国会会議録

【第171通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2009年6月17日)


○望月委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 私は、最初に、多重衝突事故の被害補償についてお聞きします。

 昨年三月五日、明石海峡で起きた、ゴールドリーダー、第五栄政丸、オーシャンフェニックス号の多重衝突事故に関連して聞きます。三隻が衝突し、一隻が沈没。三名死亡、うち一名行方不明。加えて、最盛期のイカナゴ漁やノリなど深刻な漁業被害をもたらしました。

 被害の概要とその対策、対応について水産庁にお聞きします。

○成子政府参考人 お答えを申し上げます。

 昨年三月に明石海峡沖で発生いたしました貨物船など三隻の衝突事故によりまして、周辺の漁業に大きな被害が発生いたしましたところでございます。

 具体的な被害額でございますが、兵庫県漁連から、ノリ養殖被害約三十八億六千万、イカナゴなど漁船漁業が出漁できなかったことによります被害約十一億円、防除、清掃の経費約二億九千万、合わせまして五十二億五千万に達したとの報告を受けているところでございます。

 水産庁といたしましては、このような被害を受けられた漁業者の方々が一刻も早く立ち直ることができますよう、速やかに関係機関に対しまして指導を行いまして、漁業共済金の早期支払い、農林漁業セーフティーネット資金の円滑な融資が実施されたところでございます。また、あわせまして、地域の御要望を踏まえまして、海底清掃などの活動に対しまして約三億円の御支援をさせていただいたところでございます。

○穀田委員 わかりました。

 沈んだ貨物船から油が流出し、そして漁業被害が生じたわけであります。昨年、油被害抗議の漁業者の集会で二つの決議がありました。一つは、事故被害の発生源の除去を含む油どめの対策であります。

 これはめどは立ったのか、国はどのような支援をしているのか、お尋ねします。

○伊藤政府参考人 先生御指摘の件は、明石海峡で三月に起きました三重衝突事故で、ゴールドリーダーが沈没をしている、そこから油が出ている、これに対する対策であると理解しております。

 一般的に申しますと、沈んだ船を引き揚げる、あるいはその船に残っている油の抜き取り作業というのは、本来、その船の船主さんが責任を持って行うべきものでございますが、この件につきましては、兵庫県漁連からの要望を受けまして、兵庫県、神戸市、明石市、淡路市、四者が共同して夏ごろから油抜き取り作業を行う予定というのを、ことしの、たしか四月に私ども伺いました。

 私どもは、実は平成十六年から外国船舶油等防除対策費補助金という制度を創設いたしました。海洋汚染防止法に基づきまして海上保安庁長官が要請した場合で、かつ地方自治体がこの作業を行い、また、その費用がその船舶の船舶所有者から徴収することが困難である場合につきましては、地方自治体に対して、この負担をした費用の二分の一を限度にして交付する仕組みでございます。

 今の沈没しているゴールドリーダーでございますけれども、この予定されております地方自治体が油抜き取り作業を実施した場合には、国土交通省といたしまして、この補助金の仕組みを活用して支援をしてまいる所存でございます。

○穀田委員 今ありましたように、半分はそういう形でやる。問題は、自治体負担分につきましても、お聞きすると、何とかしたいということで努力されているようであります。総務省の特別交付税措置があり、さらに残りについては経済危機対策臨時交付金を充てるということだと思いますが、やはり漁業者に負担のかからないように万全を期すべきだと考えています。

 漁業者の集会では、もう一つ決議がありました。特定航路の事故対策としての基金創設であります。タンカーは被害補償の基金制度がありますが、貨物船にはありません。昨年、私は当委員会で要求しました。貨物船などの油流出被害に対する補償の制度化、基金創設について、この間どのような検討と取り組みを行っているか、報告をいただきたい。

○伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 このゴールドリーダーを初めといたしまして、いわゆる海上物流を担う船舶は、公海自由でございますので、さまざまな国籍の船が各国の港に入る、あるいは沿海を航行するということで、世界の海域を対象にして活動しております。

 そういった観点から考えますと、この活動に伴う補償というのは、タンカーによる油濁損害と同様に、やはり国際的な取り組みが必要であるというふうに考えておりまして、実は、昨年我が国から、国際海事機関の法律委員会というのがございますので、そこで検討を行っていただきたいという提案をしております。

