国会会議録

【第177通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2011年3月25日)



 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 私は、前回に続いて質問します。

 改めて、東日本の大震災で亡くなられた方々に哀悼の意を表し、そして被災された方々にお見舞いを申し上げます。

 きょうは、港湾法の問題について質問します。

 まず、東日本大震災との関係で被害を受け壊れた港湾施設等の被害総額は幾らか、復旧するのにどれだけの費用が必要と想定しているのか、お聞きします。

○三井副大臣 お答えさせていただきます。

 重要港湾十四港が、青森港以外は、今先生からも御指摘がありましたように、大変甚大な被害をこうむっておりまして、港湾機能が停止しているという状態でございました。また、十四港で、緊急物資を輸送する船舶等が入港可能な状態にするために、今全力で復旧に取り組んでいるところでございます。

 また、現地調査を早急に完了させると同時に、被害額及び復旧額の算定をしてまいりたいと思っております。

○穀田委員 簡単に言えば、わからぬということですか。しかし、莫大な費用になるということは明らかだと。それは簡単に言うと、一兆円を下らない可能性があるということは既に明らかとなっているところであります。それだけにとどまらず、これは、漁業関係者のそういう被害額を入れればどれほどの大きな額になるかということは、見てのとおりであります。

 そこで、では、今度の国際戦略港湾事業に係る期間と、総事業費は一体全体幾らかかって、二〇一一年度予算は幾ら計上しているのか、報告願いたい。

○三井副大臣 お答え申し上げます。

 国際コンテナ戦略港湾政策に係る平成二十三年度の予算といたしましては、公共事業、非公共事業合わせまして、事業費で五百十四億円、そのうち国費が三百二十七億円の予算を計上しているところでございます。

 また、今後の事業量といたしましては、水深十六メートルの大水深コンテナターミナルの整備等に、二〇二〇年までに約五千五百億円を見込んでいるところでございます。

○穀田委員 東日本大震災による未曾有の国民的被害、インフラも相当な打撃を受けており、そして漁業関係者も甚大な被害を受けている。国民生活を立て直す上で、物流の拠点、漁業の拠点である港湾を一刻も早く復旧させるのは喫緊の課題だと思います。

 私は、この際、国際戦略港湾事業予算を災害復旧に回すべきではないかと思いますが、大臣の所見を問いたい。

○大畠国務大臣 非常に大事な御指摘だと思います。

 しかし同時に、今、委員も御承知だと思いますが、日本に立ち寄らないで、日本を拠点とするのではなく、中国や韓国に迂回しようというような動きもございます。それから、経済的に、日本の部品を使っていたアメリカやヨーロッパでも、日本に依存し過ぎた、こういうことで、他に拠点を考えようというような動きもございます。

 震災対策も大変大事でありますし、私どもも全力で取り組んでまいりますが、同時に、全体的な日本における経済力を衰退させてしまったのでは困るわけでありまして、今回の予算関係でも、これはこれとして充当しながら、同時に、どのような形で復興のための予算をつくり出していくか、これについても、さまざまな形で、与党、野党、各党のいろいろな御意見もあると思いますが、政府としても工夫をしながら両方やらなければならないと考えております。

    〔委員長退席、長安委員長代理着席〕

○穀田委員 経済力の衰退、こうきますけれども、港に立ち寄らないわけじゃないんですよ。減っている程度の話なんですよ。

 そして、部品のつくり、構成だとか言っている。これはもともと、今、大企業全体が海外にシフトするということの中で起こっている事態なんですよ。これはすべて港の話で起こっているわけではないわけです。

 私は、悲惨な事態に直面し、あすをも知れぬ避難生活にあえぐ国民生活の改善よりも、国際競争力、事実上そう言っているわけですが、と銘打った大型港湾事業が大事だとは思いません。今直ちに必要な、国民生活に欠かせないインフラにそのお金を回せと言っているわけです。それは常識だと私は思います。

 港にかかわる労働者で組織されている全国港湾労働組合連合会、略称全国港湾と、全日本港湾運輸労働組合同盟、略称港運同盟の二者は、この間、私どもの部屋にも来ていただいて、要請がありました。

 全国行動、三月十日、十一日の直後、東日本大震災が発生し、直後の大津波によって、当該地区の組合員はもとより、多くの港など職場も壊滅的な打撃を受けました。したがいまして、今次春闘も一たん中断し、救援活動に全力を挙げるとしています。そして、復興のために蓄積した能力のすべてを傾注するという心意気を語っています。本当に大事な申し出だと私は思います。そしてさらに、現国会で審議されている港湾法の改正は行わず、その予算を損壊した港湾施設の復興に振り向ける措置をとるよう提案すると訴えています。私もこれが常識だと思います。

 そもそも、百歩譲って、この法案をきょうあした急いで通さなければ国際競争力が落ちてしまうなんということはありません。大体、日切れ法案などといって、日切れ扱いと言っているけれども、三分の二の補助率を十分の七にするのをきょうあしたやらなければ港がつぶれるとか国際競争力が絶対負けてしまうなんということはあり得ないんです。そういうものをしっかり議論して、どうするかということをやること自体が大事なんだということを改めて私は申し上げたいと思います。

 そこで、では国際戦略港湾について少し聞きましょう。

 この趣旨を一言で言えば、国際競争力を強めてアジア諸港に奪われた貨物を取り戻すということだと思うんだが、本当に取り戻せるのか疑問です。

 二〇〇五年四月、港湾法改正が行われ、私はスーパー中枢港湾について質問しました。そのとき、アジアの巨大港湾に集まっているコンテナ貨物が日本の港に戻ってくるのか、そして、巨大貨物が必ず日本の港に入港するという確約があるのかと聞きました。

 このスーパー中枢港湾プロジェクトの結果はどうだったか、確認をしたい。事業費の総額は幾らだったか。

    〔長安委員長代理退席、委員長着席〕

○三井副大臣 事業費の予算で申し上げますと、平成十六年度から目標年次であります平成二十二年度までの間に、事業費は約五千百億円でございます。そのうち、国費が約三千三百億円となっております。

○穀田委員 当時の事業費は四千三百十二億円。これが、実際に使われたお金は五千百億円ということですな。

 どれだけの貨物がふえたのか、アジアの諸港から取り戻せたのかということについてお尋ねしたい。

○三井副大臣 平成十六年から平成二十年にかけまして、スーパー中枢港湾全体の外貿コンテナ取扱個数は、千百八十四万TEUから千三百七十二万TEUへ約一六%増加いたしたところでございます。

 一方で、我が国の発着コンテナの貨物のうち、海外の港で積みかえられて諸外国との間で輸送されました貨物の率は、スーパー中枢港湾施策実施前に比べまして増加傾向は緩やかになりましたが、しかしながら、引き続き増加傾向はとまっておらず、平成二十年には一八%となっております。さらに抜本的な競争力強化策が必要な状況にあります。

 スーパー中枢港湾政策を発展させる上にも、民の視点によります港湾運営が必要と認識しておるところでございます。

○穀田委員 三井副大臣が余り言っていないことも言っておきますと、基幹航路就航回数はスーパー中枢港湾全体でマイナス三%、スーパー中枢政策前のマイナス一八%に比べて減少傾向は緩やかだと。だから、えらい成果が上がっているように見えるけれども、はっきり言えば、スーパー中枢港湾全体でマイナス三%であり、マイナス一八%の全体に比べると減少傾向は緩やかだということであって、何か調子よくこんなになっているという話じゃないんですよ。

