国会会議録

【第173臨時国会】

衆議院・国土交通委員会
(2009年11月20日)


○穀田委員 私は、昨日来の出来事について一言述べたいと思います。

 私は、民主党の国会運営は異常きわまりないものだと思います。

 私自身が昨日の討論に立ちましたように、新政権下での最初の審議を始めた中小企業金融円滑化法案について、現場の財金の理事会での合意を覆し、国対の指令のもとにいきなり強行採決する、そしてまた、本日未明の本会議で強行、続いて、深夜でしたけれども、議院運営委員会ですべての法案の委員会付託を強行、そして、きょうは一斉に与党だけで委員会をセットする、こういうやり方については、私は許しがたいと思っています。

 私どもは、だからといって自分の発言権を放棄するということはしません。質疑に立ち、徹底審議を貫くことが国民に対する責任だと考えています。

 そこで、きょう本委員会に付託されたのは二法案であります。私は、両案の趣旨説明を要望しました。残念ながら、衆法の提案者が来られないということでしたが。この法案は、総選挙前の百七十一国会、テロ特で審議をされました。その内容は憲法、自衛隊にかかわる広範なものであって、私は、本国土交通委員会では本日が初の質疑であり、慎重かつ徹底した審議が必要だということを最初に申し上げておきたいと思います。

 そこで、鳩山内閣の提出したいわゆる貨物検査法は、総選挙前の百七十一国会に麻生内閣が提出し、審議未了、廃案となった北朝鮮特定貨物検査法案から、自衛隊関与の条項、九条二項を削除し、法律名称を国際連合安全保障理事会決議第一八七四号等を踏まえ我が国が実施する貨物検査等に関する特別措置法案と変更しただけであります。その他、法の目的、定義、各条文は全く同じものであります。

 そこで聞きたいんです。九条二項を削っただけで、あとは旧政府案と変わらないということは、法案の各条項について、前内閣の答弁というのは基本的に引き継ぐということで理解してよろしいでしょうか。

○前原国務大臣 今回、政権交代がありまして、鳩山内閣でこの貨物検査法というものを出させていただいているわけでございます。

 今委員がおっしゃった旧法案の九条の二項のみならず、名称も変更しておりますので、新たな法案を出して、そして鳩山内閣のもとの解釈で答弁をさせていただくということでございますので、そのまま旧政権の解釈を踏襲するということではございません。

○穀田委員 そうすると、縛られないということだと。そうすると、どこが違うのかということになると思うんです。

 今、大臣が提案趣旨説明を行いました。その提案趣旨説明も、何々「いたし」ということと、「る」とかが違う程度で、そしてさらには、そこが変わって、「自衛隊による所要の措置」、この文言が抜けただけなんですね。

 では、どこが縛られないということになるのか、大まかに言ってどこが違うということについて言っていただけますか。

○前原国務大臣 我々は、この九条の二項を外したということと、名称も変えておりますし、これはぜひこの委員会で、委員が逆に、旧法の政府答弁はこうだったけれども今はどうなのかということを個別に聞いていただけば結構かと思います。

○穀田委員 私は、哲学が違うのかと思ったら、そういう話をしていただけるかと思ったんですが、残念ながらそうではなかったみたいです。

 それでは、第九条について、唯一の変更点であるいわゆる自衛隊関与条項についてお聞きしましょう。

 九条二項は、「自衛隊は、前項に定めるもののほか、防衛省設置法、自衛隊法その他の関係法律の定めるところに従い、」云々かんぬんという文章で、この条項の削除について、「自衛隊が削除されたという大きな違いがある、率直にそれを評価する」という見解もあります。二つの法案に自衛隊の関与をめぐって本質的な違いがあるのかということを、防衛副大臣にお聞きしたいと思うんです。

 〇九年、ことしの七月十三日、テロ特委で、今委員長になっておられる川内委員が質問し、浜田大臣が答弁をしています。「九条の第二項は、自衛隊が防衛省設置法や自衛隊法等の既存の関係法律の範囲内で活動することを確認的に規定したものでありまして、この規定によって自衛隊に新たな任務や権限を付与するものではありません」「海上警備行動についても、当然のことながら、本法案の規定を根拠として行うのではなく、あくまでも自衛隊法第八十二条に基づいて行うことになります。」と答弁しています。

 こういう答弁は認識しておられる、そのとおりだと言ってよろしいか。

○榛葉副大臣 穀田委員にお答えいたします。

 旧法案第九条第二項でございますが、同法案による貨物検査等に関し、自衛隊は、海上保安庁のみで対応できない特別な事情がある場合において、海上警備行動等の既存の法律に基づく措置を実施することがあり得るということを確認的に規定したものでありまして、先生のおっしゃるとおりでございます。