 具体的に申しますと、今回のケースもそうでございますけれども、船主責任に関する条約に定められた限度額では補償が不十分であった例、特に我が国の明石海峡で発生した事故の事例を御紹介申し上げまして、まずは、限度額を超えた損害の実態について、しっかりと世界的な調査をして実態把握をするという提案を行いました。この調査について検討が開始されているところでございます。

 まだIMOの議論は始まったばかりでございますけれども、我が国は、今後も引き続きましてこうした国際機関における議論をまずリードして、最終的には国際的な枠組みの構築に努めてまいりたいと考えております。

○穀田委員 国際的な基金創設に向けて、今後も取り組みの強化を求めたいと思います。

 ただ、アメリカなどは、自分のところ独自に単独で補償する体制である油濁法というのが実はあるんですね。したがって、そういう基金を設けることなどもあわせて、国際的な取り組みもしかりですが、そういうことも含めて検討すべきではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

○伊藤政府参考人 先生からアメリカの例をちょっとリファーいただきました。実は、アメリカは、先ほど御説明申し上げました船主責任制限条約、これの締約国ではございません。したがいまして、アメリカは独自にいわゆる資産証明等を求めることができますが、一方で、我が国はこの条約の締約国でございますので、締約国である以上、この条約の枠組みの中で活動するという国際的な義務を負っているわけでございます。

 したがいまして、まずはIMOの議論で推進をするということが大原則ではないかと思いますし、また、その後、なかなかそこが進まないとか実効が上がりそうにないというような状況になりましたら、改めて先生御指摘の我が国独自の工夫というのも検討する必要があると考えております。

○穀田委員 そこで、先ほど水産庁の答弁もありましたが、五十二億円を超える被害からすれば、補償されたのはごく一部なんですね。船の側への賠償請求もされているとお聞きしますが、今お話があったように船主責任制限があり、十分な補償がされていないのではないか、そこはいかがですか。

○伊藤政府参考人 お答えいたします。

 水産庁の方から約五十数億という損害額のお話がございました。一方で、今現在の船主責任条約で定める責任限度額、制限額でございますが、これは、今回の場合は油被害ということでございますので、分類で申しますと、人損ではなくて物損でございます。

 そうしますと、百万SDRということでございまして、これを日本円で現在のレートで換算をいたしますと一億七千万円でございますので、確かに大きな開きがあるのは事実でございます。

○穀田委員 そこを言っているわけですよね。要するに、五十二億被害が出ている、船主責任制限があって一億七千万だ、こういうことはやはり見ていただきたいと思います。

 私は昨年も指摘したんです、被害を受けた漁業者には全く責任がないと。当時、岩崎さんでしたよね。この点について、当時の冬柴大臣も、「漁業者には全く責任はありません。」と答弁しました。

 そこで、私は思うんです。海上交通の安全対策が十分でなかったという国の責任がある。今回の法改正も、この事故を一つの教訓として行われたことは明らかなんですね。被害補償の制度が十分でない点について言えば、今やはり率直に申し上げて、国の責任だと私は思うんです。

 一周年たった際に、地元の神戸新聞が次のように報道しています。「再びノリ漁が最盛期を迎える今、網をたたんだ漁業者たちは無念を募らせる。」ということを書いていまして、「市によると、昨季のノリ生産総額は約二十億円と前季の三分の一に。ノリ漁には多額の設備投資が必要で、前季の収入を充てられないこともあり休・廃業が続出。兵庫県漁業協同組合連合会(県漁連)によると、同市内で約五十人に上るという。」

 つまり、五十人の方々が廃業や休業をせざるを得なかったわけですよね。まさにこういうことになってくるわけで、私は、制限があって被害が十分補償し得ない、こういう点を本当に役立つように見直すべきと違うかということと、被害の補償や経営支援などについても今後取り組むべきだと思うがいかがか、この点、二つ答えてください。

○伊藤政府参考人 私の方からは、国際的な枠組みの観点からまず御説明をしたいと思います。

 先ほどから申し上げております船主責任条約でございますが、これは、実は被害額が年々拡大しているということもございまして、改正をされております。

 直近は九六年の議定書という形でございまして、これは二〇〇四年五月十三日に発効をしているものでございます。それ以前は七六年の条約というのがございまして、それぞれ比較をしてみますと、人損で申しますと、トン数に応じて違うのでございますけれども、約二倍から二・五倍程度まで拡大をしています。物損につきましても、二・四から二・五倍という拡大が行われているということでございます。