 みんな、聞いていると何となくえらい調子がいいなと思うんですが、違うんですよ。大したことないんですよ。はっきり言えば大したことないということなんですね。要するに、先ほどありましたように、むしろ五千百億円もつぎ込んでこの程度かということなんですよ。これだけ巨額の税金をつぎ込んで効果がなかったということが、はっきり言えば結論なんですよね。

 私、そのときも言ったんですよ、二〇〇五年のときも。そもそも、九〇年代にも、大交流時代を支える港湾構想というのがあったんですね。そして、その後構想して、そのとき、中枢・中核国際港湾という名前なんですよ。そして、そのときも、アジアの国際ハブ港湾にするというふれ込みなんですよね、九〇年代に。

 次、そのときに大体何ぼ金を使ったか。七年間に七兆四千九百億円を使った。それでも、アジアの諸港に貨物が奪われ、日本の港湾の貨物取扱量の順位は下がり続けた。それで、自公政権の時代だけれども、〇四年からスーパー中枢港湾プロジェクトが取り組まれた。

 今度、国際コンテナ戦略港湾も、何を言っているか。国際競争力を強めてアジア諸港に奪われた貨物を取り戻す。何のことはない、大交流時代を支える港湾、スーパー中枢港湾、国際コンテナ戦略港湾、三回とも同じことを言っている。よくも何回も同じセリフを使って、莫大な税金を惜しげもなくつぎ込んで無駄をつくるということを恥じないことだなと、私はあきれ返る。

 では、もう一遍聞きますけれども、もう一度三回目のせりふを聞こうというんですけれども、政府が言うところのアジアの港に奪われた貨物を取り戻すことができるのか、その保証はあるのかということについて聞きたい。

○大畠国務大臣 穀田議員の、実に過去の歴史を踏まえた御質問をいただきました。

 私自身の一つの考えを申し上げさせていただきますが、これまでのことが無駄だったんじゃないか、無駄金を随分投入してその程度なのかというような感じのお話でございますが、私はそうは思わない。なぜかというと、例えば、私もスポーツの世界で学生時代やってきましたが、一生懸命けいこをします。けいこをしてけいこをして、強くなろう強くなろうというけれども、相手もけいこをしているんです。

 結果的には確かに今のような状況かもしれませんが、では、けいこした、あるいは努力したことは無駄だったのかというと、そうじゃなくて、さらに努力をして、競争社会でありますから、言ってみますと、日本の港湾の対策よりも、アジア全体の経済の動きあるいはアジア諸国の港の整備というのが非常に進んだ。

 先ほどもちょっと申し上げさせていただきましたけれども、日本のコストもアジア諸国に対して高い現状にある。先ほど金子先生のお話のときにも申し上げましたが、日本の京浜港のコストが一〇〇とすれば、現在、釜山は七九、シンガポールが八五、釜山新港では五九という状況にあります。今、一生懸命努力してもこういう状況なんですね。

 だからここに予算を使うことが必要ないんじゃないかというんですが、逆に今、さまざまな形で、私たちが想像もしないような形でアジアの経済が非常に大きく飛躍しています。この中で日本がどうするかというと、やはり、その状況を見ながら適切に港の整備をしていくことは非常に大事だと思います。

 しかしながら、ただ投入するだけじゃなくて、いわゆる過去の政策の反省をしながらあるいは検証をしながら適切にやることが必要だと思うんですが、この中で今回御提示しています、いわゆる東京地区、阪神地区の二港に的を絞って国際的に競争できるような港をつくろうという一つの流れは、決して無駄ではないと私は思うし、大変大事だと思っています。

○穀田委員 私、ふえるかと聞いたんだけれども、無駄じゃなかったか無駄かという論議になっているんだけれども、では、無駄はなかったのかと。少なくとも、百二十六も重要港湾をやって、御承知のとおり船の来ない港などというのを何ぼでもつくっている。福井港などは、何百億円とかけて、あそこの地元紙は釣り情報の中に福井港と書いている。徳島港もつくった。ありとあらゆるものをつくりましたよ。それが無駄じゃなかったなどとだれが言っているか。みんなが無駄だと思っているんですよ。そういうものに何ぼ金を使ったんですか。合計で七兆円も使っているし、この間も五千億も使っている。こういうことでやっていいのかということを言っているんです。そして、その結果、戻っているのかと言っているんですよ、今後戻るのかと。

 しかも、その問題の中心は何か。けいこの話をしました。けいこじゃないんです、これは。国民の税金が使われているんです。しかも、この税金の使われ方が、こんな形で事実無駄なところがいっぱいあるといって、しかも、私が二〇〇五年にしたときには、政府が外郭団体からもそういう形で無駄が多いと指摘までされたということまで私は引用しているんです。そういう経過を見なければならない。

 ましてや、皆さん、今、そういう事態の中で、国際競争力、国際競争力と言って何が問題か。その経済力が、国民のところに豊かになる、港湾労働者が豊かになる、そういったことの結果として結実するのかどうかということが問われているのであって、けいこの実った話とそういった話を混同させちゃならぬということをあらかじめ言っておきたい。ふえるのかと。

○大畠国務大臣 確かに、穀田議員がおっしゃいますように、港の整備の中で、私なんかも、何か港湾を整備して釣りをするような港湾もあるとか、そういう話も随分ありました。

 確かに、過去の整備については無駄もあったと思います。したがって、そういうところは反省をしなければならないと思うし、検証もしなければならないと思うんです。そういう状況を検証しながらも、国際的な経済の大きな流れの中で、日本の港を集中的に、まさに選択と集中という形で整備していくことも大事だと思います。

 これでふえるかどうかという御質問でありますが、これも、世界的な、あるいはアジア全体の流れの中でありますから、確約することはなかなか難しいかもしれませんが、しかし、少なくとも、アジアの経済の大きなうねりの中で日本が対応すべきものとして、一つの選択肢として大変大事だと思います。

 ただ、先ほど、けいこの話とは違うじゃないかというのは、それは私も、御指摘をいただいて、そのようにも感じます。そういう状況もありますが、ただ、いわゆる競争社会というものの例えをしたわけですが、余り適切じゃなかったかもしれません。そういうところは十分私も心しながら対応してまいりたいと思います。

○穀田委員 二〇〇五年のときは、コストそれからサービス重視、そして大きな船で引き続き日本に寄港するのは維持できる、海上コンテナ輸送が海外トランシップされている状況を変えていくという、まだ具体的にあったんですが、今回は展望も何も余り示されない。本当に、前回は期待を述べていた、今度は期待さえもないということにちょっと驚きましたけれども、余りないということがわかった。

 そこで、私は、港湾政策の根本を変えなくちゃならぬと思っているんです。二〇〇五年のときにも私は指摘しました。当時は、スマトラ沖地震などで津波災害などに対する備えが緊急性を増していたんです。ところが、港湾や海岸の安全を確保する海岸事業に関する国交省関係の総事業費は、二〇〇三年に比べて二割も減らされたんです。そして、選択と集中、重点化といってスーパー中枢港湾など大型事業の予算をふやし、国民の命を守る海岸事業などの予算を減らすということもやられたんだ。まさにその結果がこれだ。

