、それは多分、いろいろ計画に上がっているものを足し合わせるとそういうことになるということで、現実は、きちっと検証した上で事業採択したもののみについて予算をつけているものでありまして、例えば道路について言うと、直轄の高速道路、高規格道路ですね、事業の二〇一一年度末の直轄分の残事業は約八兆円ということになっております。

○穀田委員 それは違いますよ。ここに書きましたように、高規格幹線道路約一万四千キロメートルのうち、今の時点での残事業、これは三千九百三十キロメーターあるわけですから、それをやめると一言も言っていないわけですから、それを計算するとこうなる。ですから、この数字はこのとおりですよ。このとおりやらないと。やめるというんだったら、やめてごらんなさいよ、やめないんだから。

 私、これを今指摘したのはなぜか。これほど莫大な金をかけるということが一つある。もう一つは、公共事業でつくったインフラというのは、必ず維持管理の費用が要るし、そして、耐用年数が過ぎたものの建てかえの費用、いわゆる更新費が必要となる。では、どのくらい費用がかかるかという問題なんですね。

 二〇〇九年度版の国土交通白書、これを持ってきました。これによりますと、書いてあるんですけれども、そこには、「二〇一一年度から二〇六〇年度までの五十年間に必要な更新費は約百九十兆円と推計」と記述されています。

 これは間違いありませんね。そのことだけ言ってください。

○前田国務大臣 もちろん、これは前提を置いての数字なんですね。

 要するに、こういう時代がこのままやると来るぞという一種その警告を込めて、今ある施設をそのまま更新する、地域の構造も、人口は減るしどんどん変わっていくわけでございますから、そういったことを一切無視して、もしもこのままやるとこういうことになりますよという数字を挙げているわけでございます。

○穀田委員 一切無視してというのは書いていませんよ。そういうことを前提にしてやればこうなるとあなた方がここに書いているんじゃないですか。それを私は言っているだけですよ。

 では、もう一度、百九十兆円かかるということは確かだと。では、白書のデータをわかりやすくパネルにしたので、見ていただきたいと思います。

 これは、図表の緑の部分が新設費用です。一九六四年の東京オリンピックの前後、建設ラッシュがありました。その後、高度成長期が続きます。そして、日米構造協議に基づく公共投資六百三十兆円の押しつけのもと、バブルの後の景気対策が行われ、そして膨大な投資が行われたわけです。

 図表の赤い部分が建てかえ費用です。コンクリートの建物というものは建てかえが必要です。これまで建てかえの費用はそれほどでもなかったけれども、今後大幅にふえていく。それが今から五十年で百九十兆円かかるということです。

 そして、青い線が二〇一〇年度の予算の水準を示しています。二十五年後の二〇三七年には、維持管理、建てかえの費用さえ賄えない。そういうことをこの国土交通白書は記していますね、国土大臣。

○前田国務大臣 そういう前提を置いてやるとまさしくそういうことになるわけでございまして、そこで、大きな警鐘を鳴らしているわけであります。

 したがって、持続可能な地域づくり、国土づくり、地域の構造も、人口も減るでしょうし、経済社会構造も変わっていくでしょう。そういったものに対応した社会資本施設整備、それをコンパクト化して、長寿命化して、そして民間も参入してというようなことでいかに持続可能な地域づくりをするか、その方向に社会資本整備のあり方も変えるわけでございます。

○穀田委員 先ほど述べましたように、山がこうありますね、総理。これは必ずつくった分だけ、どのぐらい費用が全部でかかるかは別として、次は更新しなくちゃならぬわけですよ。ずれてくるわけですよね。すぐ国土交通大臣は、長寿化を行うと。それはやるのは当たり前なんですよ。だけれども、それを少しばかりやって少しばかり減らしたからといって、二〇三七年には、維持管理費、管理と建てかえ費用も賄えない。こういう時期が、ちょっとずれることはあったとしても、当然それはやってくるわけです。

 しかも、国土交通省の所管分だけでこれだけなんですよ。しかも、この中には高速自動車道の建てかえの費用は入っていないんじゃないんですか。それだけ言ってください。入っていないでしょう。

