国会会議録

【第171通常国会】

衆議院・国土交通委員会
(2009年5月8日)


○望月委員長 次に、穀田恵二君。

○穀田委員 二〇〇七年の三月十六日、二年前ですけれども、当委員会で民間都市再生事業者の認定申請期間を延長する都市再生特措法の改正について議論しました。

 そのときに、この都市再生特措法が、都市機能の高度化とそれから都市の居住環境の向上という二つの目的を掲げていました。ところが、結果は、不動産大企業は二倍以上のもうけをしたのに、公営住宅の入居募集倍率は高くなり、低所得者はふえている、実際住宅に入れないという住民の住環境は悪くなっている、こういう二つの対比で指摘をしました。

 そして、あわせて私は東京都と地方との格差についても指摘をしました。民間都市再生事業の半分は東京に集中していること、その一方で、地方では限界集落がふえ、今後十年以内に消滅のおそれがあると判断される集落が三百九十二、十年以降に消滅のおそれがあると判断される集落が二千一、合わせて二千三百九十三という深刻な実態にあることを指摘しました。

 これに対して当時の冬柴大臣は、「東京一極集中はだめだ、これは全部、だれでもそう思うと思うんですね。しかし、昨年ですか、人口が東京でふえちゃっているんですね。十一万五千人ぐらいふえている。そして、それはどこから出てきたか。地方で十一万五千人減っているというようなことがありまして、我々の思いとは違う方向に進んでいるなという感じがいたします。」こう答弁しました。

 そこで、大臣の所見を伺いたい。東京一極集中についてどうお考えか。

○金子国務大臣 多極分散というのをかつてやりましたね。税法上も、工場を東京から外にむしろ分散させるというようなこともやった。あの当時、結果として、多極分散というのはしばらくの間できたんだ、そういう方向に行ったんだと思うんですよね、いろいろな指標から見まして。

 ところが、多極分散が終わったからではなくて、むしろ、最近は一極集中が強まってきている動きに入っているんじゃないか。それは何かというと、グローバル化に相当影響されているのではないか。海外との取引の関係。

 ですから、大阪の企業なんかも全部東京に本社を移してきちゃうというような現象が起こってきているという意味で、一極集中、決していいことだとは思っていません。地方がむしろ地域のよさを生かしていただく、先生、京都でありますけれども、関西圏はもっともっと、本当に、関西はもっともっと元気を出してもらわなきゃ困ると思っているんですよ。支援しようと思っているんですよ。名古屋もそうです。ですから、それぞれいい地区を、やはり魅力をもっと生かして、こういうそれぞれの地域のよさを出していくということが必要だと思っております。

 それから、ちなみに、この法案との関係でいえば、全国それぞれの地域についてこういう都市再生ができる、したがって、大都市圏だけではなくて、地方都市でも都市再生という事業が行われるようになっているし、それから、先ほど小宮山委員からも御指摘がありましたけれども、全国で都市開発事業というのが六百件を超えるものが行われておりますけれども、それもかなり地方都市で規模は別として行われているということで、それぞれの地域がやはり元気になってくれることが大事だと思っています。

○穀田委員 それぞれの地方が元気になるという、それはそれぞれの地方における努力、また今回のNPOに対する支援だとか、それは当たり前の話であるわけですね。問題は、この法案の根底部分がやはり、現実に起こっている、民間の都市再生事業はどこに集中されたかという問題を指摘しているんですよね。

 私は前回UR賃貸の話をしましたけれども、大都市部で、高齢者が過半数を占める限界団地まで出ています。受け入れる老人福祉施設もないから他県の施設に送り出すなど、高齢者や低所得者には居住環境が悪くなる。だから、いわゆる東京というところもそうですが、どこでも新たな大都市問題が起こっているということも指摘しておきたいと思うんです。

 今、大臣は、全体としては東京集中というのはよくないという認識は示していますが、では、今度の経済対策との関係ではどうかというと、私は正反対だと思うんですね。

 結局、羽田空港、スーパー中枢港湾、それから大都市圏の環状道路、とりわけ、この間指摘しましたけれども、東京外郭環状道路を大深度地下でつくる。一メートルが一億円という代物ですよね。こういう巨大事業を推進すると方向が出されているわけであります。日経新聞によると、羽田空港はだれも反対しない、予算をつけろ、こういう記事が載っているわけです。初めに財政出動ありきの典型だと思うんですね。ですから、こんな発想で、引き続いて東京一極集中をやるような事態を結果としてはつくり出している、税金をつぎ込むパターンがある。