 私は、今回の東日本大震災、津波による戦後最大の被害がこの日本を襲ったとき、この復旧はもちろんだけれども、港湾政策が国民の命、安全を守ることを中心に据える、根本に据える、この発想の転換が必要だと思いますが、この際、聞いておきたい。

○大畠国務大臣 港湾政策の中で、命を守る、これを中心にすべきじゃないかということでありますが、そのことについては私も同感であります。

 同時に、これまでの港湾政策の柱を四点申し上げますと、産業競争力の強化のための港湾の国際競争力の強化、あるいは地域の暮らしの確保や経済の活性化、三点目には大規模地震への対応などの安全、安心の確保、四番目には地球環境問題への対応、こういうことを中心にしてきたということでございますが、今御指摘の国民の命あるいは暮らしを守る、これは今回の大震災でも私も非常に実感をいたしました。同時に、離島の交通もそうでありますし、地震対策等でも、地震に強い、あるいは津波に強い港をつくるというのは非常に大事だと思います。

○穀田委員 四つの柱を言われましたけれども、その中で、さっき言ったように海岸線を守ったりすることを減らしたということが問題だと言っているんですよ。だから、そういうところに転換しなくちゃならぬ。

 そこで、今、地方の問題を言いました。今、地方の問題も大事だと言っていました。国際ハブ港など東京一極集中、さらには首都圏、大都市集中を生む政策ではなくて、本当に、地方都市、地方経済の活性化、再生を中心に据えた政策への転換が必要だと思います。港湾が地方の経済にとって重要であることは論をまちません。大震災の被災地である東北地方はもちろんだけれども、地方に目を向けた政策への転換が大事だと考えます。

 アジア諸国との連携の問題についても、二〇〇五年の当委員会で、私は、地方の港への無駄な投資を重ねるべきではないが、今ある地方港も活用し、分散配送の方が効率的になる、今あるストックを活用することに港湾の行政を転換すべきだと指摘しました。

 奪われた貨物を取り戻すとか、そのためにより大きな船が入れるバースの整備を競い合う、競争一辺倒では私はだめだと思います。アジア諸港との協力、そして協調する発想への転換が必要だと思いますが、いかがですか。

○大畠国務大臣 今御指摘の点も私は大事だと思います。単にアジア諸国と競争をして勝ち抜くというだけの視点ではなく、アジアの、いわゆる韓国や中国の港とも、共存共栄、お互いに連携をとってやるという視点も私も大事だと思います。同時に、そういう中で、韓国の港あるいは中国の港との役割分担というのをどうするかということも大変大事な視点だと思います。

 そういう中で、やはりアジア全体の経済というのが世界の経済を引っ張り上げていることも事実でありますから、そういう中で日本の港はどうあるべきかということを考えることは大変大事だと思います。

○穀田委員 この問題について少し言っておきますと、そういうコンテナ取扱量低迷の主要な原因というのは、国内的には、やはり日本の通商構造の大きな変化、特に、大企業などが生産拠点を海外移転するという産業空洞化、こういったことが起きていることが大きな原因だ。そして、対外的にはアジアの経済の成長。その意味で、国際物流の非効率によって引き起こされているわけじゃないんです。それだけじゃないんです。問題は、やはりグローバル経済との関係を見て、その結果にほかならないということをしっかり見ないと、競争力、競争力という形でのやり方が、それは必ず落とし穴に陥るということを言っておきたいと思います。

 私は、最後に民営化の問題について一、二質問したいと思うんです。

 そもそも港湾が地方管理の公共財とされてきた理由は何かということであります。いかがですか。

○大畠国務大臣 これは過去の日本の歴史とも絡むと思いますが、港湾の管理というのは、さまざまな状況から非常に膨大なお金もかかるということで、いわゆる地方公共団体、または、地方公共団体が単独もしくは共同で設立する港務局というのが行うようになってきたと思います。

 港湾が、島国である我が国の国民生活や経済活動を支える上で不可欠の社会資本であるということ、防波堤あるいは航路等の収益性を求めることができない施設等が一体となって機能を発揮する社会資本であるというような状況から、公的主体が管理を行うことが適当であるという考え方に基づいて行われてきたと受けとめております。

○穀田委員 ですから、そういう点でいいますと、法律にあるように港湾の秩序ある整備と適正な運営を図るという点と、効率化が追求されるということは必ず矛盾する。この十年間の規制緩和は何をもたらしたかということに私は思いをいたさなければならないと。

 今後もそういう形で効率化一辺倒できますと、必ず、秩序ある港湾運営の崩壊と働く労働者へのさらなるコスト削減、合理化を招く、そういう危険性があるということを今から指摘し、今後も私は皆さんと議論をしていきたいと思っています。

 既に、日本港運協会の会長なども、港湾管理会社に民間資本を入れる国がどこにあるか、港を理解しない資本家が資本を入れれば日本の港にどのような結果をもたらすかは自明であるという懸念を表明しているんですよね。こういうことをしっかり見て、やはり公共財としての活用が大事なんだということを肝に銘じてやらなければならないと思います。

 最後に、非核神戸方式について聞きます。

 船舶の入港に関して、港湾運営会社の許可権限はどのようなものか。例えば神戸市は、核兵器積載艦船の神戸入港に関する決議に基づいて、外国の艦船、軍が管理する船ですね、が神戸港に入港する際に、核兵器を搭載していないことをみずから証明する非核証明書を提出することを義務づけています。

 非核証明書を提出しない場合でも港湾運営会社が入港を認めることがあるのかどうか、お聞きしたいと考えます。

○大畠国務大臣 穀田議員からの御質問ということで、私もいろいろ、調査といいますか、調べさせていただきました。

 港湾法においては、港湾管理者たる地方公共団体が港湾を管理している。一方、港湾法第十三条第二項においては、何人に対しても施設の利用その他港湾の管理運営に関し不平等な取り扱いを禁止しているところであり、港湾の適正な管理及び運営に支障が生じると認められるときに限って、港湾管理者は港湾施設の使用を拒否することが可能であります。この考え方については、港湾運営会社が指定された港湾においても同様と考えております。

○穀田委員 わかりやすく言ってください。

 要するに、簡単に言えば、入港の届け出管理義務、そういう港湾管理事務というのは、本来運営会社がやるんじゃないんだということですよね、わかりやすく言えば。

○大畠国務大臣 言ってみますと、民間企業になったとしてもこれまでと同じです、こういうことだと思います。

○穀田委員 ということは、非核神戸方式について影響を及ぼすことはないということですね。

○大畠国務大臣 基本的に、港というのは、世界的に、何人も入港することを拒否してはならない、あるいは平等にしなければならないというものがありますが、地域のさまざまな歴史がありますから、そういう意味では、港湾管理者は、遅滞なく、言ってみますと、民間会社になったとしてもおおよそ同等の形でとり行われるだろう、私はそう受けとめております。

○穀田委員 そういうふうに理解をして、終わります。

○古賀委員長 次に、中島隆利君。

○中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 東日本震災で亡くなられました方々にまず心からお悔やみ申し上げ、また、被災を受けられました方々にお見舞いを申し上げたいと思います。

