国会会議録

【第174通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2010年4月27日)


会議録 第174回国会 国土交通委員会 第16号(平成22年4月27日(火曜日))

○穀田委員 今回の法改正案は、MARPOL条約議定書の改正に対応し、船舶からの油流出による海洋汚染や排出ガスによる大気汚染を防止するための規制を強化することが主な内容であり、賛成であります。私は、海洋汚染それから大気汚染の防止へ一層の対策強化を求めておきたいと思います。

 きょうは、海洋汚染の防止や海難救助のために漁業関係者の皆さんが大変な努力をされている問題、海難救助出動に対する報奨金について聞きます。

 昨年、二〇〇九年に発生した船舶事故二千五百四十九件のうち、プレジャーボートの事故が一千十三件で全体の四割を占めています。次に多いのは漁船で、八百十二件、三割を占めています。プレジャーボートの占める割合がふえております。

 海難救助は国民の命と財産を守る海上保安庁の重要な任務だが、船舶事故救助、海浜事故救助で海上保安庁が救助した割合、海上保安庁以外が救助した割合を述べていただきたい。

○鈴木政府参考人 お答えいたします。

 ただいま穀田先生からの御質問にありました平成二十一年における、まず、衝突、機関故障、乗り上げなどの船舶事故件数が二千五百四十九隻でございますが、このうち千四百三十五隻が救助をされました。残りは、みずから帰港した自力救助が九百十二隻、残念ながら沈没などの全損をしたのが二百二隻であります。救助された千四百三十五隻のうち、海上保安庁が五百三十九隻、海上保安庁以外の機関、個人、団体による救助が八百九十六隻でございます。

 それから、船舶事故以外の、船舶事故によらない乗船中の事故、これは負傷とか海中転落など、船は無事でありますがその中の乗っていた人が事故に遭ったという場合でありますが、これは九百七十七人が事故に遭いまして、三百三十五人が救助されました。救助の内訳としては、海上保安庁が百五十一人、海上保安庁以外が百八十四人でございます。

 それから、遊泳中とか岸壁からの転落とか、そういう海浜事故というのが別にございまして、これが二千三十二人ありまして、七百九十九人が救助されました。内訳は、海上保安庁が九十一人、海上保安庁以外が七百八人でございます。

○穀田委員 だから、割合を言ってほしかったんですが、割合でいうと、船舶事故でいうと海上保安庁の救助は三八%、そして海浜事故でいえば一一%ということで間違いないと。今の数字を割ればそうなるんです。

 問題は、海の事故に遭遇した人、船舶の六割から九割の救助は、海上保安庁ではなく、他の組織が行っているのが実態なんですよ。その中で大きな役割を果たしているのが、ボランティア団体である日本水難救済会であります。多くの漁協の組合員が、海上保安庁と協力し、要請を受けて出動し、とうとい人命を救っております。

 そこで、水難救済会の組織の状況について、さらに、出動、救助の活動状況について、昨年度実績並びに経年どうなっているか、お答えいただきます。

○鈴木政府参考人 お答えいたします。

 社団法人日本水難救済会は、明治二十二年に大日本帝国水難救済会として発会し、もう百二十年の歴史を有しております。その後、日本水難救済会と改称いたしましたが、現在、臨海都道府県、海に面した都道府県に四十一カ所の地方水難救済会を整備しておりまして、これが社団法人の会員、社員になっておるわけであります。その下にさらに救難所が七百十四カ所、救難支所が五百四十一カ所ということで、小さい漁港とかマリーナとかそういうところがみんな、都道府県の救難会のまた下部機関になってございます。

 こういう方々が、海難が起きた場合に直ちに最寄りのところから飛んでいっていただけるということで、我が海上保安庁の出先は大きな港とかにしかありませんので、大変近場のところから飛んでいっていただけて、助けていただいておるという状況にあります。