 では、これほどひどい東京一極集中のやり方が、これでよしとするのかということを聞いておきたいと思います、大臣。

○金子国務大臣 今度の経済対策で、今、羽田の例を挙げられました。しかし、長期的に我が国の国際競争力を強くするという意味で、羽田、成田の一体化、あるいは容量の拡大ということのみならず、阪神、関西空港も、やはり人だけではなくて、物流の基地としてより機能を高めてもらう。名古屋港も同じであります。名古屋の環状線もそれが目的であります。

 それと同時に、今、国際競争をしている時代でありますので、横浜、それから関西の神戸、大阪港も、東南アジアにおけるハブ港湾というのを目指して、少なくとも内貿と外貿というものが同一バースで行える、今は残念ながらそれすらできていなかったわけでありますけれども、それができるような機能をつけてもらうという、いわばスーパー中枢港湾という呼び名をしておりますけれども、これも決して東京だけでなく、ある意味これはそういう国際競争力を強化していくという部分になりますので、大都市圏ということになるかもしれませんけれども、決して東京一極集中だけを、だけというか、東京一極集中を念頭に置いた経済対策ではない、ではありません。

○穀田委員 今、ない、ではありませんと言っていましたし、そのことを含んでいるということだと思うんです。

 私、国際競争力云々というのは、もう何度も言っているんだけれども、これは政府によると都市再生政策の大前提になっている感があるんですね。これは、競争力を比較するんだったら、国民の暮らしや住民の暮らしがよくなるかどうか、東京だけがよくなるというような地域格差を是正するのかどうかということが肝心で、そういう点を比較すべきだと思います。

 そこで、ついでに、では聞いておきますけれども、ハブ港湾という問題でも言っているんですけれども、前もそういうハブ港湾をつくると言って、スーパー中枢港湾をばっと広げるわけです。そんなもの、この何年間、ハブ港湾になったとかハブ空港になったなんという話は現実はなかったことは、もうだれもが知っているわけですね。また同じ証文を使うのかということを私は言っておきたいと思うんです。

 では、証文が違う話を少し私が言っておきたいと思うんです。

 この間、国土開発幹線自動車道建設会議、いわゆる国幹会議がありました。四月二十七日に開かれた国幹会議の主要な議題は何だったかということを一つ聞きたい。

 私は、当委員会の参考人質疑の中でただしました。参考人は、税金の使い方、予算について、大型道路に偏り過ぎている、実際やりたい道路の補修などができなくなって困っている、一メートル一億円もかける外環など、首都圏に三つも環状線が要るのかという陳述がありました。私は、それを踏まえて、首都圏を含めた三大都市圏の環状道路こそ見直すべきだと主張しました。

 先日、西銘政務官にも申し入れしましたから、大臣も聞いていると思いますが、地元住民も関係自治体もこの外環の問題については疑問があるという内容であります。私はその申し入れの際に、笠井議員と一緒に参りましたが、国幹会議の議題にすべきじゃない、そもそも形骸化している国幹会議のやり方を見直すように求めました。

 こういう、いわばこれらの議論の前提となっている問題や議題の問題についても反対意見がある、そういうことを含めて反映されたのか。

 この二点について聞きます。

○金子国務大臣 国幹会議の議題は、七十一キロ、四カ所を整備計画として位置づけるということ、それから、既に開通しております高速道路二車線、これを四車線化するという、これは何カ所かありますけれども、これを御審議いただいたところであります。

 それから、今の、その中で外環について、当然でありますけれども、この国幹会議の場におきましても、地元の方々からインターチェンジの設置等について様々な御意見がある、地元で四百回以上に及ぶ話し合いを一方で重ねてきている、それから、引き続き地域の方々の御理解が得られるよう話し合いを進めてまいりたい等々、事務局からも説明させていただきました。

 国幹会議の委員からも、この外環については賛成、反対、それぞれの意見が出されたところであります。

 そういう意見を踏まえた上で、整備計画に位置づけるということについて、国幹会議の委員全員の賛成をいただいたところであります。

○穀田委員 僕は意見が反映されたのかと聞いたので、最終の結論はどうかとは聞いていないんです。

 今の話を聞くと、要するに、国幹会議の議を経るとなっている今の整備計画への格上げについては、出席者、つまり途中で退席された方もおられるようですから、出席していた与野党議員と有識者からは反対がなかった、全員が賛成したという報告だということで今の大臣の発言はいいんですね。確認さえしてくれたらいいです。