 まず、今回の東北地方を襲った地震と津波では、多くの港湾労働者の方々も、亡くなられたり行方不明になられて大変な状況にございます。そういう中にありましても、港湾関係で働く労働者の団体の皆さん方は、現在の救援物資の海上ルートの確保やあるいは救援物資に係る港湾荷役作業に全力を挙げて今取り組んでおられます。

 港湾関係で働く労働者は、今回の法改正による港湾経営の民営化や規制緩和が自分たちの労働条件にどのような影響を与えるか、大変に危惧をされております。被災しながら懸命に働く港湾労働者を前にし、しかも、これから甚大な被害を受けた港湾復興に取り組まなければならないこの状況の中で、この法案を今審議する必要があるのかどうか、我が党も大変に疑問に思っております。このことをまず申し上げながら、質問に入りたいと思います。

 まずは、港湾の震災、津波の被害についてでありますが、第一番目、港湾の被害状況につきましては、先ほど、自民党の金子議員、あるいは穀田議員、それぞれお尋ねがありました。そこで、答弁では、青森から静岡までの重要港湾十五港については詳しく報告がございました。しかし、この間には地方港がたくさんあると思うんですが、この地方港の現状、どれくらいあってどれぐらいの被害があっているのか、これについて港湾局長にお尋ねしたいと思います。

○林田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、青森県から茨城県に至る地域にも重要港湾以外の地方港湾がございます。こういった港湾におきましても、今般の地震によりまして、防波堤あるいは岸壁といったものに大きな被害が出てございます。また、津波そのものによりまして、港湾施設の建物でございますとか、あるいは荷役機械でございますとか、こういうものが流されたりする、あるいは倒壊をしてしまう、こういった被害が出てございます。

 青森県から茨城県まで、これは一部もちろん漁港を含んでおりますけれども、何らかの形でそれぞれの港湾が大きな被害を受けているというのが実情でございます。

○中島(隆)委員 今の御答弁ですが、何らかのということで、数も出ないし被害の状況もまだ把握されていないということではないかというふうに思うんです。

 これに加えまして、今話がありましたように、漁港が百十八カ所あるんです、岩手、宮城、福島三県。もう漁港はほぼ壊滅的です。これは国土交通省の所管じゃありませんけれども、今後、この復興には、地方港も含めて大変な復興事業があると思います。

 今回の法改正で、国際戦略港湾あるいは国際拠点港湾の工事費用、先ほど穀田議員が質問されて、五百数十億、もう二十三年度からこの予算が積まれている、これはこれとして確保したいと大臣が回答されたわけでありますが、私は、このような被害をこうむって、恐らく何兆円とかかる復興予算になると思うんです。こういう状況になって、本当にまず復旧をやって、その次の復興も計画していかなならぬわけですね。そういう状況にあって、私は、災害対策を優先すべきではないかというふうに思うんです。大臣、再度この点についてお答えを願いたいと思います。

○大畠国務大臣 中島議員の御指摘については、私もよく理解するところであります。

 先ほど穀田議員にも御答弁を申し上げましたが、しかしながら、アジア全体の、あるいは世界全体の状況というものも見ながら対処していかなければならないと思います。

 したがって、国際的な競争力というものを考えたときに、今回御提案している、集中的にここは競争力を持つ港をつくろうということも大変大事な視点だと考えております。そういうところを強化しながら、その港を中心として、震災を受けたところの港に対する支援の手を差し伸べるというのも大変大事なキーポイントになりますので、その両方を整備していくことが大事だと私は思っております。

 当然、今御指摘の、被災した港湾施設の対策、復旧、あるいは、被災者の皆さんに対して生活支援物資を届ける、こういうことも大切でありますし、その地域の、東北地方の経済あるいは産業をもう一度立て直して、そこにいわゆる仕事の場、仕事をつくっていくということも大変大事だと思います。

 そういう意味からも、連携をとりながら、何とか被災した地域の復興にも役立てることができるようなことも十分考えて対処してまいりたいと考えております。

○中島(隆)委員 次に、港湾の復興なり、費用負担の手法についてお尋ねしたいと思います。

 阪神・淡路大震災では、神戸港では大きな被害をこうむりまして、平成七年の運輸白書でも述べられておりますが、被害総額一兆四百億円、平成六年から平成十一年まで、二次補正で、震災関係の予算が神戸港だけで六千七百億円支出されています。防波堤や岸壁、臨港交通施設、これらについては激甚災害の適用がされまして、国の補助率は九一・八%、こういう国からの支援がされています。しかも、民間の神戸港埠頭公社、あるいはコンテナ埠頭等ですが、これについては、新法を制定して国庫補助の対象にされています。

 こういうことがされていますが、今後の復興に対してこのような国の負担が進められるのかどうか、特に、阪神・淡路大震災のように国の財政負担中心で考えられる対応がされるのかどうか、その点について、港湾局長、お尋ねいたします。

○林田政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘がございました被害の実態の把握ということでございます。

 これは私ども、確かに初動が非常におくれてございます。これは、私どもの現地の港湾事務所、あるいはそこで働く職員そのものが実は被災を受けているということもございまして、非常におくれたことをおわび申し上げたいと思います。

 今、実は、その被害の実態がどうであったかということを詳細に把握するという作業を行ってございます。その被害の実態の把握がしっかりまとまりますと、今後は、復旧復興の費用負担の問題になります。これも委員御指摘のとおり、阪神・淡路の震災のときにどうであったかということも、これは私ども今しっかり勉強してございます。

 今後、港湾管理者の方々やら港湾所在の市町村の方々の御意見、御要望をしっかり伺いながら、これまでと同じ制度でいいのかといったことも含めて早急に検討を進めていきたいというふうに考えてございます。

○中島(隆)委員 特に各港湾管理の自治体については、復興その他の震災の被害に大変な財政的な問題がございます。ぜひ阪神・淡路大震災以上の国の支援策で対応していただきたいと思います。

 次に、これまでの港湾の規制緩和の問題についてお尋ねいたします。

 特に港湾の規制緩和、これまで数々取り組まれてまいりました。その規制緩和の波にさらされてきたわけであります。一九九九年の港湾運送事業法の改正によりまして、参入の規制が免許制から許可制、あるいは料金制度についても許可制から届け出制。その結果によりまして、港湾の競争力を高める方向に作用したとはとても思えません。

 逆に、港湾で働く人たちに強いしわ寄せが寄せられています。港湾労働者の賃金は、他の技術系労働者の基準内賃金と比べまして、月額でも十万円程度低くなっています。所定内の労働時間も、月間百五十一時間、全産業の平均よりも十五時間も多いのが現状であります。

 港湾関係の事業の十年にわたる規制緩和を国交省はどのように評価をされているのか、お尋ねいたします。

○林田政府参考人 お答え申し上げます。

 港湾運送事業におきます規制緩和のことについてお尋ねでございます。

 まず、港湾運送事業の取り扱っております貨物量につきましては、日本の貿易の拡大に伴い増加を続け、規制緩和以降の一般港湾運送事業者の売上高も増加傾向にございます。そういった意味で、港湾運送事業者の経営状況は堅調に推移をしているものと考えてございます。