 この水難救済会に約五万五千人の救助員が所属しておられまして、漁業関係者あるいはマリーナ関係者などがボランティアでやっていただいております。海の世界は、シーマンシップと我々申しておりますが、海難があった場合は直ちに近所の船が仕事をなげうって駆けつけるというのが昔からのよき伝統でありますので、そういうボランティア精神に基づいてやっていただいておるわけであります。

 ここの実績でございますが、我々の統計が暦年でありまして、水難救済会は年度でとっておりまして、多少時点が違いますが、二十一年度の水難救済会の救助実績が三百七十九人、隻数につきましては二百一隻となっております。それから、出動件数が四百四十六件になってございます。

 それから、明治二十二年からの百二十年間の統計もございまして、トータルいたしますと、百二十年間で救助人数が十九万四千二百六十一名、救助船舶が三万八千九百五十八隻、出動件数が四万一千百八十四件となってございます。

○穀田委員 今の数字を聞いてわかるように、相当努力をなされていて、日本になくてはならない、そういう組織だということが皆さんおわかりいただけたと思うんです。

 そこで、大臣に聞きたい。

 会員五万五千人のうち、ほとんどが漁業者です。要請を受けて、昼夜を問わず救助に出動します。みずからの仕事をなげうち、時には危険も冒して、今長官からありましたように、シーマンシップを発揮して命を救う活動をされている。

 日本水難救済会発行のパンフレット、これなんですけれども、「海と共に人と共に」というパンフレットですが、これによれば、水難救済会の救助活動というのは、「救難所員が生業を投げうってボランティアで行っています。」と記しています。こうした方々の活動がなければ、海上保安庁だけで発生する海難事故に十分対応できない事態をどう認識されておられるか。そして、国としてこうした方々の努力をどのように支えているのか、お答えいただきたい。

○前原国務大臣 お答えいたします。

 今、穀田委員がおっしゃった水難救済会の活動というものは、大変ありがたいことであります。海上保安庁だけではカバーできない面を、全国千二百六十七カ所、救助員の方が約五万五千人ボランティア登録していただきまして、何かがあればはせ参じていただくということで、大変ありがたいと思っております。

 去年の実績でも、救助人数が三百七十九名、救助隻数が二百一隻、救助出動件数四百四十六件ということで、大変評価をしているということでございます。

○穀田委員 大変評価しておられる、そこだけでいいんですけれども。数字はさっき聞いたんです。同じことですので。

 今お話があったように、水難救済会というのは、海上保安庁の文書でも、海上保安庁の活動を補完し、命を救う極めて大事な役割を果たしていると。これは明瞭であります。問題はそこからなんです。その役割にふさわしい身分保障、待遇になっているかということが問題であります。

 海難救助に出動した会員に対し、日本水難救済会の規定により、一人一日六千円、これは二十四時間までで、四時間未満は五千円なんですね、二日出動すると九千円、四十八時間までで、それ以上は追加がないんですね、これらの出動報奨金が支払われます。これらの額が活動の内容に見合った額になっているかということが問われております。実際には、皆さんのお声をお聞きすると、燃料代など実費を賄うことすら難しい、仕事を休んで出動しているが、ボランティアだからと休漁補償もないと。

 せめて実費分を賄い、さらに一定の手当がつくように報奨金を引き上げるべきではないんでしょうか。

○前原国務大臣 今、穀田委員がおっしゃったように、発動時四時間未満は五千円、発動時四時間以上二十四時間未満が六千円、発動時から二十四時間以上が九千円ということであります。

 そしてまた、余り言うとまた短くと言われますので短くやりますが、とにかく、この水難救済会の救助活動というのはシーマンシップに基づく相互扶助の精神の上に成り立っておりまして、救助員の出動実績を勘案して、さまざまな団体からの助成や青い羽根募金等の収支の範囲内で、水難救済会の内部において支給額を決定しております。したがいまして、例えば平成二十年の原油高騰時などにおきましては、出動報奨金を一時的に増額する措置を講じましたけれども、基本的には水難救済会の収入の範囲で実施をされております。