○前田国務大臣 直轄分の中には入っていると思いますが、いわゆる高速道路会社等のものについては入っておりません。

○穀田委員 公共事業は国土交通省だけではありません。

 そこで聞きますが、厚労省は、今後五十年間の上水道の更新費は幾らと推計していますか。

○小宮山国務大臣 お尋ねの水道施設の更新費用ですが、あくまで一つの試算として、今後およそ四十年間でおよそ三十九兆円と推計をしています。

 ただ、これは、どれぐらい古くなっているか、費用がどれぐらい要るか、これを計画的、効率的にやるアセットマネジメント、資産管理に関する手引を策定していまして、これに基づいて計画的にやるようにしたいと思っています。

○穀田委員 三十九兆円かかる。

 では、文科省は、小中学校の建てかえに今後五十年間に必要な更新費はどれほどと見積もっていますか。

○平野(博)国務大臣 穀田委員の御質問にお答えします。

 五十年間でどれぐらいの更新費用がかかるか、このことについては、現時点で適当なデータを持ち合わせておりません。しかし、現存する公立小中学校の建物が三万校ございます、校数として。建屋としては十二万棟ございます。そういう中におきまして、約二十五年以上経過している建屋につきましては七割ある、こういうことでございまして、幾らかかるかということについては、今、確かなことは申し上げられません。

○穀田委員 だから、現時点では持ち合わせていない、だけれども、三万一千七百二十三校あって、築二十五年以上たっている非木造の校舎が七割、正確に言えば七〇・七%を占めている。ということは、これは当然、更新の費用の中で、一つの学校当たり十数億から二十億弱かかるわけですよね。だから、これまたとてつもない金がかかるということだけははっきりしている。

 大体、安住さん、うなずいていますけれども、今後五十年間、これは絶対に建てかえなくちゃならないわけですよ、小学校、中学校。文科省が何ぼかかるかというのを持ち合わせていないということ自体が問題と言わなければならないと私は思いますね。問題だと言っているんですよ。別に答弁を求めているわけじゃありません。それは確かなんです。だって、今後どうなるかということで、公共施設やいろいろな建物について、政府が実際の、今後建て直さなくちゃならぬという問題についてどう掌握しているかという問題が問われているからであります。

 先ほど言ったように、国交省だけで百九十兆円がかかる、ほかにも更新がいっぱいある。これがどのくらいかかるかということを推計した方がいらっしゃいます。これは東洋大学の教授の根本さんという方なんですが、著書で、「朽ちるインフラ 忍び寄るもうひとつの危機」という中に、実は、今後五十年間の更新投資総額は三百三十兆円に上る巨大な金額となると指摘しています。

 総理、このくらいの費用がかかるということをどういうふうに認識しておられますか。

○野田内閣総理大臣 これから、建てかえ等々、維持管理、メンテナンスでも、今のその三百数十兆が本当にどれだけ正しいかはわかりませんが、今までのやりとりを聞いて、相当な額が必要であることは間違いないというふうに思いました。

○穀田委員 ですから、三百三十兆円というこの推計が正しいかどうかというのはあるけれども、いずれにしても、今後五十年間でとてつもない額がかかる。幾ら長寿命化しようと、幾ら減らそうと、必ずそれは、一定の時期には建てかえをし、やらなきゃならないということ、こういう事態に日本があるということだけは確かなんですね。

 そこで、昨年十一月の行政刷新会議の提言型政策仕分けでは、中長期的な公共事業のあり方として、公共事業について、現状では持続可能性がない、それから、新規投資は厳しく抑制していかなければならないというふうに提言していますが、それは事実ですね。岡田大臣。

○岡田国務大臣 昨年十一月の行政刷新会議が実施をしました提言型政策仕分けの結論として、新規は厳しく抑制していき、選択と集中の考え方をより厳格に進めるべきである、既存ストックの維持管理については、民間資金の一層の活用を図るとともに、重点化、長寿命化を図りつつ、見通しを立てた計画的な更新を行うべきである、こういうふうに結論づけたところであります。

○穀田委員 そうすると、今お話があったように厳しく抑制すると言うけれども、八ツ場ダムは先ほど述べたように復活する、そして東京外環道は着工する、そして整備新幹線も進める、それから、ダムや高速道路、大型事業はまだまだつくり続ける。一体、こういう内容が、その提言どおりやられているのか。

 そして、私は、今、岡田大臣が述べたことを岡田大臣に逆に聞きます。どうせまた前田大臣は、長寿命化とそれから持続可能性と集中化、この三つぐらいのパターンで言うんですから、そうじゃなくて、今、その提言どおりこの問題についての見直しが図られたかということについて、そのことが実行されて提言どおりやられているかという問題について、私は総理ないしは岡田大臣に聞きたいと思います。