 また、これは厚生労働省さんの調査結果でございますが、港湾労働者の方々の現金給与額につきましては、全産業平均を上回ってございます。また、労働災害の発生率といったものも減少してきているということでございます。

 これらを勘案いたしますと、規制緩和による港湾運送事業や港湾労働者の方々への悪影響は生じていないのではないかと考えています。

○中島(隆)委員 今の御回答では、規制緩和後、貨物量もふえ経営状況もよくなった、そして全産業の賃金を上回っている、災害も減っている、こういう御回答ですが、私が聞く範囲ではそういう状況認識ではないんですね。本当に厳しい状況の中で港湾労働者は働いているんですよ。もっと重要に今の点を調査していただき、本当にどうあるのかを踏まえて規制緩和後の総括をしていただきたいと思う。これは厳しく求めておきたいと思います。

 特に、港湾の規制緩和によりまして、二〇〇〇年に、衆議院の運輸委員会あるいは参議院交通・情報委員会で、需給調整規制の廃止の際に決議がされています。港湾運送の安定化が保たれるように努めるとか、あるいはダンピングの防止に努める、港湾労働者に過度のしわ寄せが及ばないように配慮する、こういう決議がされているわけです。ということは、これだけしわ寄せが起こっているということを、国会の中でも審議をされて決議されているんです。

 規制緩和を憂慮する意見や、これらの多くの配慮された意見があるわけですが、今後、この法改正で港湾経営の民営化や効率化がさらに進むと私は思うんです。このような状況の配慮をどういうふうにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

○林田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の行政改革委員会最終意見や衆議院、参議院委員会での港湾運送事業法改正法案に対する附帯決議におきまして、さまざまな御指摘をちょうだいしております。

 こういった御指摘を踏まえまして、国土交通省といたしまして、悪質事業者参入防止のための欠格事由拡充、罰則の強化、あるいは、港湾運送事業者、港湾管理者、国などから成ります港湾安定化協議会の設置、開催、さらには、ダンピングによる港湾運送の混乱の防止策としての料金変更命令制度及び緊急監査制度の創設、運用といったセーフティーネット策をこれまで講じてきたところでございます。

 今回の港湾法改正におきましても、港湾運営会社について、大口株式保有規制や港湾運営会社に対する監督命令、指定の取り消しなどの措置を設けることによりまして、港湾の公共性、公益性を確保することとしております。

○中島(隆)委員 安定協議会の協議ですけれども、これは港湾運営の経営の安定のための協議でありまして、先ほど、港湾労働者へ過度のしわ寄せが及ばないように、こういう配慮の指摘があるわけですが、港湾労働者、働く方々へのしわ寄せなり、こういう労働条件の問題について、やはり規制緩和によって非常に過酷な状況に立たされているわけで、こういう問題についての検討と対策が必要ではなかったか、こういうふうに思っております。これは指摘しておきたいと思います。

 次に、今回の規制改正についてですが、特に、中国あるいは韓国のハブ港との競争力を大臣が盛んに指摘をされました。しかし、この競争をやるとしても、ターミナルにしても、背後地物流、上海の一平米四十円という借地料、こんなところと競争して、特にコスト的なことで、相互依存でも大変難しいと私は思うんです。であれば、逆に、安全性の軽視とか働く人たちの条件、こういうしわ寄せをやることがますますこの民営化によってふえると思うんですね。

 ですから、私は、日本の港湾政策というのは、安全性や利便性を強く打ち出して、日本の港湾の特色を国際的に認知させる、こういう意味での港湾改革が必要ではないかというふうに思うんです。これは港湾局長にちょっとお尋ねしたいと思います。

○林田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、港湾を取り巻く状況が厳しい中にありましても、港湾で取り扱います貨物、実際にこの貨物を扱っていただいております港湾労働者の方々の安全というものをしっかりと確保していくということは、私どもにとっても極めて重要な政策の一つと考えております。

 そういった中にありましても、実は、繰り返しになって恐縮でございますが、国際コンテナ戦略港湾におきまして、コスト低減策というものをやっていくということに加えて、コンテナ貨物を集約する、内航を初めとするフィーダー網の抜本的な強化でございますとか、あるいはゲートオープンの拡大によります二十四時間化の推進でございますとか、こういった荷主サービスの向上、さらには、民の視点と活力を有する港湾の広域的な経営の実現、こういった施策を総合的に進めるということが必要だと考えてございます。

 こういった施策を総合的に進める中で、港湾労働者の方々の安全というものもしっかり確保した上で国際競争力強化というものに努めていきたいというふうに考えてございます。

○中島(隆)委員 これは、今回の法案改正に当たって、交通政策審議会なり、あるいは交通政策審議会に港湾分科会というのがあるんですが、ここの審議がされたのかどうか、港湾局長、お尋ねしたいと思います。

○林田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の港湾法改正に盛り込んでおります内容につきましては、いわゆる私ども国土交通省に設置されております審議会では、報告をし意見を聴取するということは行ってございます。ただ、実務的に内容を詰める中では、別途、国際戦略のコンテナ港湾というものを進めるための委員会を設けまして、その委員会の中でさまざまな有識者の方々から御意見をちょうだいしながら政策をつくってきたということでございます。

○中島(隆)委員 私も国土交通省のホームページで見たんです。交通政策審議会でも議論されていません。それから、港湾分科会でも、過去何回も開かれていますが、議事録にも載っていません。別途委員会を開いたということでありますが、管理権を民営化に移し、しかも重要港湾を拠点港湾に組みかえる、そして新たな財源を使う。これは、港湾分科会の目的で、港湾、航路及び港湾運送に関する重要事項について調査審議するという重要な課題があるわけですね。審議会でも議論されていない、しかも分科会でも審議されていない。こんな重要法案を審議するのに、全く審議会にかかっていない。これは、各地方にも管理者の港湾審議会があるわけですね。そこの意見も聞かずにこういうのがされているということは大変な問題だと私は思うんですが、大臣、ちょっと、このことについてどう思われますか。

○大畠国務大臣 今の御指摘というのは、非常に大事な御指摘だと思います。特に、働く人の立場というものをどういう形で考えていくのかということは非常に大事だと思いますので、今の御指摘を受けて、できるだけそういう形がとれるように努力をしていきたいと思います。

○中島(隆)委員 特に、今回の法案を見てみますと、効率的な運営、運営の効率化という言葉がほとんど出てきているんです。それから、法案の三条の二の二項に、「民間の能力を活用した港湾の運営」あるいは「港湾の効率的な運営に関する基本的な事項」、しかも、三条の三の二項には、港湾計画の項ですが、「港湾の効率的な運営に関する事項」、こういう国土交通省の基準に適合していなければならないということが盛られていますけれども、非常に効率化一本がこの法案の中心になっています。港湾の公共性、安定性を確保することは重要であるけれども、こういう効率一辺倒でやることについて非常に危惧をするわけですが、この点について、港湾局長、どうなのか。

○林田政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、港湾におきまして、港湾の持つ公共性、安全性をしっかり確保していくということ、これは基本的な原則として極めて重要なことかと認識をしております。港湾というものが国民共有の財産であるということでございますので、こういった港湾の機能が最大限発揮されますよう、その効率化を図るということも極めて重要なことと考えてございます。