 ただ、こういった見直しをする際に、実は責任制限額を改正するときの制約というのが条約で定められておりまして、代表的なものを申しますと、例えば、これをまず発効後五年間は改正できないということでございますが、これは二〇〇九年五月十三日以降であれば改正が可能でございますので、こういった働きかけはできるわけでございます。

 一方、拡大幅でございますけれども、九六年の議定書の当初の額の三倍を限度とするということでございますので、先ほどの格差を埋めるまではなかなかいかないにしても、私どものこういった事故の実態は、また、先ほどはいわゆる抜き取りの作業の費用でございましたけれども、今回のお話はどちらかというと被害補償というものもございますので、こういった点でもIMOでこの船主責任条約の改正ということを働きかけていく必要があると考えております。

○穀田委員 被害の補償それから今後の経営支援というのは余り報告がなかったんですけれども、ちゃんとやれということは言っておきたいと思います。

 それで、大臣に少し聞きます。

 今述べた明石海峡事故、今回の法改正でこうした事故が防げるようになるのか、端的にお答えください。

○金子国務大臣 狭い明石海峡に入っていくときのルール、どういう順番でどこを通ってということが、非常にシンプルに言えば、単純に言えば、これでAISを使って指示ができる、そういう意味では回避できるんだと思います。

○穀田委員 そう単純ではないんですよね。それだったら、何か全部事故がなくなるみたいな話になるんだけれども、そうはならぬというところに、皆さんが言ってきた、AIS、つまり自動船舶識別装置が、では小さい船につくのか、プレジャーボートにつくのかという問題があるわけで、それはそうじゃないということだけは一言言っておきたいと思うんです。

 ただ、今お話ししたように、こういう議論を経て、六回にわたるこの問題についての議論を経てこれらが出たということは事実だと思います。そこは正確にしておかなあかんということは言っておきたいと思うんです。

 そこで、私が何を言いたいかというと、問題は、小さい漁船をこういう法律を改正しながらも救っていく、そういうことが、未然に防ぐのかということが大事なんだと思うんです。

 といいますのは、漁船の衝突事故は、例えば昨年、二〇〇八年の全国海難二千四百十四隻のうち、漁船が七百三十二、衝突事故は全体で八百十二ということで、海難全体の約三分の一を占めていて、うち漁船は二百六十四隻ということで、極めて大きな比率を占めているんですよね。そして、第五管区内でいいますと、二〇〇七年は三十四、二〇〇八年は二十四ということでやっている。こういう状態だからこそ、いよいよ、ここに一つの対応をしなくちゃならぬということが求められる。

 そこで、ことしの五月十一日にも、兵庫県の須磨沖で漁船と貨物船が衝突する事故が発生しました。漁船の船長は、霧のため視界が悪く、気づいたらすぐ近くまで船が迫っていた、全速で避けようとしたが、船尾のワイヤが接触して船体が持ち上がり、船内に水が押し寄せてきた、もうだめかと思ったということで、沈没も覚悟したと報道されています。偶然、近くの漁船が大型船にとまれの行動を起こしているうちに、幸運にもワイヤが切れ、九死に一生を得たと言われています。

 一方は七千トンを超える貨物、一方は四・九トンの漁船、ひとたまりもありません。船が後ろ半分沈みかけても、大型船は気づかない。大型船は、ペンキがはげて、すり傷だけだったということです。漁船は、網はやられ、自力で航行できず、仲間の船に曳航されて帰港した。さらに、その後一カ月は操業もできやしない、保険も全額ではなくて一定の割合しか出ない、こういう現実なんですね。

 漁船は、航路の中や周辺でも、魚影があれば操業します。ところが、特に外国籍の船は、漁船の操業などお構いなしで進む。漁船も、網を引いているので、簡単にはよけられない。船同士が衝突しなくても、網をひっかけることがある。こういうことは瀬戸内の各所で起きています。

