国会会議録

【第174通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2010年3月26日)



○穀田委員 国民の基本的権利関係や災害からの安全に配慮した土地、国土利用など、国土調査の持つ意義は大きいと考えます。特におくれている大都市部での調査を促進するためにも、実現可能な目標とすること、計画を適宜見直していくこと、国の負担による事業を拡大するだけでなく市町村などの負担軽減を図ることは不可欠であり、その実施体制を確保することが重要です。過去五次にわたる十カ年計画の実績がいずれも目標の五割前後にとどまっており、一層の促進を図る必要がある。以上の立場から、私ども、法案には賛成したいと考えています。

 そこで、先ほどいろいろな話がありましたので、私は端的にお答えいただきたいと思うんですけれども、京都の例が随分問題になりました。私も京都に住んでいます。この十年間〇%だと。それで、未着手だということは、過去五次にわたってやっていないわけですよね。これは、現時点では、昨日私が当局から聞いたところでは、大阪も埼玉もゼロだ、未着手だ、先ほどありましたように、未着手は二百八十三自治体があると。私は、述べているように権利関係が複雑だとかなんとかという話じゃない、何か特殊な問題がやはり存在すると思うんですね。

 ですから、京都が〇%だったというその原因は何か、そういう探求がなければ、何か先ほど来京都の例ばかり出されているわけだけれども、なぜそういう〇%のところがあるのか、五十年もかけて着手していないというのはそれだけの理屈なのか、特殊な例があるのか、そこを掘り下げなかったら、先ほどの大臣の三つばかり理由があるという話で聞いていると、それはどこだって同じなわけで、いわばその努力がどう傾けられて、何も座してやっていたわけじゃないと思うんですよね。その辺のお互いの認識の一致がないと問題点の掘り下げはできないんじゃないでしょうか。その点、いかがです。

○馬淵副大臣 お尋ねは京都ということでございましたが、大都市部ということで申しますれば、先ほど来御指摘がありましたように、権利のふくそう化というのは、実はでも、私は極めて重要な観点だと思っているんですね。

 これについて、ではなぜ市町村等がふくそうした権利関係を整理するということに一歩を踏み出せないかといえば、そこはインセンティブの問題等もあるかと思います。もちろん、こうした権利関係を整理していく中で人的な対応が十分できないといったこともあるかもしれませんが、こうした個々の状況というものを勘案しながらも、一方で、我々政府としては、国全体の政策として提示をしていかねばならない、法律として提示をしていかねばならないというところでは、今般の改正の中で提示をさせていただいたように、インセンティブを付与する、あるいは民間法人の活用を促進させる等々、こうした形でできる限りの推進をさせていかねばならないと思っております。

 ただ、穀田委員の御指摘のように、それぞれの市町村における個別の事由ということについては、我々も十分に承知をしていく努力を図らねばならないというふうには考えております。

○前原国務大臣 やはり未着手の自治体があるというのはゆゆしきことだと思っておりまして、話を聞いておりますと、問題意識を持っていない首長さんもおられるのではないかということでございますので、未着手の自治体については、新たな十カ年計画を国会でお認めいただきました暁には、しっかりとそれを取り組んでもらうように、しっかりと徹底をしてまいりたいと考えております。

 なお、京都はやるというふうな内諾というか返事をいただいております。

○穀田委員 確かに、この間の議会でやる方向が出ていますよ。それは私も知っているんです。お互いに京都やさかいに、よう知っているわけですけれども。

 ただ、インセンティブということでいうと、税金が入ってくるという、極めてそういう話が主でして、余り権利関係や災害や、また今の、戸籍がなきゃならぬというような、その意味での訴え方が響いているのかいなということを私は思うわけですね。

 それで、現場ではどんなことを言っているかということを、私は、馬淵さんには悪いんだけれども、一般論では済まない問題があるんだと思うんですね。例えば、国土調査のあり方に関する検討小委員会報告書では、周知啓発として、実施主体である市町村に必要性を認識してもらうと。つまり、認識させ切れていないということなんだよね。そこがどこなのか、この五十年たってどうだったかという問題をつかまなければ、何か権利関係がふくそうしているとかいろいろ言ったってそれは同じことであって、どこだってそんなことはやるわけです。

 私は、現場ではどんなことを聞いているかというと、京都みたいな古い町は、屋根がわらと屋根がわらが上下に重なっているような境界線が未確定の土地が山ほどある、現瞬間に起きている境界線争いを迅速に解決する仕組み、人材配置が必要ではないかという意見だとか、先ほども同僚議員からありましたように、調査にかかる人件費が出ない、持ち出し費用の負担が大きい、こういった声を聞きます。