 現在取り組んでおります港湾政策の中でも、運営の効率化を図るということが国際競争力強化のために非常に重要だということで、私ども、公平性、安全性の確保ということ、これをしっかりと実現していくという政策を進めながら、運営の効率化に取り組んでいるところでございます。

 今回の法案におきましても、委員御指摘のとおり、公平性あるいは安全性といったものを最大限確保しつつ取り組んでおりまして、あわせて港湾の運営の効率化ということによる国際競争力の強化というものを図っていきたいというふうに考えてございます。

○中島(隆)委員 先ほどから法案の中身について指摘しましたが、効率化については当然必要です。必要ですが、効率化をやることによってそこに働く労働者の皆さん方が犠牲になるというのが今までの規制緩和です。安心、安全というのは、港湾では一番必要な課題です。そこに働く方々のそういう効率化については、やはりできるだけ安全性を確保するという前提でぜひ行っていただきたいというふうに思います。

 そこで次に、港湾管理者の地方自治体の管理権の問題でありますが、国際戦略港湾を指定されて、今度民営化されます。業務に関しては、監督上必要な命令をするということも盛り込まれています。地方自治体に属していますが、国の監督権限の強化で逆に侵害されるのではないかというふうに判断をするわけです。地方分権にも逆行するような形になるのではないかと考えるんですが、そこの点について、港湾局長。

○林田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今回の港湾法の改正におきましては、国際戦略港湾という港格を新たに設け、国際戦略港湾及びその港湾運営会社に対して国の施策を集中するとともに、その会社の運営の効率化が最大限図られるよう、港湾運営会社の指定及び必要最小限の監督は国が行うこととしてございます。

 港湾運営会社制度につきましては、まず、港湾管理者が作成いたします法定計画でございます港湾計画に位置づける必要がございます。こういったプロセスの中で、港湾管理者の意思決定がその導入に不可欠なものと認識をしてございます。また、国際戦略港湾の港湾運営会社の指定、監督に当たりまして、国は、それぞれ港湾管理者の同意あるいは意見を求めることとしてございます。

 このように、国家戦略を実現するための国際戦略港湾の港湾運営会社につきましても、港湾管理者の意向を踏まえ、かつ、十分な調整を行った上で指定、監督をすることとしてございます。

○中島(隆)委員 時間がありませんので、次に、今までも質問いたしましたが、港湾労働者に与える影響の問題で一つだけ質問させていただきたいと思います。

 今回の法案の中に、国際戦略港湾運営効率化協議会というのが新設されています。これについては、経営効率化協議会という内容になっていまして、構成が、港湾管理者、関係行政機関、民間の港湾運営会社です。この協議が、今までと同じように効率化のための協議であって、本当にここに働く港湾労働者の皆さん方の意見を反映する場になっていないんじゃないかなと思うんですけれども、その点はどうですか。

○林田政府参考人 お答えを申し上げます。

 今委員御指摘の協議会でございますが、これは、私ども今、制度設計を行ったところでございます。御指摘の過去に設けておりました協議会につきましても、もちろんこれは効率性を追求するためだけのものではございませんで、港湾労働者の方々の安全性、あるいはそこで取り扱われます貨物というものがしっかりと安全に取り扱われるというような、さまざまなことについて議論をさせていただいております。

 今回設けます協議会につきましても、もちろんそれぞれの港湾においてつくっていただくわけでございますけれども、参加をしていただくメンバーはもちろん、そこで議論をしていただく内容につきまして、港湾労働者の方々が安心して働いていただけるような、そういったことについてしっかりと議論をしていただく、そういう協議会にしていきたいというふうに考えてございます。

○中島(隆)委員 その点は、特に港湾労働者の皆さんの意見が反映できる協議、そういうことをひとつ検討いただきたいと思います。

 時間がありませんので、最後に大臣にお伺いいたします。

 特に港湾運送事業法の問題、これは再三質問しているんですが、大臣の御地元であります常陸那珂港、これは非常に取り扱いが多いんですが、対象になっていません、指定されていません。その他多くの重要港湾で指定されていないところがあるんですね。あるいは、三島川之江港あるいは志布志港。こういう貨物量の多いところは早急に指定すべきではないかというふうに思うんですが、大臣、どうですか。

○大畠国務大臣 今回の港湾法等の改正では、今御指摘をいただきました港湾運送事業法を改正しておらず、直接的に指定港の見直しに結びつくものではありません。ただ、私も、今回の御質問の背景についてもいろいろ報告を受けました。いろいろと状況をしっかりと調べて、現行の基準に照らして適切に判断をさせていただきたいと考えております。

○中島(隆)委員 時間が参りましたので、最後に要望だけ申し上げておきたいと思います。

 この法案改正については、我が党としては、働く皆さん方の問題、あるいはさらに効率化一辺倒の規制緩和が進むのではないかという心配を非常にしています。

 そこで、お願いでありますが、特に港湾というのは、港湾に働く皆さん方があってこそ港湾は振興するんですね、物流も興るんです。ですから、ぜひ、港湾会社の運営に当たっては、十分な監督、指導をされるわけでありますが、その中で、この港湾に働く皆さん方の雇用環境、条件確保、あるいは意見を十分反映する、そういう方を厳しく指導して体制をとっていただきたい。最後に要望して、終わりたいと思います。

○古賀委員長 次に、柿澤未途君。

○柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。

 港湾法及び特定外貿埠頭の管理運営に関する法律の一部改正案ということで、日本の港湾の岸壁使用料はアジアの主要港に比べ二、三割高いということが言われている。国際競争力を失いつつあるわけです。先ほど大畠大臣自身がおっしゃっていましたけれども、例えば北米から新潟に行くという場合に、東京港に陸揚げして陸上で運ぶより、釜山に寄ってコンテナを積みかえて新潟に行く、その方がコストが安いので釜山を経由する、こういうことが言われている。

 今回、京浜港と阪神港を国際コンテナ戦略港湾、国際戦略港湾として、世界で戦える港湾として、選択と集中の上、育てていく。港湾運営会社制度を導入して、民間の資金と経営力で港湾の国際競争力を高めていこう、こういうことについては、私たちも基本的に賛同するところであります。

 まず、コスト競争力を高める必要がやはりあるというふうに思うんです。こういうものは、私は、目標値を定めてやっていくことが大事だというふうに思います。アジアと比べて二、三割高いと言われる岸壁使用料の水準を、いつまでにどれだけ下げるという目標を持っているのか、お伺いをしたいというふうに思います。

○林田政府参考人 今委員御指摘の岸壁使用料ということでございますが、これは、それぞれの港湾管理者の方々が利用料金を定めてございます。その使用料そのものにつきましては、それぞれの港湾管理主体の方々が判断をされるということではございます。

 ただ、岸壁使用料を含めた港湾のコストのことでございますが、これについては、実は、国際戦略港湾においては、貨物を広域的な範囲から集約をするということ、あるいはまたこれによって大型化する基幹航路のコンテナ船をより多く寄港するように促す、こういったことを行いましてスケールメリットを発揮させるとともに、港湾運営の効率化、ヤード整備の直轄事業化等によりましてコスト低減を全体として図っていくということかと考えてございます。