 このように、シーマンシップに基づく相互扶助の精神の上に成り立っている水難救済会の活動に対し、国が直接的に関与するのではなくて、海上保安庁が、救難技術の伝授など、可能な限りの間接的な支援を行っていくのが適切ではないかと考えております。

○穀田委員 私は、それだけでは適切でないと思います。先ほどの、活動を補完している、しかも多くの方々を助けていただいているという現実からしますと、どうやってそういう方々をもっと活動しやすいようにするかという配慮が必要だと。

 シーマンシップとおっしゃって、さらに、相互扶助、こうおっしゃっています。確かに、漁業者同士というのは、不測の事態に助け合うという相互扶助の精神から発足し、当時、水難救済会がそういうことを掲げました。でも今では、だから私は一番最初に聞いたんです、事故の状況を。今の船の事故のうち、プレジャーボートの海難数が大幅にふえ、相互扶助の姿からも様態は大きく変化しているというふうに、沿岸漁業者で組織する漁業協同組合連合会も指摘しているんですね。

 だから、シーマンシップ、それは漁業者の気持ちはあるんですよ。問題は、それが今日の事態の中で、お互いに助け合うというんじゃなくて、違う人を助けなくちゃならぬという事態に発展している。そういう現実から見ても、もともとの活動の、そういう奉仕、そして助けている現実、また様態の変化、そして、今お話が大臣からありましたように、収入の範囲では、それは新しく報奨をふやすわけになかなかいかないという現実のもとで、いよいよ、補完しているにふさわしく、報奨金を引き上げるべきということだと私は思うんです。

 その意味では、そのために国の調整が必要だと思うんですが、検討を求めたいと思うんです。いかがでしょうか。

○前原国務大臣 プレジャーボートについては、また後ほど議論をさせていただくことになろうかと思いますけれども、この水難救済会のみならず、例えば地元で活動していただいております社会福祉協議会とか体育振興会とか、あるいは消防団とか、基本的にボランティアで地域活動のために御尽力をいただいているそういった方、保護司もそうです。活動が、まさにボランティアによって公が支えられているということ、これは日本のよき面ではないかと私は思っております。

 お金の多寡というのはもちろん大事なことではありますけれども、こういった伝統ある、明治二十二年からまさにシーマンシップにものっとってやっていただいているということでございますので、先ほどお話をしたように、原油価格が異常に高騰したというときなどについては一定の配慮が必要だと思いますけれども、そういったボランティア精神というものを我々は期待し、また頼りながら、ぜひしっかりと活動していただければありがたい、このように考えております。

○穀田委員 ボランティア精神はいいんですよ。それは、当然そうやって努力されています。だけれども、今大臣が例を挙げた社会福祉協議会だとか、それから消防団だとかというのは、それは大臣も私も京都に住んでいてよく知っているはずですよ。少なくとも、例えば消防団については、準公務員扱いをして国のさまざまなお金が出ている。それから、社会福祉協議会だって当然、国のさまざまな援助が行われているということを言っているわけですよ。だから、もしそれを理屈にするんだったら、それこそ、いよいよ、これはせなあかんなというふうに聞こえるじゃありませんか。だって、そういうことだと思っています。

 私は、その意味で、きちんと助成すべきだということとあわせて、いよいよ身分保障の問題についても検討すべき時期に来ているなということを思います。何かありますか。

○前原国務大臣 消防団とか、我々、地域のことでお互いよく知っているわけでありますけれども、火事があればいつも出ていくということと同時に、例えばうちの地域だと、五日と二十日、これについては訓練をする。あるいは、日曜日なんかでも、例えば山林火災訓練なんかを行ったり、さまざまな活動をされているわけですよ。そういう意味においては、では、そういった方々の手当というものがその仕事の中身に比べてちゃんとしたものなのかというと、これは完全にボランティアだと言っても過言でないぐらいの、まさにボランティアで、薄い、少ない額でやっていただいていると私は思いますよ。

 だから、そういう意味において、この水難救済会も、御努力をいただいていることには心から感謝を申し上げ、そして、些少ではありますけれども、こういった出動に応じてお金を出させていただいているというところを御理解いただきたい、こう思っております。

