国会会議録

【第171通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2009年6月24日)


○菅原委員長代理 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 特定船舶の入港禁止の実施、いわゆる北朝鮮制裁承認案件について質問します。

 五月二十五日、北朝鮮の核実験に対して、私どもは志位和夫委員長の談話を発表し、強く、厳しく抗議しているところであります。核実験の強行について、いかなる核実験または弾道ミサイルの発射もこれ以上実施しないことを要求した国連安保理決議一七一八や、それから、北朝鮮が一切の核兵器及び現在の核計画を放棄すると合意した六カ国の共同声明にも明確に違反する暴挙であって、世界の中で起こりつつある核兵器廃絶への新たな機運への乱暴な挑戦だとしたのであります。

 その上に立って、私たちは、北朝鮮に、核兵器及び核開発計画を放棄すること、六カ国協議に無条件で復帰することを求めて、国際社会が一致結束した行動をとることが必要だということを訴えてまいりました。

 国会における五月二十六日の北朝鮮核実験抗議決議の際に、特に私は、国際社会が一致という点を盛り込むべきであることを主張したのは御承知かと思います。

 六月十三日に、国連の安全保障理事会は、北朝鮮の核実験強行に対し、全会一致の決議一八七四を採択しました。今回の決議について、国土交通大臣の所見をまず伺いたいと思います。

○金子国務大臣 一八七四について御質問いただきました。

 安保理事会のたび重なる強い要求にもかかわらず北朝鮮が核実験を行ったことを受け、従来の決議一七一八号で定められた措置に加えまして、武器の禁輸、それから貨物の検査、あわせて金融面での措置などにおいて強い内容が含まれております。

 国連安保理におきまして、このような北朝鮮の核実験を強く非難し、北朝鮮及び各国がとるべき措置の決定などを含めまして、全会一致で採択されましたことについて、大変高く評価をしております。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

○穀田委員 北朝鮮は、今回の国連安保理の全会一致の決議に示された国際社会の総意をきちんと受けとめるべきだと私は考えます。北東アジアでの軍事的緊張が高まったり、平和や安全が脅かされる事態を避けなければならないことは言うまでもありません。

 北朝鮮は、国連決議が指摘するところの、核実験が国際社会の平和と安全に対する明白な脅威である、このことを認識すべきであります。同時に、北朝鮮にとっても、安保理決議の義務を履行することが、地域内の平和と安定こそ自国の安全を確保する、こういう道なんだということについて、私は、今後ともはっきりさせておかなくてはならぬと。

 この点について、大臣の認識を伺います。

○金子国務大臣 全く同意見であります。

○穀田委員 次に、北朝鮮の軍事的挑発を抑えるには、先ほども言いましたように、北朝鮮に対して、国際社会からの孤立ではなく、国連決議の義務の履行で国際社会の総意を実行することが国として生きる道だということを理解させることが、極めて大切だと考えます。そうなりますと、やはり、そのためにも国際社会の一致結束した行動が大事であります。

 外務省に聞きます。国連安保理決議の内容の問題であります。

 決議が、「国際連合憲章第七章の下で行動し、同憲章第四十一条に基づく措置をとって、」としていることを明記したのは重要と考えますが、その点についての見解を示していただきたい。

○石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員御指摘のとおり、安保理決議の第一八七四号におきましては、前文において、安保理が国連憲章第七章のもとに行動し、国連憲章第四十一条に基づく措置をとるということが述べられております。このことは、同決議に盛り込まれました武器禁輸とか貨物検査、金融面での措置は、国連憲章第四十一条に基づく兵力の使用を伴わない措置というふうに位置づけられた結果だというふうに理解しております。

○穀田委員 今答弁がありましたように、非軍事という形で行われることが大事だということであります。

 今回の決議は、七項において、すべての加盟国に対し、決議一七一八に基づく義務を履行することを要請するとしています。その上で幾つかの措置を決めているわけですね。先ほど大臣から、新たな点について触れられたとおりであります。