 この明石の沖はふくそう海域であり、漁船が魚影を追って航路で網を引いて操業していることを十分理解しているパイロットは安全航行をしています。このような海峡の特徴を知って注意していれば、衝突事故は避けられるはずです。十分周知や安全確保をしているのかどうか、ここを端的にお答えいただきたい。

○岩崎政府参考人 この海域は漁船とこうした大型船の衝突事故が多うございますので、やはりそれぞれが注意してやっていただくのが一番だろうと思います。

 ただし、先生御指摘のとおり、漁労中の船はなかなか動きにくいとか、網を引っ張っているものは特に操縦性能が悪いとか、そうしたことがございます。先生も御指摘になりました外国の船なんかにも、そういうことを周知しなきゃいけないと思っております。

 我々は、今後、日本語だけではなくて、英語でありますとか中国語でありますとか、そうしたパンフレットもつくろうと計画しておりますので、そうしたことも盛り込んだような形のものにするように検討していきたいと思っております。

○穀田委員 明石海峡周辺でイカナゴ漁の船が多数出るときには、海上保安庁の船が周辺で待機し、操業が済むまで見守っています。

 今答弁がありました、それぞれが注意してということなんですけれども、確かに、お互いの安全確保に非常に重要なことだと思います。でも、三月の漁の最盛期には、海上保安庁だけでなくて漁協側も監視船を出して安全対策をとっています。

 お互いが譲り合ってというけれども、漁船にとっては、大型船が航行するので避けてくれと言われても、あそこは潮流が速いわけで、大変なことなんです。漁船のエンジンより潮流の方がはるかに強い場合もあります。魚群のいる漁場を一たん離れて、後でまた戻ることは不可能であります。しかも、一たん魚群から離れると、一匹も網にかからない。一網五十万円の最盛期の補償をしてくれるのか、これが漁業者の声であります。

 お互いにといいますけれども、漁民の生活がかかっています。魚のピークの時期や時間帯には他の船が少し待つとか譲るとか、配慮は当然じゃないですか。

 今、さまざまな注意を喚起するという話がありましたけれども、漁業の実情を知っている旅客船などは、航路が通れないときにはセンターに連絡して航路の外へよけて航行するとか、どうしても通れないときにはしばらく待っているという現実です。

 したがって、お互いに事情を述べ合って譲り合う、その意味で、海上保安庁も音頭をとって、そういう点でのイニシアチブをとり、安全確保のために相談するというのは当然してくれますね。

○岩崎政府参考人 狭い航路の中で、本当は漁業とこういう交通とがうまく両立するというのが我々の一番目指すところでありますけれども、先生がおっしゃったとおり、狭い海域で、それぞれの事情がございますので、なかなか難しい面もありますけれども、海上保安庁は、そうした関係者といろいろ話し合って、お互い理解を深めてもらうということはやはり重要なことだと思っておりますので、これまでもやってきたつもりでございますけれども、さらに努力していきたいと思います。

○穀田委員 大型船は海図やGPSに基づいて航行するので、漁船が航路の中で底びき漁などを操業していても、実際にはお構いなしというのが現実にあるわけです。漁業者に聞くと、天気のいい、見晴らしのきくときでも、どけと言わんばかりに汽笛を鳴らされるときもあり、あっちはどいてくれへんと。実際に航路を変えるのは漁船であり、自分たちも自衛のためにそうしているということを私ども聞いています。

 自動操舵についても問題になっていまして、特に漁船と大型船が行き交うような場合には、手動操作にするのが当然ではないかと私は考えます。安全第一の立場で、関係者が集まって相談し、海域の特性に応じたルールを決めること、例えば義務づけなどを含めた議論をする必要があるんじゃないだろうか。国交省としてどう臨むのか、お答えいただきたいと思います。

○伊藤政府参考人 自動操舵装置のお尋ねでございます。

 確かに、自動操舵装置は、船首方位を自動的に制御する、針路を安定させるということで、非常に多くの船舶に搭載されている航行支援機器でございます。したがいまして、これを適切に使うということを前提にいたしますと、安全性の確保であるとか、あるいは操船者の疲労低減、こういったものにも寄与するものだとは考えております。

 ただ、一方で、これを過信するということになりますと、逆に、注意がおろそかになって事故につながる、こういうこともございます。あるいは、うっかりして居眠りをしてしまうということもございます。