○金子国務大臣 私は、先ほど、最終的には整備計画に上げることについては、出席された委員の方は賛成ということでありました。ただ、意見開陳の中で、反対の意見が私のところにも来ているという様々なこと、そういうものを踏まえて、引き続き地域の方々の理解が得られるよう話し合いを進めるべきだというような御意見、こういうさまざまな御意見が出たということを申し上げた。

 最終的には賛成をしていただいたと思っております。

○穀田委員 要するに、委員の発言があったときに、そういう地元の意見やそういう方々の意見もあるという開陳はあったけれども、最終は全員が賛成をしたということですね。これは確認しておきたいと思います。

 少なくとも、こういう大事な国の政策を決める問題を国幹会議でやるべきじゃないと私は思っています。私の地元の新聞でも、国幹会議、あっさり一回で転換ということで、高速自動車道の新規建設をこれほど簡単にやるのはいかがかという意見が出されていることを紹介しておきたいと思うんです。

 私は、改めて言っておきますけれども、本来、こういう国の重要問題にかかわる基本路線の問題について言うならば、やはり国会で審議をすべきであるということを改めて主張しておきたいと思います。

 最後に、私が昨年十一月からずっと質問しています追い出し屋問題について少し質問します。

 この問題、十一月に私が提起して以来、その後、追い出し屋対策会議など全国に運動が広がっています。国交省は二月に、家賃保証会社などの実態調査を実施し、業界に対していわゆるガイドラインを出しています。この取り組みの経過と内容、進捗状況について、簡潔にお答えください。

○和泉政府参考人 お答えします。

 昨年十一月に穀田委員からの質問がございまして、その後、いわゆるゼロゼロ物件などをめぐる相談等の実態調査を十二月に行いまして、そういった相談が近年増加しているということが明らかになりました。

 また、今御指摘の家賃債務保証会社につきましては、業界団体の会員になっているそういった会社をまず対象に、十二月から一月にかけまして調査を行いまして、こういった家賃債務保証会社が使用している契約書の中には法令に違反する可能性のあるものが存在することが明らかになりました。

 そこで、その結果を踏まえまして、今委員御指摘のとおり、二月十六日には、業界団体に対しまして業務の適正な実施の確保を要請いたしました。具体的には、かぎを交換するなど開錠を阻害することなどにつきましては、違反する可能性があるので、契約書の見直しを求めたところでございます。

 加えて、各企業におきましては、そういった要請を受けまして、相談窓口を設置すること、法令遵守を従業員一人一人まで徹底することなどについてもあわせて要請し、これにつきましては、その業界団体から、前向きにきちんと対応していきたいという返事をもらっております。

 加えて、業界団体に属していない家賃債務保証会社につきましても調査を進めまして、その結果把握できた四十二社につきましては、三月に実態調査を行いました。同じように、その契約書の中には法令に違反する可能性のあるものがございましたので、業界団体において要請したのと同じガイドラインを添えて、そういった法令遵守を要請したところでございます。

 さらに加えて、こういった問題全体につきまして、現在、社会資本整備審議会の住宅宅地分科会の中で議論を進めている、こういった状況でございます。

○穀田委員 簡単に言うと、各業界にきちんとした要請をして、社会保障審議会でもいろいろ議論をして対策を練っている、こういうことですわな。

 しかし、実際、四月の十五、十六日に東京や大阪、福岡などで被害者が提訴をしています。十九日には電話相談も実施し、相談が六十三件あったと言われています。報道記事によると、ガイドラインで指摘した不法行為が最近もまだやられているという現実があるわけです。報道によりますと、また、その相談内容によりますと、荷物を勝手に撤去された、家賃滞納のたびに高額違約金を支払わされ、家賃督促の深夜訪問を受けたなど、十一件もあったと言われています。

 先ほど、二月、三月にそれぞれ業界に一定の要請をしたと言うけれども、現実はまだガイドラインが守られていないというのがあるわけですね。

 今回の事例では、不法侵入や荷物の持ち出し、処分など、不法な追い出し行為をやっているのが賃貸住宅管理会社というのもあるわけです。

 私、この間一貫して指摘しているんですけれども、ゼロゼロ物件を直接賃貸していたスマイルサービスなど賃貸業者、それから家賃保証会社、管理会社、この三つの業態のところで不法行為が行われ、広がっているということがあるわけですね。だから、事は緊急性を要する。それぞれの事業者に対して、消費者の立場から考えて法整備をすべきではないかというふうに思うわけです。