 加えて、港湾の二十四時間ゲートオープンでございますとか、あるいは民の視点による港湾運営等でございますとか、総合的な政策を推進することによりまして、二〇一五年には釜山等東アジア主要港でのトランシップ率を現行の半分に縮減し、さらには、二〇二〇年には東アジア主要港として選択される港湾となることを目標といたしまして、国際競争力の強化及び基幹航路の維持拡大を図っていきたいと考えてございます。

○柿澤委員 私たちは、この法案に賛成をするわけです。先ほど穀田先生から御指摘があったように、これまでの港湾競争力を高める政策は必ずしもその効果を発揮してこなかった、こういう歴史があるわけであります。そういう中で、私は、今のトランシップ率を半分にするとかあるいは東アジアの主要港になるとか、こういう抽象的な目標ではなくて、きちっと数値目標を、いつまでにどれだけのことをやる、これを示した上で施策を講じていくことなくして、私たちはこれまでの港湾政策の繰り返しをこれ以上是とすることはできない、こういう状況に立ち至っていると思うんです。そういう意味で私は数値目標をお伺いしたかったんですけれども、残念ながらお示しをいただけませんでした。

 次の質問に移ります。

 東京では、いち早く埠頭公社を民営化しております。私もちょうど都議会議員をやっていたころですけれども、これは臨海副都心開発をめぐる三セクの救済の側面もあったと思います。埠頭公社が現物出資をするという形でその三セクの債務超過を解消する、こういうことが背景にあったというふうに私は思いますけれども、いずれにしても、日本初の港湾運営会社として東京港埠頭株式会社というのが平成二十年四月に立ち上がることになったわけです。しかし、これは官の公社が形式的に民になっただけじゃないかというふうにも言えるような気がします。社長も都の副知事経験者がやっているわけです。言ってしまえば、天下りと言ってもいいかもしれない。

 ここまで三年間、埠頭公社が東京港埠頭株式会社という民間会社になってやってきましたけれども、経営の効率化ということを港湾運営会社制度の導入で目的として掲げているわけですから、この三年間、東京港埠頭株式会社でコスト縮減、経営効率化の効果がどれだけ出ているのかということをお伺いしたいと思います。

○大畠国務大臣 東京港埠頭公社というものが株式会社にされてどのくらいの効果があったのかということでございます。

 調べてみましたが、平成二十年四月一日の株式会社後、経営の自由度が一定程度向上し、従来の公社バースでの貸付料の引き下げも可能となりました。その結果、貸付料の約一五%低減、それから大型コンテナ船入港隻数等では四十二隻増加、コンテナ貨物取扱量では約六十五万TEU増加等の効果を上げることになりました。

 しかしながら、御指摘のように、東京港の周辺でのトラックの待ち時間が長期化し渋滞が深刻化していることや、外貿ターミナルと内貿ターミナルが隣接していないという、利用者ニーズに合致した運営がなされていない面も承知しており、より一層民の視点を取り入れた運営を強化するために、今回、国際戦略港湾政策の推進を図り、これらの課題を克服して、まさにアジアに負けない港づくりをしていきたい、そう考えておるところであります。

○柿澤委員 この京浜港においては、東京港埠頭公社が先行して民営化をしたわけでありますけれども、今後の方向性としては、京浜港一体で港湾運営会社をつくって運営していく、こういうことを目指しているというふうにも聞いております。

 世界のメガターミナルオペレーターという港湾運営会社は、こういう形でかつて官の事業としてやっていたものが民営化をされて、今や世界の名立たる港湾運営会社になってきたというものがたくさんあるわけです。例えばシンガポールのPSAもそうですし、ドバイのDPWもそうですし、こういう港湾運営会社に伍していくという考え方が基本的には将来のビジョンとしてはあるんだろうというふうに思いますので、そうしたことにぜひ鋭意取り組んでいただきたいと私は思っております。

 その関連で、今、PSAとDPW、ドバイとシンガポールのメガターミナルオペレーターの話をしましたけれども、今回の法案では、いわゆる外資規制は行っていないわけです。議決権の保有制限の百分の二十、こういう制限はありますけれども、外資が入ってくることについて基本的に制限をかける、そうした法律になっておりません。

 こういう輸送インフラの運営を外資にゆだねていいのかということは、これは空港ビルなんかでもあった議論でありますけれども、そういう外資に関して制限をかけるべきじゃないかという意見があります。一方、先ほど申し上げたようなシンガポールやドバイのオペレーター、香港でハチソンというのもありますけれども、こういうところにむしろ積極的に入ってもらって官営港湾の経営改革を進めるのがいい、こういうふうに考えている人もいるように思います。

 港湾運営会社に仮に外資が入ってくるということについて、今回この法案を提出している国土交通省は、推進というか受け入れるという側なのか、あるいは必ずしも好ましくないと考える側なのか、それをちょっとお伺いしたいというように思います。

○三井副大臣 お答えいたします。

 港湾は、当然、我が国の経済活動あるいは国民生活に広く密接にかかわっている基幹インフラであることは、柿澤委員も御存じだと存じます。その歴史的な経緯から見まして、港湾運送事業法におきまして、港湾運送に関する秩序の確立が法目的といたしまして定められているところでございます。特定の者による港湾運営会社の恣意的な運営を排除する必要がある、こういうように思っているわけでございます。

 いずれにしましても、内外の者を問わず、恣意的な運営がなされないようにするためにも、今回の港湾運営会社におきましては、外資規制を導入することはせずに、内外無差別の大口株式保有に対する規制を導入することといたしております。

○柿澤委員 震災関連で、二点、お伺いをしたいと思います。

 今回の震災は大変甚大な被害を東北、東日本にもたらした。犠牲になられた方々、そして、きょうも非常に寒い日になっておりますけれども、被災地で今避難生活を送っている方々、その支援や捜索活動に当たっている皆さん、そうした皆さんに本当にお見舞いを申し上げたいというふうに思います。

 そして同時に、今、原発の問題などもあり、この東日本地方の経済が停滞をし、とまってしまっている。このことがもたらす影響が深刻化しているというふうに思います。いわば経済災害、経済被害が始まっている。

 そういう意味でいうと、仙台塩釜港のバックアップとしては京浜港が非常に重要な役割を担うことになると思うんですけれども、原発事故の深刻化で、この京浜港に風評被害が大変影響を及ぼしているというふうに聞いております。特にヨーロッパやチェルノブイリのあったロシアの船や船員が京浜港に寄港しなくなっている、こういうことを聞くんですけれども、ただでさえ地盤沈下だ、退潮ぎみだと言われている京浜港に、これは追い打ちをかけることになりかねない。

 風評被害の実態がどうなっているかということをお聞きすると同時に、それに対してどう対応していこうとしているのか、お伺いをしたいと思います。

○大畠国務大臣 ただいまの柿澤議員からのいわゆる原子力事故に関する風評被害対策についてでございます。

 私も、この原子力発電所の事故については、大変、毎日状況については注目といいますか、現在どこまで来ているのか、こういうことをしっかりと把握するように努めているところであります。

 御指摘の、原子力発電所の事故による放射線に関する風評被害というものが大変広がっておりまして、これは、私どもも反省するところがあるんですが、この事故に対応するということで、そこに集中していたために、英語あるいは中国語、韓国語、在京の大使館に対して正確なメッセージを早期から出していたかというと、どうもそこら辺は明確に出していなかったんじゃないか、そういう反省から、一生懸命今対策をとっているところであります。