 そこで、再度言いますけれども、国連決議の、今回の場合は、第七章のもとで行動し、国連憲章第四十一条に基づくという言い方というのは、非軍事的措置である、このことを明記したということが私は極めて重要だと思うんですね。国際社会が、北朝鮮の挑発に対して、冷静に非軍事的外交措置で対応することを改めて明らかにしたものであるからであります。私は、軍事的対応は情勢を悪化させるものでしかなく、国際社会の一致した対応を妨げるものであると考えるものであります。

 そこで、国際社会が決議に対してどのような反応を示しているか、六カ国協議を形成する米国、中国、ロシア、韓国について、簡潔でよろしいので、報告されたい。

○石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今委員おっしゃいました国につきましては、基本的には、決議の成立を歓迎して、この実施をしっかりすべきだということを言っておるということでございます。

 アメリカについて申し上げますと、クリントン国務長官は、今月の十三日の会見におきまして、安保理が非常に強力な制裁に合意したことに非常に満足をしている、アメリカは国際社会と協力して強力な方法により決議の規定を実施します、それから、北朝鮮が六者協議に戻る機会は依然として開かれているというふうに述べているところでございます。

○穀田委員 アメリカだけ言ってもらっちゃ困るんですよ。歓迎しているというのは、それは知っているんですよ。

 だから、今ありましたように、米国の場合はクリントン長官が言っておられるし、それぞれの、中国、ロシア、韓国が、要するに、中心は、今回の決議が北朝鮮に対する措置として極めて強いものであると同時に、国際社会が一致していることを歓迎している、並びに、六者に戻るというあたりが触れられていることが特徴だと思うんですね。ですから、その辺の基本的な流れの点について、各国の特徴を一言ずつ言っていただければと言っているわけです。

○石井政府参考人 失礼をいたしました。

 中国につきましてですが、中国も、北朝鮮による核実験は安保理決議に違反している、断固として反対する。それに加えまして、関係国に、冷静さと自制を保って、平和的な解決を引き続き探求することを強く呼びかける、中国その他の加盟国は安保理関連決議を真摯に履行していくということを表明しております。

 ロシアにつきましても、この決議採択を歓迎した上で、北朝鮮に対して、国際社会の意思を受け入れ、核兵器及び核ミサイル計画すべてを停止し、六者会合を再開することを要請するというふうに述べております。

 韓国につきましても、決議を歓迎、支持、その上で、北朝鮮に対し、国際社会の断固たるメッセージを受け入れ、すべての核プログラムも廃棄し、すべてのミサイル関連活動の中断、速やかな六者協議への復帰を求めるという旨を表明しておるところでございます。

○穀田委員 今ありましたように、基本的には、もちろん、歓迎するというのは、全部が賛成して一致しているわけですから。ただ、今ありましたように、冷静に、平和的に、そして六者でという点が、それぞれ大体共通して言えるんだと思うんです。

 その点で、私が注目しているのは、アメリカの上院外交委員会において、北朝鮮政策担当のボズワース特別代表が北朝鮮に対する米国の対応について極めて重要な発言をしたとされていますが、主な点を紹介されたいと思います。

○石川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、六月十一日、ボズワース特別代表は、上院の外交委員会の北朝鮮問題に関する公聴会、これに証人として出席をいたしまして、アメリカ政府の対北朝鮮戦略に関し、地域協議、国連及び二国間制裁、防衛措置、外交的関与、こういう四つの面から成る戦略に取り組んでいるという発言をしたところでございます。

 簡潔に内容について申し上げます。

 まず、米国は六者会合参加国等と協議を行っている。これらの協議の中で、北朝鮮の核及びミサイルの脅威は国際的秩序にとって課題であり、北東アジアの永続的安定に対する妨害であるため、対処されなければならない、こういうアメリカの見解が共有されている。これが第一点でございます。

 それから、第二番目に、北朝鮮が核兵器及び核技術の拡散に関与することを阻止し、北朝鮮の核及びミサイル関連団体や企業等の資金を枯渇させるため、種々の措置について他の安保理理事国と取り組んでいるとともに、北朝鮮が進路の修正を拒絶し、将来のミサイル及び核実験を含め、対外的な挑発行動の実行を継続した場合に、米国及び同盟国がとる対応策及び防衛措置の計画に着手をしたということも述べております。