 そんなこともございまして、実は、国土交通省では、昨年の三月の明石海峡での三重衝突、先ほどから話題になっておりますが、この事故を契機にいたしまして、自動操舵装置の適正な利用のためのガイドラインというのを策定しようと検討を進めているところでございます。

 ほぼでき上がりつつあるわけでございますが、その際には、やはりこの自動操舵装置の特性あるいは限界というものも、しっかりと利用者の方に認識していただかなければいけない。ちょっと具体的な例を申しますと、潮流等の影響を受けますと、確かに針路は設定しておりますが、実際に想定している針路から外れる、気象、海象、特に潮流で外れてしまうというような自動操舵装置の特性もございますし、それから、自動操舵装置を使用中にうっかりして手動でかじをとったとしても、これは自動操舵が優先いたしますので手動操舵には切りかわらないとか、いろいろな留意点が実はございます。

 こういったことをまとめまして、今後でございますけれども、このガイドラインを使いまして、船員の教育機関、船員の海技資格を取得する教育機関であるとか、あるいは各社さんが自分たちで社内の安全教育をするというようなときにも活用していただけるように、この内容については関係各位に周知をし、利用を促進していただいて、海難事故の防止に努めていただくように私どもも努力してまいりたいと考えております。

○穀田委員 過信してはならないということは、全くそのとおりなんですね。

 実は、自動操舵をやっているということの考え方は、そのことによって見張りもできるということも含めてあったわけですからね。ところが、時として、この間事故があった場合でいいますと、自動操舵しているから今度はメールを打っていた、そんなばかなことをやって事故が起きているということがあるわけですよね。そういう現実があるということで、よく見なくちゃならぬと。

 海難審判庁の海難レポート二〇〇八によりますと、衝突海難の八四%は見張り不十分なんですよ。ここが最大のポイントなんですよ。だから、そのために、見張りを行うということが大事だと。したがって、操舵員は適宜見張りに協力することでと、わざわざ見張り問題にしているわけですね。それを、この自動操舵をやっているということで安心しちゃならぬということが肝心だと思うんです。

 最後に海上保安庁長官に聞きますけれども、あなた方は、当時、事故があった後どう言っているかというと、同種海難の再発を防止するための応急の対策としてはということで通達を出しています。「船長が船橋にて自ら操船を指揮し、見張りを強化する等安全を確保する体制をとるとともに、自動操舵装置を使用せず、手動操舵により航行すること。」ということを、昨年の三月十四日には第五管区海上保安本部として出しているわけですよね。

 だから、こういうふくそうする区域においては、この事故があった後、こうしろと言っているわけだから、その点はしっかり見て取り扱いを、少なくとも緊急時にはすぐ手動に切りかえるようにするだとか、そういうことを初めとしたきっちりとした指導をするべきではないのかということを最後にお聞きしておきたいと思います。

○岩崎政府参考人 先生御指摘のとおり、見張りを十分にしないで自動操舵で漫然と運航している、これは非常にいけないことだと思っております。いろいろ、訪船指導をしたり、現場で見たり、あるいは海難の講習会なんかもやっておりますので、そういうことも含めて、そうした考え方をきっちり伝えていきたいと思っております。

○穀田委員 今ガイドラインをいろいろつくっているということが先ほどありましたけれども、策定している最中と。やはりこの問題で、この漁船の事故以後議論をした委員会で、結論は確かに、どうすればいいかというのは出ていません。しかし、意見としては手動操舵にすべきだということもあったということははっきり書かれています。しかも、当時、その事故が起こった後については、海保はその問題についてわざわざ言っているわけやから、私は、やはりここは、こういうふくそう海域については何が大事かと。

 つまり、自動操舵だけでは見えない、しかも、さっきありましたように、潮流が速いわけだし、横ずれは把握できないというようなこともあるわけなんだよね、この自動装置というのは。だから、こういうところは手動でいこうじゃないかというあたりはよく検討し、私は、漁民を初めとした小さい船をどうしたら守ることができるかと。

 ですから、一番最初に戻るわけです。大きな船の話はしたけれども、小さい船はそういった点では残念ながらまだまだ対策は不十分だという立場からして、私はそういう提起をしておきたいと思います。

 終わります。