 今御指摘の、京浜港への寄港取りやめというのがどういう実態かということでありますが、北米、欧州、中国などの国際コンテナ航路について、九便取りやめたという確認がされております。そういうことから、国土交通省としては、京浜港への寄港取りやめを防止するため、国土交通省のホームページを通じて、港周辺の放射線量について正確な情報提供を日本語のほか、英語、中国語、韓国語で実施させていただいております。

 それから、このホームページについて広く周知するため、国内外のプレス、日本国内のマスコミだけではなく海外のマスコミに対して、あるいは在京の大使館の館員に対してブリーフィングを行うとともに、外国にある日本の公館、いわゆる大使館等を通して外国政府に対しても正確な情報を提供しているところであります。

 なお、日本国内からの情報提供だけではなかなか信用が難しいというところもありまして、国際海事機関、IMOというものに要請をして調査していただいて、日本における放射線に関することについては特に支障がない、そういうメッセージを出していただきまして、外国政府に対してもIMOを通して日本への渡航制限がない旨発信をさせていただいております。

 今後とも、御指摘をいただいた風評被害、大変大事な課題でもございますので、東日本地域における物流が滞ることがないよう、また港に関しても御指摘の懸念がないように一生懸命努めてまいりたいと考えております。

○柿澤委員 今、九便取りやめになったという話がありました。九便かということですけれども、しかし、大体十五日からですからね、原発事故が深刻化してきたのは。きょうは二十五日で、十日間で九便取りやめですから、これはこのままいくと大変大きな経済的打撃をこれからこうむることになりかねない。このことは極めて重要だと思いますので、再度指摘しておきたいと思います。

 最後に、震災関連でもう一点、仮設住宅の話をちょっとお伺いしたいと思います。

 仮設住宅は極めて重要だと思います。大畠大臣も二カ月で三万戸を供給するというふうに宣言をされて、被災地のために頑張っていただきたいと思いますけれども、自治体からは、二万戸足りない、そしてとにかく早く、こういう話が来ております。宮城県東松島市から要望をいただいたんですけれども、仮設住宅の必要数が三千五百戸、避難民が一万人いるらしいんですけれども、宮城県の一次整備分の東松島市への割り当てはたった百戸だったというふうに聞いております。

 瓦れきが山積みになっている中で、仮設住宅の設置に当たって自治体が頭を悩ませていることがあるんですね。町中は瓦れきの山で、広い土地が必要ですが、しかし、農地への仮設住宅の設置というのは、農地法五条で、農地の一時転用について、農業委員会への届け出、許可を得なければならないわけです。甚大な津波被害で自治体機能が壊滅をしている中で、農業委員会を開会して、一時転用を許可する、これはもう事実上不可能だと思います。政治判断でここを緩和しないと、仮設住宅を建てる場所が確保できないという声が次々に上がっております。

 もちろん、これは農地法ですから、農水省に言わなければいけないんですけれども、早期、大量の仮設住宅の供給を大畠大臣もコミットメントしたわけですから、ここはきっちり政府内で農水省との交渉、要望、早期の決定をしていただきたいというふうに思います。見通しも含め、大畠大臣の政治家としての、これはきっちりやりますという御決意をお伺いしたいと思います。御答弁をお願いします。

○大畠国務大臣 現在、たしか二十七、八万の方が避難所での生活をされている。当初三十数万になったんですが、現在のところ、二十七、八万と聞いておりますが、大変不自由な状況の中で生活をされております。

 いずれにしても、生活を再建するためには住むところが大変大事であります。そういうことから、約二カ月間で三万戸の仮設住宅をつくることを要請いたしまして、関係団体も努力する、約束する、こういうことで今進んでいるところであります。現在、まずは、三月十四日に私が要請いたしましたが、岩手県が陸前高田市などで二地区三百戸、福島県が国見町などで二地区百十五戸の工事着手がなされました。それから、宮城県においても、用地確保を行いまして、早期に着工する予定であります。

 なお、これまでに三万二千戸を超える仮設住宅のお申し込みといいますか、要求が県から来ておりますので、現在の三万戸でも足らないということで、さらに準備をしようとしているところであります。

 そこで、用地の確保でありますが、基本的には各県がこの用地の確保をするということでございますが、御指摘の農地の転用という形であります。これについて私も調べさせていただきましたが、現在、農地を応急仮設住宅に活用する場合には農地転用の許可は不要とされております。現に、平成二十年の岩手・宮城内陸地震においては、応急仮設住宅として農地を活用したことがあるということも調査させていただきました。

 したがいまして、農地を活用することも含めて、全力で各県と連携をとって仮設住宅の用地というものを確保できるように努めてまいりたいと考えております。

○柿澤委員 ここは、わかっていない自治体が大変多いように感じておりますので、きちっと周知をいただければというふうに思っております。

 以上です。終わります。

○古賀委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

○古賀委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。穀田恵二君。

○穀田委員 私は、日本共産党を代表して、港湾法及び特定外貿埠頭の管理運営に関する法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。

 本法案は、新成長戦略に基づき、国際戦略港湾、すなわち京浜港、阪神港に港湾の整備予算を集中するとともに、港湾運営、経営までも民間会社に任せることができるようにするものです。

 しかし、今行うべきは、東日本大震災により多大な被害を受けた港湾や漁港の復興、再生に優先的に財政を投入することであります。総事業費五千五百億円もの巨額の費用を注ぎ込む国際戦略港湾を推し進めるときではありません。そんなお金があるなら、まず被災者の救援、インフラ復旧に回すべきであります。

 港湾で働く労働者を組織する全国港湾労働組合連合会と全日本港湾運輸労働組合同盟は、震災直後から救援、被災対策を行い、救援物資輸送に全力を挙げるとともに、現国会で審議されている港湾法の改正は行わず、その予算を損壊した港湾施設の復興に振り向ける措置をとることを提案しています。これが国民多数の声ではありませんか。

 反対する第二の理由は、京浜港や阪神港に巨額の税金をつぎ込んで港湾整備を進めても、コンテナ貨物が集荷する保証はなく、地方港を抱える地方経済の衰退ばかりが進むからです。これは、この間、進めてきたスーパー中枢港湾プロジェクトの結果を見ても明らかです。今、アジア諸港との関係で必要なのは、国際競争力の名による競争優先ではなく、協調できる方向を探ることです。国際戦略港湾への一極集中政策を改め、地方の地域経済の活性化に資する港湾政策への転換こそ必要です。

 反対する理由の第三は、港湾運営の民営化により、国民の財産、公共財である港湾が、特定の民間事業者のもうけの場として提供されることになりかねず、効率化、もうけ第一優先で、港湾の秩序ある運営と公共性を損ねることになるからです。これまでの民営化手法を含む規制緩和で、コスト削減競争が激化し、港湾で働く労働者に犠牲が押しつけられてきました。港湾運営会社による効率化優先の港湾運営や港湾運送事業への参入も想定され、さらに港湾労働者の雇用、労働条件が破壊され、深刻化することが懸念されます。

 また、外国の資本による港湾支配への歯どめもなく、公有財産である港湾が投機の対象になることで、港湾の公共性と安全性が脅かされかねません。

 以上、反対の理由を申し上げ、私の討論を終わります。