 私は、時間がありませんので、ついでに提案しておきたいと思うんですけれども、やはり家賃債務保証業を登録制とするなど法規制を行って、指導監督を強化すべきでないか。あわせて、登録制だけじゃなくて、宅建業法や金融取引業法などの対象にすべきだというのが第一の提案。

 二つ目は、不動産賃貸業、不動産管理業の業務について、借り主保護の観点による適切な法整備が必要じゃないか。賃貸管理業も登録制などの対象にする。あわせて、賃貸業については、もちろん一軒、二軒を貸し出す大家さんというのはそれは別な話であって、賃貸アパートの経営を売り物にする一定規模の賃貸業者についても登録制を導入すべきだ。こういう提案を持っているんですが、いかがでありましょうか。

○和泉政府参考人 委員御指摘のとおり、最近の訴訟事例を見ると、その被告人は、いわゆる家賃債務保証会社に限らず、賃貸住宅の管理会社、あるいは今委員御指摘のいわゆるサブリース的な賃貸人、これまで含まれておりますので、現在検討しています社会資本整備審議会におきましては、家賃債務保証会社の問題に限定することなく、幅広くこういった賃貸住宅管理業なりの適正化について議論をしております。

 その答申を年内にはいただきたいと思っておりますが、その上で、おのおのの業務に関するいわゆる法的な関与について、委員御指摘の登録制度がいいのかも含めて、その制度設計については、今後、社会資本整備審議会で十分議論をさせていただいて、その成果を踏まえて必要な措置についてきちんと対応してまいりたい、こう考えております。

○穀田委員 これは、今の追い出し屋という問題がすき間を縫って起こっている。しかも、新しい事態なんですね。昨年秋以降、これがふえているわけです。つまり、簡単に言うと、派遣切り、非正規切りという形で職を失うことが住まいを失うということになったところから起こっている新しい貧困ビジネスという形をとっているわけですね。

 だから、早急にこれをやらなければならない。しかも、そういう人たちに対して救いの手を早く差し伸べなければならない。ほんまに、現在業界に登録されている人たちだけじゃないところが行われているという現実もあるわけですね。だから、そういう意味で、私は、今二つの提案をしたわけで、ぜひこれは実現を図る必要があると思っています。

 最後に一件だけ。あわせて、こういうことが起こるのを、網を、セーフティーネットをしっかり敷くということも必要だ。今言った二つの点だけじゃなくて、派遣切りなどの住宅喪失者を含めて、低所得者層への賃貸住宅供給や公的保障制度の充実が求められています。

 この間、公営住宅等の貸し出し、開放を進めてきましたけれども、その実績と進捗状況、改善すべき問題点について、最後、お伺いしておきたいと思います。

○和泉政府参考人 御指摘の問題、さまざまな制度拡充をしてまいりました結果でございますが、四月二十四日時点におきまして、いわゆる公的な住宅、これは公営、URも含めまして、約二千六百戸の公的賃貸住宅において離職者の方々の入居が決定してございます。ちなみに、雇用促進住宅の方については六千六十一戸と聞いております。

 しかしながら、こういった公的な賃貸住宅が不足している場合には、民間を活用するという視点も大事であるというようなことでございまして、現在御審議を賜っております二十一年度の補正予算におきましては、民間賃貸住宅に入居する場合の未払い家賃等の債務を保証する制度がございますが、これに離職者の方を追加するとか、あるいは、最近出てまいりましたいわゆる地域住宅交付金を使って、民間の賃貸住宅を活用してそういった方々に提供する、そういったことを行おうとする公共団体に対する地域住宅交付金の拡充、こういったことをこの二十一年度の一次補正予算にも盛り込んでおります。

 いずれにしましても、空き家全体はまだまだあるわけでございますので、ハローワークとの連携のもと、なるべくスムーズにこういった活用をお願いすると同時に、そういった制度拡充についても努力してまいりたい、こう考えております。

○穀田委員 一問だけ。

 供給決定戸数というのがまず少な過ぎるということと、やはり、例えばURの問題についても、公営住宅の問題についても、条件がなかなか合わないという問題があるわけですよね。遠いだとか、施設が古いだとか。そういう生の声を聞かないと、ただ数字だけ、さっき言ったように、二千六百戸提供していますとか、六千六十一やっているとか、民間活用だとか、こういう数字の話じゃなくて、やはり現実と現場の声をよく把握することで問題点は何かということを言っていただかないと、改善すべき問題点が出てこないと思うんですね。

 そこだけ指摘して、終わります。