 ですから、我々は、こういったところの具体的な改善、つまり、まず現に境界線争いが起きているのを迅速に解決する仕組みを打ち出す、それから、人件費が出ないという経過や持ち出しが出るよということについての改善を図る決意はおありでしょうか。大臣、ここだけ、一言で。

○前原国務大臣 委員御指摘のとおり、市町村によっては個別の課題というものがあって、それが、単に首長さんの問題意識がないということではなくて、できない要因になっているということもあろうかと思っております。

 今御指摘をいただいた点の後者については、先ほどからお話があるように、かなり国がカバーをしている面があると思います。そしてまた、今回の十カ年計画では、新たに国が関与する面もふやしたわけでありますし、そういう面では、今までの十年間の計画よりは改善をされているのではないかと思います。

 前者については、どういう仕組みというものが考えられるのかどうなのかということを、少し具体的な事例を踏まえて我々も勉強させていただきたい、このように考えております。

○穀田委員 確認ですけれども、持ち出し費用の負担が大きいという問題については、先ほどありましたが、再検討し改善を図るということでよろしいですよね。

 もう一点、私が思ったのは、皆さん都市部ばかり話をしているんだけれども、山村部のおくれも極めて重大だと思うんです。これは言っていないから、基本的観点だけ言ってくれればいいと思うんですが、山村部は非常に大きくて、大体十八万四千九十四キロ平米の中で七万六千九百五十七キロ平米、これは四二%しかできていないわけですね。だから、地籍調査未実施の膨大な地区というのは山林だということも認識しなければならないと思うんです。地権者の高齢化と、実際は地権者を捜すだけで山のことなんかほんまに大変になって一苦労になっている、あわせて、森林の荒廃も起きている。

 ですから、この点の重要性についてだけ、一言、今後も力を入れるとか認識を持っているとかいう程度でもいいんですが、その辺だけ。

○前原国務大臣 別に都市部だけをやったらいいというわけではなくて、今おっしゃるような山林も大変重要だと思っております。

 未実施の山林面積は約十万平方キロメートルとかなり膨大でございますし、また、林地の地籍調査の進捗率は平成二十一年度末見込みで四二%と、全国平均の四九%よりは低い状態であります。

 そのため、山村部の地籍調査において、山林に必要とされる、制度に合うような新しい機器や手法を導入して測量を簡素化するとともに、調査が困難な地域での境界確認手続の弾力的運用を行うことによって、調査の迅速化や実施面積の拡大を図っていかなくてはいけないと思っております。

 なお、今回、新たに山村境界基本調査の創設ということで予算も計上させていただいております。

○穀田委員 そこで、次に、先ほど小宮山議員からも提起があった、宮城県旧三本木町の問題についてお聞きします。

 ことしの三月八日の河北新報の記事、「民有地が抹消、県道予定地と重複…ずさん調査次々」という記事が出ました、これなんですけれどもね。記事では、「旧宮城県三本木町(現大崎市)が一九九三〜九四年に実施した国土調査の不備が、次々と明るみに出た。実在する複数の民有地が土地登記簿から消し去られ、信用性は大きく揺らいでいる。誤って登記された土地は、時間の経過とともに訂正が難しくなる。」こう書いています。

 これは、実施主体である地方自治体の国土調査がでたらめを行ったという問題であります。このような事態が生まれた原因は何と考えるか、簡潔にお答えいただきたいと思います。

○馬淵副大臣 お答えいたします。

 一義的には、これは原因に関しましては、今、現大崎市で調査チームを設置して調査中ということでございますので、原因については不明と承知しております。

○穀田委員 不明では困るでしょう。それは、現地が調査していて、結論が出ていないということであって、概要はわかっているわけですから、どういうところに問題があるのかということもわからないようで、どうしてこんなこと、土地調査をやれというふうに言うんですか。

○馬淵副大臣 現在調査中であるために、今、私の方では調査結果を踏まえずにお答えすることはできないというふうに申し上げたつもりでございます。

 今回のこの状況につきましては、当然ながら、旧三本木町の成果を認証して、そしてそれを宮城県において情報に不備または虚偽があったことを把握できなかったこと、また、国土調査事業事務取扱要領に基づいて、この成果を宮城県にかわって旧三本木町が登記所に送付できたこと、これも一因となったというふうに考えております。

 その上で、私どもとしては、国土調査事業事務取扱要領、これもその一因となっている、このような可能性があるということを考えておりまして、その見直しについても当然ながら検討してまいる所存でございます。

○穀田委員 それやったら最初からそう言ってくれればいいのに。同じことを、それを聞かんかったらそのままほっておこうと思っとったんかいな。それは余り誠意がないで、そんなこと。お互いに時間がないんだから。はっきり言って、ちょっとそれは私は言い方がまずいと思うな、率直に言って。時間のロスだと思う。