○穀田委員 では、確認的だということについては同じだということですね。ですから、一つ一つ具体的に問うと、この点は同じだと。

 そこで、私は新たにもう一度言いたいと思うんですけれども、新政府案が削除した九条二項は、今ありましたように、もともと、自衛隊が既存の自衛隊法等の範囲内で活動することを確認的に規定したというものにすぎず、この規定によって新たな任務や権限を付与するものではない、この点は繰り返し答弁されていたわけであります。そうなると、確認的規定の削除ということでいうならば、自衛隊の活動のあり方については、実質的な変化は何の意味もないということに結論的にはなるわけであります。

 そこで、自衛隊は、やはり八十二条を根拠に海上警備行動を行うことが可能だということも今お話がありました。したがって、法案が閣法とそれから衆法があるわけですけれども、それがあるかないかによって本質的には大きな違いはないということが結論づけられると思うんです。

 そこで、自衛隊の海上警備行動について聞きたいと思います。

 七月十日の政府答弁では、「自衛隊は、自衛隊法等の既存の法律の定めるところに従って、海上警備行動などの所要の措置をとることができる、」として、例えば、「万が一の可能性として、捜査対象船舶から海上保安庁では対応ができないような激しい抵抗を受けるようなケース」では、海上警備行動の発動が全く排除されない、つまり、あり得るという見解を河村官房長官そして高見澤防衛省防衛政策局長が答弁していますが、これらの点も一致していると言ってよろしゅうございますね。

○榛葉副大臣 これは対象が商船でございますから、極めて考えにくいことであると思いますが、万が一の可能性として、貨物検査等の対象船舶から海上保安庁では対応できない激しい抵抗等を受けるような場合は、全くないとは言い切れないということでございます。

○穀田委員 だから、踏襲をする、引き継ぐと言ってもいいでしょう。

 もう一つ聞きたい。

 防衛政策局長は、七月十三日、「平素から、北朝鮮に限らず、あるいはこういった特定貨物の監視に限らず、幅広いいろいろな情報収集活動を行っている」として、情報収集活動については、「関係行政機関の一つとして協力をしてやっていく」と答弁しています。これも同じふうに踏襲すると見て、これはよろしいですね。

○榛葉副大臣 我々は防衛省設置法の九条の十八、これで調査、そして情報収集、研究等をやっているわけでございますから、そのとおりでございます。

○穀田委員 一連の今話をしてきたことを総称しますと、要するに、結局、前の政府案から、九条二項、いわゆる自衛隊関与条項を削除しても、自衛隊の活動は制約されない、前の法案と同等に出動ができるということがこれでもう明らかになった、この点は違いないということは確認できると思います。

 そこで、もう一つの問題を言っておきたいと思うんですけれども、国連安保理決議一八七四にかかわってであります。

 今回の法案は、国連安保理決議の実効性の確保が目的とされていることは御承知のとおりであります。私たちは、今回の北朝鮮による核実験の強行に対しては、いかなる核実験または弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求した国連安保理決議一七一八、さらに、北朝鮮が一切の核兵器及び現在の核計画を放棄すると合意した六カ国協議の共同声明に明確に違反する暴挙であって、世界で生まれている核兵器廃絶に向けた新たな動きに対する乱暴な挑戦であると厳しく抗議をしていることは、皆さん御承知のとおりです。北朝鮮に対して、私どもは、これ以上の核実験を厳に慎んで、核兵器及び核兵器開発計画を放棄して六カ国協議に無条件に復帰するよう強く求めてきたところであります。

 そのもとで、本年六月に一八七四が全会一致で採択されました。北朝鮮に対して、国際社会が一致して、核実験と弾道ミサイル発射をこれ以上行わず、すべての核計画を放棄するよう求め、非軍事の制裁措置として武器禁輸などを決めたことは重要だと考えています。

 そこで聞きたいんですけれども、今回の決議について、何か貨物検査ばかりが強調されているように思うんですが、決議一八七四の全体から見ると、当時の答弁とそれから外務省のペーパーがこの調査室の資料に詳しく載っていまして、それを見ると一番わかりやすいんですね。ですから、この一八七四の決定に基づく、各国に義務づけられているのは二つだと思うんですね。北朝鮮のすべての武器の輸出入禁止、それから禁止物品を輸送する疑いのある北朝鮮船舶への燃料供給の禁止、つまり入港禁止、この二つが中心であります。貨物検査は、この外務省ペーパーにもありますように、要請にすぎないんですね。

 武器の輸出入禁止、船舶への燃料等の供給禁止という二つの義務について言うならば、日本は既にすべての北朝鮮船舶の入港を禁止し、武器どころか輸出入を全面禁止するという措置をとっていますから、その意味では、日本は既に、この決議の義務という点でいうならば一〇〇%実施していると考えてよろしいですね。