○岡田国務大臣 先ほどの委員のお話を聞いておりまして、例えば学校であれば、子供の数は減るわけです。そうすれば、全部をそのまま建てかえるのではなくて、いろいろなやり方がそこでも考えられるというふうに思います。ですから、いろいろな工夫はしなければいけないと思います。

 その上で、個別のことについては私はあえて言及しませんが、ただ、トータルの一般会計における公共事業予算、これは、民主党政権になって、先ほどのお話のように、かなり減らせました。そういう傾向は私はきちんと維持すべきであるというふうに考えております。

○前田国務大臣 ちょっと事実だけ申し上げますと、もちろん新規事業採択は、先ほどの仕分け等の方針に基づいて、厳しく、選択と集中、そしてまた採択、絞り込みをやっておりまして、予算面では八%の縮減を行っております。そして、要求段階で新規二十カ所、出てまいっておりましたが、決定段階では十六カ所に絞り込んでおります。

 穀田先生の言われる、八ツ場ダムに、外環に、あるいは新幹線にというお話ですが、まことにそういう意味では残念ではあるんですけれども、やはり、首都東京の安全であったり、そして国際間の競争からいって、絞り込んだ上で、重点的にどうしてもやらざるを得ない公共事業に絞ってやっているということ、予算づけをしているということを御理解いただきたいと思います。

○穀田委員 だから、最初に言ったわけですよ。そういう大型の直轄公共事業というのは全面的に見直すと言ったわけですやんか、それがあなた方の公約ですやんか、それがやられていない。結局のところ、一番肝心な、先ほど示しましたけれども、ダムの問題にしても、それから高速自動車道にしても外環道にしても、そして整備新幹線についても、中心は全部残っているじゃありませんか。肝心なところは全部あるんですよ。

 それで、何かというと皆さんは重点化ときます。今、こんな新規をやっているような時代じゃないじゃないか、新規をやっているような金はないということまで提言のところで言われている。そして、更新費用がこれだけかかるという話まで出た。こういう中で、それを続けていいのかということが、当時言っていたことが問われているじゃないかということを私は指摘しているわけです。

 重点化と言うんだったら、新規から維持、そして維持管理、更新のところにシフトを移すべきだ、そして、大型開発事業から命と暮らし、地域密着型の公共事業に変えるべきだ、そのことによって、私は本当の意味で持続可能性が出てくると思うんですね。

 問題は、そう言うと大体大臣はうなずいているんですけれども、そうなっていないから言っているわけですよ。こういう事態になっているじゃないかということを言いたいと思うんですね。国民が、自民党政権時代に、建設ありきというやり方に対しておかしいと思った。とまらない公共事業に対して皆さんがおっしゃった、コンクリートから人へ、さらには時代に合わない公共事業というのは見直す、この公約をしたからこそ民主党に期待したわけですね。しかし、それがことごとく中心のところで裏切られている。

 なぜ見直すことができないか、なぜ転換することができないか、ここが問題なんですね。ここは……(発言する者あり)違うんです。やはり自民党時代もそうだったんですが、大型公共事業の推進の背景には、例えば、アメリカの公共投資計画実施の圧力、さらには、鉄鋼、セメント、ゼネコンなどの財界の大企業の圧力がありました。これが実は、民主党が……

○中井委員長 穀田さん、時間が来ますので、まとめてください。

○穀田委員 大きな転換をし出したのは、その財界の要望書を受けてからそっち寄りになってきたんだと思うんですね。八ツ場ダムにしろ、高速自動車道にしろ、新幹線にしろ、見直しのトーンが下がってきた。結局、民主党もアメリカや財界中心の政治を脱却できないところに根っこがある、このことは確かだと思います。

○中井委員長 時間が来ましたから、まとめてください。

○穀田委員 こういう政治の土台をつくっているのは選挙だ、これを変えたいと思います。

 以上です。

○野田内閣総理大臣 まず、数字で申し上げますけれども、政権交代前の公共事業費は、これは七・一兆です。平成二十四年度の当初予算は四・六兆です。だから、大型事業を何かぼんぼんアメリカの圧力でやっているようなイメージの今終わり方ですけれども、それは全く違うという御答弁を申し上げておきたいと思います。

○中井委員長 これにて穀田君の質疑は終了いたしました。