 先ほど政府答弁で、政務官はこの問題に関して、開発行為があった場合に起きているということだと言っておられました。ここは大事な問題だと私は思うんです。同じく記事は、実は「用地買収遅れ懸念か」と記してあって、「境界が定まらない土地や所有者が分からない土地があれば用地買収は進まず、事業は停滞することになる。」「公共事業の影」と指摘しているんですね。

 だから、この真偽の中身は、確かに、今おっしゃるようにいろいろあろうと思います。しかし、この問題でいうと、土地調査の結果がこのまま残っているとすれば、これは、今あったように、事務要領の問題なんかも含めていろいろな問題点があるということがわかった場合に、正さなければならない。確定した公図を正しく修正することは行政の公正性からいって不可欠だと思うんですね。

 この事態が明らかになれば、回復の責任はどこにありますか。

○馬淵副大臣 この一義的な責任は、もともとの地籍調査の主体でございました旧三本木町にございます。また一方で、その成果の認証を行った宮城県、及び、その承認を行い、また調査実施に関して指導的な立場にある国としても、この不正または不適切な処理を明らかにできなかった点については、責任を感じなければならないというふうに考えております。

 今後は、こうした内容をしっかりと、これは三月四日に調査チームが設置されたと聞いておりまして、現段階では調査結果を待っている、四月中には出るのではないかということも聞いてはおります。こうした結果を踏まえまして、私どもとしては、市町村の長が登記所に通知して登記簿の訂正をする手続、これを定めておりますので、誤り等が発見された場合には速やかに対応するように指導してまいりたいというふうに考えております。

○穀田委員 第一義的には実施主体である市だ、かつてはあれですけれども、今は市だと。あわせて、県もある、国もある、こうですね。

 ところが、またこの報道によりますと、市の当局者は、「財政が厳しく、再調査の費用を工面するのは難しい」、こう言っている。これは本当かどうかというような問題はありますが、しかし、この後の報道を連続してやっているんですけれども、同じことを言っているんですよね。そうなってきますと、やはりこれは調査をやり直さなくちゃならぬというふうに思うんです。

 私は、こういう事態を、今副大臣からありましたように、市と、見過ごした県と、それから制度的にもそういった不備のすきをつかれたという意味での国という問題だと思うんですね。したがって、この事態を放置してはならないと私は思うんですけれども、もしこういうことが放置されるとすれば、今政府が、また国がやろうとしている土地の、簡単に言えば戸籍簿ですわな、この問題、そして財産権の侵害にも当たるという意味で、これを見過ごすことは許されないということで確認してよろしいですね。

○馬淵副大臣 繰り返しになりますが、調査の結果を待って、その当該の責任並びに訂正等につきましては適切な指導をしてまいりたいというふうに思っております。

○穀田委員 では、適切な指導をして、これは回復を図るということと認識してよろしいですね。

○馬淵副大臣 適切に指導してまいりたいと思っております。

○穀田委員 これは事は、要するに、なくなったわけだから、回復にならなければ適切な指導とは言えないんですよ。だから余り、馬淵さん、馬淵さんが野党におったときにそういう答弁をしていると、それはおかしいんじゃないかと言っていたじゃないですか。それはまさに、何というか、不適切というんですよね。

 それはさておいて、最後に……

○川内委員長 答弁は求めないんですか。

○穀田委員 いや、委員長、そういう指摘をしておくと。

 最後に、この教訓をどう生かすつもりかということなんですよ。

 ただ、事態はわかっているわけです。不備があるということもはっきりしている。だって、なくなっている、抹消されているわけだから。しかも、それが、調査の公告とか縦覧、地権者の立ち会いの手続が不適切だったという問題もあるし、県の認証手続に問題があった。それから、事務取扱要領がすきをつかれたという問題もあるわけですから、今後発生する懸念はないのかということと、もしこういった問題について民間の委託先でやる場合に、どのように適正性を確保するのかということについてだけ、お答えいただきたいと思います。

○前原国務大臣 まず、今回のこの三本木の事例の原因を徹底的に解明するということが大事だと思っておりますし、市町村等地籍調査の実施主体に関しては、正確な調査を実施してもらうように、改めて指導を徹底してまいります。また、都道府県に対しても、成果の認証の徹底について、さらなる注意喚起等を行ってまいります。

 また、今回の事例の一因となった可能性のある地籍調査事業事務取扱要領についても、内容について検討を行いまして、必要に応じて見直しを実施して、とにかくこれを徹底していくということを行ってまいりたいと考えております。

○穀田委員 終わります。