○榛葉副大臣 訂正します。

 先ほど、防衛省設置法九条の十八と言いましたが、四条の十八の訂正でございます。済みませんでした。

○武正副大臣 穀田委員にお答えをいたします。

 国連安保理決議の一八七四について、先ほどお話がありましたように、北朝鮮に対する禁輸措置、貨物検査に関連する措置、金融面での措置、自国領域内または自国民による禁止物品を輸送する疑いのある北朝鮮船舶への燃料供給等の禁止をすること、決議一七一八の措置のさらなる具体化及び本決議の実施、全加盟国に対し、北朝鮮国民の核・核兵器運搬システム関連の教育訓練を監視し、防止することを要請、これが措置ということでありまして、その中で、御指摘のように、貨物検査に関連する措置というところを受けて、具体的に本法案の第三条から第七条に規定をしております。

 それで、もう既に日本は実施しているではないかという御指摘でございますが、この中で、「全ての国が検査に協力すべき旨要請する。旗国が同意しない場合は、旗国は当該船舶に対し検査のため適当な港に向かうよう指示することを決定する。」また、もう一つは、「全加盟国に対し、検査において特定された禁止物品の押収・処分を行うことを決定する。」この二つについては、本法案が、やはりこの行為、決定するということを担保する法案の措置ということになろうかと思います。

○穀田委員 それをよく見てほしいんだけれども、要するに、義務と要請ときちんと分けないとだめなんですよね。ですから、そこが、皆さんが言うやり方をしていると、義務については一〇〇%やっているんだと。やっているんですよ。だって、既に北朝鮮に対する制裁措置として、船舶の入港を禁止し、武器どころか輸出入を全部禁止しているわけですから、いわゆる制裁措置としての、国連安保理決議一八七四が提起している義務についてはやっているんですよ。そのほかは要請しているというふうに書いているわけですよね。

 では、要請の問題について今お話があったから、どんなことが想定されるのか、実際はどうなっているかについて一言聞いておきたいと思います。

 日本が公海上でそういう船舶検査を行うような事態が果たして想定されるのか。言うならば、この六月、北朝鮮の貨物船カンナム号を米軍のイージス艦が追尾したことについては大々的に報道されました。では、公海上の船舶検査ということについていろいろやるというんだったら、こういうことを想定しているんですか。

○前原国務大臣 先ほど委員が御指摘をされたように、義務と要請という言葉が分けられると思います、この一八七四を見ると。

 しかし、要請をされたことについて、それをどの程度行うかどうかというのは、それぞれ加盟国の自主的な判断でございますので、我々としてはそれを書かせていただいたということでございます。

 ちなみに、公海上で行う場合もあるでしょうし、それができない場合においては、回航命令を出すということもあり得ると思います。

○穀田委員 先ほど私が例に出したカンナム号、あの場合だったら、では、アメリカは旗国であるそういう北朝鮮に対して検査の同意を求めたかというと、なかなかこれは微妙な問題でして、旗国の了解が得られない場合については、詳細な報告を制裁委員会に速やかに提出するようになっているわけなんですが、それが提出されていないということは、テロ特における質疑で明らかであります。

 同時に、旗国の同意ということでいいますと、北朝鮮が同意するはずがないんですよ。それはだれが考えたってそうですね。

 しかし、カンナム号というのは、各国の連携でミャンマーに行けなかったわけですよね。それが新聞、テレビでも放映されて、結局、北朝鮮に戻ったわけであります。やはり、アメリカの当時の副大統領も、どの港も寄港を許可しなかったためカンナム号は帰港した、港に帰ったと。だから、周辺諸国が行ったことを見ればわかるだろうと。

 そういうことで、公海上での摩擦を起こして検査する必要など全くないということは、これは十分できるということを示したわけですね。ですから、私どもは、今の意味での公海上のあれは必要ないということを言っているわけであります。質問時間が終了したというので、最後、私どもの考え方はそういうことだと私は考えている。

 そこで、最後に、私は、やはり日本の役割という問題ですよね。

 それは、先ほど述べたように、輸出入の全面禁止とそれから全船舶の入港禁止の措置を実施していて、これによって安保理が義務づけた内容はほとんど実施されている。したがって、その意味では、私どもは新たな法案は必要がないというふうに考えています。

 そして、にもかかわらず、日本領域外の公海で海保と自衛隊が一体となって出動していく、さらに、北朝鮮等への船舶検査を行う体制をつくるということは、やはり軍事的な対応、緊張の悪化につながるということで、私どもは批判してきたところであります。

 公海上での船舶検査は、領海内の警察活動とは異なって、軍事的強制力を持つということは明らかであります。したがって、私は、海保が任務として出動すること自体が問題であって、その事態によっては海上自衛隊が海上警備行動で出動することにつながり、緊張のエスカレーションを招くことになる、それだけはやってはならぬということについて、私どもの見解を述べて、時間が参りましたので終わらせていただきます。おおきに。

○川内委員長 穀田恵二君の質疑は終了いたしました。