 それからまた、六者会合プロセスに関する立場、これを維持するとしつつ、北朝鮮が国際的義務に従い、外国との関係を改善する関心を示すのであれば、外交的アプローチは可能であり続ける、こういったことも述べていたというふうに承知しております。

○穀田委員 やはり、米国が、今答弁がありましたように、六者協議という問題も含めて非常に重要な位置づけをしていて、四本足の戦略として位置づけながら、六カ国協議の枠組みの中で北朝鮮と交渉する用意があることには変わりがないということを再三強調しているし、米国は北朝鮮国民に敵対する意図を持っているわけじゃないということも言っている。さらに、北朝鮮の体制を武力で変えようとおどしをしているわけじゃない、こういう点も極めて重要な指摘だったと思っています。

 そこで、大臣に聞きたいと思います。

 国連安保理決議一八七四は、三十項で、平和的対話を支持し、北朝鮮に対して、直ちに無条件で六者会合に復帰することを要請すると述べております。さらに、三十一項で、事態の平和的、外交的かつ政治的解決の約束を表明し、対話を通じた平和的かつ包括的な解決を容易にし、また、緊張を悪化させるいかなる行動も差し控えるとしております。つまり、制裁は六者会合への復帰を求める手段だということであります。

 日本政府の制裁措置の目的もそういう点にあると理解してよろしいですね。

○金子国務大臣 北朝鮮に対して我が国独自の措置をとっておりますが、拉致、核、ミサイル、この諸課題を解決するため、具体的な行動を北朝鮮から引き出すためのものでありまして、制裁というものよりは、委員おっしゃるように、北朝鮮から今申し上げた解決の糸口を引き出すものであります。

○穀田委員 その点は、政府並びに官房長官やその他外務大臣の談話なんかにも見られていますように、政府として、日朝平壌宣言に沿って、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を早期に実現するとの基本方針、こういうことですよね。

 私は、なぜこの六者協議という問題について、何度も結論的に問題として、各国の問題も含めて触れているかといいますと、北朝鮮が六カ国協議からの脱退を宣言しているもとで、六カ国協議無力論が出ているからなんですね。私は、六カ国協議、六者会合というのは、北東アジアの平和と安定に直接かかわる関係者が一堂に会する最良の交渉の枠組みだと思っています。この枠組みは、朝鮮半島の非核化の達成だけでなくて、北東アジアの平和と安定をもたらす枠組みとして発展し得る可能性を持っていると確信するからであります。

 その点についての所見を最後にお聞きしておきたいと思います。

○石川政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘のとおりでございまして、政府といたしましても、この北朝鮮の核問題を初めとするいろいろな諸懸案を解決するに当たって、六者会合というものが一つの非常に現実的な解決策というふうに考えております。

 したがいまして、この会合を通じて北朝鮮の諸懸案の問題も解決するというのが、政府としての基本的な考え方でございます。

○穀田委員 最後に、私どもの態度についても若干述べておきたいと思います。

 北朝鮮に対する入港禁止と輸入禁止という二つの日本独自の制裁措置は、二〇〇六年十月の北朝鮮による核実験を契機にとられた措置であります。我が党は、これが実施された際にも、二〇〇七年四月に延長された際にも賛成しました。

 その後、核問題をめぐっては、六カ国協議で核施設の無能力化と核計画の完全申告を柱とする合意が行われるなど、大きな前向きの進展が生まれました。我が党は、この問題について、このように核兵器問題をめぐって新しい情勢が生まれているもとでは、日本独自の制裁措置を継続する合理的理由がなくなっていると指摘をして、二〇〇七年十月の再延長以後は反対の態度をとってきました。

 しかし、今回、二度目の核実験強行という新たな軍事的な事態に際して、日本独自の制裁措置を延長することは、今大臣からもお話がありましたように、北朝鮮を対話の道に復帰させ、核問題の外交的解決を図るための手段として必要である、そう考えて今回の承認案件に賛成するという立場を表明して、終わります。