○穀田委員 いやいや、お金が出ているのは救済会で集めた金から出ているんですよ。些少でもあろうけれども、出しているんだったらいいんだよ、些少でも。

 今言ったように、消防団には出しているんですよ。五日と二十日、お互いに同じ地域に住んでおるんやから、それは知っていますよ、そんなこと。だけれども、そんなことを言い出したら、「海と共に人と共に」と書いているように、救助活動だけじゃないんです。その練習も大変なんですよ、やっていることは。

 そういう意味でいったら、まさに、それこそ、火事があった場合にはいつでもやっておられる、そういう消防団の活動に私は敬意を表しますし、その方々にいつも御努力いただいているということは感謝しています。同等に、そういうことについて、やはり、寄附だとか青い羽根募金だとかというんじゃなくて、国から少しは出して、そのことによって報奨金を高めるということぐらいしてはいかがかと言っているわけです。そのために、もう一つ踏み込んで、身分保障という問題についてもさらに検討する必要があるんじゃないかと言っているわけです。

 どうも、先ほどから聞いていると、何か金を含めてたくさん出している、些少とは、額の多寡はありますよ、随分出しているみたいに言うてはるけれども、そんなに出してへんから言うてるわけです。

 だから、今までの話だと、消防団だとか社会福祉協議会だとか、ボランティアについて、やっている方々に国が出してはならぬということはないんですよ、出しているわけですから。だから、これにも出してはいかがかということを言っているわけです。だから、今までの議論を通じてみると、些少は出してもいいということは、当然だという感じでしたよね。

○前原国務大臣 穀田委員の御質問でそれを検討するということではなくて、例えば、そういうお考えをこの社団法人日本水難救済会がみずから我々国に対しておっしゃってこられれば、我々は検討しますよ、当然ながら。だって、この方々は、少なくとも私がヒアリングをした段階においては、自分たちはこういうボランティア活動で明治二十二年からやってきているんだという自負を持ってやっておられると。だから、それは穀田委員、そういった意見をおっしゃる方もおられるかもしれませんよ。

 では、もしそれが本当に大宗を占めるのであれば、この社団法人日本水難救済会からそういった御要望が正式に出てくれば、我々としては考えますよ。

○穀田委員 改めて言うけれども、出してはいないんです。些少でも出しているということだから、じゃ、これは出せるんだなというふうに改めて私は思っただけの話で、それは、だけれども、認識の前提からいったらやはり援助しなくちゃならぬという意味はわかっているという、共通項だと改めて思ったことを一つ言っておきたい。

 それで、要請がないというのは、今までいろいろな考えのヒアリングの中で、そういうことを言っても無理だと思っていたということは、それはみんな言っているんですよ。ですから、地方へ行ってごらんなさい。出動しているところの人方がどう言っておられるか。漁協の関係でいったら、自分たちの漁をやっていた場合、本来やめなくちゃならぬ、漁をやめてでも行く、カツオの漁でいったら、五万円、十万円という費用が入るんだけれども、それもほうってでもそれは行く、それがシーマンシップだと。それはそうですよ。

 だけれども、そういうときの補償を全部出せと言っているんじゃないんですよ、私が言っているのは。そういう休業補償なんかの場合でも漁協なんかが負担している実例もある。だから、そういう問題について着目をし、大変ですねと。だから、大臣が言っているように、些少ではあるけれども今度は私の方から出しましょうというぐらいのことが必要だなと。

 時間が来ましたので、プレジャーボートの話をするつもりだったけれども、御期待に沿えなくて申しわけないんですけれども、終了していますので終わらせていただきます。

 そういうことで、ちょっとそういう意味で、きょうは、あれば検討すると言ったんだから、私の方からもあったわけで、地方からももし、要請というのは何も救済会の全団体がやらなくたって地方からもあるわけで、そういうことはお聞きしていただければ、検討してほしいと思っています。

 終わります。